【フィアット 500e 新型試乗】お利口なお姉さんキャラになっちゃって…岩貞るみこ
今回のワンポイント確認は、ちっちゃくて守りたくなる愛されキャラの“チンク”が、お利口なお姉さんキャラの電気自動車(以下EV)になっちゃって大丈夫なのか、である。
『500e』のお姉さん感は、デザインから現れている
「500」イタリア語で読むとチンクエ(5)チェント(100)。日本では敬愛を持ってチンクと呼ばれることが多い。なにせかわいい。ちっちゃくて、つるんとしていて、エンジン音を響かせながら一所懸命に走る健気な姿に、多くのファンがメロメロになっている。そこに、EVである。名前は、500のあとに小さく「e」と付けられた。
500eのお姉さん感は、デザインから現れている。目つきが色っぽいのだ。まん丸っぽかったヘッドライトは、500eではエクステまつ毛をつけた上目づかいのような目元になり、やけに存在感がある。足元のホイールも幾何学模様が輝いて見える。さらに、ドアノブは、500がグリップ型だったのに対し、500eは下から手を入れるフラップタイプ。フラップタイプは事故時に力を入れて開けにくいという声を聞いたことがあるが、500eのフラップはかなり十分な奥行があり、その心配はないだろう。
クルマとは別のノリモノを操作する気分
運転席に座ると、あるはずのシフトレバーはなく、代わりにセンターのカーナビの下の方にPRNDと4つのスイッチが並んでいる。それより焦るのは、内側からドアを開けるためのドアノブがないことだ。代わりにあるのは電磁式のスイッチ。なんて未来的!こちらは万が一の故障時に備え、ドアの下の方に緊急用のアナログのドアノブが取り付けられていた。
インテリアは、基本的なレイアウトは500と同じなのに、そこかしこにEVの変化が満ち溢れていてなんだかドキドキする。クルマではなく、まるで別のノリモノを操作する気分で、いざ、発進である。
EVのモードは3つ。ふつうに走れる「ノーマル」。アクセルを足から離したときに急激に減速して回生ブレーキがかかる「レンジ」。そのレンジよりさらに電力消費を抑える「シェルパ」は、エアコンがオフになり、時速も80km/hしか出ないようになっている。面白いのは、それぞれモードを切り替えると、瞬時に走行可能距離が計算されて表示されることだ。
レンジとシェルパで走っているときにアクセルをオフにすると、車速がゼロになるまで落ちるのだが、落ちたとたんに、きゅっという音がして、ブレーキがホールドされる。つまり、ブレーキを踏まなくても前に進まないようになっているのだ。きゅっという音は、たぶん、国産車メーカーなら消すところだろうが、この、毎回「きゅっ」と聞こえてくるのが、なんともチンクらしくて微笑ましい。
「新しい小さな乗り物」の乗りやすさに心癒される
走りはEVらしくスムーズ。加速もよく街中では快適以外のなにものでもない。エンジン音もしなければ振動もない。昭和世代でエンジン愛にあふれる私ですら、この新しい小さな乗り物の乗りやすさに心が癒されてしまう。ただ、ワンペダルで走ったときの、回生ブレーキは強めなので、速度を落とすときのアクセルコントロールには少し慣れが必要だろう。ゆえに、私はつい、電力消費も考えずにノーマルモードで走ってしまうのだが。
さて、シェルパモードでは、時速が80km/hで制限されるというので、高速道路に行ってみた。少しずつ速度を上げていくと小さいクルマらしく、オシリがぽんぽんと跳ねる感じが楽しい。そして80km/hに到達すると、速度がすっと制限される。その一連の流れはとても自然で焦る隙もない。そして、興味深いのは、そこからさらにアクセルを踏むと、速度が上がるということだ。つまり、なんらかの理由(たとえば危険な状態とか)で速度をあげたいというドライバーの意思をくみ取ってくれるのである。しかもインパネには「オーバーライド……」と、自分の意志でアクセルを踏んでいることを優先しているという日本語のメッセージまで出てくる(全文を読んで覚える余裕がなかったけれど、500eがその時、どういう状態で走っているかは十分に理解できた)。
小さな500e。運転支援技術も含め、注ぎ込まれた技術はかなりのもの。結論。小さなチンクは、お姉さんになっても愛されキャラのままであった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」シリーズほか多数。最新刊は「法律がわかる! 桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。
