【VW ゴルフGTI TCR 新型試乗】このクルマに“エコモード”はいらない…九島辰也

VW ゴルフGTI TCR(写真は海外仕様)
◆ツーリングカーレース直系

TCRは、FIAワールド・ツーリングカー・カップのことで、市販車をベースにしたツーリングカーレースのTCRインターナショナルを前身としている。でもってそこを走るレーシングカーをTCRマシンと呼ぶ。

VW『ゴルフGTI』(Volkswagen Golf)をベースにしたそれを初めて拝んだのは昨年のアスカリ・レース・リゾートだった。ミラノ出身のF1ドライバー、アルベルト・アスカリの名を付けたサーキットだ。

そこで行われたのはGTI祭り。ゴルフGTI、『ポロGTI』、『up!GTI』の新型をはじめ、歴代ゴルフGTIを試乗できるメディア向け試乗会だ。そしてそこにゴルフGTI TCRマシンが飾ってあったのである。

大型のリアウィングとブリストされたフェンダーはまさにレースカー。迫力満点に出来上がっていた。今年10月に鈴鹿サーキットで行われたWTCR日本ラウンドに参戦したから目にした方も多いのではないだろうか。


◆史上最強のGTIと謳われる

前置きが長くなったが、今回試乗したのはその市販版の『ゴルフGTI CTR』となる。史上最強のGTIとされるシロモノだ。エンジンは2リットル直4ターボで最高出力290ps、最大トルク380Nmを発揮する。スタンダードのGTIが230ps、「GTIパフォーマンス」が245psであることを鑑みればこいつがいかに特別であることがわかる。

走り出して感じるのは、アイドリングからのエンジンサウンドで、アクセルの踏み方でそれを自在に扱える。心の中で「おっと!」と顔が綻ぶ瞬間だ。しかもそれはドライブモードを“スポーツ”にすると感動的にドライバーに伝わる。思わずパドルでダウンシフトし、エキゾーストサウンドを周りにアピールしたくなるほど心が弾む。


その意味でいうと、このクルマに“エコモード”はいらないかもしれない。それくらいエッジが効いた仕上がりだ。ご近所の手前、夜の帰宅時はノーマルポジションでいいが、それ以外は“スポーツ”をデフォルトして走って欲しい。


◆ガツンと踏めるブレーキはフィーリングもいい

アクセルにリニアに同調するエンジンサウンドもそうだが、このクルマの真骨頂はブレーキだと思う。これだけの加速を楽しめるのに十分な大型ローターのディスクブレーキが装着される。コーナー手前でガツンと踏めるものだ。しかもフィーリングもいい。きっとこの辺のノウハウはレースからのフィードバックが強いところだろう。

でもって、減速時からのハンドリング、そしてコーナー出口の加速と、一連の動きがとても気持ちいい。フロントに電子式のディファレンシャルロックが付いているので、左右のトルクをしっかり管理してくれる。慣れてくればアクセルワークとハンドリングでうまい具合にそれもコントロールできそうだ。

乗り心地ははっきり言って硬め。バネレートが高いのだろう、腰下から路面のアンジュレーションを伝える振動が発生する。特に低中速域で。まぁ、そこはこのクルマを選ぶのであれば許容すべきポイントともいえる。タイヤは235/35R19のP-zero。いずれにせよ、かなりマニアックなモデルであることは間違いない。限定600台。もうかなり少なくなっているようだから、ご興味のある方はお急ぎを。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

(レスポンス 九島辰也)

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