【トヨタ プリウス 新型試乗】がらりと変わった『プリウス』は、何を狙っているのか?…岩貞るみこ
のびやかで美しいフォルム。うしろ姿、特に夜のテールライトとたたずまいがきれいだ。どうしたんだ、プリウス。まるで、Instagramで流行りのBefore/Afterのように、先代と見比べるとびっくりするほどの洗練されっぷりである。
万能受けするプリウスだが価格帯が高めであることから、おじさん、いや、そう思っているのは本人だけで、Z世代からはおじいさんにカテゴライズされる世代に多く選ばれていた。しかし今回は、外観デザインからも内装のクォリティの高さからも、美意識を強調し、洗練されたクラスを狙っていることがよくわかる。
◆並み居るHVの中でも群を抜く加速の気持ちよさ
インパネは、見たこともないコンパクトで独創的なデザイン。必要な情報だけをきゅっとまとめて集中させている。シフトレバーは左腕の角度を変えるだけですぐに届く位置であるセンターコンソールに移築され、操作時のからだの動きを減らしている。これ、すごく使いやすい。さらに、大きな画面のカーナビは、消費電力はいかほどかと心配になるけれど、見やすいことは間違いない。
走りはウルトラスムーズだ。今回試乗したグレードの「Z」は、2リットルエンジン搭載のハイブリッド(以下HV)だが、並み居るHVの中でも加速の気持ちよさは群を抜く。滑らかさは言うまでもないのだが、アクセルの踏み心地が軽すぎず重すぎず、それでいて手応え(足応え)がリニアに伝わってくるのだ。この絶妙な味付け! 加えて、ハンドルの握り心地と操作感もアクセル操作で感じたものと同じ感覚で応えてくれるため、伝わってくる感触に一体感があるのである。
プリクラッシュセーフティでは、歩行者(昼夜)や二輪車(昼のみ)も検知してくれる。今回、工事の誘導お兄さんや、左折すべく減速をかけたスクーターに出くわしたけれど、すべてしっかり反応して減速した。かなりの減速力なので「見えてるよ!」と反感を抱きそうになるけれど、減速することで事故を回避する確率が上がるだけでなく、ドライバーが存在を確実に認識できるのでかなり有効だ。
また、車内のイルミネーションは、走行時、前方のクルマが発進するとさりげなく光を強くして教えてくれたり(いきなり音がすると、同乗者に知られて恥ずかしいことが多々ある)、夜間、車両に近づくと車内灯がついてほんのり明るく照らしてくれるなど、人の感情に寄り添ったおもてなしである。
◆プリウスだけを責めるのは違うけれど
ただ、褒め殺しもどうかと思うので重箱の隅をつつくとしたら、シートヒーターなどのオンオフ状態を示す緑色のスイッチのライトが、やたら輝度が高くまぶしいうえ、ちゃちくて安っぽいのは残念だし、私のドラポジである、シート座面を一番下まで下げると、後席の人の靴先がシート下に入らなくなって窮屈だし、乗り降りするときにドア枠に頭をぶつけそうだし、後席は身長170cmの私が座ると天井に髪がふれそうだしというのはある。
さらに、コンパクトにまとめたインパネなのに、オートブレーキホールド(信号待ちのときにブレーキペダルから足を離しても前に進まない機能)をオンにしたり、コーナーセンサー(駐車するときなど、障害物に接近すると音で知らせてくれる機能)をオフにすると、これらのマークがばっちり表示されるので目障りなのだ。自分のクルマなら一度、設定したら忘れないから、いちいち表示しなくてもと思うのである。
ただ、プリウスだけを責めるのは違うということも事実。これには国交省も関係していて、「表示しなくてはいけません」という決まりがあるからだ。とはいえ昨今のクルマはさまざまな機能が搭載されて警告灯等が増え、表示すべきものが多くなり、わけわからなくなってきている。国交省ではこうしたユーザーの声をうけて、表示の仕方を整理していこうという動きが出始めているのだが、プリウスは「早く整理してくれないと、ほら、こんな感じにしかなりませんよ」と訴えているような気がしないでもないのである。
◆新たな「クルマ」を世の中に突き付けた
今回のワンポイント確認である「がらりと変わったプリウスは、何を狙っているのか」は、常識を捨て去り、新たな「クルマ」というものをひとつずつゼロから考えた結果を世の中に突き付けたプリウスは、そこから始まる新たなクルマのムーブメントを生み出そうと狙っているのである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。
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