【試乗記】マツダCX-5 XD Lパッケージ(FF/6AT)
■新・ミスター赤ヘル登場!
マツダCX-5 XD Lパッケージ(FF/6AT)
「マツダCX-5」がフルモデルチェンジ。新型は内外装を一新、G-ベクタリングコントロールなどの最新技術を新たに装備する。2.2リッターディーゼルエンジン搭載の「XD」で、春二番吹き荒れる如月(きさらぎ)の房総を走った。
「マツダCX-5」がフルモデルチェンジ。新型は内外装を一新、G-ベクタリングコントロールなどの最新技術を新たに装備する。2.2リッターディーゼルエンジン搭載の「XD」で、春二番吹き荒れる如月(きさらぎ)の房総を走った。
■美人すぎるSUV
CX-5はマツダの収益の4割を占めている、ということを読者諸兄はご存じだろうと思う。『webCG』でもそう報道されている。マツダの新世代商品群第1弾としてこの小型クロスオーバーSUVが発売されたのは2012年のこと。環境適合のためのSKYACTIVテクノロジーでもってイチから築き上げられ、いまや広島のグローバル販売の4分の1を担う基幹車種、黒田博樹級の大エースなんである。
その黒田投手のように先代CX-5も惜しまれつつ後進に道を譲った。ここに紹介するのは昨2016年末に登場した2代目全面改良モデルのディーゼル搭載車である。「SKYACTIV-D 2.2」と呼ばれるディーゼルは先代の販売の7割を占めた。いわば4番の中の4番、ミスター赤ヘル、山本浩二なんである。投手でいえば、ノーヒットノーランを3回やってのけた外木場義郎、あるいは通算213勝の北別府学、といえるかもしれない。実はよく知りませんけど。
2代目は先代の継承進化型である。いわゆるプラットフォームを引き継ぎ、主にボディー内外を全面刷新した。筆者にとって、webCG編集部の地下駐車場が新型CX-5との初対面の場だった。ギーッと扉が開いて、編集部のワタナベさんが乗って出てきたシルバーの2代目は、う~む、これマイナーチェンジですか。とりわけボディー後半は先代そっくりで、斜め後ろから見ると山本浩二がよみがえったかと思うほどである。
しかし、よくよく見ると、2代目は初代よりも、LEDのヘッドライトが前田健太の目みたいになっていて、サイズはほぼ同じながら、ロングノーズでワイド&ローが強調され、よりスポーツカーライクになっている。具体的にはトレッドを10mm広げてタイヤがボディーの側面ギリギリまで押し出され、Aピラーを35mm後ろに下げている。さらによくよく見れば、面にハリとツヤがある。色気もある。それがシルバーだとよくわからない。ボディー色が新色の「ソウルレッドクリスタルメタリック」、広島カープの赤ヘルのペイントは「ソウルレッドプレミアムメタリック」をイメージしたものだそうだけれど、その「ソウルレッドプレミアムメタリック」よりも彩度を2割、深みを5割増しにして、よりみずみずしくて艶やかな透明感を持ったレッドじゃなかったことが筆者の目をいっそう曇らせていたにちがいない。本当は美人すぎるSUVなのである。
その黒田投手のように先代CX-5も惜しまれつつ後進に道を譲った。ここに紹介するのは昨2016年末に登場した2代目全面改良モデルのディーゼル搭載車である。「SKYACTIV-D 2.2」と呼ばれるディーゼルは先代の販売の7割を占めた。いわば4番の中の4番、ミスター赤ヘル、山本浩二なんである。投手でいえば、ノーヒットノーランを3回やってのけた外木場義郎、あるいは通算213勝の北別府学、といえるかもしれない。実はよく知りませんけど。
2代目は先代の継承進化型である。いわゆるプラットフォームを引き継ぎ、主にボディー内外を全面刷新した。筆者にとって、webCG編集部の地下駐車場が新型CX-5との初対面の場だった。ギーッと扉が開いて、編集部のワタナベさんが乗って出てきたシルバーの2代目は、う~む、これマイナーチェンジですか。とりわけボディー後半は先代そっくりで、斜め後ろから見ると山本浩二がよみがえったかと思うほどである。
