【試乗記】日産リーフG(FF)

日産リーフG(FF)【試乗記】

これなら買える

日産リーフG(FF)

2010年の登場以来、電気自動車(EV)普及の立役者として販売されてきた「日産リーフ」。7年ぶりのフルモデルチェンジで登場した新型は、従来型よりも未来感覚あふれる走りと、意外なほどの快適性や静粛性を味わわせてくれた。

見た目はより一般的に

2017年10月に発売された、新型「リーフ」。“日産のデザインランゲージ”であるブーメラン型リアコンビランプが採用されている。
2017年10月に発売された、新型「リーフ」。“日産のデザインランゲージ”であるブーメラン型リアコンビランプが採用されている。
エクステリアは、2015年の東京モーターショーで披露されたコンセプトカー「IDSコンセプト」のデザインが反映されている。
エクステリアは、2015年の東京モーターショーで披露されたコンセプトカー「IDSコンセプト」のデザインが反映されている。
ダッシュボードやシート、ステリングホイールには、日産のEVであることを表現するブルーのステッチが施される。
ダッシュボードやシート、ステリングホイールには、日産のEVであることを表現するブルーのステッチが施される。
バイワイヤ式のシフトセレクター。周辺には、駐車をサポートする「プロパイロット パーキング」のスイッチが置かれる。
バイワイヤ式のシフトセレクター。周辺には、駐車をサポートする「プロパイロット パーキング」のスイッチが置かれる。
「2016年には世界150万台レベルまで普及させる」と、当時のカルロス・ゴーンCEOの言葉は勇ましかったが、残念ながら初代日産リーフの販売はもくろみほどには伸びなかった。それを受けて登場した2世代目の狙いは、初代で果たせなかった普及、量販への再チャレンジである。そのため不評だったポイントが徹底的に見直されると同時に、EVならではのもの、先進性を感じさせるものなど、多くの新機軸が採用されている。

不評で見直された部分としてまず筆頭に記すべきは、一目瞭然のデザインだろう。先進性もスタイリッシュさも欠いた先代のデザインは、それだけで売れない理由としては十分だったというのが筆者の見立て。それが、未来感のようなものはやや後退したかもしれないが、明らかにより広く受け入れやすいものとなった。

一方、インテリアも従来の2段式メーターをやめて、より一般的なデザインになっているが、さすがにこちらは没個性という感が否めない。せめてクオリティーがもう少し高ければいいのだが、ダッシュボードは全面ハードパッドだし、ドアトリムはガラスとともに先代からの流用。ブラックでは暗く沈んだ感じだから、せめて明るいエアリーグレーを選びたい。

2017年10月に発売された、新型「リーフ」。“日産のデザインランゲージ”であるブーメラン型リアコンビランプが採用されている。
2017年10月に発売された、新型「リーフ」。“日産のデザインランゲージ”であるブーメラン型リアコンビランプが採用されている。
エクステリアは、2015年の東京モーターショーで披露されたコンセプトカー「IDSコンセプト」のデザインが反映されている。
エクステリアは、2015年の東京モーターショーで披露されたコンセプトカー「IDSコンセプト」のデザインが反映されている。
ダッシュボードやシート、ステリングホイールには、日産のEVであることを表現するブルーのステッチが施される。
ダッシュボードやシート、ステリングホイールには、日産のEVであることを表現するブルーのステッチが施される。
バイワイヤ式のシフトセレクター。周辺には、駐車をサポートする「プロパイロット パーキング」のスイッチが置かれる。
バイワイヤ式のシフトセレクター。周辺には、駐車をサポートする「プロパイロット パーキング」のスイッチが置かれる。

大きく変わったスペック

試乗の途中で充電を行う筆者。充電ポートは先代モデルと同様、車両のノーズ部分に設けられている。
試乗の途中で充電を行う筆者。充電ポートは先代モデルと同様、車両のノーズ部分に設けられている。
利用可能な充電ポイントは、ナビ画面で検索可能。日産によれば、2017年3月の時点で、急速充電器は全国に7108基、普通充電器は2万0727基設置されている。
利用可能な充電ポイントは、ナビ画面で検索可能。日産によれば、2017年3月の時点で、急速充電器は全国に7108基、普通充電器は2万0727基設置されている。
バイオPETを素材に用いた「リーフG」のシート。シートヒーターが標準で備わる。
バイオPETを素材に用いた「リーフG」のシート。シートヒーターが標準で備わる。
JC08モードで400kmの航続距離を実現した新型「リーフ」。一方で、0-100km/hの加速タイムは先代比で15%短縮された。
JC08モードで400kmの航続距離を実現した新型「リーフ」。一方で、0-100km/hの加速タイムは先代比で15%短縮された。
ともあれ、個性を狙ってもハズしてしまえば受け入れられない。それなら、仮にキャラクターは薄くても、多くの人に嫌われないデザインを。おそらく狙いは、そんなところに違いない。

