トヨタ『ランドクルーザー250』を走り倒して悟った、開発陣の「オフロード」への本気度
話題のトヨタ『ランドクルーザー250』に試乗することができた。と言っても一般道の走りはなく、オフロードコースのみとなる。場所は愛知県の「さなげアドベンチャーフィールド」。オフロードコースをメインにBBQなどを楽しめる施設だ。
ユニークなのはそこに300系(GR)、70系、150系(『ランドクルーザープラド』)が置いてあったこと。4つのモデルの個性を感じながら150から250へ進化した内容を体感することができる。なんて贅沢な試乗会なのだろう。企画者に感謝である。
◆ユーザー目線のバンパー構造
新型250の骨格は、300系でも使われるGA-Fプラットフォームを採用する。一部にハイテン材を使ったラダーフレームで、剛性アップを追求した。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーンでリアがトレーリングアームのコイルスプリング。これは70系とは別物だ。70はこれとは異なるラダーフレームとリアリーフリジッドという保守王道の組み合わせとなる。
パワーユニットは、2.7リットル直4自然吸気のガソリンエンジンと2.8リットル直4ターボディーゼルエンジンから選べる。ランドクルーザー300は3.5リットルV6ツインターボのガソリンと3.3リットルV6ツインターボのディーゼルだから、そこでヒエラルキーを表現しているのだろう。やはり王者は300ということだ。2.8リットル直4ターボディーゼルエンジンは70にも積まれる。
グレードはディーゼルに3種類、ガソリンに1種類となり、前者に力が入っているのがわかる。四駆とディーゼルの親和性が高いのは周知の事実だ。乗車定員はディーゼルに5名と7名があり、3列シートで広くニーズに応えようとしている。価格は520万円スタート。エントリーモデルのGXはオーバーフェンダーが狭いナローボディとなるようなので気になる。“本物感”を楽しむならこちらだ。
スタイリングはいまさらいうまでもないだろう。伝統のスクエアなカタチにこだわりながらモダンさを加えている。個人的にあの太いリアピラーはランクルっぽさを感じて好きだ。ボンネットの左右が盛り上がっているのは四隅の感覚を掴みやすいから。中央部分が凹んでいるのは前方の視界を広くする意味がある。
また、一見してわかりづらいが、バンパーは上下に2分割左右に3分割できるようになっている。つまり6つのピースに分けられるのだ。理由はオフロード走行での破損に対し、修理費を少なくするため。傷ついたパーツの交換が少なくて済むからね。これはありがたい。ユーザー目線に立った構造だ。
◆オフロードで試乗、頼もしく便利な装備
では走らせた印象に話を移そう。試乗車はディーゼルで、コースはダート、ロックセクション、林道、モーグル、フラットロックなど。林道はダウンヒルとヒルクライムだけでなく、小回りを必要とするコーナーもあった。その意味では色とりどりなシーンが試せるのだが、思うに水溜まりがあってもいいかと。渡河性能的なものを感じられるからだ。水深は20~30cmもあれば十分だろう。きっとフォトジェニックになるはず。英国のコースではリアルに川を渡るコースもある。
で、そんなコース設定の中でランドクルーザー250はいい感じに対応する。ローギアードのL4にし、あとはマルチテレインセレクトを路面状況に合わせれば完了。オート、サンド、マッド、ロックから選択する。オートモードは万能のようだが、自分でセットする方が意識を持つためにもベターだろう。ハードな場面ではトヨタ自慢のクロールコントロールを使うのもよし。1km/h~5km/hくらいでじわっとトラクションをタイヤにかけてくれる。あとはステアリングに集中するだけだ。
また、ランクルファミリーらしい必須装備として、センターデフロックはもちろんのことリアデフロック機構も備わる。リアまでロックしてしまえば相当楽だからね。破壊力が一気に上がる。しかもスイッチひとつで行えるのだから簡単。さらに言えば、今回SDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism)なるものが搭載された。これはフロントのスタビライザーをフリーにすることで前脚を伸ばす仕組み。タイヤが空中に浮かんだら元も子もない。他社も持っている機構だが、これはかなり頼もしい装備だ。
オフロード走行中はマルチテレインモニターやアンダーフロアビューをモニターに表示することをお勧めする。車体各所のカメラが周辺路面を映し出して死角をなくしてくれるので安心。大きな岩にガリ! なんてオフロードじゃよくある話。ボディを守る意味でもこれはフル活用したいものである。
◆乗り心地の良い300、頭と腕でコントロールするなら70
ついでと言ってはなんだが、久しぶりに乗ったランドクルーザー300の印象をお伝えすると、走破性のみならずこちらは乗り心地の良さが際立った。可変ダンパーがまるでエアサスのような快適さを乗員に伝える。路面のギャップからの入力はソフトでキャビンを突き上げるような衝撃は皆無。それでいて電子デバイスの破壊力は強く、グイグイと強いトラクションがタイヤを駆動させる。四駆に高級感を加えた感じだ。欠点を強いて上げるなら車両重量の重さだろうが、ドライバーがその手前で回避できれば砂や泥にハマることもないだろう。
でもってこれと対比するのがランドクルーザー70。手を入れているとはいえシャシーの古さは否めない。というか、挙動が昔ながらの四駆の動きをする。ミューの低いロックセクションでは一旦横滑りしきってから立て直す感じ。そのため少しばかり腕が必要となるであろう。クルマを頭と腕でコントロールするという面では最高の相棒だ。
なんて感じでランクルファミリーともどもランドクルーザー250を楽しんだ。予想以上にオフロード用装備を積んでいることに、あらためて開発陣の本気を悟った気がする。次はオンロード試乗となるだろう。街中でこのクルマはどう見えるのか。オフロードが思いのほか似合っていただけに、そちらも興味津々である。
※今回試乗・撮影したランドクルーザー250はプロトタイプのため、販売仕様と異なります。
