【アウディ Q8 新型試乗】サイズの話をするのはナンセンスだ…河西啓介
◆アウディ初のSUVクーペ
日本市場への導入が始まったアウディ『Q8』に乗った。Q8はアウディが“SUVクーペ”と呼ぶ、SUVのユーティリティや悪路走破性を備えつつクーペを思わせるスタイリッシュなデザインに仕立られた、プレミアムかつ“ニッチ”なモデルだ。
SUVクーペは現在、プレミアムカーのセグメントではちょっとしたトレンドになっている。BMWでいえば「Xシリーズ」、メルセデスでいえば「GLクーペ」シリーズなどがそれだ。Q8はアウディがこのカテゴリーに投入した初めてのモデルである。
ベースとなるのはアウディSUVのフラッグシップ『Q7』だ。Q8のボディはQ7より30mm低く、75mm短く、25mm幅広い。つまりQ7をワイド&ロー化したプロポーションなのだが、全長5005mm×全幅1995mm×全高1690mmというボディサイズはいずれにせよ絶対値として“デカい”。サイドミラーを含めると幅は優に2mを超え、コインパーキングに止めたらまず確実にラインからはハミ出す。
とはいえこのセグメントにおいて「サイズがもう少し小さければ……」的な事を言うのはナンセンスだろう。日本より社会的ヒエラルキーが明確な欧米では、この手のクルマを買おうという人はそれに相応しいガレージを持っているものだ。兎にも角にもある程度以上リッチで、細かいことを四の五の言わない人向けのクルマである、ということは前提である。
◆スポーツカーの血統を感じさせる走り
今回はアウディ主催の試乗会で長野駅から白馬までの道のりで試乗したのだが、先に結論めいたことを言ってしまえば、Q8いちばんのセールスポイントであり魅力とは、格好、デザイン、ルックス、つまり“見た目”であると思う。
クルマとしての性能はもちろん「いい」。ユーティリティや使い勝手にだって不満はない。アウディがつくる最新のプレミアムカーなのだから、それは当然だろう。だから見た目に惚れて購入したとしても、「しまった!」と思うようなことはないはずだ(前述のボディサイズのことを除いては)。
エンジンは3リットルV6ターボ・ガソリンエンジンを積む。最高出力は340ps、最大トルクは500Nmだが、味付けとしては下からモリモリと力を出すタイプというよりは、シャーンとある程度回して走らせるのが気持ちいいユニットだ。トランスミッションはトルクコンバーターを介する9速AT。
試乗車はアウディ伝統のクワトロシステム(4WD)と「オールホイールステアリング」と呼ばれる4輪操舵システムを備え、大柄なボディをスイスイと、峠道ではグイグイと走らせる。アウディ曰く、フロントまわりとCピラーの造形には、かつてラリーで活躍したアウディ『クワトロ』のデザインをモチーフとして採り入れたと言うが、なるほど走りはとても快活だ。ゴルフやスキーなどアクティビティに向かう道中の運転も楽しみたい、という人にはドンピシャリだろう。
いっぽうスポーティーではありながらも、快適性は非常に高い。試乗車は「Sライン」仕様でノーマルより大きな22インチタイヤを履いていたが、田舎道を低速で走るときにはそれなりにゴツゴツするものの、幹線道路をコンスタントなスピードで走っている限りはとても滑らかな乗り心地だった。室内の静粛性も高く「バング&オルフセン」のオーディオが奏でる上質なサウンドを楽しみながら走ることができた。
◆『ウルス』と共通のプラットフォーム
じつはQ8に乗った10日ほど後、たまたまランボルギーニ『ウルス』に乗る機会があったのだが、その外観や佇まいにふとQ8との近似性を感じた。Q8にもっとエッジを効かせたのがウルスというか、ウルスをもう少し穏やかにしたらQ8になるというか。言い方は乱暴だが、遠からず通じるテイストを感じたのだ。
でも考えてみればそれも宜なるかな。ウルスとQ8はどちらもVWグループが共用する「MLB」と呼ばれるプラットフォームを使っているのである(さらに言うならポルシェ『カイエン』もベントレー『ベンテイガ』も同じだ)。もちろんシャシー以外はエンジンも足まわりも別物であり、最終的なアウトプットとしてはまったく違うクルマとなっているが、それでも基本となるプロポーションが似てくるのは必然だろう。
ウルスにも比肩する存在感と、洗練された走りと、快適性を備えたクーペSUV。そう考えると約1000万円という価格はリーズナブルなのではないか?とも思えてきた。いや、買えるとか買えないではなく、あくまで“相対的”な価格として、という話である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
河西啓介|編集者/モータージャーナリスト
自動車雑誌『NAVI』編集部を経て、出版社ボイス・パブリケーションを設立。『NAVI CARS』『MOTO NAVI』『BICYCLE NAVI』の編集長を務める。現在はフリーランスとして雑誌・ウェブメディアでの原稿執筆のほか、クリエイティブディレクター、ラジオパーソナリティ、テレビコメンテーターなどとしても活動する。
