【VW Tロック 新型試乗】ディーゼルとガソリンを比較、走りの軽快感は意外にも?…中村孝仁
VW『Tロック(T-Roc)』のディーゼルとガソリン仕様を乗り比べてみた。因みにディーゼルの「TDI」はR Line、ガソリンの「TSI」はスタイルのいずれも上級仕様である。
◆『ゴルフ8』から搭載、進化したTDI&TSIエンジン
少しエンジンについて細かい説明をしようと思う。まずTDIの方はコードネーム「EA288evo」の名前を持つVWの最新鋭ディーゼルエンジンだ。2021年にevoの名前が付いたものに改められたもので、それまでのEA288に対してクランクケースをアルミ化しておよそ20kgの軽量化を果たしたものである。従来型に対して音振的にも進化したものだ。
一方のガソリンエンジンは「EA211evo」と呼ばれ、こちらもevoの名が付くが、EA211は元々1リットル3気筒、1.2リットル4気筒、1.4リットル4気筒、などが存在したもので、日本でもいずれのエンジンも使われていた。これに対してevoは1リットル及び1.5リットルとされ、従来の1.4リットルからボア、ストロークを変更して排気量アップしたものである。
どちらのエンジンも日本市場では『ゴルフ8』から採用されている。Tロック用は1.5リットルのみである。従来の1.4リットルに対して燃焼室形状を変え、クランクシャフトやコンロッドなども新しくされた。シリンダーヘッドに排気マニフォールドが一体化しているのは先代と同じだがこのデザインも変更され、同時に最適化が施されている等々、大きく進化したものだ。
性能的には少なくとも机上の数値はほぼ同じ。しかしディーゼルは静粛性とスムーズさが向上し、ガソリンでは元々スムーズだったものがさらにスムーズになって軽快さが増している印象である。
◆ディーゼル対ガソリン、走りの印象は
エンジンの単体重量は不明であるが、車両重量的には日本仕様で1430kg(ディーゼル)と1320kg(ガソリン)で110kg差。そのほとんどはフロントの軸重差であることを考えれば軽快さに差が付くのは当然だ。そんなわけだからディーゼルは比較的どっしりと重厚感のある乗り心地に終始し、一方のガソリン車はひらひらと軽快な印象に終始する。
力強さという点ではやはりディーゼルがガソリンを凌駕するのだが、その状況は比較的速いスピード域(例えば高速道路の70km/h付近以上)からアクセルを踏んで前車を追い越すような時の力強さでディーゼルが勝っているだけで、タウンスピードでの力強さに関しては同等かもしくは出足の良さでむしろガソリンの軽快感がディーゼルを凌駕する印象もある。
忘れてならないのは燃費の良さ。VWのガソリンエンジンはこの燃費の良さでも定評があるが、さすがにディーゼルには及ばず、WLTCでTDIが18.6km/リットルに対しTSIが15.5km/リットル。それでもガソリンでこの値はかなり立派と言って差し支えないと思う。
ディーゼルはスムーズで静粛性が向上しているとはいえ、やはりエンジンが発する騒音は確実に耳に届き、低速走行時でもアクセルを踏んでいればその鼓動は顕著であるが、ガソリンエンジンの方はそれこそ、これならEVじゃなくてもいいよね…というほどの静粛性を見せる。1.5リットルとしての性能はともかくとして、このスムーズさと静粛性の高さという点では確実に他メーカーのライバルを凌いでいると思う。
◆やはりガソリン車の軽快感は捨て難い
最後はお値段。TDI Rラインは車両本体価格460万9000円。一方のTSIスタイルは417万9000円とされ、その差は43万円。普段から長距離を乗るにしてもランニングコストでこの差を吸収するのはなかなか至難の業。それに重厚なディーゼルはそれなりの音振もガソリン車より大きく、何よりもガソリン車の軽快感は捨て難い魅力。
そんなわけだから個人的にはT-Rocに関してはガソリンモデルが魅力的に映った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
◆『ゴルフ8』から搭載、進化したTDI&TSIエンジン
少しエンジンについて細かい説明をしようと思う。まずTDIの方はコードネーム「EA288evo」の名前を持つVWの最新鋭ディーゼルエンジンだ。2021年にevoの名前が付いたものに改められたもので、それまでのEA288に対してクランクケースをアルミ化しておよそ20kgの軽量化を果たしたものである。従来型に対して音振的にも進化したものだ。
一方のガソリンエンジンは「EA211evo」と呼ばれ、こちらもevoの名が付くが、EA211は元々1リットル3気筒、1.2リットル4気筒、1.4リットル4気筒、などが存在したもので、日本でもいずれのエンジンも使われていた。これに対してevoは1リットル及び1.5リットルとされ、従来の1.4リットルからボア、ストロークを変更して排気量アップしたものである。
どちらのエンジンも日本市場では『ゴルフ8』から採用されている。Tロック用は1.5リットルのみである。従来の1.4リットルに対して燃焼室形状を変え、クランクシャフトやコンロッドなども新しくされた。シリンダーヘッドに排気マニフォールドが一体化しているのは先代と同じだがこのデザインも変更され、同時に最適化が施されている等々、大きく進化したものだ。
性能的には少なくとも机上の数値はほぼ同じ。しかしディーゼルは静粛性とスムーズさが向上し、ガソリンでは元々スムーズだったものがさらにスムーズになって軽快さが増している印象である。
◆ディーゼル対ガソリン、走りの印象は
エンジンの単体重量は不明であるが、車両重量的には日本仕様で1430kg(ディーゼル)と1320kg(ガソリン)で110kg差。そのほとんどはフロントの軸重差であることを考えれば軽快さに差が付くのは当然だ。そんなわけだからディーゼルは比較的どっしりと重厚感のある乗り心地に終始し、一方のガソリン車はひらひらと軽快な印象に終始する。
力強さという点ではやはりディーゼルがガソリンを凌駕するのだが、その状況は比較的速いスピード域(例えば高速道路の70km/h付近以上)からアクセルを踏んで前車を追い越すような時の力強さでディーゼルが勝っているだけで、タウンスピードでの力強さに関しては同等かもしくは出足の良さでむしろガソリンの軽快感がディーゼルを凌駕する印象もある。
忘れてならないのは燃費の良さ。VWのガソリンエンジンはこの燃費の良さでも定評があるが、さすがにディーゼルには及ばず、WLTCでTDIが18.6km/リットルに対しTSIが15.5km/リットル。それでもガソリンでこの値はかなり立派と言って差し支えないと思う。
ディーゼルはスムーズで静粛性が向上しているとはいえ、やはりエンジンが発する騒音は確実に耳に届き、低速走行時でもアクセルを踏んでいればその鼓動は顕著であるが、ガソリンエンジンの方はそれこそ、これならEVじゃなくてもいいよね…というほどの静粛性を見せる。1.5リットルとしての性能はともかくとして、このスムーズさと静粛性の高さという点では確実に他メーカーのライバルを凌いでいると思う。
◆やはりガソリン車の軽快感は捨て難い
最後はお値段。TDI Rラインは車両本体価格460万9000円。一方のTSIスタイルは417万9000円とされ、その差は43万円。普段から長距離を乗るにしてもランニングコストでこの差を吸収するのはなかなか至難の業。それに重厚なディーゼルはそれなりの音振もガソリン車より大きく、何よりもガソリン車の軽快感は捨て難い魅力。
そんなわけだから個人的にはT-Rocに関してはガソリンモデルが魅力的に映った。
■5つ星評価
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