[ホンダ フィット 新型試乗]選択に迷うほど魅力的なコンパクトカーに成長した…片岡英明
◆フランス車を思わせるキュートなデザイン
革新的なパッケージングと軽快な走りを武器に、Bセグメントのコンパクトカークラスでベンチマーク的な存在に成長したのがホンダの『フィット』だ。独創的なセンタータンクレイアウトを採用した初代フィットは、ボディは小型車サイズなのにワゴンに分類されるほど広いキャビンを実現。ライバルを驚かせた。この優れたパッケージングに磨きをかけ、過去3代のフィットは幅広いユーザー層を獲得することに成功している。
その4代目は、デザインもメカニズムも大きく進化させて登場した。エクステリアは、フランス車を思わせるキュートなデザインだ。3代目はクセの強いデザインだった。新型フィットも個性的なルックスだが、フレンドリーに感じる。3代目は男性的な強さを売りにした。これに対し4代目が狙ったのは女性的な柔らかさと親しみやすさだ。ボディサイズはほとんど変わっていないが、優雅で、立派に見える。
新しいグレード構成には戸惑った。もっとも分かりやすいのは廉価版の「ベーシック」だ。クルマの基本を押さえた「ホーム」はフィットの標準仕様と位置付けられている。スポーティな味わいを強めたのは「ネス」だ。そして新鮮だったのが、アクティブなSUV風味の「クロスター」と高級感を強く打ち出した「リュクス」である。最低地上高を上げたクロスターだけは3ナンバーのワイドボディとした。
◆パンチある加速と高い静粛性のハイブリッド「e:HEV」
最初にステアリングを握ったのは、ハイブリッドシステムを一新した1.5リットルモデルだ。エンジンは1496ccの直列4気筒DOHC・i-VTECで、これに駆動用と発電用、2つのモーターを組み合わせている。『インサイト』などではスポーツハイブリッド-MMDと呼んでいた上級モデル用のシステムだ。フィットでは「e:HEV」とネーミングを変え、搭載している。トランスミッションはツインクラッチDCTに代え、電気式の無段変速機(CVT)を採用した。
アクセルを踏み込むと、1モーター式のi-DCDを採用していた先代よりパンチがあり、冴えた加速を見せる。それもそのはず、モーターは253Nm(25.8kg-m)の最大トルクを発生するのだ。ガソリンエンジンなら2.5リットルクラス並みに豊かなトルクを秘めている。モーターは低回転からフラットで分厚いトルクを発生し、滑らかさも群を抜く。
エンジンで発電を行い、モーターで駆動するシリーズハイブリッドが基本となっているから、一般道の走りはモーターが主役だ。アクセルをグッと踏み込むと力強い加速を見せる。が、荒々しさはなく加速フィールはジェントルだった。
モーターによるEV走行の割合は多くなり、静粛性は大きく向上している。だが、モーターの効率が下がる高速走行などではエンジンだけで駆動を行う。バッテリーが小さいためエンジンがかかることが多くなり、ノイズは高まるが、先代より静粛性は高い。一気に加速したときはステップ変速制御を行うから、ハイブリッド車の弱点だった違和感のあるラバーバンドフィールも影を潜めた。気持ちいい走りを見せ、ドライバビリティも良好だ。
◆燃費=30km/リットルの大台超えも!
