【試乗記】マツダ・アテンザワゴン25S Lパッケージ(FF/6AT)
- マツダ・アテンザワゴン25S Lパッケージ(FF/6AT)
改むるにはばかることなし
2012年のデビュー以来、4度目のマイナーチェンジを行った「アテンザ」は、マツダのフラッグシップモデルとして“走る歓び”をより追求したという。地道に改良を重ね進化を続けるという手法は、欧州ブランドでは当たり前のように聞くが、日本車では珍しいともいえる。その仕上がりは?
会うたびにきれいになる
昔はまるで垢(あか)抜けていなかった幼なじみが会うたびにきれいになって洗練されていくのを目の当たりにして何だかドキドキ、ちょっと気後れする気持ちに似ているかもしれない。あ、そこの女性陣、ちょっとそれ“何とかハラ”じゃないの、と眉をひそめないでください。クルマの例えですので、ひとつ大目に見てやってください。
本当に、そのぐらい近年のマツダの変身ぶりには、刮目(かつもく)すべきものがある。ひと昔前はコンパクトカーもセダンも黒一色の内装ばかりで、スポーティーさを狙っているのは分かるものの、いささか汗臭くやぼったいものだったが、失礼ながら今ではまるで気の利いたホテルやレストランのインテリアのようだ。
しかもそのような改良は、上級モデルから導入するとか、モデルチェンジの際にまとめて手が入るといった旧来のやり方ではなく、クラスにかかわりなく準備ができたものから速やかに行うのがマツダの方針だ。結果的にマツダのフラッグシップたるアテンザが一番後回しのタイミングになった改良もあるが、現在のマツダの戦略ではそんな「長幼の序」は優先順位が低いのである。
2012年発売のアテンザは今回でなんと4回目のマイナーチェンジである。この度の“マイナーチェンジ”では2リッターと2.5リッターのガソリンユニットおよび2.2リッターターボディーゼルに先行した他のモデル同様の改良が加えられたうえに、ボディー、サスペンション、インテリア、安全装備など車全体に幅広く手が入っている。
本当に、そのぐらい近年のマツダの変身ぶりには、刮目(かつもく)すべきものがある。ひと昔前はコンパクトカーもセダンも黒一色の内装ばかりで、スポーティーさを狙っているのは分かるものの、いささか汗臭くやぼったいものだったが、失礼ながら今ではまるで気の利いたホテルやレストランのインテリアのようだ。
しかもそのような改良は、上級モデルから導入するとか、モデルチェンジの際にまとめて手が入るといった旧来のやり方ではなく、クラスにかかわりなく準備ができたものから速やかに行うのがマツダの方針だ。結果的にマツダのフラッグシップたるアテンザが一番後回しのタイミングになった改良もあるが、現在のマツダの戦略ではそんな「長幼の序」は優先順位が低いのである。
2012年発売のアテンザは今回でなんと4回目のマイナーチェンジである。この度の“マイナーチェンジ”では2リッターと2.5リッターのガソリンユニットおよび2.2リッターターボディーゼルに先行した他のモデル同様の改良が加えられたうえに、ボディー、サスペンション、インテリア、安全装備など車全体に幅広く手が入っている。
「上質」を感じるインテリア
- 従来型からインストゥルメントパネルとドアトリムを大幅にデザイン変更。コンソール上のディスプレイも、7インチから8インチに大型化した。「アテンザワゴン25S Lパッケージ」ではフレームレスタイプの自動防げんルームミラーや、ダッシュボードに新素材「ウルトラスエード ヌー」を世界初採用する。
すぐに違いが分かるのはダッシュボードやシートなど内装の改良だろう。インストゥルメントパネルはすっきりクールな水平基調に整理整頓されており、使用されている素材の表面処理やパネル同士の合わせ目なども緻密で見事といっていい。
最上級グレードの「25S Lパッケージ」には、本杢(もく)のウッドパネルや「ウルトラスエード ヌー」という名の東レ製の新素材が採用されており、手触りも見た目も文句なしである。緻密な仕上げ、統一感のある洗練された出来栄えという点では、新型「クラウン」にも見劣りしないというか、むしろアテンザのほうが上質感に満ちていると思う。
豪華でラグジュアリーという種類ではないが、内装処理の巧みさでは今日本メーカーで最も上手ではないかと思う。隔世の感があるとはまさにこのことである。
またシートそのものも構造から一新されている。Lパッケージのレザーシートにはナッパレザー(しかもベンチレーション付き)が使われており、座り心地は上々である。
実はこのシート構造もサスペンションやボディーとともに、次世代の車両構造技術「スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー」に含まれる要素技術という。プロトタイプが明らかになっているSPCCIスカイアクティブXエンジンを搭載予定の次期型「アクセラ」(といわれている)用となる新技術を一部前倒しして採用しているのである。
