マツダ MX-30 試乗 安心感のある走りに、上質なムードを加えたような乗り味…片岡英明
マツダ『MX-30』は2019年10月の東京モーターショーでベールを脱いだ。マツダ初のバッテリーEV(電気自動車)として注目を集めたが、2020年7月末にはマイルドハイブリッドの存在が明らかになったのである。発売前に2度の衝撃を与えたMX-30が正式発表され、試乗する機会を与えられた。マルチソリューション戦略を採るクロスオーバーSUVのMX-30は、これまでの「魂動(こどう)」デザインとは違うデザインテイストを採用し、ドアは観音開きのフリースタイルドアだ。インテリアも開放感に包まれる新鮮さを感じさせる。
◆インテリアは上質なセダン感覚
ドアを開けると、最近のマツダ車に通じる質の高いインテリアが迎え入れてくれた。インパネは水平基調で、開放的だ。ドライバーの前に7インチのTFT液晶マルチスピードメーターがあり、その左側には8.8インチの横長ディスプレイとフローティングタイプのセンターコンソールを配している。SUV的なルックスだが、インテリアはこだわったコーディネートもあり、上質なセダン感覚だ。ドライバーだけでなく同乗者もリラックスした気分でドライブを楽しめるだろう。
シートのファブリックや新たに採用したコルク素材のセンターコンソールなどは見栄えだけでなく、触感もいい。前方に配置したATのシフターとコマンドコントロールは自然な腕の角度で操作できた。ただし、6速ATのシフターは、操作ロジックが他のATと違いPの位置がR(リバース)の右側にある。そのため走行後にPレンジに戻すとき、一般的なATに慣れていると戸惑い、気になった。
着座位置は、ちょっと高めだ。というか、丁度いい高さだから小柄な人でも乗り降りしやすいし、鼻先まで見えるので車両感覚がつかみやすい。フロントシートはサイズも申し分なく、座り心地もよかった。ボディサイズは『CX-30』とほとんど同じなのだが、大きく立派に見える。しかも実際に運転してみると、大きさを感じさせないのがMX-30のいいところだ。グリップ感のいい本革ステアリングや適切な配置のペダルも、マツダ車の美点を受け継いでいる。
◆伸びやかなパワーフィールが気持ちいい「e-SKYACTIV G」
パワーユニットは、「e-SKYACTIV G」と呼ぶマイルドハイブリッドだ。排気量1997ccの直列4気筒DOHCエンジンをモーターがアシストする。最高出力は115kW(156ps)/6000rpm、最大トルクは199N・m(20.3kg-m)/4000rpmだ。モーター出力は5.1kW(6.9ps)/1800rpm、最大トルクは49N・m(5.0kg-m)/100rpmだからグッとくる力強い加速は望めないが、伸びやかなパワーフィールが気持ちいい。上品な加速感で、気ぜわしいところがないが、速い流れに苦もなく乗っていけた。この自然体がMX-30の魅力であり、特徴なのだろう。
その気になれば6000回転まで淀みなく回るし、実用域のトルクも不満のないものだった。アイドリングストップも違和感なく作動し、作動音を含め、洗練度が高められている。100km/hクルージングは2WD、4WDともに2250回転くらいだ。が、追い越しするときもトルクは軽やかに盛り上がる。また、加速時に放つエンジン音も耳に心地よかった。もちろん、クルージング時の静粛性は、他のマツダ車と比べても上々の部類に入る。高速走行では風切り音やロードノイズの遮断も上手だ。
WLTC燃費はFF方式の2WDモデルが15.6km/L、4WDモデルは15.1km/Lと発表されている。撮影を含めた30kmほどの試乗で、どちらも燃費は13km/L前後だった。が、高速道路を主体とした走りなら15km/Lくらいまで燃費を伸ばせるだろう。レギュラーガソリン仕様なのも強みのひとつになる。
◆ドライバーが主人公を演じることができる
サスペンションは『マツダ3』やCX-30などと基本的に同じだ。フロントはマクファーリンストラット、リアはトーションビームで、制御技術、G-ベタリング コントロール +(GVC Plus)も搭載した。電子制御オンデマンド式の4WDシステムは、通常の走りで4輪駆動を意識させることはない。エンジンと同じように自然体だ。CX-30はスポーティな乗り味だが、MX-30はしっとりとした大人の味わいがある。ステアリングを切ると意のままにクルマが向きを変えるし、ロールしていくときも自然な感覚だ。
安心感のある走りはマツダ車に共通するものだが、それに上質なムードを加えたような乗り味になっている。素直にクルマが動きに加え、しなやかさや優雅さを感じさせるのだ。ダイレクト感を上手に包み込んだ気持ちいい操舵フィールや軽やかすぎない身のこなしなど、すべてが理にかなった動きを見せてくれた。荷重移動は速やかだから旋回しやすいが、クルマに乗せられている感がなく、ドライバーが主人公を演じることができる。だからいい気分で運転できるし、遠くへ行ってみたいと思わせる。
乗り心地もマツダ3やCX-30より上質と感じられた。40km/h程度できつい段差を駆け抜けたときはリアがバタつくシーンも見られたが、この領域を除けば穏やかな乗り心地だ。後席でもガツンとしたショックに悩まされることはない。足の動きはしなやかで、ストロークたっぷりと思わせるサスペンションの動きが心地よい。身のこなしの軽快感はFFの2WDが上回っている。だが、4WDのしっとりとした重厚感も捨てがたい。クルマの性格にあっているのは4WDモデルか!?
