日産 キックス 新型試乗 クルマらしさが楽しめる“自然派”コンパクトSUVだ…島崎七生人

日産 キックス
◆3年ぶりの新型車は「e-POWER」専用SUV

ここ最近、内外のコンパクトSUVの新型車が相次いで登場している。その中で日産『キックス』は、当初ブラジルで登場したのが2016年のことであり、以降、中国、北米、カナダ、台湾などで順次導入。

今年、生産工場のあるタイ、アセアン諸国とともに、マイナーチェンジモデルがいよいよ日本市場にも投入された。

グローバルではマイナーチェンジ……といっても国内ではおよそ3年ぶりの“新型車”であり、もっといえばe-POWER専用車としては初。『ノート』『セレナ』の両e-POWER搭載車とともに、即戦力として販売の現場で力を発揮してくれそう……そんな手応えを感じる。


◆馴染みやすく小気味よいキックスの個性

個人的には欧州市場向けの2代目『ジューク』のクールなスタイリッシュさにも惹かれるが、『キックス』はずっとわかりやすいスタイリングにまとめられたと言うべきか。“ダブルVモーショングリル”が与えられた新しい顔つき、キュッと切れ上がったリヤなど、アクの強さはそこそこに、馴染みやすく小気味よい個性が表現されている。

インテリアも気負わずに、サラリとモダンにまとめられた。新形状の電制シフトレバーは扱いやすく、“半アナログ”のメーターも、グラフィックの違いのせいか『リーフ』のそれより雰囲気に溶け込んでいる。

試乗車は印象的な強いオレンジとブラックの2トーン仕立てだったが、オーソドックスかもしれないが、オレンジの部分を濃いめのタンやダークブラウンにした組み合わせで、コントラストを少し落として落ち着き感を出してみたコーディネーションだとどうか?とも興味をもった。

運転席はコンパクトなボディとの一体感が感じられるもので、後席は背筋を立てた着座姿勢ながら、頭上、足元ともに十分な余裕。ラゲッジスペースは深さ、奥行きとも十分で、後席を倒せば、段差は生じるものの、さらにスペースが拡張できる。


◆“クルマらしい素性”がポイントの自然な走り

実車を走らせた印象は“かなり運転しやすい”だった。注目のe-POWERは同じシステムの『ノート』に対し出力を約20%アップ(バッテリー+14%、エンジン+5%)させ、50~60km/h付近の加速性を向上させているほか、サスペンションメンバーも変更しグレードアップ、操縦安定性も高めたという。なので「より遠出ができるe-POWER車にした」(日産)のだというが、実際にも市街地から高速走行まで、自然でストレスのない走りを見せてくれる。

そのポイントのひとつが極力エンジンを回さない新しい制御で、「マナーモード」を選べば低速時はほどんどエンジンを休止させてモーター走行を実行してくれるし、高速でよりパワーが必要になった場合には、黒子のような控えめさでエンジンが入る。また独特のワンペダルドライブも、加減速のプロセスがよりスムースに実行されるようになり、快適性を損なわない。全体としてパワーマネージメントが洗練されていることが実感できる。

車両重量は1350kgあり決して軽量なほうではないが、強化された足回りとのバランスが適正で、コーナリング時の安定感、ハンドリングは、楽しめるレベルにある。この“クルマらしい素性”もポイント。乗り心地も市街地、高速を通じてよい。

ロードノイズは、遮音、静粛性への手当てがされてたとのことだが、路面により(エンジン音にマスキングされないせいもあり)気になる場面があり、それは、ひと頃のドイツ車のような、足回りとボディがシッカリしているからこそロードノイズが伝わってくる……そんな感じ。音・振動の低いタイヤに履き替えれば、より日本のユーザーの感覚に合うレベルにできるのでは?とイメージした。

もちろんこのクラスでも「ProPILOT」が搭載される点は心強く、安心して走らせられるクルマ……そう感じた。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

(レスポンス 島崎七生人)

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