【試乗記】ホンダ・クラリティPHEV EX(FF)
- ホンダ・クラリティPHEV EX(FF)
その挑戦は誰がために
ホンダの次世代環境対応車「クラリティ」シリーズに、第3のモデル「クラリティPHEV」が登場。プラグインハイブリッド車(PHEV)としての高い性能を、制約の多いセダンボディーでかなえた同車に、技術オリエンテッドな“ホンダらしさ”を見た。
当代随一のEV性能の持ち主
最初のクラリティは2016年に発売された燃料電池車(FCV)「クラリティ フューエルセル」だった。その後、北米市場専用モデルとして電気自動車(EV)の「クラリティ エレクトリック」が投入される。そしてこのプラグインハイブリッドモデル、クラリティPHEVをもって、FCV、EV、PHEVの3つのパワートレインを同一のプラットフォームにのせるクラリティシリーズの「3 in 1コンセプト」がコンプリートしたことになる。
ホンダは、2030年をめどにグローバル販売台数の3分の2を電動化することを目指しており、クラリティシリーズへの注力はもちろんその取り組みへの一環だ。2030年といえばトヨタは電動車両を年間550万台以上、そのうちEVとFCVで100万台以上の販売を計画。フォルクスワーゲンもグループ全体で約300種類以上あるモデルのすべてにEVとPHEVを設定すると発表しており、世の流れとしては、さもありなんというところだ。
パワートレインは、2モータープラグインハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD Plug-in」に、1.5リッター直列4気筒エンジンを組み合わせたもの。モーターは最高出力184ps、最大トルク315Nmを発生し、データ上、EV走行での最高速は160km/hに到達するという。ガソリンエンジンは、基本的には発電用モーターの動力源となり、高速クルーズ時にはクラッチをつないで車輪を直接駆動する。カタログ上の充電電力使用時走行距離は114.6kmだ。この数字は、例えば「三菱アウトランダーPHEV」が60.8 km、「トヨタ・プリウスPHV」が68.2kmだから、いかに優れたものであるかがわかる(いずれもJC08モード)。ちなみに約30分の急速充電で約80%、約6時間の普通充電(AC200V)で満充電に達する。
17.0kWhの総電力量を備えたリチウムイオンバッテリーや12V DC-DCコンバーターなどは床下に配置。総電力量は「アコードPHEV」比で2.5倍、出力は1.4倍にも及ぶ。またアコードではトランク内に搭載していたバッテリーを床下配置にしたことで、トランク容量は512リッターを確保。9.5型のゴルフバッグが4つ入ると開発陣は胸を張る。
ホンダは、2030年をめどにグローバル販売台数の3分の2を電動化することを目指しており、クラリティシリーズへの注力はもちろんその取り組みへの一環だ。2030年といえばトヨタは電動車両を年間550万台以上、そのうちEVとFCVで100万台以上の販売を計画。フォルクスワーゲンもグループ全体で約300種類以上あるモデルのすべてにEVとPHEVを設定すると発表しており、世の流れとしては、さもありなんというところだ。
パワートレインは、2モータープラグインハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD Plug-in」に、1.5リッター直列4気筒エンジンを組み合わせたもの。モーターは最高出力184ps、最大トルク315Nmを発生し、データ上、EV走行での最高速は160km/hに到達するという。ガソリンエンジンは、基本的には発電用モーターの動力源となり、高速クルーズ時にはクラッチをつないで車輪を直接駆動する。カタログ上の充電電力使用時走行距離は114.6kmだ。この数字は、例えば「三菱アウトランダーPHEV」が60.8 km、「トヨタ・プリウスPHV」が68.2kmだから、いかに優れたものであるかがわかる(いずれもJC08モード)。ちなみに約30分の急速充電で約80%、約6時間の普通充電(AC200V)で満充電に達する。
17.0kWhの総電力量を備えたリチウムイオンバッテリーや12V DC-DCコンバーターなどは床下に配置。総電力量は「アコードPHEV」比で2.5倍、出力は1.4倍にも及ぶ。またアコードではトランク内に搭載していたバッテリーを床下配置にしたことで、トランク容量は512リッターを確保。9.5型のゴルフバッグが4つ入ると開発陣は胸を張る。
静かで力強く、乗り心地も良好
- ダッシュボード中央に据えられた8インチディスプレイ。「クラリティPHEV」には、NCS(日本充電サービス)の充電設備の情報を備えた、ホンダの純正ナビゲーションシステム「Hondaインターナビ」が標準装備される。
インテリアのデザインは、基本的にFCVのものを踏襲する。ウッドとレザーを組み合わせたインパネのセンターには8インチのディスプレイが配置されているが、いまどきはやりの10インチ超を見慣れた目には少々物足りないと感じる。ディスプレイの大きさやデザインしかり、もう少し未来感や新しさがあってもいいと思うのだが。
奇をてらっていないという意味ではスイッチ類の配置などはわかりやすい。センターコンソールには「ECON」「SPORT」「HV」の3つの走行モードを切り替えるスイッチがある。ECONモードはできるだけEV走行を持続するもので、アクセルペダルを一定量踏み込んだその先にクリック機構を設定し、その手前まででアクセル操作を行えばEV走行を維持できる。走行フィールはEVそのものだから、とにかく静かで力強い。高速道路にのっても100km/hくらいまでスルスルと加速していく。
SPORTモードでは、アクセル操作に対する応答性が高まると同時に減速Gも高まる。バッテリーなどの重量物を床下に配置したことも功を奏し、いかにも重心の低さを感じさせるハンドリング特性をみせる。タイヤは18インチ45偏平の「ブリヂストン・エコピアEP160」だったが、思いのほか乗り心地も良好だった。