『500e』のお姉さん感は、デザインから現れている
「500」イタリア語で読むとチンクエ(5)チェント(100)。日本では敬愛を持ってチンクと呼ばれることが多い。なにせかわいい。ちっちゃくて、つるんとしていて、エンジン音を響かせながら一所懸命に走る健気な姿に、多くのファンがメロメロになっている。そこに、EVである。名前は、500のあとに小さく「e」と付けられた。
500eのお姉さん感は、デザインから現れている。目つきが色っぽいのだ。まん丸っぽかったヘッドライトは、500eではエクステまつ毛をつけた上目づかいのような目元になり、やけに存在感がある。足元のホイールも幾何学模様が輝いて見える。さらに、ドアノブは、500がグリップ型だったのに対し、500eは下から手を入れるフラップタイプ。フラップタイプは事故時に力を入れて開けにくいという声を聞いたことがあるが、500eのフラップはかなり十分な奥行があり、その心配はないだろう。
クルマとは別のノリモノを操作する気分
運転席に座ると、あるはずのシフトレバーはなく、代わりにセンターのカーナビの下の方にPRNDと4つのスイッチが並んでいる。それより焦るのは、内側からドアを開けるためのドアノブがないことだ。代わりにあるのは電磁式のスイッチ。なんて未来的!こちらは万が一の故障時に備え、ドアの下の方に緊急用のアナログのドアノブが取り付けられていた。
インテリアは、基本的なレイアウトは500と同じなのに、そこかしこにEVの変化が満ち溢れていてなんだかドキドキする。クルマではなく、まるで別のノリモノを操作する気分で、いざ、発進である。
EVのモードは3つ。ふつうに走れる「ノーマル」。アクセルを足から離したときに急激に減速して回生ブレーキがかかる「レンジ」。そのレンジよりさらに電力消費を抑える「シェルパ」は、エアコンがオフになり、時速も80km/hしか出ないようになっている。面白いのは、それぞれモードを切り替えると、瞬時に走行可能距離が計算されて表示されることだ。
レンジとシェルパで走っているときにアクセルをオフにすると、車速がゼロになるまで落ちるのだが、落ちたとたんに、きゅっという音がして、ブレーキがホールドされる。つまり、ブレーキを踏まなくても前に進まないようになっているのだ。きゅっという音は、たぶん、国産車メーカーなら消すところだろうが、この、毎回「きゅっ」と聞こえてくるのが、なんともチンクらしくて微笑ましい。
「新しい小さな乗り物」の乗りやすさに心癒される
走りはEVらしくスムーズ。加速もよく街中では快適以外のなにものでもない。エンジン音もしなければ振動もない。昭和世代でエンジン愛にあふれる私ですら、この新しい小さな乗り物の乗りやすさに心が癒されてしまう。ただ、ワンペダルで走ったときの、回生ブレーキは強めなので、速度を落とすときのアクセルコントロールには少し慣れが必要だろう。ゆえに、私はつい、電力消費も考えずにノーマルモードで走ってしまうのだが。
さて、シェルパモードでは、時速が80km/hで制限されるというので、高速道路に行ってみた。少しずつ速度を上げていくと小さいクルマらしく、オシリがぽんぽんと跳ねる感じが楽しい。そして80km/hに到達すると、速度がすっと制限される。その一連の流れはとても自然で焦る隙もない。そして、興味深いのは、そこからさらにアクセルを踏むと、速度が上がるということだ。つまり、なんらかの理由(たとえば危険な状態とか)で速度をあげたいというドライバーの意思をくみ取ってくれるのである。しかもインパネには「オーバーライド……」と、自分の意志でアクセルを踏んでいることを優先しているという日本語のメッセージまで出てくる(全文を読んで覚える余裕がなかったけれど、500eがその時、どういう状態で走っているかは十分に理解できた)。
小さな500e。運転支援技術も含め、注ぎ込まれた技術はかなりのもの。結論。小さなチンクは、お姉さんになっても愛されキャラのままであった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」シリーズほか多数。最新刊は「法律がわかる! 桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。
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