しかし、よくよく見ると、2代目は初代よりも、LEDのヘッドライトが前田健太の目みたいになっていて、サイズはほぼ同じながら、ロングノーズでワイド&ローが強調され、よりスポーツカーライクになっている。具体的にはトレッドを10mm広げてタイヤがボディーの側面ギリギリまで押し出され、Aピラーを35mm後ろに下げている。さらによくよく見れば、面にハリとツヤがある。色気もある。それがシルバーだとよくわからない。ボディー色が新色の「ソウルレッドクリスタルメタリック」、広島カープの赤ヘルのペイントは「ソウルレッドプレミアムメタリック」をイメージしたものだそうだけれど、その「ソウルレッドプレミアムメタリック」よりも彩度を2割、深みを5割増しにして、よりみずみずしくて艶やかな透明感を持ったレッドじゃなかったことが筆者の目をいっそう曇らせていたにちがいない。本当は美人すぎるSUVなのである。
■ステアリングフィールは“ホットハッチ”
乗り込むと着座位置がずいぶん高い。都市型クロスオーバーSUVなのに、「ポルシェ・カイエン」みたいだ。実際のサイズよりもでっかいクルマに乗っている心持ちがする。ちなみに最低地上高は210mmで、ライバルの「日産エクストレイル」よりほんのちょっとだけ高い。
計器盤は記憶のなかの「ロードスター」のそれを移植したかのようにスポーツカーライクで、いまどきの自動車としてはシンプルである。試乗車はXDの「Lパッケージ」で、本革シートが奢(おご)られている。このシート、腰の部分がパンと硬くて、いかにも長距離に耐えられそうだ。ドライビングポジションはごく自然で、右足を伸ばせばそこにアクセル、左を伸ばせばブレーキのペダルが配置されている。
走りはじめるとステアリングに前輪駆動っぽいトルクステアが微妙にある。なんとなれば、テスト車は4WDではなくて、前輪駆動だったからだ。2.2リッター4気筒16バルブ・ディーゼルターボの最高出力175ps/4500rpmはともかくとして、42.8kgm/2000rpmという4リッターV8並みの最大トルクを225/55R19のフロントタイヤのみで大地に伝えようというのだから当然だ。ホットハッチのようなステアリングフィールがスタート時にはある。
計器盤は記憶のなかの「ロードスター」のそれを移植したかのようにスポーツカーライクで、いまどきの自動車としてはシンプルである。試乗車はXDの「Lパッケージ」で、本革シートが奢(おご)られている。このシート、腰の部分がパンと硬くて、いかにも長距離に耐えられそうだ。ドライビングポジションはごく自然で、右足を伸ばせばそこにアクセル、左を伸ばせばブレーキのペダルが配置されている。
走りはじめるとステアリングに前輪駆動っぽいトルクステアが微妙にある。なんとなれば、テスト車は4WDではなくて、前輪駆動だったからだ。2.2リッター4気筒16バルブ・ディーゼルターボの最高出力175ps/4500rpmはともかくとして、42.8kgm/2000rpmという4リッターV8並みの最大トルクを225/55R19のフロントタイヤのみで大地に伝えようというのだから当然だ。ホットハッチのようなステアリングフィールがスタート時にはある。
■高速巡航は極めて静か
もうひとつ、ディーゼルだから当然ながら、アイドリング時にガラガラという特有の音と控えめな振動が出る。アイドリングストップ機構が作動して「SKYACTIV-D 2.2」が眠りにつくと、しーんとする。感動的なほど静かである。ブレーキペダルから足を離すと瞬時に目覚め、1620kgの、このクラスの平均的な重量のボディーをぶ厚い大トルクでもって軽々と、一気呵成(かせい)に加速させる。
軽くアクセルペダルを踏んでいる限りタコメーターの針はほとんど2000rpmを超えることはない。100km/h巡航は6段オートマチックのトップで1800rpmといったところで、極めて静かである。80km/hだと1500rpm近辺に過ぎず、ますますもって静か。アクセルを開ければ16バルブDOHCターボのディーゼルエンジンはなんのタメもなく応答し、ごく滑らかに回転を積み上げる。アクセル操作に正確に反応する「DE精密過給制御」、ノック音を低減させる「ナチュラル・サウンド・スムーザー」、「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」といった新たな3つの技術が効いているものと思われる。