カタチはそんな風に受け入れられるとして、問題は中身だ。EVへの懸念として筆頭に挙げられるのは航続距離。新型リーフはJC08モードで、先代後期型の280kmから一気に400kmへの飛躍的な向上を実現した。デビュー当時のリーフは航続距離200kmだったのだから、実に倍である。

そのためリチウムイオンバッテリーは、従来の30kWhから同サイズのままで40kWhへと容量を拡大している。充電所要時間は、急速充電で「80%まで40分」となる。

一方、新技術で注目されるのは、まずe-Pedalである。「ノートe-POWER」に採用された「e-POWER DRIVE」と同様、アクセルペダルをオフにすると減速Gを発生し、ブレーキペダルをほとんど使わないワンペダルドライブを可能とするこのシステムは、減速Gがさらに高められ、さらには油圧ブレーキも併用することで、より緻密な制御、完全停止に停止保持までできるようになった。

試乗の途中で充電を行う筆者。充電ポートは先代モデルと同様、車両のノーズ部分に設けられている。
試乗の途中で充電を行う筆者。充電ポートは先代モデルと同様、車両のノーズ部分に設けられている。
利用可能な充電ポイントは、ナビ画面で検索可能。日産によれば、2017年3月の時点で、急速充電器は全国に7108基、普通充電器は2万0727基設置されている。
利用可能な充電ポイントは、ナビ画面で検索可能。日産によれば、2017年3月の時点で、急速充電器は全国に7108基、普通充電器は2万0727基設置されている。
バイオPETを素材に用いた「リーフG」のシート。シートヒーターが標準で備わる。
バイオPETを素材に用いた「リーフG」のシート。シートヒーターが標準で備わる。
JC08モードで400kmの航続距離を実現した新型「リーフ」。一方で、0-100km/hの加速タイムは先代比で15%短縮された。
JC08モードで400kmの航続距離を実現した新型「リーフ」。一方で、0-100km/hの加速タイムは先代比で15%短縮された。

室内の快適性に驚く

「リーフ」には先進運転支援システム「プロパイロット」が標準装備される。写真は、ステアリングスポーク上の操作スイッチ。
「リーフ」には先進運転支援システム「プロパイロット」が標準装備される。写真は、ステアリングスポーク上の操作スイッチ。
新型「リーフ」では、ノイズの侵入経路となるすき間を徹底的に排除するなど、「プレミアムセダン並みの静粛性」が追求された。
新型「リーフ」では、ノイズの侵入経路となるすき間を徹底的に排除するなど、「プレミアムセダン並みの静粛性」が追求された。
後席の様子。駆動用バッテリーの容量が拡大された新型「リーフ」だが、サイズは先代から変わらず。ゆとりの居住空間が確保されている。
後席の様子。駆動用バッテリーの容量が拡大された新型「リーフ」だが、サイズは先代から変わらず。ゆとりの居住空間が確保されている。
電気モーターは、最高出力150ps、最大トルク320Nmを発生。先代に比べて、それぞれ41psと66Nmアップした。
電気モーターは、最高出力150ps、最大トルク320Nmを発生。先代に比べて、それぞれ41psと66Nmアップした。
そして日産車では3モデル目となる、「プロパイロット」も搭載された。これは設定速度のキープ、前走車への追従だけでなく、ステアリングのアシストによる車線キープも行うことで、高速道路での巡航や渋滞時などの運転負担を軽減する。また、画面上で駐車したい位置を指定するだけで、ギアチェンジやパーキングブレーキまで含めたすべての操作を自動で行う、自動駐車機能の「プロパイロット パーキング」も用意された。

もっとも、これら飛び道具が無くても走りっぷりは十分、インパクトがあると言っていい。驚くのは快適性の高さ。静粛性が非常に高く、またサスペンションが非常にソフトで、ふんわりとした乗り心地なのだ。特に印象的なのは、後席。スペースの広さもあって、まさにひとクラス上の感覚を味わえる。

ただし、乗り心地に振ったセッティングのおかげで、フットワークのキビキビ感は若干スポイルされてしまった。走りの楽しさでリーフにほれていた人にとっては、ちょっと残念なところかもしれない。

