【試乗記】レクサスRX450hL(4WD/CVT)
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- レクサスRX450hL(4WD/CVT)
進化に期待
「レクサスRX」のラインナップに加わった「RX450hL」。全長を延長して、3列シートレイアウトを採用した新たなフラッグシップモデルは、ラグジュアリーSUVの分野にいかなる価値を創出したのだろうか。都市部での試乗を通じてじっくり考えた。
レクサスのハリウッド進出
レクサスが革新的なニューモデルを発表するという。モデル名は「スカイジェット」。パワーユニットは燃料電池で、入れ替え式の超小型水素タンクを使って長距離を移動できる。スピンドルグリルはフロントからルーフに続くグラスエリアと一体化しており、大胆な手法は新時代のデザインを予感させるものだ。発売は西暦2740年なので、手に入れるには700年ほど待つ必要がある。
もちろん、これは現実世界の話ではない。リュック・ベッソン監督の映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』に登場する1人乗り宇宙船のことだ。映画会社とのコラボは珍しいことではなく、以前から自動車メーカーが作った未来のモデルがSF映画に提供されている。2004年の『アイ,ロボット』にはアウディの「RSQ」というコンセプトモデルが使われていた。2035年という設定で、当然のように自動運転車である。モックアップがパリサロンにも出品されていたから、気合の入ったデザインだったようだ。
アウディは2013年の『エンダーのゲーム』にも「フリート・シャトル・クワトロ」というモデルを登場させていた。未来的なクルマといえばアウディというイメージが定着していたが、レクサスがその地位を奪った形である。日本人としては、慶賀すべき快挙ではないか。世間でブランドイメージが確立されていなければ、映画で重要な役割を与えられることはない。2017年の『トランスフォーマー/最後の騎士王』では、悪人どもが真っ黒な「レクサスRX450h」を何台も連ねて登場するシーンがあった。RXがプレミアムSUVとして確実に認知度を高めていることを証明している。
ハリウッドが認めるRXの最新モデルに試乗した。昨年12月から加わったロングボディー版の「RX450hL」である。レクサスでは「LX」に続く3列シートSUVだ。人気急上昇中のマーケットをみすみす逃すわけにはいかない。
もちろん、これは現実世界の話ではない。リュック・ベッソン監督の映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』に登場する1人乗り宇宙船のことだ。映画会社とのコラボは珍しいことではなく、以前から自動車メーカーが作った未来のモデルがSF映画に提供されている。2004年の『アイ,ロボット』にはアウディの「RSQ」というコンセプトモデルが使われていた。2035年という設定で、当然のように自動運転車である。モックアップがパリサロンにも出品されていたから、気合の入ったデザインだったようだ。
アウディは2013年の『エンダーのゲーム』にも「フリート・シャトル・クワトロ」というモデルを登場させていた。未来的なクルマといえばアウディというイメージが定着していたが、レクサスがその地位を奪った形である。日本人としては、慶賀すべき快挙ではないか。世間でブランドイメージが確立されていなければ、映画で重要な役割を与えられることはない。2017年の『トランスフォーマー/最後の騎士王』では、悪人どもが真っ黒な「レクサスRX450h」を何台も連ねて登場するシーンがあった。RXがプレミアムSUVとして確実に認知度を高めていることを証明している。
ハリウッドが認めるRXの最新モデルに試乗した。昨年12月から加わったロングボディー版の「RX450hL」である。レクサスでは「LX」に続く3列シートSUVだ。人気急上昇中のマーケットをみすみす逃すわけにはいかない。
全長は110mm、室内長は545mm延長
ミニバンが日本でファミリーカーの主役の座を勝ち取って久しいが、以前に比べると勢いが衰えている。代わりに目覚ましい発展を見せているのがSUVだ。箱型のボディースタイルに飽きてしまい、スタイリッシュで都会的なイメージのSUVに憧れを持つお父さんも多いのだろう。最近はスポーティーな走りを売り物にするモデルも多く、ドライバーズカーとしての魅力も増している。
ただ、SUVの大多数は5人乗りだ。6人以上で移動したいユーザーにとっては、3列シートSUVは待ち望んでいたモデルである。先に発売されたマツダの「CX-8」が好評なことからも、このジャンルに開拓の余地があることがわかる。
