【レクサス RX 新型試乗】これぞクロスオーバーSUVの王道!想像をはるかに上回った走りの哲学…野口優

  • レクサス RX500h Fスポーツ パフォーマンス
ラグジュアリーカーにSUVが加わってからというもの、各メーカーは市場の拡大を見通してあらゆるクラスに多くのモデルを投入してきたが、その中でも日本のレクサスはかなり積極的だ。特に『RX』は、1998年の初代から4代目まで実に累計362万台を記録した大人気モデル。その数字が物語るように最重要クラスである。

そのRXもついに5代目がデビューし、先ごろプレス向けの試乗会が行われたのだが、開始早々から「さすがは世界戦略車!」と思わせたところにレクサスの本気度が伝わってきた。

それが最初に試乗した、2.5リットル直列4気筒エンジンに前後モーターを組み合わせたPHEVの「RX450+」である。

◆常に上質さを思わせるPHEV「RX450+」
最近のSUVは、レクサスもその傾向が強いが全体的にスポーティ性をもたせることでドライバーとの一体感のような、ある種リニアなフィールで惹き付けようとするが、このRX450+は、それが行きすぎない程度に収まっているのが好印象だった。特にシャシーに関しては非常に仕上がりがよく、2.5トン近い車両総重量を思わせることもないうえ、逆にバッテリー総電力量18.1kWhの電池パックの重さが功を奏するかの如く、前後の重量バランスを上手く整えているような、絶妙な感触であった。

それもそのはず。新型RXのプラットフォームはすでに多くのモデルに採用されてきた「GA-K」の改良型で、軽量化に加えて底床化を行っている。その結果、重心高は従来型比で15mmダウン、ホイールベースは60mm延長し、トレッドもフロントで15mm、リアは45mm拡大しているというから安定性が増しているし、剛性もかなり高い。さらにリアのマルチリンク式サスペンションも新たに開発され、ショックアブソーバーの配置を見直し、マウントブッシュも改善しているというから尚さらだろう、リア周りの剛性が強化されているにも関わらず、路面の凹凸に対するいなし方がラグジュアリーカーらしく、常に上質さを思わせる。

感心のパワートレインも文句ない仕上がりで、かつ知的だ。システム出力は309ps(エンジン:185ps&228Nm、前後モーター:134ps&270Nm)を誇るから不満など出るわけもないのだが、HVモード時における発進はエンジンとモーターを併用することで、0-100m加速6.5秒をマークするというだけに、SUVとしてはなかなかの俊足。無段変速のCVTによるシームレスな加速も違和感なく、むしろ今後、上質なラグジュアリーを謳うにはこのほうが良いのかもしれない――と、好みではないものの、そう考えさせられるフィールであった。

旋回中に関しても低重心化が効いているおかげで高い安定感で安心感を伴う。モーター駆動によるAWD「E-Four」が100:0から20:80で前後トルク配分を制御する効果も重なることもあって、それなりの走りにも応えてくれることはわずかな試乗時間ながら垣間見えた。

また、今回は試せなかったものの、オートEV/HVモードの選択時に可能となる“先読みエコドライブ”はこのRX450h+を語る上では重要なポイントになることも加えたい。これはナビに目的地を設定すると、駆動用の電池や道路の属性・特性に応じて自動的にEV走行とHV走行を切り替えて効率の良い走りを実現するというもので、非常に興味深い。目的地次第では、EVのみで行き切るのかなど、具体的に試してみないとなんともいえないが、何しろRX450h+のEV走行可能距離はクラストップレベルの86km!である。この数字をみれば、その機能を使って実践してみたくもなるのは当然だろう。

◆クラウンと同じハイブリッドターボの「RX500h」は想像を超えた
ここまで好印象となれば、その上に位置する「RX500h Fスポーツ パフォーマンス」にも期待大となるのは当たり前。と思っていたが、もはやこれが本命かと思えるほど、その内容は濃く、レクサスが「ドライバーの意思に忠実な走りに支える、新たな電動化技術」と謳う、そのアプローチにまずは惹かれてしまった。

RX500hの肝となるのは、レクサスとしては初となる新ハイブリッドシステム。これは新型『クラウン』のRSグレードに搭載されたものと基本は同じで、フロントは2.4リットル直列4気筒ターボに6速ATとモーターを組み合わせ、リアはeアクスルと呼ばれる高出力モーターを搭載、車両の接地荷重に応じて常時4輪の駆動力を制御する「ダイレクト4」を採用した。この新開発のパフォーマンスハイブリッドシステムによる走行性こそがウリだが、実際のフィーリングとしてはダイレクト感が強く、先のRX450h+がラグジュアリーに徹しているのに対して、RX500hはスポーティさを全面に押し出している印象だ。

