【トヨタ スープラ 新型試乗】ドイツ的などっしり感とフラットな乗り味の「RZ」…中村孝仁
◆バイアスのかかった目で見ていたようです
実車がデビューする前から、やれかっこ悪いだの、ウェット路面でのハンドリングは危険ですらあるだの、余計なインフォメーションが多々入っていたため、乗る前からこの『スープラ』はどうなのよ?と言うバイアスがかかっていた。
初めて見たのは確か、年初のオートサロンでのこと。その時の印象はやはり「カッコ悪い」であった。何故カッコ悪いかと言うと、フロントノーズの形状がヘラジカの鼻を連想させて、そこがどうにも気に入らなかった点。ところが今回、そのヘラジカの鼻風ノーズの先端にナンバープレートが収まると、そのダルな印象はパッと消えて、実に「整いました」的な変貌を遂げていたのである。たったそれだけ?と言われればそれまでだが、実にたったそれだけのことだ。
デザインについて色々とレクチャも受けた。やはりかなり歴代トヨタスポーツカーモデルのエレメントを取り入れている。例えば、全幅に対して寄り目のデザインは「80スープラ」やあの『トヨタ2000GT』などに使われていたし、サイドウィンドグラフィックはこれもトヨタ2000GTや『86』のイメージを踏襲しているそうだ。確かにウィンドグラフィックは言われてみれば、トヨタ2000GTと相通じるものがある。
ということで、実際レクチャを受けた後にそのスタイリングを見ると、何となくトヨタ2000GTの印象が被ってくるから不思議なものだ。こりゃトヨタに洗脳されたかな?と思いつつも、あれこれつぶさに見てみると、まあ、決してカッコ悪くない。端っからカッコ悪いと決めつけている読者も多いと思うが、一度じっくりと見てみることをお勧めする。その佇まいは、たった4380mmというコンパクトな全長の外観とは裏腹に、かなりの存在感を持たせていると思う。
◆ドイツ的などっしり感とフラットな乗り味
カッコの話はこれくらいにして、中身の話をしよう。まあ、言うまでもなくBMW『Z4』と基本的に同じ中身を持つ。特に駆動系、シャシー、それに電装関係が同じだから、インテリアに入るとオーディオのデザインが全く一緒であることに気付く。
ステアリングコラムからはえるレバー系もどうやら一緒。ウィンカーも日本車でありながら、コラムの左側に設定されている。警告の音も一緒だ。しかし、似ているようで仔細にBMWと見比べてみると、デザインはどれもこれも別物だった。因みにこのクルマはマグナで生産されているから輸入車扱いだ。
一方で隠しようがないのは、3リットル直6エンジンが奏でるサウンド。それに机上のスペックで、340ps、500Nmはその発生回転数に至るまで完全にZ4同じであった。多少はエクゾーストの取り回しが異なるのだろうか、あるいはオープンとクローズドボディの差なのか、少しスープラの方がこもった音がするように感じられたが、まあ一緒である。
足のチューニングは異なるというが、比較的なタイトなコーナーから、高速コーナーに至るまで、そのどっしリとした安心感のある走り具合と、路面追従性の高さ、それにフラットな乗り味などは、Z4に近い。
とりわけ、どしっとした安定感や、路面トレース性能の良さ、フラット感は、これまで特にドイツ製スポーツカーの専売特許的なもので、日本車でこの種のどっしり感やフラット感は感じたことがなかった。だから、やはり新しいフェーズにトヨタの足が今後進化していくことを切に望みたいものでる。
◆ショートホイールベースがもたらす走り
今回のスープラの特徴的な部分は、ホイールベースをトレッドで割った、いわゆる縦横比が1.55という値を持っていること。これはホイールベースが極端に短い結果の数値で、なぜこのような比率を採用したかと言うと、ベンチマークとしたポルシェ(ケイマン/ボクスター)の運動性能に追いつく運動性能を求めた結果だそうである。
ショートホイールベースでワイドトレッドのクルマは、例えばサーキットのような超高速で走る場合は、微妙なさじ加減のアクセルワークやステアリングワークが要求されるが、一般道ではこれがシャープでスポーツカーライクなハンドリングを演出する。勿論さじ加減は大事だから、一般道でサーキットのような走りをすれば、当然リスクは大きい。でも、乗った限り、素晴らしいハンドリングで、冒頭書いたような「危険」という印象は皆無であった。
このクルマに関してはまだまだ書くことは山ほどある。しかし、トヨタとBMWという稀有なコラボから生まれた新しいスープラが、素晴らしい出来栄えを示している事だけを書いて、締めくくる。書き足りなかった部分は2リットル版のモデルで紹介しよう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
