【トヨタ プリウス 新型試乗】感性で味わえるプリウス、実用性は想像よりもずっといい…島崎七生人
“一目惚れするデザイン”の開発テーマに嘘偽りなし……だ。シルエットこそ2代目、3代目のモノフォルムを継承するも、より低くスムースに仕上げられたシルエットはさながらショーモデルのよう。『プリウス』である以前に、Cセグメントの1台の4ドア車としてもステキだ。
訊けば先代のあのデザインは、空力の数値目標達成ありきのパッケージングをベースに、前後に個性を盛り込むなどして出来たのだとか。対して新型は、まるで天から舞い降りてきたような1枚のスケッチをチーム全体で共有しながらの開発だったのだそう。たとえばパワートレーンの担当部署でさえ、当初から「このスタイルに見合った走りを作らねば」と士気を高めたという。
◆日本車離れしたニオイも感じさせるスタイル
それにしても見てとれるのは「とにかく低い」ということ。全高は先代比-40mmの1430mm(17インチタイヤ装着車は1420mm)と、かつての『カリーナED』よりは100mm以上は高いが、19インチの大径タイヤが相対的にボディの低さを強調してみせる。
もちろん『ランボルギーニ』か!? と思わせられるフロントスクリーンの強い傾斜はインパクト絶大で、先代よりルーフのピークがグッと後ろに寄せたことで、スポーツカーさながらの小気味よいプロポーションを形成する。サイドシル前半からドアめがけて跳ね上がるキャラクターラインをアクセントに、そのほかのプレスラインを極力廃したところも清々しい。
ただしジックリと観察すれば、ギュッと力漲る前後フェンダー(とくにリヤ)の、よくぞここまでの深いプレスで表現してくれた!と拍手モノの抑揚やカタマリ感、恐縮感、そのリヤフェンダーと後方で絞りを効かせたキャビンの対比など、日本車離れしたニオイも感じる。それとスケッチとの齟齬の小ささにも感心する。
◆視界、取り回し性、居住性は、想像よりもずっといい
インテリアは『bZ4X』とメーターパネル、ステアリング&コラム回りは見た限りほぼ共通。一方でセレクターは、シフトパターンこそこれまで通りだが、レバーがこれまでのプリウスの“縦配置”からセンターコンソールに“水平配置”されたことで、圧倒的に自然で馴染みやすい操作感になった。
気になるAピラーの傾斜による視界と取り回し性の優劣、それと居住性は、想像していたよりもずっといい。とくに心配された(!)乗り込みは、前席は問題なく、後席も頭上の開口部形状が後方までまっすぐに伸びており間口も十分な大きさを確保しているため無理な姿勢はまったく強いられない。乗り込んだ着座状態も、ルーフライニングの“逃げ”は先代ほど腐心した風ではないが、悠々とまではいかないまでもスポーツセダンの後席流のやや低めの着座位置で落ち着いて身体が収まる……そんな印象だ。
ドアミラーの位置をやや後ろに置くなどし視界に不自由さはなく、傾斜したAピラーながら、取り回し性(ステアリング操作に対するクルマの挙動)も自然で良好。日常使いでも傾斜の強いAピラーの理不尽さはなさそう。このスタイルでよくぞここまでの実用になる室内空間を組み立てた……という意味で★5つの評価としている。
◆理性ではなく感性で走りが味わえるようになった
走りも、これまでのプリウスが理性のクルマだったとすれば、感性で走りが味わえるようになったというべきか。HEV車でいうとFFに対し4WDのE-Fourは車重が+60kgとなり「バネとダンパーを、主にリヤ回りの車重増加分に合わせて硬めにセッティングにしている」(トヨタ)のだそう。このため同じ19インチタイヤ同士の試乗車では、主に一般道を流した場合に、FFのほうがしなやかさと路面からの入力の緩和が妥当に行われている実感をもった。
それと動力性能は、燃費を含め改めてジックリと試したいところだが、ハイブリッド車であることを感じさせない自然なマナーに(ステアリングやブレーキのタッチも含めて)感じられた。見るとフロントドアのガラスがラミネート式になっており、走行中のノイズも低く抑えられた印象だ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
