【レクサス NX 新型試乗】レクサス初のPHEV「NX450h+」は“買い”なのか?…野口優
実に7年ぶりのフルモデルチェンジとなったレクサス『NX』。2014年にデビューした初代は世界95か国で累計100万台を記録するという大ヒット作となっただけに二代目に対する期待は大きく、その登場を待ち望んでいた人も多いはず。
特に今回は、レクサスとしては初となる新開発のプラグインハイブリッドシステム(以下、PHEV)を搭載する「NX450h+」が注目株。また、直感的に操作できるコクピット周りを意識したTazunaコンセプトをこのNXから導入した他、レクサス ドライビング シグネチャーという走行面でも気持ち良いリニアな応答性を目指した走りを追求するなど、本質的なところから見直している。
そうした見直しはエクステリアにも表れ、先代比でリアのトレッドは+55mm、全幅で+20mm、前後タイヤも18インチから20インチ化しタイヤ径は720mmから740mmへと拡大、ホイールベースも30mm延長するなど、デザインテイストを受け継ぎながらも全体的に頼もしさが加わった印象に生まれ変わった。国内外に多く存在するこの手のクロスオーバーSUVと比較してもレクサスNXは存在感があり、先代よりもスタイリッシュかつパワフルなイメージになったと言えよう。
ラインナップは4モデル用意され、先にも触れたPHEVの「NX450h+」を筆頭に、ハイブリッドモデルの「NX350h」、ガソリンエンジン車は「NX350」と「NX250」を揃える。今回行われたプレム向けの試乗会では、これらすべてをテスト! レクサス自慢の走行性を試させようとワインディングを中心に実施されたので、その実情をお伝えしたい。
レクサス初のPHEVモデル「NX450h+」
まずは、なんと言ってもレクサス初のPHEVモデルの「NX450h+」から触れなければならない。こちらは今後を担う立役者とも言える存在で、狙っている人も多いと察する。パワートレインは、2.5リットル直列4気筒エンジンに、総電力量18.1kWhを誇る新開発の大容量リチウムイオンイオンバッテリーセルを採用した電池パックと高出力モーターを組み合わせ、システム最高出力は227kW(309ps)を発揮、駆動方式は後輪を電気モーターで駆動する定評あるE-Four(電気式4WD)を採用するなど、優れた燃費性能と高い走行性が期待できる。
走行モードは、デフォルトでEVモードが設定され、状況によりAUTO EV/HVモードやHVモードに切り替えることが可能。しかもナビゲーションと連動して運転履歴や道路状況に応じて自動的に切り替えまで行う。とはいえ、気になるのはEVによる航続距離だが、NX450h+は最大で88kmを達成したというから、かなり実用的。通勤やちょっとした買い物では、EV走行のみで十分に使えそうだ。充電時間も100Vでは33時間かかるところ、200Vの環境を備えていれば5時間30分で満充電されるため、一晩使えば朝から普通に乗っていくことができる。
実際の走行性も悪くない……。と、微妙な表現になってしまうのは、今回全グレードを乗り比べられただけに、逆に気になる点が浮き彫りになってしまった。
2285kgもの車重がどうしても気になってしまう
というのも性能や乗り心地は文句なし、実用性の面でも大きな問題はなかったものの、今回はワインディングを中心に行われた試乗会だったため、どうしても車重が気になって仕方なかった。その車両総重量は2285kg。同じ2.5リットル4気筒エンジンを積むハイブリッドモデルの「NX350h」と比較すると260kgも重い。ただ、これだけの車重をもつSUVは他にもあり、本来なら体感的にそこまで重くは感じないはずなのだが、フロア下に大容量リチウムイオンバッテリーを積むPHEVモデルの場合は(フルEV車もそうだが)、実車重よりもバッテリーそのものの重さが身体に伝わりやすいようで、このNX450h+もそのネガティブさが表立ってしまっていた。
もちろん、街中など普段使いで急加速などしなければ、さほど気にならないからPHEVの利点を活かしたライフスタイルで付き合うぶんには文句はでないはず。そういう意味では、通勤や日常の足、さらに長距離ドライブを行うことが比較的多いという向きには、もしかしたらNX350hのほうがお奨めかもしれない。
燃料消費率もWLTCモードで、NX450h+が19.8km/リットルなのに対してNX350hは同じAWD仕様で19.9~21.6km/リットルと大差なく、走りの面でも軽快感があるとは言い難いが、それなりに満足でき、スペックもNX450h+からやや劣るものの、システム最高出力は243psと十分。PHEVのような自重は感じたくないし、燃費も犠牲にしたくないなら、ほぼこれで決まりだと思う。
ピュアスポーツSUVと呼びたくなる軽快感のガソリンターボ「NX350」
