【ダイハツ タント 新型試乗】プチ介護車として、じつに使い勝手がいい…丸山誠
一見するとキープコンセプトのように思える新型『タント』。最大の特徴といえるミラクルオープンドアを踏襲し、パッケージにも大きな変化はない。
だが、ターゲットユーザーは従来とは少し違ってきたようだ。それは『N-BOX』の独走状態に遠因があるといえる。先進安全装備を標準化して子育て世代が安心して使えるスーパーハイトワゴンとして、そのポジションを確立しつつあるからだ。元々タントは子育て世代をターゲットに開発を進めてきたが、ライバルがあまりに強大になり過ぎたため、同じ土俵で戦い続けるのは得策でないと考えたと思う。
その対策が高齢者や身障者の介護車としての使い勝手の向上だ。
◆新型タントの活路
先代も高齢者の後席への乗車を意識していたが、新型の開発キーワードは「新時代のライフパートナー」。もちろんメインターゲットは子育て世代のユーザー層だが、ミラクルオープンドアの特性を生かしたプチ介護車としてのニーズに対応。まさにライフパートナーだ。N-BOXもリヤ両側スライドドアで健常者は後席への乗降性に不満はないが、Bピラーレスにはなっていない。
『N-VAN』はタントと同じBピラーレスだが貨物用のため後席の快適性は劣っていて、後席ヘッドレストの高さが足りない点など安全面で不安が残る。タントのBピラーレスは、高齢者や足腰が弱った人にとっては本当に乗り降りがしやすい仕様になっている。
助手席のショルダー部には大きなアシストグリップが標準装備されているから、ここを持って乗り込めば、足腰が弱った人でも乗降がしやすい。さらにルーフが高く、室内高も高いため乗降時に頭をぶつける可能性も低い。オプションのラクスマグリップは前席後部にバー状の大きなグリップを付けられるため、より安全に乗降が可能になっている。
本格的な介護車までは必要ないが、乗り降りが楽にできるクルマを探しているユーザーは意外に多いと思う。新型タントはそこに活路を見出したわけだ。もちろんダイハツはタントスローパーという本格的な福祉車両も設定しているが、高齢者人口が増える現在のニーズに対応して、普段乗りでも快適なプチ介護車として使えるのがポイントだ。
乗降性をもっと楽にしてくれるミラクルオートステップをオプションで用意しているのはありがたいが、この価格が約23万円と高い。それに福祉車両は消費税が非課税だが、ミラクルオートステップを付けただけでは福祉車両と認められない。高齢者に免許返納を求めるなら、こうした仕様も非課税にしてもらいたい。
◆ACC採用で快適に
タントの走りは洗練されていて、乗り心地もいい。スポーティさとは無縁だが、多くの人がスーパーハイトワゴンに求めるのは快適性だ。そうした点ではトップクラスになったといっていい。特に先進安全装備の一つであるACCを採用したのがいい。
今年の夏休みのドライブでも渋滞に巻き込まれて大変だったという人は多いははずだ。渋滞で活躍するのがこのACCで、しかも全速域に対応して停止制御まで行う。ライバルのN-BOXもACCを採用しているが30km/h以下になるとキャンセルされてしまう。新型『N-WGN』は全速域対応だから、N-BOXも将来は対応するだろうが現行モデルはタントが勝っている。
タントのACCは停止制御までするためラクなのだが注意点もある。じつは停止制御まではするが停止保持をせず、停止後約2秒でクリープ走行になってしまうためブレーキを踏む必要がある。追従走行時には先行車が加速すると少し遅れて加速を開始するため、車間が空きすぎてしまうのもちょっとイラつく。これはタントがステレオカメラを使っているのが要因かもしれない。
ライバルのN-BOXは、先行車との距離測定にミリ波を使っているため制御が素早く、加速の遅れがない。タントはレーンキープアシストも用意したが、オプションのスマートクルーズパックを選ぶ必要があり、装着できるのは「Xターボ」と「カスタムRS」の2グレードだけ。レーンキープの制御自体もN-BOXと比べると車線中央をキープしてくれないのが残念。
走行面で評価したいのは、中間加速のペダル操作に対する加速Gのリニア感。アクセルを少し踏んだだけでスッと前に出てくれ、CVT特有の操作に対する加速の遅れが少ない。これは新開発のギヤ駆動も併用するCVTのD-CVTの効果だ。
従来と比べ車両価格のアップを抑えたのも評価できる。家族に足腰が弱った人がいるなら、このクルマをぜひオススメしたい。介助しながら一緒にクルマに乗り込んで、世界初の運転席ロングスライドシートによって、そのままドライブできる。プチ介護車として、じつに使い勝手がいい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★★(プチ介護車として)
丸山 誠|モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。先進安全装備や環境技術、キャンピングカー、キャンピングトレーラーなどにも詳しい。
