【海外試乗記】メルセデス・ベンツA220 4MATICセダン(4WD/7AT)
- メルセデス・ベンツA220 4MATICセダン(4WD/7AT)
骨肉相食む
とどまるところを知らぬメルセデスの新型車攻勢。新型「Aクラス」にも、「ハッチバック」に続いて早くも「セダン」が設定された。ややもすれば「Cクラス」をも食いかねない、ニューフェイスの出来栄えやいかに!? アメリカ・シアトルからの第一報。
FF系メルセデスの最新モデル
いわゆるジャーマンスリーのプレミアム性を物語る要素として、いま挙げるべきことのひとつといえば、車種数の多さではないだろうか。
例えばメルセデス・ベンツ(日本法人)のウェブサイトをみれば、その数は実に28。ここにAMGやスマートも加えるとトヨタのそれを軽く凌駕(りょうが)するだろう。もちろん他に日本に導入されていないモデルもあるわけで、230万台くらいの年間販売規模を考えると、多品種少量生産こそが贅沢(ぜいたく)の証しと言わんばかりの風呂敷の広げっぷりである。
先日、メルセデス・ベンツのR&D部門のトップであり、次期社長の座が内定しているオラ・ケレニウス氏に話を聞く機会があった。氏は、今後は電動化への注力もあり、今までのようなペースでの新車種投入は難しいとおっしゃっていた。しかし、一方でまだユーザーが求めるニッチ的なニーズも把握しているということだったから、もうひと声新たな車種が増えることも十分考えられる。ともあれ中にいるエンジニアたちは大変だ。
とりわけ、メルセデスにとってエントリークラスにあたるFF系プラットフォームのラインナップは、若いユーザー層のさまざまな嗜好(しこう)をくむにふさわしい拡張性に富んでいる。これまでは「Aクラス」「Bクラス」「GLA」「CLA」そして「CLAシューティングブレーク」と5つのバリエーションが用意されていたが、最新世代ではこの隙間にさらなる新しいモデルが追加されるのでは……といううわさが海外のスクープ情報からも伝わってくる。このAクラス セダンも、そんなうわさが現実化した一台だ。
例えばメルセデス・ベンツ(日本法人)のウェブサイトをみれば、その数は実に28。ここにAMGやスマートも加えるとトヨタのそれを軽く凌駕(りょうが)するだろう。もちろん他に日本に導入されていないモデルもあるわけで、230万台くらいの年間販売規模を考えると、多品種少量生産こそが贅沢(ぜいたく)の証しと言わんばかりの風呂敷の広げっぷりである。
先日、メルセデス・ベンツのR&D部門のトップであり、次期社長の座が内定しているオラ・ケレニウス氏に話を聞く機会があった。氏は、今後は電動化への注力もあり、今までのようなペースでの新車種投入は難しいとおっしゃっていた。しかし、一方でまだユーザーが求めるニッチ的なニーズも把握しているということだったから、もうひと声新たな車種が増えることも十分考えられる。ともあれ中にいるエンジニアたちは大変だ。
とりわけ、メルセデスにとってエントリークラスにあたるFF系プラットフォームのラインナップは、若いユーザー層のさまざまな嗜好(しこう)をくむにふさわしい拡張性に富んでいる。これまでは「Aクラス」「Bクラス」「GLA」「CLA」そして「CLAシューティングブレーク」と5つのバリエーションが用意されていたが、最新世代ではこの隙間にさらなる新しいモデルが追加されるのでは……といううわさが海外のスクープ情報からも伝わってくる。このAクラス セダンも、そんなうわさが現実化した一台だ。
ボディーサイズは先代「Cクラス」に近い
全長×全幅×全高=4549×1796×1446mm。Aクラス セダンのディメンションは例えるなら先代W204系「Cクラス セダン」のそれにほど近い。ちなみに2018年4月に北京ショーで発表されたAクラス セダンはホイールベースが60mm長い「L」に相当するもので、中国市場専用車とされている。
ここまでくると“ニッチ・オブ・ニッチ”と言いたくもなるが、ここはCクラスに対する機能的優位が著しく抜きん出ることは避けたいという社内的な思惑により、この微妙な作り分けを余儀なくされているところもあるのだろう。それでもAクラス セダンは後席に座れば現行Cクラスに比肩するほどの空間があり、ゴルフバッグもきれいに収まりそうな形状のトランクを擁してもいる。駆動方式にこだわりのないユーザーにとっては、CクラスよりAクラスの方が合理的なセダン像にみえるだろう。
2019年春の日本デビューが予定されているAクラス セダンの導入仕様は定かではないが、本国仕様には1.3リッターから2リッターの4気筒ガソリンユニットと1.5リッターディーゼルが用意される。トランスミッションは全グレードで7段DCT(「A180」では6段MTも選択可能)が組み合わされ、上位グレードには「4MATIC」(4WD)の設定もある。このあたりの構成はハッチバックのAクラスと同様だ。
ここまでくると“ニッチ・オブ・ニッチ”と言いたくもなるが、ここはCクラスに対する機能的優位が著しく抜きん出ることは避けたいという社内的な思惑により、この微妙な作り分けを余儀なくされているところもあるのだろう。それでもAクラス セダンは後席に座れば現行Cクラスに比肩するほどの空間があり、ゴルフバッグもきれいに収まりそうな形状のトランクを擁してもいる。駆動方式にこだわりのないユーザーにとっては、CクラスよりAクラスの方が合理的なセダン像にみえるだろう。
