【メルセデスベンツ CLE 海外試乗】CLEは“Eクラス相当”のクーペなのか? 乗り味は意外にも…渡辺慎太郎
◆CLEは、Eクラス相当のクーペなのか?
ことクルマのネーミングに関しては、メルセデスベンツはお世辞にも上手とは言えないところがある。現行モデルの『GLE』は、『MLクラス』や『Mクラス』などを過去にさまざま名乗っていたものの、いまでは「M」が完全に消滅してしまったし、『EQS』や『EQE』のSUV版の車名が『EQS SUV』や『EQE SUV』なんて「そのままじゃんか」と思わず突っ込みたくもなる。
そして今回のニューモデルは『CLE』である。
そもそも「CL」は『Sクラス』のクーペに冠されていた車名だが、それもいつしか『Sクラス・クーペ』となり、クーペルックのセダンとして『CLS』が存在するものの、CLEは4ドアセダンではなく2ドアクーペである。では、CLEは『Eクラス』相当のクーペなのか。当たらずも遠からず、というのが正直なところである。
メルセデスはこれまで、『Cクラス』とEクラスにそれぞれクーペを有していた。ご存知のように、2ドアクーペはたいていのラグジュアリーブランドがラインナップするモデルのひとつであり、いっぽうでだからといって爆発的に売れて台数が稼げるモデルでもない。そこでメルセデスはこの2台を統廃合し、CLEを誕生させたのである。
◆CクラスクーペとEクラスクーペの中間サイズに
プラットフォームはC/E/Sクラスが使う「MRA II」を共有し、従来のCクラスクーペ/Eクラスクーペの間に収まるサイズとした。全長4850mm、全幅1860mm、全高1428mm、ホイールベース2865mmは、Cクラスクーペと比較するとそれぞれ+164mm、+50mm、+23mm、+25mm、Eクラスクーペと比較すると+15mm、0mm、ー2mm、ー8mmで、実際にはEクラスクーペに近い大きさとなっている。
フロントのオーバーハングをリヤよりも短くする“クラシックスタイル”は、新型Eクラスなどにも踏襲されているメルセデス・デザインのテーマのひとつでもある。ルーフの頂点をドライバーの着座位置付近に置き、そこからリヤエンドに向けてなだらかに下っていくルーフラインが、クーペならではのフォルムを形成している。また、Bピラーから後方を絞り込むことで、リヤフェンダー周りを彫刻的な造形とした。セダンやワゴンよりは、パッケージよりもデザイン優先が許されるクーペの特権を存分に活かしたスタイリングと言えるだろう。
過去には124シリーズ、最近ではEクラスクーペなど、メルセデスはクーペのBピラーを排除していたことがある。CLEでもそれが検討されたのかどうか、エンジニアに聞いてみた。
「Bピラーがないほうが、特にサイドウインドウを下げたときにすっきりとして、クーペらしいフォルムが際立つことは分かっています。しかし、Bピラーがないままボディ剛性の確保や側面衝突の要件をクリアしようとすると、相当なボディの重量増が避けられません。エレガントでスポーティな乗り味もこのクルマの大切な魅力なので、今回は断念しました」
◆インテリアの雰囲気、乗り味は限りなくCクラス
CLEのパワートレインは現時点で5種類が用意されている。ディーゼルはCLE220d(200ps/440Nm)の1タイプのみ、ガソリンはCLE200(204ps/320Nm)、CLE200 4MATIC(204ps/320Nm)、CLE300 4MATIC(258ps/400Nm)、そして唯一の6気筒となるCLE450 4MATIC(381ps/500Nm)の4タイプで、いずれも既存のISG仕様のユニットとなっている。PHEVは追って導入予定とのことだった。トランスミッションは9Gトロニックである。
今回の試乗車はCLE220d、CLE300 4MATIC、CLE450 4MATIC。そのすべてに試乗したが、日本仕様はまだ未定とのこと。導入は来年が予定されている。
インテリアは基本的にCクラスと同じで、すでに見慣れた光景だ。後席には大人ふたりが座るに十分なスペースが確保されており、数時間のドライブであればまったく問題ないと思われる。インテリアの雰囲気のみならず、CLEは乗り味もまたCクラスに限りなく近い。
6気筒を搭載するCLE450 4MATICだけはしっとりとした上質感が漂うものの、4気筒モデルはもっとカジュアルな印象が強い。実際に重量が(6気筒よりも)軽いこともあって、スニーカーを履いているような軽快感を伴う。試乗車には可変ダンパーを装備するダイナミック・ボディ・コントロールが組み込まれていて、乗り心地は路面や速度依存が低く全般的に良好だった。