450hLのベースとなっているのは、RXの上級グレードとなる450h。セミアニリン本革シートを採用するなど、インテリアは上質で豪華だ。262psの3.5リッターV6エンジンと167psのモーターを組み合わせたパワーユニットを持ち、68psのモーターで後輪を駆動する4WDである。313psのシステム最高出力で、2240kgのボディーを引っ張る。同等グレードの2列シートモデルより100kg重くなっているが、パワースペックに変更はない。
熟成された強力なハイブリッドシステムであり、重量級のボディーでも余裕がある。発進からのコントロールもこなれていてスムーズだ。キビキビ感は少ないが、重厚な走りぶりには堂々たる風格がある。プレミアムSUVなのだから、コセコセした身のこなしは似合わない。現行の「ハリアー」がスポーティーな走りを志向しているとすれば、こちらはラグジュアリー性を前面に出している。
運転感覚については、これくらいでいいだろう。このモデルで重要なのは、2列目と3列目の仕上がりである。450hLの全長はちょうど5000mm。ノーマル版は4890mmなので110mm伸ばされている。その程度の延長でシートを1列増やせるものだろうか。もちろん、110mmの中にシートを収めるのは不可能だ。実は、全長よりも室内長の伸びが大きくなっている。ノーマル版の2230mmに対し、ロング版では2775mm。545mm伸ばされているのだ。
室内長というのはダッシュボードから後席シート後端までの距離だから、荷室は少し割りを食っているのだろう。ひねり出した空間を2列目と3列目でうまく分け合って、つじつまを合わせている。
ただ、SUVの大多数は5人乗りだ。6人以上で移動したいユーザーにとっては、3列シートSUVは待ち望んでいたモデルである。先に発売されたマツダの「CX-8」が好評なことからも、このジャンルに開拓の余地があることがわかる。
450hLのベースとなっているのは、RXの上級グレードとなる450h。セミアニリン本革シートを採用するなど、インテリアは上質で豪華だ。262psの3.5リッターV6エンジンと167psのモーターを組み合わせたパワーユニットを持ち、68psのモーターで後輪を駆動する4WDである。313psのシステム最高出力で、2240kgのボディーを引っ張る。同等グレードの2列シートモデルより100kg重くなっているが、パワースペックに変更はない。
熟成された強力なハイブリッドシステムであり、重量級のボディーでも余裕がある。発進からのコントロールもこなれていてスムーズだ。キビキビ感は少ないが、重厚な走りぶりには堂々たる風格がある。プレミアムSUVなのだから、コセコセした身のこなしは似合わない。現行の「ハリアー」がスポーティーな走りを志向しているとすれば、こちらはラグジュアリー性を前面に出している。
運転感覚については、これくらいでいいだろう。このモデルで重要なのは、2列目と3列目の仕上がりである。450hLの全長はちょうど5000mm。ノーマル版は4890mmなので110mm伸ばされている。その程度の延長でシートを1列増やせるものだろうか。もちろん、110mmの中にシートを収めるのは不可能だ。実は、全長よりも室内長の伸びが大きくなっている。ノーマル版の2230mmに対し、ロング版では2775mm。545mm伸ばされているのだ。
室内長というのはダッシュボードから後席シート後端までの距離だから、荷室は少し割りを食っているのだろう。ひねり出した空間を2列目と3列目でうまく分け合って、つじつまを合わせている。
2列目シートにも変化
3列目を作ったことで、2列目シートにも変化が生まれている。3列目への乗降を助けるために、レバー操作で前に倒す機構が加えられた。それによってシートの座り心地が悪化していることはないようだ。ただ、真ん中の席は相当に座りにくい。座面が極端に短くなっていて、安定した姿勢が取りづらいのだ。
2列目シートを畳んで前に最大限スライドさせても、3列目に乗り込むのは一苦労だ。開口部が狭く、体を不自然な形に折り曲げなければ引っかかってしまう。なんとかシートにたどり着いても苦行は続く。座面も背もたれもフラットで、ホールド性が低い。座面が低い位置にあることも乗員にはつらい条件だ。膝が持ち上がった格好になってしまい、踏ん張りが利かない。
後ろにいくほどサイドウィンドウが薄くなるデザインなので、3列目に座ると横の景色がほとんど見えない。2列目がフル乗車だと前向きの視界も完全にふさがれて、尋常ではない閉塞(へいそく)感にさいなまれる。息苦しいので少しでも開放的な空気を味わおうと考え、荷室にあるボタンで隣のシートの背もたれを倒そうとした。しかし、反応しない。走行中は安全性を確保するために動かないようになっているらしい。電動で背もたれを動かせる機構は便利なのだが、この場面では裏目に出てしまった。
後輪車軸の真上に座っているので、路面からの突き上げをもろに受ける。この席に座らされるのは、罰ゲームのにおいがする。バラエティー番組なら、出川哲朗の担当だ。3列目を快適なシートにする方法を探ってみた。2列目シートを前に倒し、足を乗せてオットマンのように使うことを試みる。しかし、これも失敗。足の位置が高くなりすぎて、お尻が前に滑りそうになる。
