【日産 エクストレイル 新型試乗】競合揃いのライバルにも真っ向勝負できる実力の持ち主…石井昌道
2000年に登場した初代『エクストレイル』は、乗用車ベースながら本格オフローダーに近い悪路走破性と四角いカタチで“タフギア”を名乗り、アウトドア派を中心に大きな支持を得た。キープコンセプトの2代目も含めて10年連続で国内のSUV販売台数ナンバー1という快挙を成し遂げている。3代目もデザインこそオンロード志向になったものの、タフギアというDNAは守りつつ、1モーター2クラッチ式ハイブリッドやプロパイロットの設定など内容が充実。ライバルが増えたことで、販売台数ナンバー1の常連とまではいかなかったがSUVブームの先駆けだけあって根強い人気を誇っている。
4代目となる新型エクストレイルはタフギアを継承しつつ、3代目から始まった先進技術の搭載、そして新たに上質さを身につけて登場。ハイブリッド・システムは『ノート』などでお馴染みのe-POWERとなったが、エンジンは直列3気筒1.2リットルNA(自然吸気)ではなく直列3気筒1.5リットルのVCターボを採用して燃費とパフォーマンスの両立を目指し、電動駆動4輪制御技術のe-4ORCEも搭載する。プロパイロットはナビリンク機能を追加し、360°セーフティーアシストを採用するなど進化を遂げている。
取り回しが良く、狭い道でも持て余すようなことはない
2段階構造のヘッドランプを始め、上質な雰囲気のエクステリアとなったためか大きくなった印象もあるが、プラットフォームがキャリーオーバーのためボディサイズは従来とあまり変わらない。全幅こそ20mm拡大されたが、全長は30mm短く、全高は20mm低くなった。ホイールベースは同一だが、最小回転半径は0.2m短縮。今回は公道で初試乗となったが、取り回しが良く、狭い道でも持て余すようなことはなかった。最近のミッドサイズSUVは全幅1850mm程度があたりまえなので、コンパクトに感じるぐらいだ。
余裕のあるパワー&トルクと静粛性の高さが印象的
まだ1モーターのFFは発売されていないため、今回は2モーターのe-4ORCE(4WD)のみを試したが、余裕のあるパワー&トルクと静粛性の高さが印象的でパワートレーンはまさに上質だった。フロントのモーターはFFと共通で最高出力150kW(204ps)/最大トルク330Nm、リアは100kW(136ps)/195Nm。可変圧縮となるVCターボ・エンジンは106kW(144ps)/250Nm。駆動用バッテリーは1.8kWhとハイブリッドとしては大きめの容量だ。
エンジンは発電に徹してモーターで駆動するシリーズハイブリッドのe-POWERは、バッテリーに十分な電力があるときはEV走行、足りなくなるとエンジンが発電するが、車速にかかわらず一定回転で回ることが多く、そのいかにも発電機的な音に違和感があったり、走りの気持ち良さを感じづらいことがある。そこでe-POWERは従来からエンジンの存在感を抑えるべく、遮音性能を高め、発電するにしてもなるべく耳障りにならないようロードノイズなどが大きくなる場面でエンジンを回すなどという努力をしてきた。
1ギアで引っ張っる伸びやかなフィーリング
新型エクストレイルはエンジンに余裕があるのでSOC(充電状態)のコントロールに自由度が出たことで、これまで以上にエンジンの作動頻度低減や回転数抑制がなされている。『ノート』などに比べれば車格が上なので遮音性能にも優れ、日常的なシーンでは圧倒的に静かだ。その一方でアクセルを深く踏み込んでの加速では車速とエンジン回転数を連動させて違和感を払拭する新たな制御を入れてきた。従来はアクセルを踏み込んでいくとエンジン回転数が一気に高まり、車速が徐々に上がっていくCVTのラバーバンドフィールと同様の感覚だったが、エクストレイルは大トルクで強烈な加速をしつつもエンジン回転数はいきなり高まらず、車速とともに上がっていく。疑似的なステップアップ制御などは行わず、1ギアで引っ張っる伸びやかなフィーリングだ。
VCターボ・エンジンはマルチリンク機構によってピストン位置を変化させ、8~14まで圧縮比を自在に可変。低負荷は高圧縮比のリーンバーンで燃費を重視、高負荷では圧縮比を落としてターボを効かせてパフォーマンスを発揮する。e-POWERとの相性もいいようだ。マルチリンク機構はピストンを綺麗に真っ直ぐと上下させることになるので、一般的なエンジンに比べてフリクション低減が図れる。そのためe-POWERの静粛性の要であるエンジン回転数抑制に効くのだ。また、高負荷時に低圧縮比とすることで回転数をあまりあげなくてもパワーが出せることで、エンジンがうるさく唸るということも回避できる。発電用としても優れた特性を持っているのだ。
オン・ザ・レール感覚で余裕が感じられる