ゲインは高くないけれど適度にレスポンスよく車体が向きを変える操縦性もCクラス譲りである。後輪操舵が装着されていたが、操舵角は2.5度なので、運転中に違和感を覚えるほど唐突にリヤから曲がり始めたりはせず、あくまでも自然な挙動に終始する。クーペだからといって、Cクラスよりもことさらスポーティな方向へ振っていない味付けには、個人的には好感が持てた。
◆2ドアクーペの走りに何を求めるか
動力性能に関しては、今回の3台の中だけで言えばCLE450 4MATICはアクセルコントロールに気を抜くとややオーバースペック気味、CLE220dは実際のスペックよりも快活に走り、CLE300 4MATICは過不足のないパワー感といったところ。4MATICのほうが直進時も旋回時も安定感があるが当然のことながら重量もわずかに増すし、ステアリングに駆動系の振動も加わる。
2ドアクーペのCLEにすっきりとした軽快感を求めるならやっぱり後輪駆動、ゆったり安定感あるドライブを楽しみたいのであれば4MATICがいいかもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
ことクルマのネーミングに関しては、メルセデスベンツはお世辞にも上手とは言えないところがある。現行モデルの『GLE』は、『MLクラス』や『Mクラス』などを過去にさまざま名乗っていたものの、いまでは「M」が完全に消滅してしまったし、『EQS』や『EQE』のSUV版の車名が『EQS SUV』や『EQE SUV』なんて「そのままじゃんか」と思わず突っ込みたくもなる。
そして今回のニューモデルは『CLE』である。
そもそも「CL」は『Sクラス』のクーペに冠されていた車名だが、それもいつしか『Sクラス・クーペ』となり、クーペルックのセダンとして『CLS』が存在するものの、CLEは4ドアセダンではなく2ドアクーペである。では、CLEは『Eクラス』相当のクーペなのか。当たらずも遠からず、というのが正直なところである。
メルセデスはこれまで、『Cクラス』とEクラスにそれぞれクーペを有していた。ご存知のように、2ドアクーペはたいていのラグジュアリーブランドがラインナップするモデルのひとつであり、いっぽうでだからといって爆発的に売れて台数が稼げるモデルでもない。そこでメルセデスはこの2台を統廃合し、CLEを誕生させたのである。
◆CクラスクーペとEクラスクーペの中間サイズに
プラットフォームはC/E/Sクラスが使う「MRA II」を共有し、従来のCクラスクーペ/Eクラスクーペの間に収まるサイズとした。全長4850mm、全幅1860mm、全高1428mm、ホイールベース2865mmは、Cクラスクーペと比較するとそれぞれ+164mm、+50mm、+23mm、+25mm、Eクラスクーペと比較すると+15mm、0mm、ー2mm、ー8mmで、実際にはEクラスクーペに近い大きさとなっている。
フロントのオーバーハングをリヤよりも短くする“クラシックスタイル”は、新型Eクラスなどにも踏襲されているメルセデス・デザインのテーマのひとつでもある。ルーフの頂点をドライバーの着座位置付近に置き、そこからリヤエンドに向けてなだらかに下っていくルーフラインが、クーペならではのフォルムを形成している。また、Bピラーから後方を絞り込むことで、リヤフェンダー周りを彫刻的な造形とした。セダンやワゴンよりは、パッケージよりもデザイン優先が許されるクーペの特権を存分に活かしたスタイリングと言えるだろう。
過去には124シリーズ、最近ではEクラスクーペなど、メルセデスはクーペのBピラーを排除していたことがある。CLEでもそれが検討されたのかどうか、エンジニアに聞いてみた。
「Bピラーがないほうが、特にサイドウインドウを下げたときにすっきりとして、クーペらしいフォルムが際立つことは分かっています。しかし、Bピラーがないままボディ剛性の確保や側面衝突の要件をクリアしようとすると、相当なボディの重量増が避けられません。エレガントでスポーティな乗り味もこのクルマの大切な魅力なので、今回は断念しました」
◆インテリアの雰囲気、乗り味は限りなくCクラス
CLEのパワートレインは現時点で5種類が用意されている。ディーゼルはCLE220d(200ps/440Nm)の1タイプのみ、ガソリンはCLE200(204ps/320Nm)、CLE200 4MATIC(204ps/320Nm)、CLE300 4MATIC(258ps/400Nm)、そして唯一の6気筒となるCLE450 4MATIC(381ps/500Nm)の4タイプで、いずれも既存のISG仕様のユニットとなっている。PHEVは追って導入予定とのことだった。トランスミッションは9Gトロニックである。