頭は天井に当たるし、2列目に体格のいい人が座ると膝もつかえてしまう。3列目で唯一のおもてなしポイントは、独立のエアコン吹き出し口と調整スイッチがあることぐらいだ。
2列目シートを畳んで前に最大限スライドさせても、3列目に乗り込むのは一苦労だ。開口部が狭く、体を不自然な形に折り曲げなければ引っかかってしまう。なんとかシートにたどり着いても苦行は続く。座面も背もたれもフラットで、ホールド性が低い。座面が低い位置にあることも乗員にはつらい条件だ。膝が持ち上がった格好になってしまい、踏ん張りが利かない。
後ろにいくほどサイドウィンドウが薄くなるデザインなので、3列目に座ると横の景色がほとんど見えない。2列目がフル乗車だと前向きの視界も完全にふさがれて、尋常ではない閉塞(へいそく)感にさいなまれる。息苦しいので少しでも開放的な空気を味わおうと考え、荷室にあるボタンで隣のシートの背もたれを倒そうとした。しかし、反応しない。走行中は安全性を確保するために動かないようになっているらしい。電動で背もたれを動かせる機構は便利なのだが、この場面では裏目に出てしまった。
後輪車軸の真上に座っているので、路面からの突き上げをもろに受ける。この席に座らされるのは、罰ゲームのにおいがする。バラエティー番組なら、出川哲朗の担当だ。3列目を快適なシートにする方法を探ってみた。2列目シートを前に倒し、足を乗せてオットマンのように使うことを試みる。しかし、これも失敗。足の位置が高くなりすぎて、お尻が前に滑りそうになる。
頭は天井に当たるし、2列目に体格のいい人が座ると膝もつかえてしまう。3列目で唯一のおもてなしポイントは、独立のエアコン吹き出し口と調整スイッチがあることぐらいだ。
現実的には荷室の広い4人乗り
日本は格差社会になっていると言われるが、450hLの車内はその縮図のように見える。運転席と助手席が富裕層で、2列目が中流、3列目は貧困層だ。仲間でこのクルマに乗って出掛けるなら、休憩するごとに座る位置を交代したほうがいい。格差が固定化すると、反乱が起きるだろう。
荷室に備わるボタンで3列目を倒すと、広々としたラゲッジスペースが現れる。現実的には、たくさん荷物を積める4人乗りのクルマなのだろう。あと3人乗せるポテンシャルを秘めていると考えたほうがいい。伸びやかなボディースタイルで上質な内装を持ち、十分な動力性能を持っていて低燃費。その上で、プラスアルファとして3列目がある。
7人から8人を乗せて快適に移動させるという目的に特化されたミニバンは、後席の乗員への配慮が行き届いている。450hLと比べればずっと小型で庶民的な「トヨタ・シエンタ」や「ホンダ・フリード」でも、3列目はきちんと使える座席だ。SUVの枠内で実用的な3列を確保するのは、今のところかなり難しい。450hLに限ったことではなく、たとえば「ディスカバリー スポーツ」でも3列目シートの座り心地はお粗末なものだ。ミニバンの代わりにしようとは考えないほうがいい。
RXは長い歴史を持つ「Kプラットフォーム」を使っているが、次世代モデルではTNGAコンセプトに基づく新しいプラットフォームが用いられることになりそうだ。ゼロから見直して最初から3列シートを前提にして開発することが、実用的で快適な7人乗りモデルを作るためには必要不可欠だ。3列シートSUVの進化を手始めにイノベーションを続けていけば、2740年にはスカイジェットのような宇宙船が誕生していることだろう。
(文=鈴木真人/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
荷室に備わるボタンで3列目を倒すと、広々としたラゲッジスペースが現れる。現実的には、たくさん荷物を積める4人乗りのクルマなのだろう。あと3人乗せるポテンシャルを秘めていると考えたほうがいい。伸びやかなボディースタイルで上質な内装を持ち、十分な動力性能を持っていて低燃費。その上で、プラスアルファとして3列目がある。
7人から8人を乗せて快適に移動させるという目的に特化されたミニバンは、後席の乗員への配慮が行き届いている。450hLと比べればずっと小型で庶民的な「トヨタ・シエンタ」や「ホンダ・フリード」でも、3列目はきちんと使える座席だ。SUVの枠内で実用的な3列を確保するのは、今のところかなり難しい。450hLに限ったことではなく、たとえば「ディスカバリー スポーツ」でも3列目シートの座り心地はお粗末なものだ。ミニバンの代わりにしようとは考えないほうがいい。
RXは長い歴史を持つ「Kプラットフォーム」を使っているが、次世代モデルではTNGAコンセプトに基づく新しいプラットフォームが用いられることになりそうだ。ゼロから見直して最初から3列シートを前提にして開発することが、実用的で快適な7人乗りモデルを作るためには必要不可欠だ。3列シートSUVの進化を手始めにイノベーションを続けていけば、2740年にはスカイジェットのような宇宙船が誕生していることだろう。