動力性能は、まったく不満を感じさせない。最高出力150ps、最大トルク320Nmとスペックは大幅に向上しており、加速は力強い。アクセル操作に対する力の出方はよく吟味されていて、発進は動き出しから滑らかだし、必要とあれば即座に、意のままに力を引き出すこともできる。高い静粛性、シームレスな加速感と相まって、とても上質で、そしてこれまで以上に未来感覚の走りを楽しめるのである。

「リーフ」には先進運転支援システム「プロパイロット」が標準装備される。写真は、ステアリングスポーク上の操作スイッチ。
「リーフ」には先進運転支援システム「プロパイロット」が標準装備される。写真は、ステアリングスポーク上の操作スイッチ。
新型「リーフ」では、ノイズの侵入経路となるすき間を徹底的に排除するなど、「プレミアムセダン並みの静粛性」が追求された。
新型「リーフ」では、ノイズの侵入経路となるすき間を徹底的に排除するなど、「プレミアムセダン並みの静粛性」が追求された。
後席の様子。駆動用バッテリーの容量が拡大された新型「リーフ」だが、サイズは先代から変わらず。ゆとりの居住空間が確保されている。
後席の様子。駆動用バッテリーの容量が拡大された新型「リーフ」だが、サイズは先代から変わらず。ゆとりの居住空間が確保されている。
電気モーターは、最高出力150ps、最大トルク320Nmを発生。先代に比べて、それぞれ41psと66Nmアップした。
電気モーターは、最高出力150ps、最大トルク320Nmを発生。先代に比べて、それぞれ41psと66Nmアップした。

“走りの幅”が広がった

回生ブレーキと機械式ブレーキが統合制御される新型「リーフ」。日常走行における減速の約9割をアクセルペダルの操作だけでカバーできる。
回生ブレーキと機械式ブレーキが統合制御される新型「リーフ」。日常走行における減速の約9割をアクセルペダルの操作だけでカバーできる。
メーターパネルは、7インチディスプレイとアナログメーターを組み合わせた非対称なデザイン。
メーターパネルは、7インチディスプレイとアナログメーターを組み合わせた非対称なデザイン。
スマートフォン用の専用アプリを利用することで、車外でも充電状況のチェックやエアコンの設定などが可能になる。
スマートフォン用の専用アプリを利用することで、車外でも充電状況のチェックやエアコンの設定などが可能になる。
荷室の容量は435リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで、さらに拡大できる。
荷室の容量は435リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで、さらに拡大できる。
新型「リーフ」には、テスト車と同様の2トーンカラーが6種類、モノトーンが8種類、計14種類のボディーカラーがラインナップされる。
新型「リーフ」には、テスト車と同様の2トーンカラーが6種類、モノトーンが8種類、計14種類のボディーカラーがラインナップされる。
e-Pedalをオンにしていると、アクセルオフでの減速度は最大で0.2Gにも達する。また加速も強力だから、ノートe-POWERよりも慣れるのに時間が必要な感はあるものの、負担は確実に減るし、何より楽しい。e-Pedalはオン/オフ可能で、しかもDレンジとBレンジが選べるから、好みで、あるいは状況に応じて、望むドライバビリティーを自分で見つけ出すことが可能だ。

高速道路ではプロパイロットも試した。特に「セレナ」との比較で感じるのは、直進の制御が非常に洗練されたこと。あるいは制御以前に、クルマ自体の直進性、路面追従性のよさの方が貢献度は大きいかもしれない。安心して使えるシチュエーションがさらに広がっているのは間違いないだろう。

日産本社にて新型リーフの試乗車を借用した時、バッテリーは100%充電の状態で航続可能距離は257kmと表示されていた。400kmを期待していると肩すかしをくらうかもしれないが、実際にはこれだけ走るならば日常の利便性は相当に高まる。東京~箱根間の往復ぐらいなら途中での充電は不要だし、やはり東京から、浜名湖まで休憩も挟まずノンストップで行くということはめったにないだろうと考えれば、今までリーフが購入候補に挙がらなかった人でも、検討の余地アリと考えるに違いない。もちろん従来のユーザーにしてみたら、迷う理由はないように思える。

しかも何より世の中、今はまさにEVブームである。今度こそリーフ、思惑通りのセールスを実現できるのではないだろうか?