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。
ユニークなのはそこに300系(GR)、70系、150系(『ランドクルーザープラド』)が置いてあったこと。4つのモデルの個性を感じながら150から250へ進化した内容を体感することができる。なんて贅沢な試乗会なのだろう。企画者に感謝である。
◆ユーザー目線のバンパー構造
新型250の骨格は、300系でも使われるGA-Fプラットフォームを採用する。一部にハイテン材を使ったラダーフレームで、剛性アップを追求した。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーンでリアがトレーリングアームのコイルスプリング。これは70系とは別物だ。70はこれとは異なるラダーフレームとリアリーフリジッドという保守王道の組み合わせとなる。
パワーユニットは、2.7リットル直4自然吸気のガソリンエンジンと2.8リットル直4ターボディーゼルエンジンから選べる。ランドクルーザー300は3.5リットルV6ツインターボのガソリンと3.3リットルV6ツインターボのディーゼルだから、そこでヒエラルキーを表現しているのだろう。やはり王者は300ということだ。2.8リットル直4ターボディーゼルエンジンは70にも積まれる。
グレードはディーゼルに3種類、ガソリンに1種類となり、前者に力が入っているのがわかる。四駆とディーゼルの親和性が高いのは周知の事実だ。乗車定員はディーゼルに5名と7名があり、3列シートで広くニーズに応えようとしている。価格は520万円スタート。エントリーモデルのGXはオーバーフェンダーが狭いナローボディとなるようなので気になる。“本物感”を楽しむならこちらだ。
スタイリングはいまさらいうまでもないだろう。伝統のスクエアなカタチにこだわりながらモダンさを加えている。個人的にあの太いリアピラーはランクルっぽさを感じて好きだ。ボンネットの左右が盛り上がっているのは四隅の感覚を掴みやすいから。中央部分が凹んでいるのは前方の視界を広くする意味がある。
また、一見してわかりづらいが、バンパーは上下に2分割左右に3分割できるようになっている。つまり6つのピースに分けられるのだ。理由はオフロード走行での破損に対し、修理費を少なくするため。傷ついたパーツの交換が少なくて済むからね。これはありがたい。ユーザー目線に立った構造だ。
◆オフロードで試乗、頼もしく便利な装備
では走らせた印象に話を移そう。試乗車はディーゼルで、コースはダート、ロックセクション、林道、モーグル、フラットロックなど。林道はダウンヒルとヒルクライムだけでなく、小回りを必要とするコーナーもあった。その意味では色とりどりなシーンが試せるのだが、思うに水溜まりがあってもいいかと。渡河性能的なものを感じられるからだ。水深は20~30cmもあれば十分だろう。きっとフォトジェニックになるはず。英国のコースではリアルに川を渡るコースもある。
で、そんなコース設定の中でランドクルーザー250はいい感じに対応する。ローギアードのL4にし、あとはマルチテレインセレクトを路面状況に合わせれば完了。オート、サンド、マッド、ロックから選択する。オートモードは万能のようだが、自分でセットする方が意識を持つためにもベターだろう。ハードな場面ではトヨタ自慢のクロールコントロールを使うのもよし。1km/h~5km/hくらいでじわっとトラクションをタイヤにかけてくれる。あとはステアリングに集中するだけだ。
また、ランクルファミリーらしい必須装備として、センターデフロックはもちろんのことリアデフロック機構も備わる。リアまでロックしてしまえば相当楽だからね。破壊力が一気に上がる。しかもスイッチひとつで行えるのだから簡単。さらに言えば、今回SDM(Stabilizer with Disconnection Mechanism)なるものが搭載された。これはフロントのスタビライザーをフリーにすることで前脚を伸ばす仕組み。タイヤが空中に浮かんだら元も子もない。他社も持っている機構だが、これはかなり頼もしい装備だ。
オフロード走行中はマルチテレインモニターやアンダーフロアビューをモニターに表示することをお勧めする。車体各所のカメラが周辺路面を映し出して死角をなくしてくれるので安心。大きな岩にガリ! なんてオフロードじゃよくある話。ボディを守る意味でもこれはフル活用したいものである。
◆乗り心地の良い300、頭と腕でコントロールするなら70
ついでと言ってはなんだが、久しぶりに乗ったランドクルーザー300の印象をお伝えすると、走破性のみならずこちらは乗り心地の良さが際立った。可変ダンパーがまるでエアサスのような快適さを乗員に伝える。路面のギャップからの入力はソフトでキャビンを突き上げるような衝撃は皆無。それでいて電子デバイスの破壊力は強く、グイグイと強いトラクションがタイヤを駆動させる。四駆に高級感を加えた感じだ。欠点を強いて上げるなら車両重量の重さだろうが、ドライバーがその手前で回避できれば砂や泥にハマることもないだろう。
でもってこれと対比するのがランドクルーザー70。手を入れているとはいえシャシーの古さは否めない。というか、挙動が昔ながらの四駆の動きをする。ミューの低いロックセクションでは一旦横滑りしきってから立て直す感じ。そのため少しばかり腕が必要となるであろう。クルマを頭と腕でコントロールするという面では最高の相棒だ。
なんて感じでランクルファミリーともどもランドクルーザー250を楽しんだ。予想以上にオフロード用装備を積んでいることに、あらためて開発陣の本気を悟った気がする。次はオンロード試乗となるだろう。街中でこのクルマはどう見えるのか。オフロードが思いのほか似合っていただけに、そちらも興味津々である。
※今回試乗・撮影したランドクルーザー250はプロトタイプのため、販売仕様と異なります。
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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。
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