【試乗記】トヨタ・クラウン2.0 RSアドバンス(FR/8AT)
- トヨタ・クラウン2.0 RSアドバンス(FR/8AT)
イメージをぶち壊せ!
新しいユーザー層に訴求すべく、従来モデルとは趣を異にするパーソナル志向のセダンとして登場した15代目「トヨタ・クラウン」。その中でも、最もドライバーオリエンテッドな2リッターターボの「RSアドバンス」に試乗し、変革の成果を確かめた。
ドライバーズカー志向のターボモデル
「社長さんのクルマというイメージがあって、パーソナルカーではないという見られ方をしてしまっていた」
「クラウン」のチーフエンジニアを務めた秋山 晃さんの言葉である。「いつかはクラウン」なのだから、地位とクルマが一致するという意味ではそういう論理が成り立つ。でも、それじゃあイヤだということで作ったのが新型である。社長さんのクルマのほかに、パトカー、タクシーというイメージも払拭(ふっしょく)しなければならないと話していた。
プロトタイプに乗った時も感じたが、今度のクラウンはひと目見ただけでドライバーズカーだ。後席に収まるためのクルマには見えない。先代モデルも結構思い切ったクルマだったが、比べてみるとまだグリルデザインを生かしきっていなかったのだと思える。新型は伸びやかなプロポーションと調和していて、グリルだけが悪目立ちすることがない。
試乗したのは2リッターターボエンジンを搭載したモデル。クローズドコースで乗った際には、最もスポーティーだと感じた。とはいえ通常とはかなり違う乗り方だったので、今回は日常使いでの使い勝手を試す。グレードは「RSアドバンス」。ターボのRSにはリアパフォーマンスダンパーとリアフロアパネルブレースが追加装着されており、高速走行時の操縦安定性を高めているという。要するに、現行クラウンの中でも特にドライバーズカーとしての性格付けが強い一台なのだ。
燃費の数値を見てもそれは明らかである。JC08モード計測で、2.5リッターハイブリッドが24.0km/リッター、3.5リッターハイブリッドが18.0km/リッターなのに対し、2リッターターボは12.8km/リッター。760kmほど走行した試乗では、満タン法で8.7km/リッターだった。燃費よりも走りを重視したモデルなのだ。経費削減が求められる昨今、社用車には向かない。
「クラウン」のチーフエンジニアを務めた秋山 晃さんの言葉である。「いつかはクラウン」なのだから、地位とクルマが一致するという意味ではそういう論理が成り立つ。でも、それじゃあイヤだということで作ったのが新型である。社長さんのクルマのほかに、パトカー、タクシーというイメージも払拭(ふっしょく)しなければならないと話していた。
プロトタイプに乗った時も感じたが、今度のクラウンはひと目見ただけでドライバーズカーだ。後席に収まるためのクルマには見えない。先代モデルも結構思い切ったクルマだったが、比べてみるとまだグリルデザインを生かしきっていなかったのだと思える。新型は伸びやかなプロポーションと調和していて、グリルだけが悪目立ちすることがない。
試乗したのは2リッターターボエンジンを搭載したモデル。クローズドコースで乗った際には、最もスポーティーだと感じた。とはいえ通常とはかなり違う乗り方だったので、今回は日常使いでの使い勝手を試す。グレードは「RSアドバンス」。ターボのRSにはリアパフォーマンスダンパーとリアフロアパネルブレースが追加装着されており、高速走行時の操縦安定性を高めているという。要するに、現行クラウンの中でも特にドライバーズカーとしての性格付けが強い一台なのだ。