そう思わせる要因は、まず6速ATとは言うものの、トルクコンバーターの代わりにクラッチを使用してモーターとトランスミッションの間に配置していることにある。しかも加速時におけるわずかな過給のタイムラグに前後のモーターがアシストすることで4気筒+6速とは思えないほど息の長い加速を続けるため、ハイブリッドならではのメリットを活かしきっているのも特筆すべき点。エンジン単体でも275ps&460Nmとトルクフルだが、それよりも76ps&169Nmを出力するリアモーターの効果が大きく、トラクション性能を優先することでスポーティさを強調しているのは明らかだった(ちなみにフロントモーターの出力値は87ps&292Nm)。

無論、このフィーリングはダイレクト4による巧みな制御によるもので、レクサスによれば車輪速センサー、加速度センサー、舵角センサーの情報を元に、前後の駆動配分を100:0~20:80の間で制御することで加速性能と操縦安定性を向上させ、同時に低燃費にもつなげるとのこと。

それに加え、コーナリング時においては、ステアリングの切り始めは70:30~50:50とフロント寄りにし、コーナー脱出時になると50:50~20:80のリア寄りに可変させることで、トラクション性能を確保しながら車両のピッチングを抑えて、スポーティかつニュートラルな旋回フィールを狙っているというから見事だ。さすがは、電動化技術と車両制御技術を融合することでクルマと対話できる走りを実現したと豪語するだけのことはあると感心してしまった。

今回試乗したRX500hには新パッケージの「Fスポーツ パフォーマンス」が加えられているのも好印象の理由だろう。フロントブレーキには6ピストンキャリパーが奢られ、舵角を最大4度まで拡大した後輪操舵システムによる効果も上乗せされている。ワインディングでは例え勾配がきつくてもパワフルで頼もしく駆け上がっていき、コーナーではノーズの入りも良く、SUVとしては実に攻めやすい仕上がりであった。

本音で言えば、そこまで期待はしていなかったが、想像をはるかに上回っていたのは意外。それでいて乗り心地も悪くなく、ごく自然なフィーリングだから納得の連続であった。このAWDシステムは斬新極まりない。さらに攻め込んだら、知られざる一面も見られるような気さえしてくる。これも下山のテストコースによる結果なのはな違いなさそうだ。

◆テクノロジーオタクでなくても惹かれる魅力がある
そして最後は、「RX350」に試乗。2.4リットル直列4気筒ターボエンジンは279ps&430Nmを出力し、FWDとAWDをラインナップしているが、ここではFWD車をテストしたところ、これまでの2台とは違って、さすがに軽快。ハイブリッドシステムを持たないこともあるのだろう、なんともフツウのSUVのように思えてくるが、ラグジュアリー仕立てではあるとはいえ、妙に足まわりが硬く、バタつきも見られるのが気になった。もしや車重が重いRX450h+と同じセッティングなのか?と疑いたくなるほど、車両重量と減衰のバランスがミスマッチ。加速性や安定性など大きな不満はないものの、この乗り心地だけは疑問が残る。

そういった意味では、全グレード共通していえるのが、ドアの閉まり方も同様。スムーズなドア操作と滑らかな操作フィーリングを実現したという電子制御のe-ラッチシステムと呼ばれるドアのアンラッチ機構が備えられているのだが、これがフツウに締めたはずなのになぜか半ドアになってしまう。

撮影中、何度も繰り返したが、常にそこそこ強い力を要求されるのは如何なものだろうか。慣れの問題といえばそれまでかもしれないが、新機構が邪魔をしているようにも思えるから見直しを提案したいところだ。

最後になってしまったが、デザインやパッケージングもレクサスの定義に沿っていて、パワフルかつシャープ。ノーズの長さも功を奏して、クロスオーバーSUVの王道を行くような風格をもっている。インテリアの質感もラグジュアリーらしい仕立てで作り込みも欧州車と比較しても引けを取らないどころか、独自性が強調されていて、レクサスの自信が表れていると思えた。

相変わらず“トヨタ風味”であることも確かだから欧州車からの乗り換えは考えにくいかもしれないが、しかしRX500hの技術的アプローチを知ってしまうと、テクノロジーオタクでなくても惹かれる魅力があると思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

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