【三菱 eKクロスEV 新型試乗】日産サクラとは「表現の仕方」が違う…九島辰也
日産サクラとは「表現の仕方」が違う
日産『サクラ』試乗の一週間後、兄弟車となる三菱『ekクロスEV』のステアリングを握った。まだ記憶に新しいだけにその違いに興味は募る。とはいえ、今回はまったく同じ設定のためそれぞれの「味」を確かめるのは難しい。
トヨタとスバルが近年コラボしている『GR86』/『BRZ』や『bZ4X』/『ソルテラ』とは異なる路線だ。まぁ、そもそもバッジ違いで各ディーラーで販売する戦法が、自動車業界のデフォルトではあるが。
ただ、表現の仕方はそれぞれ。サクラが『デイズ』をベースに『リーフ』のノウハウを載せたと説明したのに対し、こちらは『ekクロス』をベースに『アウトランダーPHEV』の技術でつくったという表現。まぁ、そもそもこの2社のアライアンスは随分時間も経っているから、かなり遡らないとどちらがどの技術を開発したかはもはや明確にはならないのだろう。
その特徴だが、三菱ekクロスEVはダイナミックシールドと呼ばれる“ミツビシ顔”を持つ。アウトランダーPHEV、『デリカD:5』、『エクリプスクロス』などで採用される厳ついマスクだ。サクラが『アリア』顔で高級感を出しているのとは別路線となる。事実日産はサクラを軽自動車のトップエンドに位置させているが、三菱はekシリーズのひとつの選択肢として考えている。
+200kgの重量差をモーターの力で払拭する
グレードはエントリーの“G”と、上級グレードの“P”が用意される。タイヤは前者が14インチのヨコハマブルーアース、後者が15インチのブリヂストンエコピアを装着していた。これはガソリン車と同じ仕様で、EVだからという変更はない。なので、サクラのレポートでも書いたが、少しスピード域が高くなるとコーナーでタイヤが鳴く場面がある。トルクが2倍になったことでタイヤのパフォーマンスが追いつかなくなっているからだ。
それに車両重量がガソリン車よりも当然増えている。三菱の開発者によるとエンジンとギアボックス分を駆動用バッテリーで相殺しても200kg近く重くなったという。その違いは大きいが、実際に走り出すと、モーターパワーがそれを払拭するのだからおもしろい。ゼロヒャクに近い割合で発生する大トルクがクルマを軽々しく走らせるのだ。
ネガティブ要素は、サクラと同じドライブモードのスイッチの位置だろう。ダッシュボード右下にあるため目線を落とさなくてはならない。それに表記が「DRIVE MODE」なのも認識しづらい。何かアイコンが必要な気がする。
バンダイナムコ研究所と開発した三菱の「音」
独自開発という面では、ナビの操作を行うダイヤルのタッチ(三菱タッチ)と警告音がそれに当たる。ekクロスEVにはメーター専用のスピーカーが配備され、表示や操作の切り替え時の音をオリジナルで流しているのだ。一般にある単純なブザー音ではないのがミソである。しかもそのサウンドを株式会社バンダイナムコ研究所のサウンドクリエイターと共同開発する手の込みよう。三菱自動車のイメージにふさわしい音を創造した。
12.3インチフルカラー液晶においても、ドライブモードで選択した走行シーンがイメージできる画像や、センターディスプレイと連携したナビや地図情報、オーディオ情報などの多彩な表示を提供してくれる。この辺もかなり凝った仕組みだ。
これほど力強い軽自動車を見たことがない
そんなekクロスEVの走りは、力強さのカタマリ。普段から軽自動車を足にしている人には感動的な速さだろう。これなら、信号ダッシュで後のクルマを気にすることも、高速道路の合流で臆することもない。ただ、あまりの速さとスムーズな走りに周りが唖然としてしまうかもしれない。これほど力強い軽自動車を見たことがないからだ。
この走りに興味のある方はぜひ試乗してみてもらいたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。