燃費の数値を見てもそれは明らかである。JC08モード計測で、2.5リッターハイブリッドが24.0km/リッター、3.5リッターハイブリッドが18.0km/リッターなのに対し、2リッターターボは12.8km/リッター。760kmほど走行した試乗では、満タン法で8.7km/リッターだった。燃費よりも走りを重視したモデルなのだ。経費削減が求められる昨今、社用車には向かない。
ACCの設定速度上限は180km/h
手の感触にも配慮したというハンドルを握ってドアを開け、運転席に収まると着座位置が低い。デコラティブではないシンプルな高級感を志向したインテリアと相まって、車内はドライバーの気分を盛り上げる空間になっている。遮音材をふんだんに使った上に、エンジンこもり音の逆位相の音を出すことで騒音レベルを下げているとあって、静粛性は高い。ただ、うっすらとではあるがタービン音が聞こえてくる。あえて聞かせることでエンジンの存在感を強調する演出なのだろうか。
RS仕様車には電子制御サスペンションの「AVS」が採用されていて、ドライブモードセレクトは「ECO」「COMFORT」「NORMAL」「SPORT S」「SPORT S+」の5段階。選択されたモードに応じてパワートレイン、シャシー、エアコンの設定も切り替わる。とはいえ、通常の走行ではECOで十分だ。アクセルを踏み込んでも急加速はしないが、一瞬間を置いてからエンジンの回転数が上がっていく。
このモードではエアコンも燃費優先になるので、猛暑の日はちょっとつらい。エアコン吹き出し口のルーバーが左右にスイングするのはうれしいが、暑い外から帰ってきて冷気を浴びたい時にすぐ止められないのは困った。タッチパネルを使ってオプション画面からタイミングよくスイングを止めなければならない。
ACCを使おうとしたら、設定速度の上限が180km/hになっていた。輸入車では250km/hの設定もあるものの、日本車のほとんどは115km/hが上限で、たまに135km/hのクルマがあるぐらい。実際にこの速度でACC走行をすることはできないのだが、これがニュルブルクリンクで走りを鍛えたプライドの表れなのだろうか。ただし、前車に追従する際のレスポンスはあまりクイックとはいえず、安全マージンがたっぷりとられている。短気な人はイライラするかもしれないが、全車速対応なので渋滞時には威力を発揮した。
RS仕様車には電子制御サスペンションの「AVS」が採用されていて、ドライブモードセレクトは「ECO」「COMFORT」「NORMAL」「SPORT S」「SPORT S+」の5段階。選択されたモードに応じてパワートレイン、シャシー、エアコンの設定も切り替わる。とはいえ、通常の走行ではECOで十分だ。アクセルを踏み込んでも急加速はしないが、一瞬間を置いてからエンジンの回転数が上がっていく。
このモードではエアコンも燃費優先になるので、猛暑の日はちょっとつらい。エアコン吹き出し口のルーバーが左右にスイングするのはうれしいが、暑い外から帰ってきて冷気を浴びたい時にすぐ止められないのは困った。タッチパネルを使ってオプション画面からタイミングよくスイングを止めなければならない。
ACCを使おうとしたら、設定速度の上限が180km/hになっていた。輸入車では250km/hの設定もあるものの、日本車のほとんどは115km/hが上限で、たまに135km/hのクルマがあるぐらい。実際にこの速度でACC走行をすることはできないのだが、これがニュルブルクリンクで走りを鍛えたプライドの表れなのだろうか。ただし、前車に追従する際のレスポンスはあまりクイックとはいえず、安全マージンがたっぷりとられている。短気な人はイライラするかもしれないが、全車速対応なので渋滞時には威力を発揮した。
勇ましい走りの「SPORT S+」
静かで乗り心地も良好だが、ちょっと残念なのはアイドリングストップからのエンジン始動で振動が大きいこと。ハイブリッドモデル並みのスムーズな始動は難しいのだろうが、これではせっかくの高級感が色あせてしまう。