開発主査の竹内都美子さんは「MX-30にはブランドの幅を広げていく使命がある」と話す。これまではマツダと縁のなかったユーザーも取り込みたい、とも語っている。MX-30は先進安全装備を充実させただけでなく、その作動も洗練度を高めた。それでいて、スタート価格はバーゲンプライスの242万円だ。モノグレードだが、パッケージオプションが豊富に用意されている。これを付けてもリーズナブルな価格設定だ。手の届きやすい価格で登場したMX-30は、これまでマツダ車には興味を持たなかった人たちにも選んでもらえる魅力的なクルマに仕上がっている。第1弾マイルドハイブリッド車に続くバッテリーEVなどの第2弾の発表が楽しみになってきた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
◆インテリアは上質なセダン感覚
ドアを開けると、最近のマツダ車に通じる質の高いインテリアが迎え入れてくれた。インパネは水平基調で、開放的だ。ドライバーの前に7インチのTFT液晶マルチスピードメーターがあり、その左側には8.8インチの横長ディスプレイとフローティングタイプのセンターコンソールを配している。SUV的なルックスだが、インテリアはこだわったコーディネートもあり、上質なセダン感覚だ。ドライバーだけでなく同乗者もリラックスした気分でドライブを楽しめるだろう。
シートのファブリックや新たに採用したコルク素材のセンターコンソールなどは見栄えだけでなく、触感もいい。前方に配置したATのシフターとコマンドコントロールは自然な腕の角度で操作できた。ただし、6速ATのシフターは、操作ロジックが他のATと違いPの位置がR(リバース)の右側にある。そのため走行後にPレンジに戻すとき、一般的なATに慣れていると戸惑い、気になった。
着座位置は、ちょっと高めだ。というか、丁度いい高さだから小柄な人でも乗り降りしやすいし、鼻先まで見えるので車両感覚がつかみやすい。フロントシートはサイズも申し分なく、座り心地もよかった。ボディサイズは『CX-30』とほとんど同じなのだが、大きく立派に見える。しかも実際に運転してみると、大きさを感じさせないのがMX-30のいいところだ。グリップ感のいい本革ステアリングや適切な配置のペダルも、マツダ車の美点を受け継いでいる。
◆伸びやかなパワーフィールが気持ちいい「e-SKYACTIV G」
パワーユニットは、「e-SKYACTIV G」と呼ぶマイルドハイブリッドだ。排気量1997ccの直列4気筒DOHCエンジンをモーターがアシストする。最高出力は115kW(156ps)/6000rpm、最大トルクは199N・m(20.3kg-m)/4000rpmだ。モーター出力は5.1kW(6.9ps)/1800rpm、最大トルクは49N・m(5.0kg-m)/100rpmだからグッとくる力強い加速は望めないが、伸びやかなパワーフィールが気持ちいい。上品な加速感で、気ぜわしいところがないが、速い流れに苦もなく乗っていけた。この自然体がMX-30の魅力であり、特徴なのだろう。
その気になれば6000回転まで淀みなく回るし、実用域のトルクも不満のないものだった。アイドリングストップも違和感なく作動し、作動音を含め、洗練度が高められている。100km/hクルージングは2WD、4WDともに2250回転くらいだ。が、追い越しするときもトルクは軽やかに盛り上がる。また、加速時に放つエンジン音も耳に心地よかった。もちろん、クルージング時の静粛性は、他のマツダ車と比べても上々の部類に入る。高速走行では風切り音やロードノイズの遮断も上手だ。
WLTC燃費はFF方式の2WDモデルが15.6km/L、4WDモデルは15.1km/Lと発表されている。撮影を含めた30kmほどの試乗で、どちらも燃費は13km/L前後だった。が、高速道路を主体とした走りなら15km/Lくらいまで燃費を伸ばせるだろう。レギュラーガソリン仕様なのも強みのひとつになる。
◆ドライバーが主人公を演じることができる