訊けば先代のあのデザインは、空力の数値目標達成ありきのパッケージングをベースに、前後に個性を盛り込むなどして出来たのだとか。対して新型は、まるで天から舞い降りてきたような1枚のスケッチをチーム全体で共有しながらの開発だったのだそう。たとえばパワートレーンの担当部署でさえ、当初から「このスタイルに見合った走りを作らねば」と士気を高めたという。
◆日本車離れしたニオイも感じさせるスタイル
それにしても見てとれるのは「とにかく低い」ということ。全高は先代比-40mmの1430mm(17インチタイヤ装着車は1420mm)と、かつての『カリーナED』よりは100mm以上は高いが、19インチの大径タイヤが相対的にボディの低さを強調してみせる。
もちろん『ランボルギーニ』か!? と思わせられるフロントスクリーンの強い傾斜はインパクト絶大で、先代よりルーフのピークがグッと後ろに寄せたことで、スポーツカーさながらの小気味よいプロポーションを形成する。サイドシル前半からドアめがけて跳ね上がるキャラクターラインをアクセントに、そのほかのプレスラインを極力廃したところも清々しい。
ただしジックリと観察すれば、ギュッと力漲る前後フェンダー(とくにリヤ)の、よくぞここまでの深いプレスで表現してくれた!と拍手モノの抑揚やカタマリ感、恐縮感、そのリヤフェンダーと後方で絞りを効かせたキャビンの対比など、日本車離れしたニオイも感じる。それとスケッチとの齟齬の小ささにも感心する。
◆視界、取り回し性、居住性は、想像よりもずっといい
インテリアは『bZ4X』とメーターパネル、ステアリング&コラム回りは見た限りほぼ共通。一方でセレクターは、シフトパターンこそこれまで通りだが、レバーがこれまでのプリウスの“縦配置”からセンターコンソールに“水平配置”されたことで、圧倒的に自然で馴染みやすい操作感になった。
気になるAピラーの傾斜による視界と取り回し性の優劣、それと居住性は、想像していたよりもずっといい。とくに心配された(!)乗り込みは、前席は問題なく、後席も頭上の開口部形状が後方までまっすぐに伸びており間口も十分な大きさを確保しているため無理な姿勢はまったく強いられない。乗り込んだ着座状態も、ルーフライニングの“逃げ”は先代ほど腐心した風ではないが、悠々とまではいかないまでもスポーツセダンの後席流のやや低めの着座位置で落ち着いて身体が収まる……そんな印象だ。
ドアミラーの位置をやや後ろに置くなどし視界に不自由さはなく、傾斜したAピラーながら、取り回し性(ステアリング操作に対するクルマの挙動)も自然で良好。日常使いでも傾斜の強いAピラーの理不尽さはなさそう。このスタイルでよくぞここまでの実用になる室内空間を組み立てた……という意味で★5つの評価としている。
◆理性ではなく感性で走りが味わえるようになった
走りも、これまでのプリウスが理性のクルマだったとすれば、感性で走りが味わえるようになったというべきか。HEV車でいうとFFに対し4WDのE-Fourは車重が+60kgとなり「バネとダンパーを、主にリヤ回りの車重増加分に合わせて硬めにセッティングにしている」(トヨタ)のだそう。このため同じ19インチタイヤ同士の試乗車では、主に一般道を流した場合に、FFのほうがしなやかさと路面からの入力の緩和が妥当に行われている実感をもった。
それと動力性能は、燃費を含め改めてジックリと試したいところだが、ハイブリッド車であることを感じさせない自然なマナーに(ステアリングやブレーキのタッチも含めて)感じられた。見るとフロントドアのガラスがラミネート式になっており、走行中のノイズも低く抑えられた印象だ。
■5つ星評価
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1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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