HVモードではバッテリーの残量を維持するためにハイブリッド走行を行う。このモードで高速走行を行うと、クラッチをつないでエンジンの力を直接タイヤに伝達するエンジンドライブモードになるのだが、音も振動もなく、エンジンが作動しているとは言われなければ分からない。まるでEV走行のようだ。さらにHVスイッチを長押しすると強制充電モードになり、エンジンを発電機としてバッテリーの充電を行う。このモードでは全域でエンジンを駆動し、約60%までのチャージが可能という。
ステアリングにはパドルスイッチが備わるが、これによって減速Gを4段階で調整できる。左側のパドルを手前に引けば減速Gが強くなる仕組みだ。前走車に追いついたときや、ワインディング路でコーナーの進入時にシフトダウンするようなイメージである。できれば回生ブレーキの量を調整できるようにして、「BMW i3」や「日産リーフ」のようないわゆる“ワンペダル走行”ができればいいのにと思ったが、そうした設定はないという。
奇をてらっていないという意味ではスイッチ類の配置などはわかりやすい。センターコンソールには「ECON」「SPORT」「HV」の3つの走行モードを切り替えるスイッチがある。ECONモードはできるだけEV走行を持続するもので、アクセルペダルを一定量踏み込んだその先にクリック機構を設定し、その手前まででアクセル操作を行えばEV走行を維持できる。走行フィールはEVそのものだから、とにかく静かで力強い。高速道路にのっても100km/hくらいまでスルスルと加速していく。
SPORTモードでは、アクセル操作に対する応答性が高まると同時に減速Gも高まる。バッテリーなどの重量物を床下に配置したことも功を奏し、いかにも重心の低さを感じさせるハンドリング特性をみせる。タイヤは18インチ45偏平の「ブリヂストン・エコピアEP160」だったが、思いのほか乗り心地も良好だった。
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ステアリングにはパドルスイッチが備わるが、これによって減速Gを4段階で調整できる。左側のパドルを手前に引けば減速Gが強くなる仕組みだ。前走車に追いついたときや、ワインディング路でコーナーの進入時にシフトダウンするようなイメージである。できれば回生ブレーキの量を調整できるようにして、「BMW i3」や「日産リーフ」のようないわゆる“ワンペダル走行”ができればいいのにと思ったが、そうした設定はないという。
現行モデルで最も実用性の高いPHEV
ホンダの開発陣は“粘るEV”という表現を使っていたが、実際に試乗時間めいっぱい走りまわっても、意図的にエンジンドライブモードなどを選択しない限り、エンジンがかかることはなかった。もしかすると、毎日定刻に充電して通勤など決まったルートを走るような使い方なら、「買って一度もエンジンを始動させたことがない」なんて人も現れるかもしれない(それならEVでいいという話はさておき)。そのあたりを開発者に尋ねてみると、エンジン開発に関しては騒音や振動対策以上に気を使ったのが、長期間使われなかった場合のエンジンの油膜切れなどだという。特別なオイルを用意し、またある一定期間を経過すると警告が出る仕組みになっている。使われないかもしれないエンジンのためにそこまでやらねばならないなんて、エンジニアも本当に大変だ。
しかし、おそらくはこれから世に出るさまざまな記事において、このクルマの約588万円の値付けに対し、かんかんがくがくの意見が展開されることだろう。パワートレインのいかんを問わず、Dセグメントのセダンだとすれば、“ジャーマンプレミアム”だって比較の俎上(そじょう)にのってくるのだから。
「テスラ・モデルX」のようなSUVにすればもう少し違って見えると思うが、なぜそういう商品企画をしないのかと聞くと、ある開発者は「難しいことから挑戦してみたくなる社風だから」と答えた。要は先の3 in 1コンセプトを達成したかったということだろう。ホンダという会社はつくづく技術オリエンテッドなんだと思う。
その志にシンパシーを感じるホンダファンなら、そして自動車史100年における大変革期において電動化へのアーリーアダプターを経験してみたいなら、クラリティPHEVを選ぶという手も悪くはない。素直に、現在市販されている中で最も実用的に使えるPHEVと言えると思う。スペースをはじめ制約の多いセダンで、これほどの性能が実現できているのだから、SUVやミニバンを作るのはきっとホンダのエンジニアにとって難しいことではないはずだ。新たなクラリティシリーズの登場に期待する。
(文=藤野太一/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
しかし、おそらくはこれから世に出るさまざまな記事において、このクルマの約588万円の値付けに対し、かんかんがくがくの意見が展開されることだろう。パワートレインのいかんを問わず、Dセグメントのセダンだとすれば、“ジャーマンプレミアム”だって比較の俎上(そじょう)にのってくるのだから。
「テスラ・モデルX」のようなSUVにすればもう少し違って見えると思うが、なぜそういう商品企画をしないのかと聞くと、ある開発者は「難しいことから挑戦してみたくなる社風だから」と答えた。要は先の3 in 1コンセプトを達成したかったということだろう。ホンダという会社はつくづく技術オリエンテッドなんだと思う。
その志にシンパシーを感じるホンダファンなら、そして自動車史100年における大変革期において電動化へのアーリーアダプターを経験してみたいなら、クラリティPHEVを選ぶという手も悪くはない。素直に、現在市販されている中で最も実用的に使えるPHEVと言えると思う。スペースをはじめ制約の多いセダンで、これほどの性能が実現できているのだから、SUVやミニバンを作るのはきっとホンダのエンジニアにとって難しいことではないはずだ。新たなクラリティシリーズの登場に期待する。
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