その点、ガソリンエンジン車の「NX350」は、最後に内燃機を楽しんでほしいと言わんばかりの完成度を見せるから面白い。もはやこれが本命とも思えるほど、その走りは魅力的だ。205kW(279ps)&430Nmを出力する2.4リットル直列4気筒ターボエンジンに8速ATを組み合わせ、冒頭で触れたようなリニアな応答性を完全に具現化している。特にこのNX350の場合、レクサス初の電子制御フルタイムAWDと「F SPORT」が標準設定されているから尚更だろう。
中でも肝となるのは、F SPORT専用のパフォーマンスダンパーの効果。走行中の微振動を素早く吸収し、ハンドリング特性をシャープにするうえ、減衰力制御を行うNAVI・AI-AVSによって路面の状況を読み取って、可能な限りフラットな姿勢を維持しながら乗り心地と静粛性を確保するというのが狙いだが、実際の動きもスポーツカーさながらで、コーナーが連続するワインディングもなんのその!とばかりにドライビングを楽しめせてくれる。これはまさに欧州の競合をも唸らせる出来栄えだ。
それに、これだけハンドリングが好印象なのはもうひとつ、スタッドボルトとハブナットの締結からハブボルトによる締結構造に変更したことも大きな理由だとチーフエンジニアの加藤武明氏が語ってくれた。が、やはり最終的なところは、ニュルブルクリンクを参考に作られたトヨタの下山テストコースでの仕込みによるものだと筆者は読んでいる。
今や欧州車のほとんどがニュルで鍛えられているが、このNX350の走行性はまさにそれに匹敵するほどの完成度だ。旋回時の姿勢はとにかく素直で、トラクション性能も活かされているから脱出も素早く、状況に応じて前後トルク配分を最適化するフルタイムAWDの制御と相まって、SUVとは思えない走りを見せる。それに加え、ピュアスポーツSUVと呼びたくなるくらい軽快感も伴うから、一度これに乗ってしまうとハイブリッド勢に戻れなくなってしまうくらいだった。
まさか最新のレクサスがここまで出来が良いとは
最後にエントリーモデルの「NX250」にも触れておかなければならないが、これはもう性能にまったくこだわらない人向き。試乗したのはFFモデルだったが、148kW(201ps)&241Nmを発する直列4気筒の自然吸気エンジンでは、やや力不足に感じられ、こうした山道では非力さが先立ってしまう。もっとも普段の足としてだけ使うには十分事足りるから、スタイル&ブランド重視で欲張らなければ、これはこれでアリだとは思う。
これまで筆者は仕事を通じて多くの輸入車に乗ってきたが、まさか最新のレクサスがここまで出来が良いとは想像もしていなかった、というのが本音。これから矢継ぎ早に出てくるであろう、BEVやPHEV、ハイブリッド車など、約20車種にも及ぶ新型車や改良モデルにも大きく期待できそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。
特に今回は、レクサスとしては初となる新開発のプラグインハイブリッドシステム(以下、PHEV)を搭載する「NX450h+」が注目株。また、直感的に操作できるコクピット周りを意識したTazunaコンセプトをこのNXから導入した他、レクサス ドライビング シグネチャーという走行面でも気持ち良いリニアな応答性を目指した走りを追求するなど、本質的なところから見直している。
そうした見直しはエクステリアにも表れ、先代比でリアのトレッドは+55mm、全幅で+20mm、前後タイヤも18インチから20インチ化しタイヤ径は720mmから740mmへと拡大、ホイールベースも30mm延長するなど、デザインテイストを受け継ぎながらも全体的に頼もしさが加わった印象に生まれ変わった。国内外に多く存在するこの手のクロスオーバーSUVと比較してもレクサスNXは存在感があり、先代よりもスタイリッシュかつパワフルなイメージになったと言えよう。
ラインナップは4モデル用意され、先にも触れたPHEVの「NX450h+」を筆頭に、ハイブリッドモデルの「NX350h」、ガソリンエンジン車は「NX350」と「NX250」を揃える。今回行われたプレム向けの試乗会では、これらすべてをテスト! レクサス自慢の走行性を試させようとワインディングを中心に実施されたので、その実情をお伝えしたい。
レクサス初のPHEVモデル「NX450h+」
まずは、なんと言ってもレクサス初のPHEVモデルの「NX450h+」から触れなければならない。こちらは今後を担う立役者とも言える存在で、狙っている人も多いと察する。パワートレインは、2.5リットル直列4気筒エンジンに、総電力量18.1kWhを誇る新開発の大容量リチウムイオンイオンバッテリーセルを採用した電池パックと高出力モーターを組み合わせ、システム最高出力は227kW(309ps)を発揮、駆動方式は後輪を電気モーターで駆動する定評あるE-Four(電気式4WD)を採用するなど、優れた燃費性能と高い走行性が期待できる。
走行モードは、デフォルトでEVモードが設定され、状況によりAUTO EV/HVモードやHVモードに切り替えることが可能。しかもナビゲーションと連動して運転履歴や道路状況に応じて自動的に切り替えまで行う。とはいえ、気になるのはEVによる航続距離だが、NX450h+は最大で88kmを達成したというから、かなり実用的。通勤やちょっとした買い物では、EV走行のみで十分に使えそうだ。充電時間も100Vでは33時間かかるところ、200Vの環境を備えていれば5時間30分で満充電されるため、一晩使えば朝から普通に乗っていくことができる。