SPORT S、SPORT S+では、パワートレインの制御が加速重視に変更される。発進もECOモードの時のようなためらいはなく、瞬時に加速が始まる。エンジン音も勇ましい響きになるので、いかにもスポーティーな走りをしているという気分に浸れるのだ。SPORT S+を選ぶとステアリングもクイックな設定になるので、ワインディングロードではこのモードが最適だろう。
チーフエンジニアの秋山さんは、「ステアリングを切っても目線がブレないこと」を重視して開発したと話していた。疲れにくく、クルマ酔いもしにくくなるようになるというのだ。意識して山道を走ってみると、たしかに目線が一定しているような気がした。とはいえ、これは超高速でニュルブルクリンクを駆け抜けていく中で目指した目標である。ちょっと箱根を走ったぐらいでわかるようなものではないかもしれない。
ともあれ、新しいクラウンはドライバーズカーとして十分な力量を持ったクルマである。社長さんのクルマからの脱却には成功したのではないか。自分の判断基準だけでは心もとないので、自動車の知識がほぼ皆無な女性に同乗してもらった。感想は、「色がいい」「カッコいい」「乗り心地がいい」「オヤジのクルマには見えない」というものだった。色についてはクラウン全体に当てはまらないが、おおむね気に入ってもらえたようである。どのぐらいの価格だと思うか聞いてみると、「700万円ぐらい?」との答え。プレミアム感も漂わせているようだ。
タクシーのイメージについては、確実に解消されつつある。長らくタクシーの主力だった「クラウンコンフォート」の生産が終了し、街ではミニバン型の「ジャパンタクシー」が走り回っているのだ。セダンタイプのタクシーはこれからも減少していくのは確実だろう。初代クラウンはタクシー用途がメインだったが、その歴史も忘れられていくことになる。
SPORT S、SPORT S+では、パワートレインの制御が加速重視に変更される。発進もECOモードの時のようなためらいはなく、瞬時に加速が始まる。エンジン音も勇ましい響きになるので、いかにもスポーティーな走りをしているという気分に浸れるのだ。SPORT S+を選ぶとステアリングもクイックな設定になるので、ワインディングロードではこのモードが最適だろう。
チーフエンジニアの秋山さんは、「ステアリングを切っても目線がブレないこと」を重視して開発したと話していた。疲れにくく、クルマ酔いもしにくくなるようになるというのだ。意識して山道を走ってみると、たしかに目線が一定しているような気がした。とはいえ、これは超高速でニュルブルクリンクを駆け抜けていく中で目指した目標である。ちょっと箱根を走ったぐらいでわかるようなものではないかもしれない。
ともあれ、新しいクラウンはドライバーズカーとして十分な力量を持ったクルマである。社長さんのクルマからの脱却には成功したのではないか。自分の判断基準だけでは心もとないので、自動車の知識がほぼ皆無な女性に同乗してもらった。感想は、「色がいい」「カッコいい」「乗り心地がいい」「オヤジのクルマには見えない」というものだった。色についてはクラウン全体に当てはまらないが、おおむね気に入ってもらえたようである。どのぐらいの価格だと思うか聞いてみると、「700万円ぐらい?」との答え。プレミアム感も漂わせているようだ。
タクシーのイメージについては、確実に解消されつつある。長らくタクシーの主力だった「クラウンコンフォート」の生産が終了し、街ではミニバン型の「ジャパンタクシー」が走り回っているのだ。セダンタイプのタクシーはこれからも減少していくのは確実だろう。初代クラウンはタクシー用途がメインだったが、その歴史も忘れられていくことになる。
覆面パトカーと疑われる?
