トヨタ ヤリス 新型試乗 高価でもクルマとしての魅力はハイブリッドに軍配…中村孝仁
◆「★5つ」のハイブリッドに対しガソリン車は
Bセグメントが群雄割拠して、多くのメーカーが優秀なモデルを投入していることは以前にも書いた。その中でトヨタ『ヤリス』は少なくともハイブリッド車に関する限り、★5つの燃費性能や運動性能を見せた。
ガソリンモデルにも同様なイメージを期待していたのだが、残念ながらそうはいかなかった。初めに断っておくが、ヤリス・ハイブリッドはBセグメントでもずば抜けた燃費性能を持つし、やはり抜きんでた運動性能を持っていた。それと比べてガソリン1.5リットルエンジンを搭載した今回の試乗車は、相変わらず優れた運動性能は持つものの、燃費性能に関しては想像していたよりもはるかに低いレベルの性能にとどまった。
そもそもBセグメントのハッチバック車に対してユーザーが何を求めるかは、ユーザー個々の使い方にもよるのだろうが、多くは軽快な走行性能や2人乗車時の快適性、それにある程度の燃費性能のような気がする。
相変わらず能動的な動きをするという点では★5つだ。ここにほれ込んでクルマを買うなら問題はないと思う。一方で燃費性能に関しては 27.2km/リットルというとてつもない性能を叩き出したハイブリッドとは対照的に、たった12.9km/リットルにとどまった。
試乗している間気になったことは、アイドリングストップをしないこと。今回は敢えてこの機構をつけていないということだが、確かにバッテリーにかかる負荷や長期的な燃費を考慮すると、ついていない方がユーザーにはメリットが大きいらしい。だが、少なくとも短期的な燃費を見る限りそうは言っていられない状況を生み出したことも事実である。どちらが正しい判断であったかは読者個々に任せるが、個人的には付けておいて欲しかったと思う。
◆ブレーキ、エンジン音、走行モード、乗り心地
ハイブリッド車との比較で話をすると、まずブレーキのフィーリングは遥かにこちらのフィーリングが良く、踏力に対する自然さが際立っていた。どうも回生ブレーキのコントロール性には難があるように感じる。
1.5リットルの3気筒エンジンは性能的にはかなり高いものを持っていると思うが、正直に言えば結構やかましい。アイドリングこそ静かで、微振動は来るものの音に関しては何の問題もないのだが、信号待ちからの発進などでスタートしたらそのエンジンノイズは見事なほど確実に室内に侵入してくる。特にパワーモードを選択した時はエンジン回転を高く保つように設定されているから、その度合いも高くなる。
ドライブモードはエコ、ノーマル、それにパワーの3つが選べる。実際に使ってみたが東京の市街地走行で一番気に入ったのはエコモード。力こそないが発進が非常にスムーズで且つ低回転でエンジンを回しながら加速してくれるのでノイジーな印象もなく快適である。
ノーマルはどちらかと言えば走りの質がパワーモード寄りで、加速感がぐっと増してくれる。ただ、パワーモード共々、渋滞時で前車が発進した際にアクセルを踏んでこちらが発進するとすぐに前車に接近しアクセルを戻す、そして再び加速といったような状況になると、クルマのギクシャク感が出てしまう。
乗り心地に関しては、まあ中庸といったところだろう。乗り心地に関してはホンダ『フィット』が国産のこのセグメントではベストだと思う。
◆高価でもハイブリッドに魅力
試乗車の価格はオプション込みで254万4200円。オプション代が61万6000円とやはりかなり高額。それにどれもこれも出来れば装備しておきたいものばかりで、この価格はプジョー『208アリュール』にほぼ匹敵する。ただしあちらもナビやらETCなど必需品を取り付けると結局は300万円近い値段になるから依然として輸入車との間には価格差があるが、だいぶ縮まった印象だ。
このクルマでユニークだと思ったのはメカニカルなシートメモリー機構。一度自分のポジションに合わせてシートを後ろにずらしても、このレバーで調節すると再び元に戻ってくれる。簡単だが特に小柄なドライバーにとっては乗降の助けになる。
というわけで、マニュアルミッション車も用意されていて、それをチョイスするなら話は別だが、CVTのヤリスでハイブリッドとガソリンを比較した場合、高価ではあるが遥かにハイブリッド車に魅力を感じることがわかった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