実際の走行性も悪くない……。と、微妙な表現になってしまうのは、今回全グレードを乗り比べられただけに、逆に気になる点が浮き彫りになってしまった。
2285kgもの車重がどうしても気になってしまう
というのも性能や乗り心地は文句なし、実用性の面でも大きな問題はなかったものの、今回はワインディングを中心に行われた試乗会だったため、どうしても車重が気になって仕方なかった。その車両総重量は2285kg。同じ2.5リットル4気筒エンジンを積むハイブリッドモデルの「NX350h」と比較すると260kgも重い。ただ、これだけの車重をもつSUVは他にもあり、本来なら体感的にそこまで重くは感じないはずなのだが、フロア下に大容量リチウムイオンバッテリーを積むPHEVモデルの場合は(フルEV車もそうだが)、実車重よりもバッテリーそのものの重さが身体に伝わりやすいようで、このNX450h+もそのネガティブさが表立ってしまっていた。
もちろん、街中など普段使いで急加速などしなければ、さほど気にならないからPHEVの利点を活かしたライフスタイルで付き合うぶんには文句はでないはず。そういう意味では、通勤や日常の足、さらに長距離ドライブを行うことが比較的多いという向きには、もしかしたらNX350hのほうがお奨めかもしれない。
燃料消費率もWLTCモードで、NX450h+が19.8km/リットルなのに対してNX350hは同じAWD仕様で19.9~21.6km/リットルと大差なく、走りの面でも軽快感があるとは言い難いが、それなりに満足でき、スペックもNX450h+からやや劣るものの、システム最高出力は243psと十分。PHEVのような自重は感じたくないし、燃費も犠牲にしたくないなら、ほぼこれで決まりだと思う。
ピュアスポーツSUVと呼びたくなる軽快感のガソリンターボ「NX350」
その点、ガソリンエンジン車の「NX350」は、最後に内燃機を楽しんでほしいと言わんばかりの完成度を見せるから面白い。もはやこれが本命とも思えるほど、その走りは魅力的だ。205kW(279ps)&430Nmを出力する2.4リットル直列4気筒ターボエンジンに8速ATを組み合わせ、冒頭で触れたようなリニアな応答性を完全に具現化している。特にこのNX350の場合、レクサス初の電子制御フルタイムAWDと「F SPORT」が標準設定されているから尚更だろう。
中でも肝となるのは、F SPORT専用のパフォーマンスダンパーの効果。走行中の微振動を素早く吸収し、ハンドリング特性をシャープにするうえ、減衰力制御を行うNAVI・AI-AVSによって路面の状況を読み取って、可能な限りフラットな姿勢を維持しながら乗り心地と静粛性を確保するというのが狙いだが、実際の動きもスポーツカーさながらで、コーナーが連続するワインディングもなんのその!とばかりにドライビングを楽しめせてくれる。これはまさに欧州の競合をも唸らせる出来栄えだ。
それに、これだけハンドリングが好印象なのはもうひとつ、スタッドボルトとハブナットの締結からハブボルトによる締結構造に変更したことも大きな理由だとチーフエンジニアの加藤武明氏が語ってくれた。が、やはり最終的なところは、ニュルブルクリンクを参考に作られたトヨタの下山テストコースでの仕込みによるものだと筆者は読んでいる。
今や欧州車のほとんどがニュルで鍛えられているが、このNX350の走行性はまさにそれに匹敵するほどの完成度だ。旋回時の姿勢はとにかく素直で、トラクション性能も活かされているから脱出も素早く、状況に応じて前後トルク配分を最適化するフルタイムAWDの制御と相まって、SUVとは思えない走りを見せる。それに加え、ピュアスポーツSUVと呼びたくなるくらい軽快感も伴うから、一度これに乗ってしまうとハイブリッド勢に戻れなくなってしまうくらいだった。
まさか最新のレクサスがここまで出来が良いとは
最後にエントリーモデルの「NX250」にも触れておかなければならないが、これはもう性能にまったくこだわらない人向き。試乗したのはFFモデルだったが、148kW(201ps)&241Nmを発する直列4気筒の自然吸気エンジンでは、やや力不足に感じられ、こうした山道では非力さが先立ってしまう。もっとも普段の足としてだけ使うには十分事足りるから、スタイル&ブランド重視で欲張らなければ、これはこれでアリだとは思う。
これまで筆者は仕事を通じて多くの輸入車に乗ってきたが、まさか最新のレクサスがここまで出来が良いとは想像もしていなかった、というのが本音。これから矢継ぎ早に出てくるであろう、BEVやPHEV、ハイブリッド車など、約20車種にも及ぶ新型車や改良モデルにも大きく期待できそうだ。
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