(文=島下泰久/写真=田村 弥/編集=関 顕也)

回生ブレーキと機械式ブレーキが統合制御される新型「リーフ」。日常走行における減速の約9割をアクセルペダルの操作だけでカバーできる。
回生ブレーキと機械式ブレーキが統合制御される新型「リーフ」。日常走行における減速の約9割をアクセルペダルの操作だけでカバーできる。
メーターパネルは、7インチディスプレイとアナログメーターを組み合わせた非対称なデザイン。
メーターパネルは、7インチディスプレイとアナログメーターを組み合わせた非対称なデザイン。
スマートフォン用の専用アプリを利用することで、車外でも充電状況のチェックやエアコンの設定などが可能になる。
スマートフォン用の専用アプリを利用することで、車外でも充電状況のチェックやエアコンの設定などが可能になる。
荷室の容量は435リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで、さらに拡大できる。
荷室の容量は435リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで、さらに拡大できる。
新型「リーフ」には、テスト車と同様の2トーンカラーが6種類、モノトーンが8種類、計14種類のボディーカラーがラインナップされる。
新型「リーフ」には、テスト車と同様の2トーンカラーが6種類、モノトーンが8種類、計14種類のボディーカラーがラインナップされる。

テスト車のデータ

日産リーフG
日産リーフG
今回試乗した最上級グレード「リーフG」の17インチアルミホイール。タイヤは「ダンロップ・エナセーブEC300」が組み合わされていた。
今回試乗した最上級グレード「リーフG」の17インチアルミホイール。タイヤは「ダンロップ・エナセーブEC300」が組み合わされていた。
「G」グレードには、カメラを使って後方の映像を映し出す「インテリジェント ルームミラー」が標準で備わる。
「G」グレードには、カメラを使って後方の映像を映し出す「インテリジェント ルームミラー」が標準で備わる。
2つ並んだ充電ポートは、左が急速充電用で、約40分で80%充電可能。右は普通充電用で、3kWのもので満充電まで約16時間、6kWのものは約8時間を要する。
2つ並んだ充電ポートは、左が急速充電用で、約40分で80%充電可能。右は普通充電用で、3kWのもので満充電まで約16時間、6kWのものは約8時間を要する。
車載の200V充電ケーブル。コントロールボックス付きで、全長は7.5m。
車載の200V充電ケーブル。コントロールボックス付きで、全長は7.5m。
日産リーフG

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1790×1540mm
ホイールベース:2700mm
車重:1510kg
駆動方式:FF
モーター:交流同期電動機
最高出力:150ps(110kW)/3283-9795rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/0-3283rpm
タイヤ:(前)215/50R17 91V/(後)215/50R17 91V(ダンロップ・エナセーブEC300)
一充電最大走行可能距離:400km(JC08モード)
交流電力量消費率:120Wh/km(JC08モード)
価格:399万0600円/テスト車=425万9514円
オプション装備:ブリリアントホワイトパール<3P>+オーロラフレアブルーパール<P>2トーン<特別塗装色>(7万0200円)/寒冷地仕様<後席クッションヒーター+後席ヒーター吹き出し口+不凍液濃度アップ[50%]>(2万7000円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー(3万9054円)/デュアルカーペット<フロアカーペット[消臭機能付き]、ブラック+ラバーマット>寒冷地仕様車用(3万3800円)/トノカバー(1万9800円)/LEDフォグランプ(6万8962円)/ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ1面+フロントドアガラス2面 はっ水処理>(1万0098円)

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1311km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:147.0km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:6.2km/kWh(車載電費計計測値)

日産リーフG
日産リーフG
今回試乗した最上級グレード「リーフG」の17インチアルミホイール。タイヤは「ダンロップ・エナセーブEC300」が組み合わされていた。
今回試乗した最上級グレード「リーフG」の17インチアルミホイール。タイヤは「ダンロップ・エナセーブEC300」が組み合わされていた。
「G」グレードには、カメラを使って後方の映像を映し出す「インテリジェント ルームミラー」が標準で備わる。
「G」グレードには、カメラを使って後方の映像を映し出す「インテリジェント ルームミラー」が標準で備わる。
2つ並んだ充電ポートは、左が急速充電用で、約40分で80%充電可能。右は普通充電用で、3kWのもので満充電まで約16時間、6kWのものは約8時間を要する。
2つ並んだ充電ポートは、左が急速充電用で、約40分で80%充電可能。右は普通充電用で、3kWのもので満充電まで約16時間、6kWのものは約8時間を要する。
車載の200V充電ケーブル。コントロールボックス付きで、全長は7.5m。
車載の200V充電ケーブル。コントロールボックス付きで、全長は7.5m。

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