バッテリーの充電具合、もしくはブレーキの踏み加減により、信号待ちでアイドリングストップが働かない場合もある。その際のガラガラ音を聞いていたら、ベルリンの壁が壊れた数カ月後、1990年に当時の「マツダ・カペラ(Mazda 626)」のディーゼルで東ヨーロッパを走り回ったことを思い出した。カペラはフルスロットルで長距離を走り続けた。グチひとつこぼさず、黙々と働くおしんのようだった。その連想で、声がでっかくて元気で世話焼きで、「おとみさ」と近所で呼ばれていたウチのおばあさんのことが思い浮かんだ。
新型CX-5は、昔のカペラと違ってアクセルを踏み込むと、若々しくて健康的で清楚で美しい女性がイメージされた。もはや、おしんではなかった。
軽くアクセルペダルを踏んでいる限りタコメーターの針はほとんど2000rpmを超えることはない。100km/h巡航は6段オートマチックのトップで1800rpmといったところで、極めて静かである。80km/hだと1500rpm近辺に過ぎず、ますますもって静か。アクセルを開ければ16バルブDOHCターボのディーゼルエンジンはなんのタメもなく応答し、ごく滑らかに回転を積み上げる。アクセル操作に正確に反応する「DE精密過給制御」、ノック音を低減させる「ナチュラル・サウンド・スムーザー」、「ナチュラル・サウンド・周波数コントロール」といった新たな3つの技術が効いているものと思われる。
バッテリーの充電具合、もしくはブレーキの踏み加減により、信号待ちでアイドリングストップが働かない場合もある。その際のガラガラ音を聞いていたら、ベルリンの壁が壊れた数カ月後、1990年に当時の「マツダ・カペラ(Mazda 626)」のディーゼルで東ヨーロッパを走り回ったことを思い出した。カペラはフルスロットルで長距離を走り続けた。グチひとつこぼさず、黙々と働くおしんのようだった。その連想で、声がでっかくて元気で世話焼きで、「おとみさ」と近所で呼ばれていたウチのおばあさんのことが思い浮かんだ。
新型CX-5は、昔のカペラと違ってアクセルを踏み込むと、若々しくて健康的で清楚で美しい女性がイメージされた。もはや、おしんではなかった。
■軽やかな乗り心地
なにより乗り心地がよかった。先代CX-5もけっして乗り心地の悪いクルマではなかったけれど、なんというか、恬淡(てんたん)としていたように記憶する。新型はストローク感があって、しなやかで、そのしなやかさに味がある。ボディーがしっかりしていて、19インチの大きなタイヤを履きこなしている。SUVなのに軽やかでもある。
フロントのマクファーソンストラット、リアのマルチリンクというサスペンション形式はそのままに、フロントはダンパーのピストン径を拡大して、入力時のリニアさと切り返し時のスムーズさを向上させている。フロントのロワーアームには液体封入式のブッシュを採用して微小な振動を消すなど、細かな改良によって全体を洗練させている。
エンジンでシャシー性能を高める「G-ベクタリングコントロール(GVC)」については判然としなかった。GVCは新型CX-5全車が標準装備する。ドライバーのステアリング操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させることで、車両の横方向と前後方向のG(加速度)を統合的にコントロールし、4輪の接地荷重を最適化する。例えば左コーナー進入時、ドライバーがステアリングを左に切ると、クルマが勝手にエンジンの出力を下げて前荷重にしフロントタイヤのグリップ力を上げて応答性を高め、ステアリングの角度が一定になったらトルクを復元して後輪への荷重移動を行い、安定したコーナリングを実現するというのだ。実際、首都高のカーブ程度ではロールはほとんどしないけれど、スムーズに曲がる印象はある。これがGVCによるものなのかどうか。少なくともGVCは黒子に徹している。
自動ブレーキやらレーンキープ・アシスト・システム等の運転支援システムが最豪華仕様であるLパッケージには漏れなくついてくる。テスト車の車両価格は329万9400円。4WDがマストの場合はあと22万6800円余分に財布から出さねばならない。レザーシートを諦めれば、4WDモデルが200円のおつり付きで手にはいる。
ゆいいつ、ちょっとばかり気になったのはステアリングフィールである。これは大トルクの前輪駆動車の宿命かもしれない。慣れるといえば慣れるし、もしこれにこだわるような人は、FFのSUVなどアウト・オブ・眼中であろう。後席も荷室も広くて、好燃費。理想のファミリーカー、実用車の鑑(かがみ)である。広島の快進撃は当分続くのではあるまいか。なんとなれば、「人馬一体」というクルマづくりの方針に迷いがないからだ。野球チームが「神ってる」のだって、偶然ではない。