e-4ORCEは、リアのモーターもそれなりにパワー&トルクがあるので操縦安定性やハンドリングの正確性に大きく寄与している。モーターは制御が素早く自由度も高いので違和感がなく高いパフォーマンスを発揮するのだ。
プラットフォームはキャリーオーバーではあるものの、従来比でボディ剛性を40%向上。サスペンション周りの剛性も上がっていて、シャシー性能は底上げされた。資料によるとコーナリング性能は30%、乗り心地は40%向上しているという。確かに、コーナーではe-4ORCEの効果も相まってちょっとやそっと攻めるぐらいではまったくのオン・ザ・レール感覚で余裕が感じられる。ステアリング周りの剛性感も高く、フィーリングが良くて上質かつスポーティだ。
やや引き締まった安心感の高いシャシー性能
乗り心地は、大きな凹凸を乗り越えるときにサスペンションの動きの渋さを感じることがあるものの、ほとんどの場面で不快さはない。快適性重視というよりも、やや引き締まった安心感の高いシャシー性能だ。e-4ORCEならば減速時にリアモーターの回生でピッチングが抑制され、フラットな姿勢を保つことも安心感や快適性を高めている。
VCターボによる第2世代のe-POWERやe-4ORCEなど先進的な技術によって大幅な進化を果たしたエクストレイル。人気が高まる一方のジャンルゆえライバルも強豪揃いだが、真っ向勝負できる実力の持ち主だ。
石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。
4代目となる新型エクストレイルはタフギアを継承しつつ、3代目から始まった先進技術の搭載、そして新たに上質さを身につけて登場。ハイブリッド・システムは『ノート』などでお馴染みのe-POWERとなったが、エンジンは直列3気筒1.2リットルNA(自然吸気)ではなく直列3気筒1.5リットルのVCターボを採用して燃費とパフォーマンスの両立を目指し、電動駆動4輪制御技術のe-4ORCEも搭載する。プロパイロットはナビリンク機能を追加し、360°セーフティーアシストを採用するなど進化を遂げている。
取り回しが良く、狭い道でも持て余すようなことはない
2段階構造のヘッドランプを始め、上質な雰囲気のエクステリアとなったためか大きくなった印象もあるが、プラットフォームがキャリーオーバーのためボディサイズは従来とあまり変わらない。全幅こそ20mm拡大されたが、全長は30mm短く、全高は20mm低くなった。ホイールベースは同一だが、最小回転半径は0.2m短縮。今回は公道で初試乗となったが、取り回しが良く、狭い道でも持て余すようなことはなかった。最近のミッドサイズSUVは全幅1850mm程度があたりまえなので、コンパクトに感じるぐらいだ。
余裕のあるパワー&トルクと静粛性の高さが印象的
まだ1モーターのFFは発売されていないため、今回は2モーターのe-4ORCE(4WD)のみを試したが、余裕のあるパワー&トルクと静粛性の高さが印象的でパワートレーンはまさに上質だった。フロントのモーターはFFと共通で最高出力150kW(204ps)/最大トルク330Nm、リアは100kW(136ps)/195Nm。可変圧縮となるVCターボ・エンジンは106kW(144ps)/250Nm。駆動用バッテリーは1.8kWhとハイブリッドとしては大きめの容量だ。
エンジンは発電に徹してモーターで駆動するシリーズハイブリッドのe-POWERは、バッテリーに十分な電力があるときはEV走行、足りなくなるとエンジンが発電するが、車速にかかわらず一定回転で回ることが多く、そのいかにも発電機的な音に違和感があったり、走りの気持ち良さを感じづらいことがある。そこでe-POWERは従来からエンジンの存在感を抑えるべく、遮音性能を高め、発電するにしてもなるべく耳障りにならないようロードノイズなどが大きくなる場面でエンジンを回すなどという努力をしてきた。
1ギアで引っ張っる伸びやかなフィーリング
新型エクストレイルはエンジンに余裕があるのでSOC(充電状態)のコントロールに自由度が出たことで、これまで以上にエンジンの作動頻度低減や回転数抑制がなされている。『ノート』などに比べれば車格が上なので遮音性能にも優れ、日常的なシーンでは圧倒的に静かだ。その一方でアクセルを深く踏み込んでの加速では車速とエンジン回転数を連動させて違和感を払拭する新たな制御を入れてきた。従来はアクセルを踏み込んでいくとエンジン回転数が一気に高まり、車速が徐々に上がっていくCVTのラバーバンドフィールと同様の感覚だったが、エクストレイルは大トルクで強烈な加速をしつつもエンジン回転数はいきなり高まらず、車速とともに上がっていく。疑似的なステップアップ制御などは行わず、1ギアで引っ張っる伸びやかなフィーリングだ。
