【三菱 デリカD:5 新型試乗】高速走行が得意科目になったデリカ…石井昌道

三菱 デリカD:5 新型
◆フルモデルチェンジ並みの進化


ミニバンでありながらSUVのようにロードクリアランスが確保され、三菱自慢の4WDシステムによって悪路走破性も高いオールランダーであるデリカ『D:5』は、そのユニークなキャラクターからアウトドア志向の熱心なファンから絶大な支持を受けてきた。

デリカとしては5代目の現行モデルは2006年デビューと古く、派手な顔つきとなった新型は6代目にあたるのかと思いきやさにあらず。ビッグマイナーチェンジという範疇に留まったわけだが、新旧を比較試乗してみるとフルモデルチェンジと謳ってもなんら問題がないほどに中身も進化していた。

クロスメンバーを肋骨のように張り巡らせたリブボーンフレームが特徴の基本骨格は継承するものの、フロント周りは一新。衝突安全性を高めるのが主目的だが、サスペンション周辺の剛性アップも図られ、走りに貢献する。またバックドア周辺は構造用接着剤で強度を高めた。

◆基本を踏襲するも全面刷新されたエンジン


ディーゼル・エンジンは基本を踏襲するが、尿素CSRシステムの採用による排ガスのクリーン化、おもにフリクション低減によるパフォーマンスアップが図られた。マツダのSKYACTIV-Dが登場する以前から低圧縮比に取り組んできた同エンジンは、今回14.4へとさらに低くなり、ピストンにピストンピン、コンロッド、クランク、インジェクターなど全面的に刷新。トランスミッションも従来の6ATから8ATへと換装された。

従来型に比べると車両重量は70kgほど重くなっているが、エンジンの低回転・大トルク化が進み1速がローギアード化されているため、発進時は逆に100kgぐらい軽くなっているのでは? というほどに軽快だ。そこから速度を高めていっても、ディーゼルならではの頼もしい感覚が滑らかに続いていく。旧型はエンジンの美味しい回転域が狭く、6ATだったこともあって、シフトチェンジのたびに加速感が鈍るようなことがあったが、新型はトルクが充実した回転域のままリズミカルにシフトアップ。加速Gの変動が少なく上質に感じられる。

◆静粛性の向上で上質で洗練された雰囲気に


静粛性も大いに高まった。ディーゼル特有のガラガラというノック音はほとんど気にならない程度。エンジンそのものが静かになったのに加え、従来型に対して13か所の防音強化対策が施されたことが効いている。

全体的に静かになると些細なことが気になるもので、高速走行時の風切り音、良路からザラザラ路面に移りかわったときのロードノイズの変化などは少し耳につきやすくなったかもしれない。だが、インテリアの素材や建て付けが良くなって安っぽいビビり音などがなくなり、これまた上質で洗練された雰囲気になっている。

シャシーではデュアルピニオン式パワーステアリングとリア・ショックアブソーバーの大径化が大いに威力を発揮していた。ステアリングはフリクションが少なくスッキリとした手応え。軽い操舵力ながらタイヤが路面を捉えている感触がしっかりと伝わってきて、コーナーで狙ったラインに自然な感覚でのせていける。



従来型のサスペンションは突き上げを感じるわりに高速域ではダンピングが不足してフラフラするようなことがあったが、新型は大きな入力でもマイルドにいなしつつ、ボディはビシッと安定している。普通より地上高の高いミニバンだから全高もひときわノッポなのだが、高速道路の走行が得意科目になった。これならロングドライブでも疲れないだろう。

オールラウンダーという価値やキャラクターは継承しながら、静的にも動的にも質感を大幅に高めてきた新型デリカD:5。その進化の幅は想像以上だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★



石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。

(レスポンス 石井昌道)

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