Bセグメントが群雄割拠して、多くのメーカーが優秀なモデルを投入していることは以前にも書いた。その中でトヨタ『ヤリス』は少なくともハイブリッド車に関する限り、★5つの燃費性能や運動性能を見せた。
ガソリンモデルにも同様なイメージを期待していたのだが、残念ながらそうはいかなかった。初めに断っておくが、ヤリス・ハイブリッドはBセグメントでもずば抜けた燃費性能を持つし、やはり抜きんでた運動性能を持っていた。それと比べてガソリン1.5リットルエンジンを搭載した今回の試乗車は、相変わらず優れた運動性能は持つものの、燃費性能に関しては想像していたよりもはるかに低いレベルの性能にとどまった。
そもそもBセグメントのハッチバック車に対してユーザーが何を求めるかは、ユーザー個々の使い方にもよるのだろうが、多くは軽快な走行性能や2人乗車時の快適性、それにある程度の燃費性能のような気がする。
相変わらず能動的な動きをするという点では★5つだ。ここにほれ込んでクルマを買うなら問題はないと思う。一方で燃費性能に関しては 27.2km/リットルというとてつもない性能を叩き出したハイブリッドとは対照的に、たった12.9km/リットルにとどまった。
試乗している間気になったことは、アイドリングストップをしないこと。今回は敢えてこの機構をつけていないということだが、確かにバッテリーにかかる負荷や長期的な燃費を考慮すると、ついていない方がユーザーにはメリットが大きいらしい。だが、少なくとも短期的な燃費を見る限りそうは言っていられない状況を生み出したことも事実である。どちらが正しい判断であったかは読者個々に任せるが、個人的には付けておいて欲しかったと思う。
◆ブレーキ、エンジン音、走行モード、乗り心地
ハイブリッド車との比較で話をすると、まずブレーキのフィーリングは遥かにこちらのフィーリングが良く、踏力に対する自然さが際立っていた。どうも回生ブレーキのコントロール性には難があるように感じる。
1.5リットルの3気筒エンジンは性能的にはかなり高いものを持っていると思うが、正直に言えば結構やかましい。アイドリングこそ静かで、微振動は来るものの音に関しては何の問題もないのだが、信号待ちからの発進などでスタートしたらそのエンジンノイズは見事なほど確実に室内に侵入してくる。特にパワーモードを選択した時はエンジン回転を高く保つように設定されているから、その度合いも高くなる。
ドライブモードはエコ、ノーマル、それにパワーの3つが選べる。実際に使ってみたが東京の市街地走行で一番気に入ったのはエコモード。力こそないが発進が非常にスムーズで且つ低回転でエンジンを回しながら加速してくれるのでノイジーな印象もなく快適である。
ノーマルはどちらかと言えば走りの質がパワーモード寄りで、加速感がぐっと増してくれる。ただ、パワーモード共々、渋滞時で前車が発進した際にアクセルを踏んでこちらが発進するとすぐに前車に接近しアクセルを戻す、そして再び加速といったような状況になると、クルマのギクシャク感が出てしまう。
乗り心地に関しては、まあ中庸といったところだろう。乗り心地に関してはホンダ『フィット』が国産のこのセグメントではベストだと思う。
◆高価でもハイブリッドに魅力
試乗車の価格はオプション込みで254万4200円。オプション代が61万6000円とやはりかなり高額。それにどれもこれも出来れば装備しておきたいものばかりで、この価格はプジョー『208アリュール』にほぼ匹敵する。ただしあちらもナビやらETCなど必需品を取り付けると結局は300万円近い値段になるから依然として輸入車との間には価格差があるが、だいぶ縮まった印象だ。
このクルマでユニークだと思ったのはメカニカルなシートメモリー機構。一度自分のポジションに合わせてシートを後ろにずらしても、このレバーで調節すると再び元に戻ってくれる。簡単だが特に小柄なドライバーにとっては乗降の助けになる。
というわけで、マニュアルミッション車も用意されていて、それをチョイスするなら話は別だが、CVTのヤリスでハイブリッドとガソリンを比較した場合、高価ではあるが遥かにハイブリッド車に魅力を感じることがわかった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
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