(文=鈴木真人/写真=小河原認/編集=竹下元太郎)
テスト車のデータ
レクサスRX450hL
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5000×1895×1725mm
ホイールベース:2790mm
車重:2240kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:262ps(193kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:335Nm(34.2kgm)/4600rpm
モーター最高出力:(前)167ps(123kW)/(後)68ps(50kW)
モーター最大トルク:(前)335Nm(34.2kgm)/(後)139Nm(14.2kgm)
システム最高出力:313ps(230kW)
タイヤ:(前)235/55R20 102V/(後)235/55R20 102V(ブリヂストン・デューラーH/L 33A)
燃費:17.8km/リッター(ハイブリッド燃料消費率/JC08モード)
価格:769万円/テスト車=842万1160円
オプション装備:アダプティブハイビームシステム[AHS]<ポップアップ式ヘッドランプクリーナー付き>(4万8600円)/ITS Connect(2万7000円)/寒冷地仕様<ポップアップ式ヘッドランプクリーナー、LEDリアフォグランプ、ウインドシールドデアイサー等>(2万8080円)/スペアタイヤ<応急用タイヤ>(1万0800円)/ムーンルーフ<チルト&スライド式>(10万8000円)/おくだけ充電(2万3760円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(22万5720円)/リアシートエンターテインメントシステム(25万9200円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1500km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:148.9km
使用燃料:16.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.9km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5000×1895×1725mm
ホイールベース:2790mm
車重:2240kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.5リッターV6 DOHC 24バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:262ps(193kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:335Nm(34.2kgm)/4600rpm
モーター最高出力:(前)167ps(123kW)/(後)68ps(50kW)
モーター最大トルク:(前)335Nm(34.2kgm)/(後)139Nm(14.2kgm)
システム最高出力:313ps(230kW)
タイヤ:(前)235/55R20 102V/(後)235/55R20 102V(ブリヂストン・デューラーH/L 33A)
燃費:17.8km/リッター(ハイブリッド燃料消費率/JC08モード)
価格:769万円/テスト車=842万1160円
オプション装備:アダプティブハイビームシステム[AHS]<ポップアップ式ヘッドランプクリーナー付き>(4万8600円)/ITS Connect(2万7000円)/寒冷地仕様<ポップアップ式ヘッドランプクリーナー、LEDリアフォグランプ、ウインドシールドデアイサー等>(2万8080円)/スペアタイヤ<応急用タイヤ>(1万0800円)/ムーンルーフ<チルト&スライド式>(10万8000円)/おくだけ充電(2万3760円)/“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム(22万5720円)/リアシートエンターテインメントシステム(25万9200円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1500km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:148.9km
使用燃料:16.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.9km/リッター(満タン法)/9.8km/リッター(車載燃費計計測値)
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