【シトロエン ベルランゴ ロング 新型試乗】見事なほどの「実用第一主義」も、間違いなく進化した…中村孝仁
日本市場でいわゆる商用バンとして生を受けたクルマを、ピープルムーバーとして使用するきっかけを作ったのは、ルノー『カングー』だろう。
正直な話、ルノー・カングーはバカ受けした。当然のことながらピープルムーバー仕様が導入されているのだが、その内装や全体のクォリティーは、至ってシンプルかつグレード的にも低さを感じるものだった。最近はかなり豪華な仕様となっているが、それでも所詮は商用車ベースである。
日本の商用車ベースで同じようなクルマを探すとニッサン『NV200』が思い浮かぶ。そしてNV200には「マイルーム」なるカスタマイズカーの設定もあるが、これだとその価格は今回試乗したシトロエン『ベルランゴ ロング』のそれを上回ってしまう。
ともあれ、ルノー・カングーに始まり、それを追いかけて日本にやってきたシトロエン『ベルランゴ』とプジョー『リフター』が、ベースは商用車でありながら、見事にピープルムーバーとしての役割を果たし、比較的人気のある市場を確立した立役者である。そのシトロエン・ベルランゴがマイナーチェンジされた。内容的にはプジョー・リフターと同じで、外観の若干の化粧直しと、内装ではインフォテイメント系のディスプレイの大型化並びにメーターのデジタル化などがそれである。
◆見事なほど実用第一主義
ロングは標準モデルと比べてホイールベースが190mm長い。だから最大積載長、つまりどれだけ長いものを積めるかという話だが、標準が2700mmであるのに対し、ロングは3060mmの長物を載せることができる。
まあ、ピープルムーバーなのだからそのあたりは大きな影響はないと思うが。ベルランゴの良いところは全ての座席が独立していること。つまり、ロングの場合3列で2-3-2という配列で、独立したシートが並ぶ。勿論キャプテンシートではないけれど、椅子が独立しているから、すべてにチャイルドシートを装着することができ、それは2列目だろうが3列目だろうが同じだということで、悪さをする子供を真ん中に座らせることができるのは、経験上とても助かった。
というわけで、筆者は今もって我が家のファミリーカーとしてベルランゴを使っている。そこで、先代モデルと新しいモデル(長さは違うが)の乗り比べを行ってみた。そして結論としては「間違いなく良くなっている」という印象を得た。
相変わらずハードプラスチックで完全武装のインパネは、正直なところ遊び心皆無。少しデコレーションが施されたカングーと比べると、見事なほど実用第一主義である。先代にあったグローブボックスのアクセントだった革風ベルトも姿を消し、インパネ全体に飛んできた飛沫のようなフレークも姿を消した。だから黒一色のインパネとなった。
◆間違いなく進化している
一方で従来ダイヤル式だったシフト操作はレバー式に改められ、使いにくかったクルーズコントロールの操作系が、ステアリングに装備されたことは大いなる改良である。従来もエコとノーマルの走行モードは存在したが、今回はドライブモードのスイッチに改められて、先代のエコスイッチのオン/オフとは異なっている。リフターと違い、スポーツモードはない。
全然違う!と感じさせてくれたのはアクセルレスポンスである。アクセルペダルの踏み始めから2~3cmほど踏み込んだ時の加速感が、ニューモデルははるかに良好で俊敏である。もちろん我が家のクルマはすでに5万km弱走り込んでいるから、同列に比較は出来ないだろうが、それにしてもその違いは顕著であった。1.5リットルのターボディーゼルは実に回転フィールが良い。騒音も十分抑え込まれていて、商用車っぽいエンジンルームからの透過音がきっちりと抑え込まれている点は大いに評価すべきだろう。
ロングになると、標準仕様で装備されるモジュトップとリアのシーリングボックスがない。標準ホイールベースでは少なくともモジュトップの用意はあるという。モジュトップについてはユーザーの間で賛否両論あるようだ。
スライドドアは以前よりも開け閉めが楽になったと言われるものの、依然としてか弱い女性の力では締めるのが大変である。これはベルランゴが持つ数少ないネガ要素の一つだと思う。それでも、クルマは間違いなく進化している。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