(レスポンス 河西啓介)
日本市場への導入が始まったアウディ『Q8』に乗った。Q8はアウディが“SUVクーペ”と呼ぶ、SUVのユーティリティや悪路走破性を備えつつクーペを思わせるスタイリッシュなデザインに仕立られた、プレミアムかつ“ニッチ”なモデルだ。
SUVクーペは現在、プレミアムカーのセグメントではちょっとしたトレンドになっている。BMWでいえば「Xシリーズ」、メルセデスでいえば「GLクーペ」シリーズなどがそれだ。Q8はアウディがこのカテゴリーに投入した初めてのモデルである。
ベースとなるのはアウディSUVのフラッグシップ『Q7』だ。Q8のボディはQ7より30mm低く、75mm短く、25mm幅広い。つまりQ7をワイド&ロー化したプロポーションなのだが、全長5005mm×全幅1995mm×全高1690mmというボディサイズはいずれにせよ絶対値として“デカい”。サイドミラーを含めると幅は優に2mを超え、コインパーキングに止めたらまず確実にラインからはハミ出す。
とはいえこのセグメントにおいて「サイズがもう少し小さければ……」的な事を言うのはナンセンスだろう。日本より社会的ヒエラルキーが明確な欧米では、この手のクルマを買おうという人はそれに相応しいガレージを持っているものだ。兎にも角にもある程度以上リッチで、細かいことを四の五の言わない人向けのクルマである、ということは前提である。
◆スポーツカーの血統を感じさせる走り
今回はアウディ主催の試乗会で長野駅から白馬までの道のりで試乗したのだが、先に結論めいたことを言ってしまえば、Q8いちばんのセールスポイントであり魅力とは、格好、デザイン、ルックス、つまり“見た目”であると思う。
クルマとしての性能はもちろん「いい」。ユーティリティや使い勝手にだって不満はない。アウディがつくる最新のプレミアムカーなのだから、それは当然だろう。だから見た目に惚れて購入したとしても、「しまった!」と思うようなことはないはずだ(前述のボディサイズのことを除いては)。
エンジンは3リットルV6ターボ・ガソリンエンジンを積む。最高出力は340ps、最大トルクは500Nmだが、味付けとしては下からモリモリと力を出すタイプというよりは、シャーンとある程度回して走らせるのが気持ちいいユニットだ。トランスミッションはトルクコンバーターを介する9速AT。
試乗車はアウディ伝統のクワトロシステム(4WD)と「オールホイールステアリング」と呼ばれる4輪操舵システムを備え、大柄なボディをスイスイと、峠道ではグイグイと走らせる。アウディ曰く、フロントまわりとCピラーの造形には、かつてラリーで活躍したアウディ『クワトロ』のデザインをモチーフとして採り入れたと言うが、なるほど走りはとても快活だ。ゴルフやスキーなどアクティビティに向かう道中の運転も楽しみたい、という人にはドンピシャリだろう。
いっぽうスポーティーではありながらも、快適性は非常に高い。試乗車は「Sライン」仕様でノーマルより大きな22インチタイヤを履いていたが、田舎道を低速で走るときにはそれなりにゴツゴツするものの、幹線道路をコンスタントなスピードで走っている限りはとても滑らかな乗り心地だった。室内の静粛性も高く「バング&オルフセン」のオーディオが奏でる上質なサウンドを楽しみながら走ることができた。
◆『ウルス』と共通のプラットフォーム
じつはQ8に乗った10日ほど後、たまたまランボルギーニ『ウルス』に乗る機会があったのだが、その外観や佇まいにふとQ8との近似性を感じた。Q8にもっとエッジを効かせたのがウルスというか、ウルスをもう少し穏やかにしたらQ8になるというか。言い方は乱暴だが、遠からず通じるテイストを感じたのだ。
でも考えてみればそれも宜なるかな。ウルスとQ8はどちらもVWグループが共用する「MLB」と呼ばれるプラットフォームを使っているのである(さらに言うならポルシェ『カイエン』もベントレー『ベンテイガ』も同じだ)。もちろんシャシー以外はエンジンも足まわりも別物であり、最終的なアウトプットとしてはまったく違うクルマとなっているが、それでも基本となるプロポーションが似てくるのは必然だろう。
ウルスにも比肩する存在感と、洗練された走りと、快適性を備えたクーペSUV。そう考えると約1000万円という価格はリーズナブルなのではないか?とも思えてきた。いや、買えるとか買えないではなく、あくまで“相対的”な価格として、という話である。
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おすすめ度:★★★★
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