【アウディ A6アバント 新型試乗】リアステアが動きのよさに効いている…九島辰也

アウディ A6アバント 新型(写真は海外仕様)
◆新型「A6」は“カッコいい”

新型『A6』を目の前にして思ったのはかっこいいということ。なんとも淡白な表現で恐縮だが、確かにそう思った。SUVばかり進化しているように思わせといて、アウディのサルーン系はこのところいい感じに進化している。

新デザインのスタートは『A8』、そして『A7スポーツバック』と続いた。2017年に新設されたインゴルシュタットのデザインセンター以降、新しいデザイン言語を用いたと言える。新デザインセンターに足を踏み入れたことがあるが、その大きさからもアウディがデザインにチカラを入れているのは確かだ。


A6もその流れに乗り、かなりモダンでシャープなボディで成形される。薄目のヘッドライトとシングルフレームグリルは継承されるので、劇的な変化を感じないがよくよく知るとそれ以外は別物。ロングホイールベースとショートオーバーハングはトレンドだし、張り出したフェンダーは妖艶でかつチカラ強さを感じさせる。

個人的に気に入っているのはエンジンスタート時に光るライト周り。この動きが有機的で何か生き物が目覚めた時のような印象を与える。特にリアコンビネーションランプの輝きは個性的だ。

◆とにかくクルマの動きがいい!


試乗したのは3リットルV6 TFSIユニットを搭載した「A6アバント55 TFSIクワトロSライン」。最高出力は340ps、最大トルクは500Nmを発生させる。しかもMHEVシステム付き。要するに48Vの電圧で最低限必要な機能を動かすマイルドハイブリッドだ。

走った印象はまずエンジンの力強さとモーターのアシスト力のたくましさを感じるが、とにかくクルマの動きがいいことに驚く。右左折時もそうだし、タイトなコーナーもクルッと回る感じが印象的だ。全長4950×全幅1885mmのボリュームは感じない。

それを実現するのはリアステア。60km/h以下の低速では5度逆位相し、高速では最大1.5度同位相することで、回頭性を良くする。乗り始めは幾度か切りすぎでステアリングを微調整したが、徐々にそれも必要なくなるくらい自然に行われる。これは現実的にありがたい。駐車場でもそうだし、箱根ターンパイクのような高速コーナーの連続を楽しく走れるからだ。

また、クワトロの走りも自然なのがいい。トルク配分の切り替えもそうだし、プロペラシャフトを切り離してフロントだけで駆動するときの走りもトルクステアはなく、スムーズにシャープに走る。トランスミッションは最近は少数派になりつつあるデュアルクラッチの7速Sトロニックが採用されるが、これも自然。MHEVシステムとの相性がいいのだろうか、トルコン式並みの安定感すらある。

◆総合的にジェントルで大人なステーションワゴンに


走り以外の面では、キャビンの静かさも注目したい。NHV対策がしっかりできていて高級感を醸し出す。静かでフラットな乗り味ということだ。

というのがA6を走らせて感じたポイント。総合的に言えるのは、ジェントルなクルマに仕上がっているということ。A6アバントは大人のステーションワゴンだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社 刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社 刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。

(レスポンス 九島辰也)

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