2019年春の日本デビューが予定されているAクラス セダンの導入仕様は定かではないが、本国仕様には1.3リッターから2リッターの4気筒ガソリンユニットと1.5リッターディーゼルが用意される。トランスミッションは全グレードで7段DCT(「A180」では6段MTも選択可能)が組み合わされ、上位グレードには「4MATIC」(4WD)の設定もある。このあたりの構成はハッチバックのAクラスと同様だ。
ハッチバックに対するアドバンテージは空力性能
Aクラス セダンとハッチバック、性能面において両車の大きな違いとなるのは空力特性かもしれない。ハッチバックボディーにして0.25という破格のCd値も見事だが、セダンはその延長したテール部を生かしつつ0.22という市販車最高レベルに達している。当然ながらこれは燃費や最高速に効いてくるわけで、Aクラス セダンはベーシックな「A180」でも、1.3リッター直噴4気筒ターボをして最高速は230km/hをマークするという。
装備に関してはAクラス ハッチバックの日本企画テレビCMでも推されていた、オリジナルAIを用いた音声認識アシスタンス「MBUX」がこちらも標準。加えて運転支援システムは「Sクラス」や「Eクラス」にも迫る充実ぶりと、Cセグメントばなれした先進機能体験が可能となる。日本仕様の詳細が不明な現状では音声認識のユーザビリティーは未知数だが、ローカライズには相当な労力が注がれているというから期待したい。
生産立ち上がりのタイミングということで、用意された試乗車は190psを発生する2リッター直噴4気筒ターボを搭載した「A220」のみだったが、日本にはより高出力な「A250」が投入される可能性が高い。そのあたりを勘案しながら走りだしてみれば、オプションの18インチタイヤを履いていながら、小入力時からのスムーズな足まわりの動きにあらためて驚かされる。これなら多少のパワーアップに対応してアシを固めたところで、街乗り領域での乗り心地が大きく損なわれることはないだろう。
また、この快適さをさらに際立たせているのが静粛性の高さだ。エンジンやトランスミッションといったメカノイズ系の低減もさることながら、速度を高めるほどに際立つのは件(くだん)の空力特性で、風切り音など上屋まわりからのノイズはひとつ上のDセグメントモデルに乗っているかのような少なさである。さらに、荷室部が区切られたセダンボディーのおかげで足まわりからの入力音も小さい。
装備に関してはAクラス ハッチバックの日本企画テレビCMでも推されていた、オリジナルAIを用いた音声認識アシスタンス「MBUX」がこちらも標準。加えて運転支援システムは「Sクラス」や「Eクラス」にも迫る充実ぶりと、Cセグメントばなれした先進機能体験が可能となる。日本仕様の詳細が不明な現状では音声認識のユーザビリティーは未知数だが、ローカライズには相当な労力が注がれているというから期待したい。
生産立ち上がりのタイミングということで、用意された試乗車は190psを発生する2リッター直噴4気筒ターボを搭載した「A220」のみだったが、日本にはより高出力な「A250」が投入される可能性が高い。そのあたりを勘案しながら走りだしてみれば、オプションの18インチタイヤを履いていながら、小入力時からのスムーズな足まわりの動きにあらためて驚かされる。これなら多少のパワーアップに対応してアシを固めたところで、街乗り領域での乗り心地が大きく損なわれることはないだろう。
また、この快適さをさらに際立たせているのが静粛性の高さだ。エンジンやトランスミッションといったメカノイズ系の低減もさることながら、速度を高めるほどに際立つのは件(くだん)の空力特性で、風切り音など上屋まわりからのノイズはひとつ上のDセグメントモデルに乗っているかのような少なさである。さらに、荷室部が区切られたセダンボディーのおかげで足まわりからの入力音も小さい。
“白場”が重要視される時代がやってくる
新型Aクラスはグレードに応じて2つのリアサスを使い分けているが、ハッチバックにせよセダンにせよ、今まで試乗したモデルはすべてマルチリンクの4輪独立サスが装着されており、小径肉厚タイヤ&トーションビームというベーシックモデルの乗り味は確認できていない。しかし、おそらく大きくは変わらないであろうことを想定できる理由は、アーム類の基本的な位置決めに相違はなく、それが小入力域からうまく作用している点、そして車体剛性が十二分に確保されている点にある。
この先、パワートレインの電動化が進むほどに、クルマのパッケージは増加する搭載物に対応すべく“白場”をいかに生み出すかがポイントとなってくるだろう。その際にFRだマルチリンクだというキーワードは自動車メーカーにとって支えきれない重荷となる可能性がある。Aクラス セダンの中身を知るにつけ、新型CLAとどうすみ分けるのかという目先の心配もさることながら、ともすればCクラスの実利的な存在理由を奪いかねないという不安を覚えるのは僕だけではないだろう。
(文=渡辺敏史/写真=ダイムラー/編集=藤沢 勝)
この先、パワートレインの電動化が進むほどに、クルマのパッケージは増加する搭載物に対応すべく“白場”をいかに生み出すかがポイントとなってくるだろう。その際にFRだマルチリンクだというキーワードは自動車メーカーにとって支えきれない重荷となる可能性がある。Aクラス セダンの中身を知るにつけ、新型CLAとどうすみ分けるのかという目先の心配もさることながら、ともすればCクラスの実利的な存在理由を奪いかねないという不安を覚えるのは僕だけではないだろう。
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