気になる燃費は「e:HEV クロスター」で27.2km/リットル(WLTCモード)と発表されている。試乗時間が短かったため燃費計の数値は17km/リットルほどにとどまった。が、高速道路を含め、60kmほど走った「e:HEV ホーム」は郊外の道で30km/リットルの大台を超え、トータルでも27.2km/リットルをマークしている。ちなみに同じステージを走った1.3リットルの「リュクス」は高速道路では20km/リットルを超えたが、トータル燃費は17.8km/リットルにとどまっている。
サスペンションは、先代と同じようにストラットとトーションビームの組み合わせだ。が、ハイブリッド車は16インチタイヤを履き、可変ステアリングギアレシオを採用する。また、「クロスター」は185/60R16タイヤを履き、サスペンションに手を加え、最低地上高を30mmアップした。スポーティな味わいは同じパワートレインの「e:HEV ホーム」に一歩譲る。その理由は、上屋の動きがちょっと大きくなったか、と感じられるからだ。だが、ボディやサスペンションは剛性感が高く、アイポイントも他のフィットより高いから、自然な感覚で気負うことなく運転を楽しむことができた。
もう1台の「ホーム」はコントローラブル。しかもスポーティな味わいだ。クイックな可変ステアリングの採用もあり、身のこなしは軽やか。ワインディングロードでは狙ったラインに正確に乗せることができる。意のままの気持ちいい走りを楽しめたが、乗り心地は1.3リットルモデルやハイブリッドの「クロスター」より硬質と感じる。ハンドリングと乗り心地の妥協点が高く、快適な「クロスター」と比べると突き上げが少し強めかな、と感じられるのだ。
◆1.3リットルガソリンは「脇役」ではない
ガソリンエンジンは1.3リットルの直列4気筒DOHC i-VTEC(可変バルブタイミング&リフト機構)だけに絞っている。トランスミッションは無段変速機のCVTだが、オイルポンプを電動式に変更し、燃費の改善を図った。それほど期待しないでステアリングを握ったが、買い得感は驚くほど高い。動力性能は先代の1.3リットルモデルより高く、パワー感、ドライバビリティともに満足できるレベルにある。
プロトタイプからの進化を大きく感じられたのが1.3リットルモデルだ。エンジンは軽快に回り、CVTも洗練度を高めていた。軽快感、クルージング時の静粛性ともに1.5リットルモデルの必要性を感じさせないほどいい仕上がりである。さすがに登坂路や高速道路では余裕は今一歩と感じるが、街中を中心とした走りでは軽やかな走りを披露した。さすがに加速するとエンジン音が耳につくが、脇役ではなくなっている。
ハンドリングも軽快だ。試乗車はオプション設定の16インチタイヤを履いていたこともあり、素直な動きに磨きがかけられ、コントロールできる領域も広かった。ただし、ウレタン製のステアリングは滑りやかすったし、荒れた路面での乗り心地は引き締まっていると感じられる。が、前方を含めた視界はいいし、車両感覚もつかみやすいなど、ラクに運転できた。
インテリアで好印象を抱いたのは、ブラウンと黒の上質なインテリアの「リュクス」である。走りのバランス感覚が秀でていたのは「e:HEV クロスター」だ。が、1.3リットルモデルでも満足度はすこぶる高い。4代目フィットは選択に迷うほど魅力的なコンパクトカーに成長した。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
(レスポンス 片岡英明)
革新的なパッケージングと軽快な走りを武器に、Bセグメントのコンパクトカークラスでベンチマーク的な存在に成長したのがホンダの『フィット』だ。独創的なセンタータンクレイアウトを採用した初代フィットは、ボディは小型車サイズなのにワゴンに分類されるほど広いキャビンを実現。ライバルを驚かせた。この優れたパッケージングに磨きをかけ、過去3代のフィットは幅広いユーザー層を獲得することに成功している。
その4代目は、デザインもメカニズムも大きく進化させて登場した。エクステリアは、フランス車を思わせるキュートなデザインだ。3代目はクセの強いデザインだった。新型フィットも個性的なルックスだが、フレンドリーに感じる。3代目は男性的な強さを売りにした。これに対し4代目が狙ったのは女性的な柔らかさと親しみやすさだ。ボディサイズはほとんど変わっていないが、優雅で、立派に見える。
新しいグレード構成には戸惑った。もっとも分かりやすいのは廉価版の「ベーシック」だ。クルマの基本を押さえた「ホーム」はフィットの標準仕様と位置付けられている。スポーティな味わいを強めたのは「ネス」だ。そして新鮮だったのが、アクティブなSUV風味の「クロスター」と高級感を強く打ち出した「リュクス」である。最低地上高を上げたクロスターだけは3ナンバーのワイドボディとした。
◆パンチある加速と高い静粛性のハイブリッド「e:HEV」
最初にステアリングを握ったのは、ハイブリッドシステムを一新した1.5リットルモデルだ。エンジンは1496ccの直列4気筒DOHC・i-VTECで、これに駆動用と発電用、2つのモーターを組み合わせている。『インサイト』などではスポーツハイブリッド-MMDと呼んでいた上級モデル用のシステムだ。フィットでは「e:HEV」とネーミングを変え、搭載している。トランスミッションはツインクラッチDCTに代え、電気式の無段変速機(CVT)を採用した。
アクセルを踏み込むと、1モーター式のi-DCDを採用していた先代よりパンチがあり、冴えた加速を見せる。それもそのはず、モーターは253Nm(25.8kg-m)の最大トルクを発生するのだ。ガソリンエンジンなら2.5リットルクラス並みに豊かなトルクを秘めている。モーターは低回転からフラットで分厚いトルクを発生し、滑らかさも群を抜く。
エンジンで発電を行い、モーターで駆動するシリーズハイブリッドが基本となっているから、一般道の走りはモーターが主役だ。アクセルをグッと踏み込むと力強い加速を見せる。が、荒々しさはなく加速フィールはジェントルだった。
モーターによるEV走行の割合は多くなり、静粛性は大きく向上している。だが、モーターの効率が下がる高速走行などではエンジンだけで駆動を行う。バッテリーが小さいためエンジンがかかることが多くなり、ノイズは高まるが、先代より静粛性は高い。一気に加速したときはステップ変速制御を行うから、ハイブリッド車の弱点だった違和感のあるラバーバンドフィールも影を潜めた。気持ちいい走りを見せ、ドライバビリティも良好だ。
◆燃費=30km/リットルの大台超えも!