日産『サクラ』試乗の一週間後、兄弟車となる三菱『ekクロスEV』のステアリングを握った。まだ記憶に新しいだけにその違いに興味は募る。とはいえ、今回はまったく同じ設定のためそれぞれの「味」を確かめるのは難しい。
トヨタとスバルが近年コラボしている『GR86』/『BRZ』や『bZ4X』/『ソルテラ』とは異なる路線だ。まぁ、そもそもバッジ違いで各ディーラーで販売する戦法が、自動車業界のデフォルトではあるが。
ただ、表現の仕方はそれぞれ。サクラが『デイズ』をベースに『リーフ』のノウハウを載せたと説明したのに対し、こちらは『ekクロス』をベースに『アウトランダーPHEV』の技術でつくったという表現。まぁ、そもそもこの2社のアライアンスは随分時間も経っているから、かなり遡らないとどちらがどの技術を開発したかはもはや明確にはならないのだろう。
その特徴だが、三菱ekクロスEVはダイナミックシールドと呼ばれる“ミツビシ顔”を持つ。アウトランダーPHEV、『デリカD:5』、『エクリプスクロス』などで採用される厳ついマスクだ。サクラが『アリア』顔で高級感を出しているのとは別路線となる。事実日産はサクラを軽自動車のトップエンドに位置させているが、三菱はekシリーズのひとつの選択肢として考えている。
+200kgの重量差をモーターの力で払拭する
グレードはエントリーの“G”と、上級グレードの“P”が用意される。タイヤは前者が14インチのヨコハマブルーアース、後者が15インチのブリヂストンエコピアを装着していた。これはガソリン車と同じ仕様で、EVだからという変更はない。なので、サクラのレポートでも書いたが、少しスピード域が高くなるとコーナーでタイヤが鳴く場面がある。トルクが2倍になったことでタイヤのパフォーマンスが追いつかなくなっているからだ。
それに車両重量がガソリン車よりも当然増えている。三菱の開発者によるとエンジンとギアボックス分を駆動用バッテリーで相殺しても200kg近く重くなったという。その違いは大きいが、実際に走り出すと、モーターパワーがそれを払拭するのだからおもしろい。ゼロヒャクに近い割合で発生する大トルクがクルマを軽々しく走らせるのだ。
ネガティブ要素は、サクラと同じドライブモードのスイッチの位置だろう。ダッシュボード右下にあるため目線を落とさなくてはならない。それに表記が「DRIVE MODE」なのも認識しづらい。何かアイコンが必要な気がする。
バンダイナムコ研究所と開発した三菱の「音」
独自開発という面では、ナビの操作を行うダイヤルのタッチ(三菱タッチ)と警告音がそれに当たる。ekクロスEVにはメーター専用のスピーカーが配備され、表示や操作の切り替え時の音をオリジナルで流しているのだ。一般にある単純なブザー音ではないのがミソである。しかもそのサウンドを株式会社バンダイナムコ研究所のサウンドクリエイターと共同開発する手の込みよう。三菱自動車のイメージにふさわしい音を創造した。
12.3インチフルカラー液晶においても、ドライブモードで選択した走行シーンがイメージできる画像や、センターディスプレイと連携したナビや地図情報、オーディオ情報などの多彩な表示を提供してくれる。この辺もかなり凝った仕組みだ。
これほど力強い軽自動車を見たことがない
そんなekクロスEVの走りは、力強さのカタマリ。普段から軽自動車を足にしている人には感動的な速さだろう。これなら、信号ダッシュで後のクルマを気にすることも、高速道路の合流で臆することもない。ただ、あまりの速さとスムーズな走りに周りが唖然としてしまうかもしれない。これほど力強い軽自動車を見たことがないからだ。
この走りに興味のある方はぜひ試乗してみてもらいたい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。
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