【BYD ドルフィン 新型試乗】走りは「普通」? スタンダードとロングレンジの大きな違いは…中村孝仁

  • BYD ドルフィン ロングレンジ
今年初頭、初めてBYDの『ATTO3』というモデルに試乗した時、かなりポテンシャルのあるクルマであると書いた。そのBYDの第2弾となるモデルが『ドルフィン』と名付けられたコンパクトSUVである。

◆スタンダードとロングレンジの大きな違い
サイズ的にはBセグメントとCセグメントの中間的ともいえる大きさだが、ホイールベースは2700mmもあり、タイヤを車体の四隅に押しやって、そのタイヤで囲まれる部分にバッテリーを敷き詰めたBEV独特の形状をしていることがわかる。因みに上級モデルともいうべきATTO3とは基本的に同じプラットフォームが用いられている。

流石に車重は重く、Cセグメントのハッチバックとしては比較的大柄な『マツダ3』と比較しても、300kg以上重い(ロングレンジの場合)。グレードは2種存在し、スタンダードモデルと、航続距離を伸ばしたロングレンジがある。この2グレード、単に航続距離が違うだけでなく、モーターの出力からリアのサスペンション構造、それに若干の装備差と結構大きな違いがある。

順番に話していくと、まずモーター出力はスタンダードモデルの70kwに対しロングレンジの方は150kwと、限りなく倍近い出力を持つ。そしてリアサスペンションはスタンダードがトーションビームであるのに対し、ロングレンジの方はマルチリンクが採用されている。

装備面ではスタンダードが運転席のみパワーウィンドーであるのに対しロングレンジでは4ドア全てパワーウィンドーとなる他外装色がスタンダードモデルは全て単色となるのに対し、ロングレンジの方は全てグリーンハウスを黒に塗った2トーンとなるなど、その差はかなり大きい。

販売価格が公表されていないが、恐らく相当な価格差をつけているのではないかと想像できる。そうでないとモノとしてロングレンジが一方的に魅力的に映ってしまうからだ。私が試乗できたのはその上級版のロングレンジである。ATTO3同様、イニシャルでの走りはかなりのポテンシャルを感じさせた。

◆「音」と「ウィンカー」
ATTO3で気になった発進から30km/h以下のうるさい電子疑似音は、歩行者や自転車などにBEVの接近を知らせるいわゆる警告音であることが分かったのだが、今回のドルフィンでは数種類からチョイスでき、試乗時はチャリーンという軽い鈴のような音が設定されていたが、もちろんATTO3と同じ音を出すことも可能。しかし、その逆は不可でATTO3でこの鈴のような音をチョイスすることはできない。

音というテーマでお話をすると面白いと思うところと、「うるせぇなぁ」と思う点が混在した。冒頭のチャリーンについてはATTO3のそれから比べたらだいぶ気にならないものとなったが、それでも気にならないと言ったら嘘になるし、制限速度を超えると頻繁に速度超過を伝えるトントンという音も、あまりに頻繁過ぎて迷惑である。一方でウインカーは左と右で、音のトーンが異なっていてこれはユニークで面白いと思った。とはいえ、せっかくの静かな空間が、低速で走る街中では音のオンパレードでちっとも快適でないのはいかがなものかと思う。

そのウィンカーの話だが、一般的に高速などでの車線移動は軽くワンプッシュすると多くのモデルは3回瞬きをしてくれる。トヨタに至っては5回もするのだが、ドルフィンはそれが2回しかしない。そんなわけで車線変更をしようと思っても始めようとした段階でウィンカーが止まる。こうなると、今度は車線維持機能が顔をもたげ、かなり強烈に元の車線にクルマを引き戻そうとする。この車線維持がかなり強烈で、心してかからないと慌てるほどの強さであった。これは要改善である。

◆BEV的痛快さはなく、いたって「普通」
BEVはとかくその目の覚めるような加速感を売り物にするモデルが多いが、BYDの加速感はICE(内燃機関)と似た印象の加速感で、BEV的痛快さは持たないが、却ってそれが個人的には好印象である。フル加速をすればそれなりだが、まあ言ってみれば普通。なのでスタンダードの場合、少し加速性能不足が気になるかもしれないと思えた。

今回は結構しっかりと高速の追い越し車線も走ってみたが、試乗当日が比較的強めの横風が吹いていたこともあるだろうが、直進安定性に難を感じた。外乱にはあまり強くないようである。

ハンドリングはどちらかと言えば少々ダル。まあ、車格や性格を考慮すればこれで十分というレベルには仕上がっているが、運転する楽しみを感じる類のものではない。走行モードはエコ、スタンダード、スポーツの3種が選べるが、エコでも十分に走るし、エコをチョイスしたからと言ってエアコンの出力を下げるようなこともしていないそうなので、飛ばす気がなければエコで十分と思えた。

◆“made in China”に対する風当たりは
というわけで、細かい部分における熟成不足は感じられるものの、全体としての出来は悪くない。それにしても日本市場へのアジャストは相当なもので、車高を立体駐車場に合わせ込んできたり(他の仕向け地用はもう少し高いそうだ)、右ウィンカーレバーを採用したり、対面販売をするためにディーラーネットワークを構築したりと、その本気度は大いに称賛されるだろうが、“made in China”に対する風当たりはいま最も強いのではないかと感じる。まあ、クルマには罪がないので、冷静なジャッジをしたつもりではあるが…。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★
おすすめ度 ★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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