トヨタ MIRAI 新型試乗 水素を燃料とする以外は別物だ…九島辰也
◆高級FRスポーツセダンとなったMIRAI
トヨタの水素燃料電池車『MIRAI(にミライ)』がモデルチェンジした。FFパッケージングからFRになりディメンションも大きく変わったのだからまさにフルモデルチェンジである。というか、ここまで大きく変更されれば違うクルマとも言えるだろう。水素を燃料とする以外は別物だ。
その燃料となる水素だが、今回はそれを蓄えるタンクから再設計され、レイアウトも見直された。2本から3本へと本数と総容量を増やすことで、航続距離をアップさせる作戦だ。
ちなみにだが、恐ろしいことにトヨタ自動車はこのタンクから自分たちで設計している。自らの手でカタチ、大きさ、素材を吟味しているのだ。ハードウェアにブラックボックスを作らない彼らの方針は徹底している。
新しいFRパッケージングはレクサスが採用しているGA-Lプラットフォームとなる。『LS』や『LC』に使われるものだ。サイズアップとRWDになったことでハードウェアのレイアウトはこれまで以上に自由になった。と同時に、車格が上がったのを生かし、ミライは高級車へと路線変更する。そう、新型ミライは従来型とはクラスの異なる高級FRスポーツセダンとなったのだ。
◆19/20インチの大径タイヤを履く理由
では実際に走らせた印象をお届けしよう。グレードは“Z”と“G エグゼクティブパッケージ”で、それを富士スピードウェイのショートサーキットで走らせた。試乗は昨年12月の発売前だったので、未登録車でのテストドライブというわけだ。グレードは標準装備の違いで、タイヤは前者が245/45R20、後者が235/55R19を履いていた。あらためていうまでもないが、パワーソースはひとつである。
面白いのは、どのグレードも19か20インチの大径タイヤを履いていること。それには2つ理由があって、ひとつは走りのパフォーマンスの向上、もうひとつは最低地上高を稼ぐという役目を持つ。水素タンクを極限まで低く積むため、大きな外径のタイヤでそのスペースを確保しようというアイデアだ。
スタートしてまず思ったのは、とにかく速いこと。EVらしい太いトルクが瞬時に立ち上がりクルマをグイッと加速する。どの速度域からもそうで、中間加速も、フルブレーキング後の再加速もグングンとクルマを前へ押し出す。もちろん、繊細なアクセルワークに対する加減速も問題なく、丁寧にボディコントロールすることは可能だ。ただ、今回はサーキット走行ということで、ついついアクセルワークが激しくなったのは否めない。
◆コーナリングの鋭さが味わえる
そんな走りを味付けするのがドライブモードであるが、今回はほとんど“スポーツ”で走っていたことを付け加えよう。その他のモードは公道試乗の機会で味わってみたいと思う。走りの特徴は他にもある。コーナリングの鋭さだ。ステアリング操作に対しクイックに反応してボディをクルッと回す。
今回はウェットだったので電子デバイスが早めにアンダーステアを予想して内側のタイヤにブレーキをかける操作を行ったが、それでも基本性能としてのスタビリティの高さは感じられた。ボディ剛性が高いこととお金のかかった前後マルチリンクサスペンションが慣性モーメントをうまくいなしてくれる。
最後に乗り心地だが、今回は終始硬く感じられた。場所が場所だけにそれでいいのかも知れない。ホイールも大きいし。後は公道へ乗り出した時、“スポーツ”モード以外でどれだけ快適に走れるかというのがポイントになるだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社 刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社 刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。
トヨタの水素燃料電池車『MIRAI(にミライ)』がモデルチェンジした。FFパッケージングからFRになりディメンションも大きく変わったのだからまさにフルモデルチェンジである。というか、ここまで大きく変更されれば違うクルマとも言えるだろう。水素を燃料とする以外は別物だ。
その燃料となる水素だが、今回はそれを蓄えるタンクから再設計され、レイアウトも見直された。2本から3本へと本数と総容量を増やすことで、航続距離をアップさせる作戦だ。
ちなみにだが、恐ろしいことにトヨタ自動車はこのタンクから自分たちで設計している。自らの手でカタチ、大きさ、素材を吟味しているのだ。ハードウェアにブラックボックスを作らない彼らの方針は徹底している。
新しいFRパッケージングはレクサスが採用しているGA-Lプラットフォームとなる。『LS』や『LC』に使われるものだ。サイズアップとRWDになったことでハードウェアのレイアウトはこれまで以上に自由になった。と同時に、車格が上がったのを生かし、ミライは高級車へと路線変更する。そう、新型ミライは従来型とはクラスの異なる高級FRスポーツセダンとなったのだ。
◆19/20インチの大径タイヤを履く理由
では実際に走らせた印象をお届けしよう。グレードは“Z”と“G エグゼクティブパッケージ”で、それを富士スピードウェイのショートサーキットで走らせた。試乗は昨年12月の発売前だったので、未登録車でのテストドライブというわけだ。グレードは標準装備の違いで、タイヤは前者が245/45R20、後者が235/55R19を履いていた。あらためていうまでもないが、パワーソースはひとつである。
面白いのは、どのグレードも19か20インチの大径タイヤを履いていること。それには2つ理由があって、ひとつは走りのパフォーマンスの向上、もうひとつは最低地上高を稼ぐという役目を持つ。水素タンクを極限まで低く積むため、大きな外径のタイヤでそのスペースを確保しようというアイデアだ。
スタートしてまず思ったのは、とにかく速いこと。EVらしい太いトルクが瞬時に立ち上がりクルマをグイッと加速する。どの速度域からもそうで、中間加速も、フルブレーキング後の再加速もグングンとクルマを前へ押し出す。もちろん、繊細なアクセルワークに対する加減速も問題なく、丁寧にボディコントロールすることは可能だ。ただ、今回はサーキット走行ということで、ついついアクセルワークが激しくなったのは否めない。
◆コーナリングの鋭さが味わえる
そんな走りを味付けするのがドライブモードであるが、今回はほとんど“スポーツ”で走っていたことを付け加えよう。その他のモードは公道試乗の機会で味わってみたいと思う。走りの特徴は他にもある。コーナリングの鋭さだ。ステアリング操作に対しクイックに反応してボディをクルッと回す。
今回はウェットだったので電子デバイスが早めにアンダーステアを予想して内側のタイヤにブレーキをかける操作を行ったが、それでも基本性能としてのスタビリティの高さは感じられた。ボディ剛性が高いこととお金のかかった前後マルチリンクサスペンションが慣性モーメントをうまくいなしてくれる。
最後に乗り心地だが、今回は終始硬く感じられた。場所が場所だけにそれでいいのかも知れない。ホイールも大きいし。後は公道へ乗り出した時、“スポーツ”モード以外でどれだけ快適に走れるかというのがポイントになるだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社 刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社 刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。
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