実車がデビューする前から、やれかっこ悪いだの、ウェット路面でのハンドリングは危険ですらあるだの、余計なインフォメーションが多々入っていたため、乗る前からこの『スープラ』はどうなのよ?と言うバイアスがかかっていた。
初めて見たのは確か、年初のオートサロンでのこと。その時の印象はやはり「カッコ悪い」であった。何故カッコ悪いかと言うと、フロントノーズの形状がヘラジカの鼻を連想させて、そこがどうにも気に入らなかった点。ところが今回、そのヘラジカの鼻風ノーズの先端にナンバープレートが収まると、そのダルな印象はパッと消えて、実に「整いました」的な変貌を遂げていたのである。たったそれだけ?と言われればそれまでだが、実にたったそれだけのことだ。
デザインについて色々とレクチャも受けた。やはりかなり歴代トヨタスポーツカーモデルのエレメントを取り入れている。例えば、全幅に対して寄り目のデザインは「80スープラ」やあの『トヨタ2000GT』などに使われていたし、サイドウィンドグラフィックはこれもトヨタ2000GTや『86』のイメージを踏襲しているそうだ。確かにウィンドグラフィックは言われてみれば、トヨタ2000GTと相通じるものがある。
ということで、実際レクチャを受けた後にそのスタイリングを見ると、何となくトヨタ2000GTの印象が被ってくるから不思議なものだ。こりゃトヨタに洗脳されたかな?と思いつつも、あれこれつぶさに見てみると、まあ、決してカッコ悪くない。端っからカッコ悪いと決めつけている読者も多いと思うが、一度じっくりと見てみることをお勧めする。その佇まいは、たった4380mmというコンパクトな全長の外観とは裏腹に、かなりの存在感を持たせていると思う。
◆ドイツ的などっしり感とフラットな乗り味
カッコの話はこれくらいにして、中身の話をしよう。まあ、言うまでもなくBMW『Z4』と基本的に同じ中身を持つ。特に駆動系、シャシー、それに電装関係が同じだから、インテリアに入るとオーディオのデザインが全く一緒であることに気付く。
ステアリングコラムからはえるレバー系もどうやら一緒。ウィンカーも日本車でありながら、コラムの左側に設定されている。警告の音も一緒だ。しかし、似ているようで仔細にBMWと見比べてみると、デザインはどれもこれも別物だった。因みにこのクルマはマグナで生産されているから輸入車扱いだ。
一方で隠しようがないのは、3リットル直6エンジンが奏でるサウンド。それに机上のスペックで、340ps、500Nmはその発生回転数に至るまで完全にZ4同じであった。多少はエクゾーストの取り回しが異なるのだろうか、あるいはオープンとクローズドボディの差なのか、少しスープラの方がこもった音がするように感じられたが、まあ一緒である。
足のチューニングは異なるというが、比較的なタイトなコーナーから、高速コーナーに至るまで、そのどっしリとした安心感のある走り具合と、路面追従性の高さ、それにフラットな乗り味などは、Z4に近い。
とりわけ、どしっとした安定感や、路面トレース性能の良さ、フラット感は、これまで特にドイツ製スポーツカーの専売特許的なもので、日本車でこの種のどっしり感やフラット感は感じたことがなかった。だから、やはり新しいフェーズにトヨタの足が今後進化していくことを切に望みたいものでる。
◆ショートホイールベースがもたらす走り
今回のスープラの特徴的な部分は、ホイールベースをトレッドで割った、いわゆる縦横比が1.55という値を持っていること。これはホイールベースが極端に短い結果の数値で、なぜこのような比率を採用したかと言うと、ベンチマークとしたポルシェ(ケイマン/ボクスター)の運動性能に追いつく運動性能を求めた結果だそうである。
ショートホイールベースでワイドトレッドのクルマは、例えばサーキットのような超高速で走る場合は、微妙なさじ加減のアクセルワークやステアリングワークが要求されるが、一般道ではこれがシャープでスポーツカーライクなハンドリングを演出する。勿論さじ加減は大事だから、一般道でサーキットのような走りをすれば、当然リスクは大きい。でも、乗った限り、素晴らしいハンドリングで、冒頭書いたような「危険」という印象は皆無であった。
このクルマに関してはまだまだ書くことは山ほどある。しかし、トヨタとBMWという稀有なコラボから生まれた新しいスープラが、素晴らしい出来栄えを示している事だけを書いて、締めくくる。書き足りなかった部分は2リットル版のモデルで紹介しよう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める
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