気になる燃費は「e:HEV クロスター」で27.2km/リットル(WLTCモード)と発表されている。試乗時間が短かったため燃費計の数値は17km/リットルほどにとどまった。が、高速道路を含め、60kmほど走った「e:HEV ホーム」は郊外の道で30km/リットルの大台を超え、トータルでも27.2km/リットルをマークしている。ちなみに同じステージを走った1.3リットルの「リュクス」は高速道路では20km/リットルを超えたが、トータル燃費は17.8km/リットルにとどまっている。
サスペンションは、先代と同じようにストラットとトーションビームの組み合わせだ。が、ハイブリッド車は16インチタイヤを履き、可変ステアリングギアレシオを採用する。また、「クロスター」は185/60R16タイヤを履き、サスペンションに手を加え、最低地上高を30mmアップした。スポーティな味わいは同じパワートレインの「e:HEV ホーム」に一歩譲る。その理由は、上屋の動きがちょっと大きくなったか、と感じられるからだ。だが、ボディやサスペンションは剛性感が高く、アイポイントも他のフィットより高いから、自然な感覚で気負うことなく運転を楽しむことができた。
もう1台の「ホーム」はコントローラブル。しかもスポーティな味わいだ。クイックな可変ステアリングの採用もあり、身のこなしは軽やか。ワインディングロードでは狙ったラインに正確に乗せることができる。意のままの気持ちいい走りを楽しめたが、乗り心地は1.3リットルモデルやハイブリッドの「クロスター」より硬質と感じる。ハンドリングと乗り心地の妥協点が高く、快適な「クロスター」と比べると突き上げが少し強めかな、と感じられるのだ。
◆1.3リットルガソリンは「脇役」ではない
ガソリンエンジンは1.3リットルの直列4気筒DOHC i-VTEC(可変バルブタイミング&リフト機構)だけに絞っている。トランスミッションは無段変速機のCVTだが、オイルポンプを電動式に変更し、燃費の改善を図った。それほど期待しないでステアリングを握ったが、買い得感は驚くほど高い。動力性能は先代の1.3リットルモデルより高く、パワー感、ドライバビリティともに満足できるレベルにある。
プロトタイプからの進化を大きく感じられたのが1.3リットルモデルだ。エンジンは軽快に回り、CVTも洗練度を高めていた。軽快感、クルージング時の静粛性ともに1.5リットルモデルの必要性を感じさせないほどいい仕上がりである。さすがに登坂路や高速道路では余裕は今一歩と感じるが、街中を中心とした走りでは軽やかな走りを披露した。さすがに加速するとエンジン音が耳につくが、脇役ではなくなっている。
ハンドリングも軽快だ。試乗車はオプション設定の16インチタイヤを履いていたこともあり、素直な動きに磨きがかけられ、コントロールできる領域も広かった。ただし、ウレタン製のステアリングは滑りやかすったし、荒れた路面での乗り心地は引き締まっていると感じられる。が、前方を含めた視界はいいし、車両感覚もつかみやすいなど、ラクに運転できた。
インテリアで好印象を抱いたのは、ブラウンと黒の上質なインテリアの「リュクス」である。走りのバランス感覚が秀でていたのは「e:HEV クロスター」だ。が、1.3リットルモデルでも満足度はすこぶる高い。4代目フィットは選択に迷うほど魅力的なコンパクトカーに成長した。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
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