残るはパトカーのイメージである。実際、白黒に塗られて赤色灯を装備したクラウンがパトカーの主流になっていて、強烈な印象が刷り込まれている。4ドアのセダンでエンジンが2.5リッター以上という規定があるということで、クラウンはちょうどその条件に合致するのだ。確実に一定の台数がさばけるのだから、トヨタが需要に応えるのは当然だろう。
高速道路の左車線を走っていて気がついた。後ろから来たクルマがなかなか抜いていかないか、微妙に減速してから抜いていくのだ。どうやら、覆面パトカーではないかと疑われていたらしい。試乗車のボディーカラーは「茜色(アカネイロ)」と名付けられた派手なオレンジメタリックでまったくパトカーらしくはなかったのだが、それでも「クラウンは怪しい」と思われてしまうのだ。この点に関しては、これからも事情は変わらない可能性が高い気がする。
社長さんのクルマ、タクシーというイメージが払拭されただけでも、新型クラウンはしっかりと役目を果たしたのではないかと思う。一昔前は、クラウンはオヤジ臭さの象徴のように扱われていたのだ。内装は場末のスナックのようなテイストで、シートにはレースのカバーがかけられていた。チーフデザイナーの國重 健さんに新型でもレースのシートカバーがアクセサリーとしてラインナップされているかと聞いたら、担当部署が違うのでわからないとのことだった。できればレースのカバーは使ってほしくないという気持ちのようで、「昔は水平垂直がしっかりしているので水平なデザインのレースが映えたんですが、このクラウンはそうではないので……。あるとしても、有機的なデザインにしてほしいですね」と語っていた。
アクセサリーカタログを見ると、「ハーフシートカバー(エクセレントタイプ)」が載せられていた。有機的というより、幾何学的な模様となっている。お値段は税込み6万2100円。やはりこれがなければ、というユーザーは根強く残っているのだろう。若返りを図りながらも、昔からの顧客も大切にしなければならないのがクラウンの宿命である。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
高速道路の左車線を走っていて気がついた。後ろから来たクルマがなかなか抜いていかないか、微妙に減速してから抜いていくのだ。どうやら、覆面パトカーではないかと疑われていたらしい。試乗車のボディーカラーは「茜色(アカネイロ)」と名付けられた派手なオレンジメタリックでまったくパトカーらしくはなかったのだが、それでも「クラウンは怪しい」と思われてしまうのだ。この点に関しては、これからも事情は変わらない可能性が高い気がする。
社長さんのクルマ、タクシーというイメージが払拭されただけでも、新型クラウンはしっかりと役目を果たしたのではないかと思う。一昔前は、クラウンはオヤジ臭さの象徴のように扱われていたのだ。内装は場末のスナックのようなテイストで、シートにはレースのカバーがかけられていた。チーフデザイナーの國重 健さんに新型でもレースのシートカバーがアクセサリーとしてラインナップされているかと聞いたら、担当部署が違うのでわからないとのことだった。できればレースのカバーは使ってほしくないという気持ちのようで、「昔は水平垂直がしっかりしているので水平なデザインのレースが映えたんですが、このクラウンはそうではないので……。あるとしても、有機的なデザインにしてほしいですね」と語っていた。
アクセサリーカタログを見ると、「ハーフシートカバー(エクセレントタイプ)」が載せられていた。有機的というより、幾何学的な模様となっている。お値段は税込み6万2100円。やはりこれがなければ、というユーザーは根強く残っているのだろう。若返りを図りながらも、昔からの顧客も大切にしなければならないのがクラウンの宿命である。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
最新ニュース
-
-
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
2024.11.22
-
-
-
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
2024.11.22
-
-
-
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
2024.11.22
-
-
-
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
2024.11.22
-
-
-
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
2024.11.22
-
-
-
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
2024.11.22
-
-
-
日産のフルサイズSUV『アルマーダ』新型、ベース価格は5.6万ドルに据え置き…12月米国発売へ
2024.11.21
-
最新ニュース
-
-
高性能4シーターオープン、メルセデスAMG『CLE 53カブリオレ』発売、価格は1400万円
2024.11.22
-
-
-
【ラリージャパン 2024】開幕!! 全行程1000km、SSは300kmの長く熱い戦い
2024.11.22
-
-
-
「GT-R」の技術が注ぎ込まれたV6ツインターボ搭載、日産『パトロール』新型が中東デビュー
2024.11.22
-
-
-
「高いのはしゃーない」光岡の55周年記念車『M55』、800万円超の価格もファン納得の理由
2024.11.22
-
-
-
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
2024.11.22
-
-
-
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
2024.11.22
-
MORIZO on the Road