(レスポンス 丸山 誠)
だが、ターゲットユーザーは従来とは少し違ってきたようだ。それは『N-BOX』の独走状態に遠因があるといえる。先進安全装備を標準化して子育て世代が安心して使えるスーパーハイトワゴンとして、そのポジションを確立しつつあるからだ。元々タントは子育て世代をターゲットに開発を進めてきたが、ライバルがあまりに強大になり過ぎたため、同じ土俵で戦い続けるのは得策でないと考えたと思う。
その対策が高齢者や身障者の介護車としての使い勝手の向上だ。
◆新型タントの活路
先代も高齢者の後席への乗車を意識していたが、新型の開発キーワードは「新時代のライフパートナー」。もちろんメインターゲットは子育て世代のユーザー層だが、ミラクルオープンドアの特性を生かしたプチ介護車としてのニーズに対応。まさにライフパートナーだ。N-BOXもリヤ両側スライドドアで健常者は後席への乗降性に不満はないが、Bピラーレスにはなっていない。
『N-VAN』はタントと同じBピラーレスだが貨物用のため後席の快適性は劣っていて、後席ヘッドレストの高さが足りない点など安全面で不安が残る。タントのBピラーレスは、高齢者や足腰が弱った人にとっては本当に乗り降りがしやすい仕様になっている。
助手席のショルダー部には大きなアシストグリップが標準装備されているから、ここを持って乗り込めば、足腰が弱った人でも乗降がしやすい。さらにルーフが高く、室内高も高いため乗降時に頭をぶつける可能性も低い。オプションのラクスマグリップは前席後部にバー状の大きなグリップを付けられるため、より安全に乗降が可能になっている。
本格的な介護車までは必要ないが、乗り降りが楽にできるクルマを探しているユーザーは意外に多いと思う。新型タントはそこに活路を見出したわけだ。もちろんダイハツはタントスローパーという本格的な福祉車両も設定しているが、高齢者人口が増える現在のニーズに対応して、普段乗りでも快適なプチ介護車として使えるのがポイントだ。
乗降性をもっと楽にしてくれるミラクルオートステップをオプションで用意しているのはありがたいが、この価格が約23万円と高い。それに福祉車両は消費税が非課税だが、ミラクルオートステップを付けただけでは福祉車両と認められない。高齢者に免許返納を求めるなら、こうした仕様も非課税にしてもらいたい。
◆ACC採用で快適に
タントの走りは洗練されていて、乗り心地もいい。スポーティさとは無縁だが、多くの人がスーパーハイトワゴンに求めるのは快適性だ。そうした点ではトップクラスになったといっていい。特に先進安全装備の一つであるACCを採用したのがいい。
今年の夏休みのドライブでも渋滞に巻き込まれて大変だったという人は多いははずだ。渋滞で活躍するのがこのACCで、しかも全速域に対応して停止制御まで行う。ライバルのN-BOXもACCを採用しているが30km/h以下になるとキャンセルされてしまう。新型『N-WGN』は全速域対応だから、N-BOXも将来は対応するだろうが現行モデルはタントが勝っている。
タントのACCは停止制御までするためラクなのだが注意点もある。じつは停止制御まではするが停止保持をせず、停止後約2秒でクリープ走行になってしまうためブレーキを踏む必要がある。追従走行時には先行車が加速すると少し遅れて加速を開始するため、車間が空きすぎてしまうのもちょっとイラつく。これはタントがステレオカメラを使っているのが要因かもしれない。
ライバルのN-BOXは、先行車との距離測定にミリ波を使っているため制御が素早く、加速の遅れがない。タントはレーンキープアシストも用意したが、オプションのスマートクルーズパックを選ぶ必要があり、装着できるのは「Xターボ」と「カスタムRS」の2グレードだけ。レーンキープの制御自体もN-BOXと比べると車線中央をキープしてくれないのが残念。
走行面で評価したいのは、中間加速のペダル操作に対する加速Gのリニア感。アクセルを少し踏んだだけでスッと前に出てくれ、CVT特有の操作に対する加速の遅れが少ない。これは新開発のギヤ駆動も併用するCVTのD-CVTの効果だ。
従来と比べ車両価格のアップを抑えたのも評価できる。家族に足腰が弱った人がいるなら、このクルマをぜひオススメしたい。介助しながら一緒にクルマに乗り込んで、世界初の運転席ロングスライドシートによって、そのままドライブできる。プチ介護車として、じつに使い勝手がいい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★★(プチ介護車として)
丸山 誠|モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。先進安全装備や環境技術、キャンピングカー、キャンピングトレーラーなどにも詳しい。
(レスポンス 丸山 誠)
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