【ランドローバー ディフェンダー130 新型試乗】記憶を手繰る限り、最も快適なディフェンダーである…中村孝仁

  • ランドローバー ディフェンダー130
ランドローバー『ディフェンダー』の車名は数字。「90」とか「110」とか来て、今度は「130」である。

従来この名前の付け方にはルールがあって、90は90インチ、110は110インチを表し、それらはいずれも車両のホイールベースを指していた。だから当然今度は130インチのホイールベース持つかと思いきや、実はそうではなかった。ホイールベースは110と同じで3020mmである。では何故130を名乗るのか。

それはまだディフェンダーと呼ばれる前、単にランドローバーと呼ばれていた時代に遡るのだが、当時のモデルの最大車両は、ホイールベースが127インチの「ランドローバー127」であった。しかしキリが悪いということか1991年に車名を130に変更し、以後最大のランドローバーは130と呼ばれるようになったのである。

初代ディフェンダーの時代にはこの130は存在したものの、HCPUと呼ばれるいわゆるダブルキャブピックアップであった。そして今回3列8人乗りモデルを製作するにあたり、ボディはリアのオーバーハングを延長することで3列目の構築ができた。いずれにせよ最大のディフェンダーであることに変わりはなく、車名をかつての130から拝借したというわけである。

◆果たして110がこんなにゆったり快適だったか
エンジンは日本仕様に関しては3リットルターボディーゼルのみに絞った。3列のシートは正直言ってどこに座っても大人が快適に座れる。まあ3列目は2列目の人が少し遠慮してくれることが前提だが。ボディは流石に大きく全長は5275mm。110に比べて330mm長い。もっとも長いのはリアアクスルから後方だけだから、特に内輪差が変わるわけでもないので運転は110と同じようにできる。

ただし、駐車場などで車止めまで一気に背走するのはやめた方が良い。リアオーバーハングが長いことに加えてリアにはスペアタイヤを積んでいるから、通常のクルマに対してリアアクスルより後ろはかなり長いからだ。

実は試乗の間中感じていたことなのだが、非常に快適でゆったりとした乗り味を持っている。果たして110がこんなにゆったり快適だったか、最後に乗ったのは1年ほど前なので確かな記憶はないのだが、それでも130の方が快適に感じられた。リアのオーバーハングが長く、車重が110kgほど重いことが(130が8ウェイシート装備の場合)理由か定かではないが、記憶を手繰る限り、最も快適なディフェンダーである。

◆快適さとその踏破力、十分以上のパフォーマンス
6気筒のターボディーゼルは現在メルセデス、BMW、ジャガー/ランドローバー、それにマツダが搭載車種を持っている。値段が違うからという理由で切り捨てたくはないが、そのスムーズさやエンジン音などでマツダは1段も2段も落ちる。メルセデスは別格のスムーズさと静粛性を持っていて、インジニウムと名付けられたジャガー/ランドローバーのディーゼルは、メルセデスとまではいかないまでもその少し下、レベルの出来栄えで、より遮音性に優れるレンジローバーにも搭載されているから、そちらに乗ればより静粛性が高く感じられることは試乗して実感している。

パフォーマンスに関しては十分満足である。ディフェンダー90のV8搭載車に乗った時は、そのパフォーマンスにリアルスポーツカーと比較できる爆発的加速力を持つと報告しているが、ディーゼルはそんなものは持ち合わせていないものの、ここ一番という時のトルク感はやはりすごい。2.5トンの車重も何のそのである。有難いのはMHEV仕様で、発進時のディーゼルらしいガラガラ感のないこと。それが余計スムーズに感じさせていると思う。

その昔、初めて『ディスカバリー』というモデルが誕生した時に、それをオーストラリアで試乗した。まさに道なき道というか、正直に告白して当時後席に乗っていたランドローバーの技術者に「ここ行くんですか?」と問いかけたものだ。それほど急峻で岩だらけの場所だった。当時のモデルはマニュアルだったが、技術者曰く、絶対にクラッチとブレーキは踏むな!であった。外で行き先を見ているガイドの指示に従ってその急峻をクリアした時、これはクルマじゃなくてサバイバルツールだ!と思ったものである。

それほどランドローバーの踏破力は凄い。ましてディフェンダーならさらにその上を行く(多分)。快適さとその踏破力、十分以上のパフォーマンス、そしてかなりの高級感。その良さはそこはかとなく伝わる。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。

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