正直な話、ルノー・カングーはバカ受けした。当然のことながらピープルムーバー仕様が導入されているのだが、その内装や全体のクォリティーは、至ってシンプルかつグレード的にも低さを感じるものだった。最近はかなり豪華な仕様となっているが、それでも所詮は商用車ベースである。
日本の商用車ベースで同じようなクルマを探すとニッサン『NV200』が思い浮かぶ。そしてNV200には「マイルーム」なるカスタマイズカーの設定もあるが、これだとその価格は今回試乗したシトロエン『ベルランゴ ロング』のそれを上回ってしまう。
ともあれ、ルノー・カングーに始まり、それを追いかけて日本にやってきたシトロエン『ベルランゴ』とプジョー『リフター』が、ベースは商用車でありながら、見事にピープルムーバーとしての役割を果たし、比較的人気のある市場を確立した立役者である。そのシトロエン・ベルランゴがマイナーチェンジされた。内容的にはプジョー・リフターと同じで、外観の若干の化粧直しと、内装ではインフォテイメント系のディスプレイの大型化並びにメーターのデジタル化などがそれである。
◆見事なほど実用第一主義
ロングは標準モデルと比べてホイールベースが190mm長い。だから最大積載長、つまりどれだけ長いものを積めるかという話だが、標準が2700mmであるのに対し、ロングは3060mmの長物を載せることができる。
まあ、ピープルムーバーなのだからそのあたりは大きな影響はないと思うが。ベルランゴの良いところは全ての座席が独立していること。つまり、ロングの場合3列で2-3-2という配列で、独立したシートが並ぶ。勿論キャプテンシートではないけれど、椅子が独立しているから、すべてにチャイルドシートを装着することができ、それは2列目だろうが3列目だろうが同じだということで、悪さをする子供を真ん中に座らせることができるのは、経験上とても助かった。
というわけで、筆者は今もって我が家のファミリーカーとしてベルランゴを使っている。そこで、先代モデルと新しいモデル(長さは違うが)の乗り比べを行ってみた。そして結論としては「間違いなく良くなっている」という印象を得た。
相変わらずハードプラスチックで完全武装のインパネは、正直なところ遊び心皆無。少しデコレーションが施されたカングーと比べると、見事なほど実用第一主義である。先代にあったグローブボックスのアクセントだった革風ベルトも姿を消し、インパネ全体に飛んできた飛沫のようなフレークも姿を消した。だから黒一色のインパネとなった。
◆間違いなく進化している
一方で従来ダイヤル式だったシフト操作はレバー式に改められ、使いにくかったクルーズコントロールの操作系が、ステアリングに装備されたことは大いなる改良である。従来もエコとノーマルの走行モードは存在したが、今回はドライブモードのスイッチに改められて、先代のエコスイッチのオン/オフとは異なっている。リフターと違い、スポーツモードはない。
全然違う!と感じさせてくれたのはアクセルレスポンスである。アクセルペダルの踏み始めから2~3cmほど踏み込んだ時の加速感が、ニューモデルははるかに良好で俊敏である。もちろん我が家のクルマはすでに5万km弱走り込んでいるから、同列に比較は出来ないだろうが、それにしてもその違いは顕著であった。1.5リットルのターボディーゼルは実に回転フィールが良い。騒音も十分抑え込まれていて、商用車っぽいエンジンルームからの透過音がきっちりと抑え込まれている点は大いに評価すべきだろう。
ロングになると、標準仕様で装備されるモジュトップとリアのシーリングボックスがない。標準ホイールベースでは少なくともモジュトップの用意はあるという。モジュトップについてはユーザーの間で賛否両論あるようだ。
スライドドアは以前よりも開け閉めが楽になったと言われるものの、依然としてか弱い女性の力では締めるのが大変である。これはベルランゴが持つ数少ないネガ要素の一つだと思う。それでも、クルマは間違いなく進化している。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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