【BMW i5 M60 新型試乗】途方もないパフォーマンスに思わず「ロケットか!」…中村孝仁
BMW『5シリーズ』が新しくなり、日本市場ではその頂点にMの名を冠するBEV、『i5 M60』が投入されている。
ICE(内燃機関)の5シリーズを試乗する前にこのi5 M60を試乗することになった。前後にモーターを搭載し、フロントは261ps/365Nm、リアは340ps/430Nmというパワーを持つ。システムのトータル出力とトータルトルクはそれぞれ601psと795Nmという途方もないパフォーマンスを持つモデルである。
と、そんなことはつゆ知らずBMW広報からクルマを借り受けて走り始めた。非常に静かで(当たり前)非常にスムーズであることは言うまでもない。
◆見事なほど派手なアンビエントライト
インテリアから見る限りは最新のBMW各モデルと大きく変わるところはなくて、大型のカーブドディスプレイに必要な情報が映し出される。最近のBMWは、車種によってセンターコンソールのiドライブのダイヤルコントローラーがないクルマもあるが、i5にはそれがあるから個人的には使い易い。
クルマを受け取るBMWの広報車置き場は地下4階にある。だから必然的に暗く、電源オンにしていわゆるアンビエントライトが(たまたまグリーンであった)、見事なほど派手、且つ明るくダッシュボード全体を照らし出すのには少々面食らった。最近のドイツ製ハイエンド車はこのアンビエントライトに妙に拘る傾向にあるが、まあ人にもよるだろうが個人的にはもう少し大人し目にしていただけたら…と感じるところがある。
同時期に試乗した新型メルセデスベンツ『Eクラス』のそれはダッシュ全面をピンク色のアンビエントライトで囲まれ(たまたまで色は変えられる)、こちらも面食らったものである。このアンビエントライトが点灯する部分は他の機能も持っていて、ハザードランプをつけると、その部分が赤く点滅する。こいつにも驚かされたけど、こうした安全面を視覚で訴えるという効果は絶大だと感じた。
◆巨体にもかかわらず取り回しが良い
とりあえずまずは無事に家までたどり着いて改めて外観を眺めてみる。伝統のキドニーグリルが真っ黒に塗りつぶされていて、縦の格子は存在しない。電気自動車だからそこに穴をあける必要はないし、こうすることによって既存ICEの5シリーズとは明確な差別化ができるのだろうが、この顔つきにはどうも馴染めず、勝手な意見としてはもう少し表情豊かなものにして欲しいと思った。
静か、スムーズは前述した通りだが、巨体にもかかわらず(全長5060×全幅1900×全高1505mm)実に取り回しが良いことと、カメラに頼ることのない前方の見切りがとても良くて、比較的狭いところでも躊躇することなく入って行けるのはありがたい。数字が示すように車高はかなり高い。必然的に目線が高くなっている効果なのだろうか。これなら何もSUVに乗る必要はないな…とも思ったものである。
◆ロケットか!
若い方は御存じないだろうが、1964年の東京オリンピックにボブ・ヘイズという陸上選手が出場した。100m及び400mリレーで金メダルを獲得した選手である。彼は人類史上初めて100mで10秒の壁を越えた選手だ。この東京オリンピックの頃から、100mのスタートダッシュをロケットスタートと呼ぶようになった。で、件のi5。まさにそのロケットスタートに相応しい加速力を示す。呑気に構えて高速の料金所や前車を追い越そうとアクセルを強く踏み込んだ時、その圧倒的加速で何度自分の頭をヘッドレストにぶつけたことか。それほど強烈なトルクで2360kgもある巨体を加速させる。だから、本気モードでアクセルを踏む時は心しておかないとダメだ。
かつてのエコプロモードを持つドライブモードは、My Modeという仕様に変えられていて、スポーツ、エフィシェント、エクスプレッシブ、リラックス、それにパーソナルといったモードが設定されて、それらに応じて走行性能も変わる。さらにデジタルアートというモードもあり、ディスプレイはドライバー前のディスプレイも含めてアーティスティックな 模様に様変わりする。こちらは走りには無関係だが。
WLTCモードでの可能走行距離は455km。まあそこまでは無理として380kmくらいは走行可能のようである。往復300kmを超えるロングランをしてみたが、十分持ちそうだった(チキンな私はそれでも充電したが)。
「駆け抜ける歓び」(ドイツ語でFreude am Fahren)というフレーズをスローガンにするBMW。それは1960年代からBMWが使う決め言葉。さすがに走りを重視したBMWならではのスローガンだと思うが、i5もそれを見事に体現したモデルだと思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
ICE(内燃機関)の5シリーズを試乗する前にこのi5 M60を試乗することになった。前後にモーターを搭載し、フロントは261ps/365Nm、リアは340ps/430Nmというパワーを持つ。システムのトータル出力とトータルトルクはそれぞれ601psと795Nmという途方もないパフォーマンスを持つモデルである。