(文=今尾直樹/写真=尾形和美/編集=大久保史子)
フロントのマクファーソンストラット、リアのマルチリンクというサスペンション形式はそのままに、フロントはダンパーのピストン径を拡大して、入力時のリニアさと切り返し時のスムーズさを向上させている。フロントのロワーアームには液体封入式のブッシュを採用して微小な振動を消すなど、細かな改良によって全体を洗練させている。
エンジンでシャシー性能を高める「G-ベクタリングコントロール(GVC)」については判然としなかった。GVCは新型CX-5全車が標準装備する。ドライバーのステアリング操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させることで、車両の横方向と前後方向のG(加速度)を統合的にコントロールし、4輪の接地荷重を最適化する。例えば左コーナー進入時、ドライバーがステアリングを左に切ると、クルマが勝手にエンジンの出力を下げて前荷重にしフロントタイヤのグリップ力を上げて応答性を高め、ステアリングの角度が一定になったらトルクを復元して後輪への荷重移動を行い、安定したコーナリングを実現するというのだ。実際、首都高のカーブ程度ではロールはほとんどしないけれど、スムーズに曲がる印象はある。これがGVCによるものなのかどうか。少なくともGVCは黒子に徹している。
自動ブレーキやらレーンキープ・アシスト・システム等の運転支援システムが最豪華仕様であるLパッケージには漏れなくついてくる。テスト車の車両価格は329万9400円。4WDがマストの場合はあと22万6800円余分に財布から出さねばならない。レザーシートを諦めれば、4WDモデルが200円のおつり付きで手にはいる。
ゆいいつ、ちょっとばかり気になったのはステアリングフィールである。これは大トルクの前輪駆動車の宿命かもしれない。慣れるといえば慣れるし、もしこれにこだわるような人は、FFのSUVなどアウト・オブ・眼中であろう。後席も荷室も広くて、好燃費。理想のファミリーカー、実用車の鑑(かがみ)である。広島の快進撃は当分続くのではあるまいか。なんとなれば、「人馬一体」というクルマづくりの方針に迷いがないからだ。野球チームが「神ってる」のだって、偶然ではない。
(文=今尾直樹/写真=尾形和美/編集=大久保史子)
■テスト車のデータ
マツダCX-5 XD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1620kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:18.0km/リッター(JC08モード)
価格:329万9400円/テスト車=333万1800円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1805km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5)/高速道路(5)/山岳路(0)
テスト距離:274.1km
使用燃料:20.5リッター(軽油)
参考燃費:13.4km/リッター(満タン法)/13.6km/リッター(車載燃費計計測値)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1620kg
駆動方式:FF
エンジン:2.2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク:42.8kgm(420Nm)/2000rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(トーヨー・プロクセスR46)
燃費:18.0km/リッター(JC08モード)
価格:329万9400円/テスト車=333万1800円
オプション装備:CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(3万2400円)
テスト車の年式:2017年型
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