サスペンションは『マツダ3』やCX-30などと基本的に同じだ。フロントはマクファーリンストラット、リアはトーションビームで、制御技術、G-ベタリング コントロール +(GVC Plus)も搭載した。電子制御オンデマンド式の4WDシステムは、通常の走りで4輪駆動を意識させることはない。エンジンと同じように自然体だ。CX-30はスポーティな乗り味だが、MX-30はしっとりとした大人の味わいがある。ステアリングを切ると意のままにクルマが向きを変えるし、ロールしていくときも自然な感覚だ。
安心感のある走りはマツダ車に共通するものだが、それに上質なムードを加えたような乗り味になっている。素直にクルマが動きに加え、しなやかさや優雅さを感じさせるのだ。ダイレクト感を上手に包み込んだ気持ちいい操舵フィールや軽やかすぎない身のこなしなど、すべてが理にかなった動きを見せてくれた。荷重移動は速やかだから旋回しやすいが、クルマに乗せられている感がなく、ドライバーが主人公を演じることができる。だからいい気分で運転できるし、遠くへ行ってみたいと思わせる。
乗り心地もマツダ3やCX-30より上質と感じられた。40km/h程度できつい段差を駆け抜けたときはリアがバタつくシーンも見られたが、この領域を除けば穏やかな乗り心地だ。後席でもガツンとしたショックに悩まされることはない。足の動きはしなやかで、ストロークたっぷりと思わせるサスペンションの動きが心地よい。身のこなしの軽快感はFFの2WDが上回っている。だが、4WDのしっとりとした重厚感も捨てがたい。クルマの性格にあっているのは4WDモデルか!?
開発主査の竹内都美子さんは「MX-30にはブランドの幅を広げていく使命がある」と話す。これまではマツダと縁のなかったユーザーも取り込みたい、とも語っている。MX-30は先進安全装備を充実させただけでなく、その作動も洗練度を高めた。それでいて、スタート価格はバーゲンプライスの242万円だ。モノグレードだが、パッケージオプションが豊富に用意されている。これを付けてもリーズナブルな価格設定だ。手の届きやすい価格で登場したMX-30は、これまでマツダ車には興味を持たなかった人たちにも選んでもらえる魅力的なクルマに仕上がっている。第1弾マイルドハイブリッド車に続くバッテリーEVなどの第2弾の発表が楽しみになってきた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
最新ニュース
-
-
日産『ノートオーラ』、新グレード「AUTECH SPORTS SPEC」登場…パフォーマンスダンパーをヤマハと共同開発
2024.12.20
-
-
-
トヨタ『bZ4X』、最大6000ドル価格引き下げ…EV初の「ナイトシェード」も設定
2024.12.20
-
-
-
トムス、アルミ削り出し鍛造プレミアムホイール「TWF03」に60系『プリウス』サイズを追加
2024.12.20
-
-
-
トヨタ『タコマ』のオフロード性能さらにアップ! 冒険志向の「トレイルハンター」2025年モデルに
2024.12.19
-
-
-
佐藤琢磨が往年のホンダF1で走行、エンジン始動イベントも…東京オートサロン2025
2024.12.19
-
-
-
レクサス『LC500』が一部改良、床下ブレース採用でボディ剛性を向上…1488万円から
2024.12.19
-
-
-
「ネーミング通りの雰囲気」トヨタの新型電動SUV『アーバンクルーザー』発表に、日本のファンも注目
2024.12.19
-
最新ニュース
-
-
日産『ノートオーラ』、新グレード「AUTECH SPORTS SPEC」登場…パフォーマンスダンパーをヤマハと共同開発
2024.12.20
-
-
-
トヨタ『bZ4X』、最大6000ドル価格引き下げ…EV初の「ナイトシェード」も設定
2024.12.20
-
-
-
トムス、アルミ削り出し鍛造プレミアムホイール「TWF03」に60系『プリウス』サイズを追加
2024.12.20
-
-
-
トヨタ『タコマ』のオフロード性能さらにアップ! 冒険志向の「トレイルハンター」2025年モデルに
2024.12.19
-
-
-
佐藤琢磨が往年のホンダF1で走行、エンジン始動イベントも…東京オートサロン2025
2024.12.19
-
-
-
レクサス『LC500』が一部改良、床下ブレース採用でボディ剛性を向上…1488万円から
2024.12.19
-
MORIZO on the Road