今回の試乗車はCLE220d、CLE300 4MATIC、CLE450 4MATIC。そのすべてに試乗したが、日本仕様はまだ未定とのこと。導入は来年が予定されている。
インテリアは基本的にCクラスと同じで、すでに見慣れた光景だ。後席には大人ふたりが座るに十分なスペースが確保されており、数時間のドライブであればまったく問題ないと思われる。インテリアの雰囲気のみならず、CLEは乗り味もまたCクラスに限りなく近い。
6気筒を搭載するCLE450 4MATICだけはしっとりとした上質感が漂うものの、4気筒モデルはもっとカジュアルな印象が強い。実際に重量が(6気筒よりも)軽いこともあって、スニーカーを履いているような軽快感を伴う。試乗車には可変ダンパーを装備するダイナミック・ボディ・コントロールが組み込まれていて、乗り心地は路面や速度依存が低く全般的に良好だった。
ゲインは高くないけれど適度にレスポンスよく車体が向きを変える操縦性もCクラス譲りである。後輪操舵が装着されていたが、操舵角は2.5度なので、運転中に違和感を覚えるほど唐突にリヤから曲がり始めたりはせず、あくまでも自然な挙動に終始する。クーペだからといって、Cクラスよりもことさらスポーティな方向へ振っていない味付けには、個人的には好感が持てた。
◆2ドアクーペの走りに何を求めるか
動力性能に関しては、今回の3台の中だけで言えばCLE450 4MATICはアクセルコントロールに気を抜くとややオーバースペック気味、CLE220dは実際のスペックよりも快活に走り、CLE300 4MATICは過不足のないパワー感といったところ。4MATICのほうが直進時も旋回時も安定感があるが当然のことながら重量もわずかに増すし、ステアリングに駆動系の振動も加わる。
2ドアクーペのCLEにすっきりとした軽快感を求めるならやっぱり後輪駆動、ゆったり安定感あるドライブを楽しみたいのであれば4MATICがいいかもしれない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
渡辺慎太郎|ジャーナリスト/エディター
1966年東京生まれ。米国の大学を卒業後、自動車雑誌『ル・ボラン』の編集者に。後に自動車雑誌『カーグラフィック』の編集記者と編集長を務め2018年から自動車ジャーナリスト/エディターへ転向、現在に至る。
最新ニュース
-
-
日産のフルサイズSUV『アルマーダ』新型、ベース価格は5.6万ドルに据え置き…12月米国発売へ
2024.11.21
-
-
-
軍用ジープが最新モデルで蘇る…ドアなし&オリーブドラブが渋い「ラングラー ウィリス'41」発表
2024.11.21
-
-
-
EV好調のシトロエン『C3』新型、欧州カーオブザイヤー2025最終選考に
2024.11.21
-
-
-
「めっちゃカッコいい」新型レクサス『ES』のデザインにSNSで反響
2024.11.21
-
-
-
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
2024.11.21
-
-
-
日本発の「ペダル踏み間違い防止装置」、世界標準へ…国連が基準化
2024.11.21
-
-
-
楽しく学べる「防災ファミリーフェス」を茨城県の全トヨタディーラーが運営する「茨城ワクドキクラブ」が開催
2024.11.21
-
最新ニュース
-
-
日産のフルサイズSUV『アルマーダ』新型、ベース価格は5.6万ドルに据え置き…12月米国発売へ
2024.11.21
-
-
-
軍用ジープが最新モデルで蘇る…ドアなし&オリーブドラブが渋い「ラングラー ウィリス'41」発表
2024.11.21
-
-
-
EV好調のシトロエン『C3』新型、欧州カーオブザイヤー2025最終選考に
2024.11.21
-
-
-
「めっちゃカッコいい」新型レクサス『ES』のデザインにSNSで反響
2024.11.21
-
-
-
光岡、話題の55周年記念車『M55』を市販化、100台限定で808万5000円
2024.11.21
-
-
-
日本発の「ペダル踏み間違い防止装置」、世界標準へ…国連が基準化
2024.11.21
-
MORIZO on the Road