と、そんなことはつゆ知らずBMW広報からクルマを借り受けて走り始めた。非常に静かで(当たり前)非常にスムーズであることは言うまでもない。
◆見事なほど派手なアンビエントライト
インテリアから見る限りは最新のBMW各モデルと大きく変わるところはなくて、大型のカーブドディスプレイに必要な情報が映し出される。最近のBMWは、車種によってセンターコンソールのiドライブのダイヤルコントローラーがないクルマもあるが、i5にはそれがあるから個人的には使い易い。
クルマを受け取るBMWの広報車置き場は地下4階にある。だから必然的に暗く、電源オンにしていわゆるアンビエントライトが(たまたまグリーンであった)、見事なほど派手、且つ明るくダッシュボード全体を照らし出すのには少々面食らった。最近のドイツ製ハイエンド車はこのアンビエントライトに妙に拘る傾向にあるが、まあ人にもよるだろうが個人的にはもう少し大人し目にしていただけたら…と感じるところがある。
同時期に試乗した新型メルセデスベンツ『Eクラス』のそれはダッシュ全面をピンク色のアンビエントライトで囲まれ(たまたまで色は変えられる)、こちらも面食らったものである。このアンビエントライトが点灯する部分は他の機能も持っていて、ハザードランプをつけると、その部分が赤く点滅する。こいつにも驚かされたけど、こうした安全面を視覚で訴えるという効果は絶大だと感じた。
◆巨体にもかかわらず取り回しが良い
とりあえずまずは無事に家までたどり着いて改めて外観を眺めてみる。伝統のキドニーグリルが真っ黒に塗りつぶされていて、縦の格子は存在しない。電気自動車だからそこに穴をあける必要はないし、こうすることによって既存ICEの5シリーズとは明確な差別化ができるのだろうが、この顔つきにはどうも馴染めず、勝手な意見としてはもう少し表情豊かなものにして欲しいと思った。
静か、スムーズは前述した通りだが、巨体にもかかわらず(全長5060×全幅1900×全高1505mm)実に取り回しが良いことと、カメラに頼ることのない前方の見切りがとても良くて、比較的狭いところでも躊躇することなく入って行けるのはありがたい。数字が示すように車高はかなり高い。必然的に目線が高くなっている効果なのだろうか。これなら何もSUVに乗る必要はないな…とも思ったものである。
◆ロケットか!
若い方は御存じないだろうが、1964年の東京オリンピックにボブ・ヘイズという陸上選手が出場した。100m及び400mリレーで金メダルを獲得した選手である。彼は人類史上初めて100mで10秒の壁を越えた選手だ。この東京オリンピックの頃から、100mのスタートダッシュをロケットスタートと呼ぶようになった。で、件のi5。まさにそのロケットスタートに相応しい加速力を示す。呑気に構えて高速の料金所や前車を追い越そうとアクセルを強く踏み込んだ時、その圧倒的加速で何度自分の頭をヘッドレストにぶつけたことか。それほど強烈なトルクで2360kgもある巨体を加速させる。だから、本気モードでアクセルを踏む時は心しておかないとダメだ。
かつてのエコプロモードを持つドライブモードは、My Modeという仕様に変えられていて、スポーツ、エフィシェント、エクスプレッシブ、リラックス、それにパーソナルといったモードが設定されて、それらに応じて走行性能も変わる。さらにデジタルアートというモードもあり、ディスプレイはドライバー前のディスプレイも含めてアーティスティックな 模様に様変わりする。こちらは走りには無関係だが。
WLTCモードでの可能走行距離は455km。まあそこまでは無理として380kmくらいは走行可能のようである。往復300kmを超えるロングランをしてみたが、十分持ちそうだった(チキンな私はそれでも充電したが)。
「駆け抜ける歓び」(ドイツ語でFreude am Fahren)というフレーズをスローガンにするBMW。それは1960年代からBMWが使う決め言葉。さすがに走りを重視したBMWならではのスローガンだと思うが、i5もそれを見事に体現したモデルだと思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
最新ニュース
-
-
2倍の速さで自動駐車! メルセデスベンツのパーキングアシストが性能向上
2024.11.29
-
-
-
「超イケてる!」ホンダの本格SUV『パスポート』発表に日本導入を期待する声
2024.11.29
-
-
-
BMW『X3』新型はマイルドHV、Mパフォーマンスも…価格は798万~998万円
2024.11.29
-
-
-
レクサス、日本の伝統工芸に現代技術を融合…アート作品展開催中
2024.11.29
-
-
-
トヨタ『スープラ』生産終了へ、435馬力の最終モデルを発表
2024.11.29
-
-
-
トヨタ『RAV4』が一部改良、FF廃止で全車4WDに
2024.11.29
-
-
-
アウディ、新型『SQ5スポーツバック』発表…367馬力の高性能SUVクーペ
2024.11.29
-
最新ニュース
MORIZO on the Road