VCターボ・エンジンはマルチリンク機構によってピストン位置を変化させ、8~14まで圧縮比を自在に可変。低負荷は高圧縮比のリーンバーンで燃費を重視、高負荷では圧縮比を落としてターボを効かせてパフォーマンスを発揮する。e-POWERとの相性もいいようだ。マルチリンク機構はピストンを綺麗に真っ直ぐと上下させることになるので、一般的なエンジンに比べてフリクション低減が図れる。そのためe-POWERの静粛性の要であるエンジン回転数抑制に効くのだ。また、高負荷時に低圧縮比とすることで回転数をあまりあげなくてもパワーが出せることで、エンジンがうるさく唸るということも回避できる。発電用としても優れた特性を持っているのだ。
オン・ザ・レール感覚で余裕が感じられる
e-4ORCEは、リアのモーターもそれなりにパワー&トルクがあるので操縦安定性やハンドリングの正確性に大きく寄与している。モーターは制御が素早く自由度も高いので違和感がなく高いパフォーマンスを発揮するのだ。
プラットフォームはキャリーオーバーではあるものの、従来比でボディ剛性を40%向上。サスペンション周りの剛性も上がっていて、シャシー性能は底上げされた。資料によるとコーナリング性能は30%、乗り心地は40%向上しているという。確かに、コーナーではe-4ORCEの効果も相まってちょっとやそっと攻めるぐらいではまったくのオン・ザ・レール感覚で余裕が感じられる。ステアリング周りの剛性感も高く、フィーリングが良くて上質かつスポーティだ。
やや引き締まった安心感の高いシャシー性能
乗り心地は、大きな凹凸を乗り越えるときにサスペンションの動きの渋さを感じることがあるものの、ほとんどの場面で不快さはない。快適性重視というよりも、やや引き締まった安心感の高いシャシー性能だ。e-4ORCEならば減速時にリアモーターの回生でピッチングが抑制され、フラットな姿勢を保つことも安心感や快適性を高めている。
VCターボによる第2世代のe-POWERやe-4ORCEなど先進的な技術によって大幅な進化を果たしたエクストレイル。人気が高まる一方のジャンルゆえライバルも強豪揃いだが、真っ向勝負できる実力の持ち主だ。
石井昌道|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストに。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイクレースなどモータースポーツへの参戦も豊富。ドライビングテクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。最近ではメディアの仕事のかたわら、エコドライブの研究、および一般ドライバーへ広く普及させるため精力的に活動中。
最新ニュース
-
-
日産のフルサイズSUV『アルマーダ』新型、ベース価格は5.6万ドルに据え置き…12月米国発売へ
2024.11.21
-
-
-
EV好調のシトロエン『C3』新型、欧州カーオブザイヤー2025最終選考に
2024.11.21
-
-
-
「めっちゃカッコいい」新型レクサス『ES』のデザインにSNSで反響
2024.11.21
-
-
-
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
2024.11.21
-
-
-
日本発の「ペダル踏み間違い防止装置」、世界標準へ…国連が基準化
2024.11.21
-
-
-
楽しく学べる「防災ファミリーフェス」を茨城県の全トヨタディーラーが運営する「茨城ワクドキクラブ」が開催
2024.11.21
-
-
-
『簡単にキズが消えた!』初心者でも簡単、コンパウンドで愛車の浅いキズを手軽に修復するテクニック~Weeklyメンテナンス~
2024.11.21
-
最新ニュース
-
-
日産のフルサイズSUV『アルマーダ』新型、ベース価格は5.6万ドルに据え置き…12月米国発売へ
2024.11.21
-
-
-
EV好調のシトロエン『C3』新型、欧州カーオブザイヤー2025最終選考に
2024.11.21
-
-
-
「めっちゃカッコいい」新型レクサス『ES』のデザインにSNSで反響
2024.11.21
-
-
-
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
2024.11.21
-
-
-
日本発の「ペダル踏み間違い防止装置」、世界標準へ…国連が基準化
2024.11.21
-
-
-
楽しく学べる「防災ファミリーフェス」を茨城県の全トヨタディーラーが運営する「茨城ワクドキクラブ」が開催
2024.11.21
-
MORIZO on the Road