【トヨタ プリウス 新型試乗】かっこよさ重視で犠牲になった部分もあれど…九島辰也

何かと話題の多い新型『プリウス』だが、公道試乗していろいろわかってきた。プロトタイプをショートサーキットで走らせそのパフォーマンスの高さは感じたが、本来のキャラはもっと身近に接しないとわからない。

試乗したのは2リットルエンジンを搭載したHEVのE-FourとFF、それと1.8リットルエンジンHEVのFFである。

総じて言えるのは、一般道から高速道路までの走り、操作性、乗り心地、すべての面に置いて見た目の印象通りスポーティであること。デザインがスポーティで、中身もそれなりに作り込んでいる。訴求グレードに19インチタイヤを標準装備しているのもそのためだ。乗り心地より、スポーティな走りを優先する。

◆ボディラインはリアフェンダーの膨らみで司られる
今回デザイナーと話して感じたが、その背景にはやはりデザインがあった。豊田章男社長と開発陣の間で、「コモディティvs 愛車」論争があったのは有名なストーリーだが、最終的に「愛車」方向へ舵を切った理由はデザインチームの描いたドローイングにあったとされる。それを見た豊田社長が気に入りゴーサインに至ったようだ。

デザインのキモはフロントマスクや低く構えるボンネットもそうだが、リアフェンダーの膨らみにある。縦の面から横の面への切り替えが重要なポイント。スポーティなボディラインを描くのに必要な要件はまさにそこにあった。ポルシェ『911』に代表されるスポーツカーのボディラインはリアフェンダーの膨らみで司られている。

すると当然リアドアハンドルはピラーの近くになるとデザイナーは語った。縦と横の面がクロスする場所にドアハンドルは設置できないからだ。つまり、何かを真似したのではなく、必然的にそこになったことを意味する。

ちなみに、デザイナーとの雑談の中で、従来型にこのデザインを当てはめると不恰好になってしまったエピソードがあった。そこでパッケージングから見直すことが出来、このデザインが成立したという。思わずレクサス『LC』誕生話を思い出した。あの時は既存の『GS』ベースに斬新なデザインをはめ込んだら人が乗れなかったそうだ。

◆かっこよさ重視で犠牲になった部分もあれど
ということで、見た目にかっこいいスポーティなプリウスが誕生した。開発陣の狙いは上々で、リアルでもネットでも話題を集めている。ただ、そのために犠牲になった部分もある。ドライビングポジションが合わない人もいるだろうし、一般道での19インチの乗り心地に疑問を持つ人もいるだろう。が、それもこれもが新型プリウスと考えるべきである。

中庸なクルマよりエッジの効いたクルマの方がハマる人にはハマる。要するに「愛車」になれるというものだ。その意味でも3月に発売されるPHEVはより楽しみである。さらなるパワフルな走りがこいつの個性をより発揮してくれるに違いない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。

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