最上級グレードの「25S Lパッケージ」には、本杢(もく)のウッドパネルや「ウルトラスエード ヌー」という名の東レ製の新素材が採用されており、手触りも見た目も文句なしである。緻密な仕上げ、統一感のある洗練された出来栄えという点では、新型「クラウン」にも見劣りしないというか、むしろアテンザのほうが上質感に満ちていると思う。
豪華でラグジュアリーという種類ではないが、内装処理の巧みさでは今日本メーカーで最も上手ではないかと思う。隔世の感があるとはまさにこのことである。
またシートそのものも構造から一新されている。Lパッケージのレザーシートにはナッパレザー(しかもベンチレーション付き)が使われており、座り心地は上々である。
実はこのシート構造もサスペンションやボディーとともに、次世代の車両構造技術「スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー」に含まれる要素技術という。プロトタイプが明らかになっているSPCCIスカイアクティブXエンジンを搭載予定の次期型「アクセラ」(といわれている)用となる新技術を一部前倒しして採用しているのである。
すっきり滑らか
サスペンションはその次世代車両構造技術を取り入れて大幅に手が入れられたうえに、ボディーそのものも強化されている。狙いは滑らかで自然なレスポンスである。マツダは「エフォートレス・ドライビング」という言葉で表現しているが、実際、新しいアテンザはすっきり軽快に走る。
全長4.8m級のアッパーミドルワゴンということを感じさせないぐらいハンドリングはさらりとした肌触りだが、鋭くピーキーに切れ込むというのではなく、あくまでドライバーの意図に忠実なリニア感を目指していることが分かる。ワインや日本酒の銘柄選びに迷っている時に、「すっきりして飲みやすいですよ」と勧められるとなぜかちょっとがっかりするが、クルマの場合は雑味のないすっきりとした走行感覚を実現するのは非常に難しいのである。
乗り心地も同様、静かでスムーズで以前とは比べられないぐらいしなやかに改善されているが、荒れた路面では若干19インチタイヤのバタつきを感じることもあった。この点ではまだ「CX-8」に一歩を譲ると言えるだろう。
全長4.8m級のアッパーミドルワゴンということを感じさせないぐらいハンドリングはさらりとした肌触りだが、鋭くピーキーに切れ込むというのではなく、あくまでドライバーの意図に忠実なリニア感を目指していることが分かる。ワインや日本酒の銘柄選びに迷っている時に、「すっきりして飲みやすいですよ」と勧められるとなぜかちょっとがっかりするが、クルマの場合は雑味のないすっきりとした走行感覚を実現するのは非常に難しいのである。
乗り心地も同様、静かでスムーズで以前とは比べられないぐらいしなやかに改善されているが、荒れた路面では若干19インチタイヤのバタつきを感じることもあった。この点ではまだ「CX-8」に一歩を譲ると言えるだろう。
あっちもこっちも最新仕様に
- フロントに横置きされる2.5リッター直4 DOHC 16バルブエンジンは、最高出力190ps、最大トルク252Nmを発生。気筒休止システムを新たに採用した。燃費は14.8km/リッター(JC08モード)、14.2km/リッター(WLTCモード)。
- 今回のマイナーチェンジでは、アクセル操作とエンジンのトルクの出方をリンクさせ、理想的な加速度を生み出すエンジンセッティングを施したという。トランスミッションは6段AT。通常モードとスポーツモードに切り替え可能な「ドライブセレクション」を採用。
2.2リッターターボディーゼル仕様はCX-8同様にパワーアップしたが、2.5リッターガソリンエンジンの最高出力と最大トルクは190ps/6000rpm、252Nm/4000rpmと事実上変わらない(従来型は188psと250Nm)。ただし、ひと足先に「CX-5」に加えられた改良と同じく、気筒休止システムが新たに採用され、また日常域での扱いやすさと効率向上を狙って手が入っている。
こちらもすっきり健全で嫌みのないエンジンだが、もう少しだけトルクの余裕が欲しいのが正直なところだ。最大トルク発生回転数が4000rpmだけに、ちょっと踏んで加速したい場合の力強さはディーゼル仕様にかなわない。中身がみっちり詰まったような、太いトルクの反応を選ぶ人が多いらしく、アテンザではいまだに6~7割がディーゼルモデルだという。
ひとつだけ、アイドリングストップからの再始動の際に予想外に大きな振動が伝わることが気になった。ちなみに従来のJC08モード燃費の数値ではその差が現れず、むしろ若干低下しているぐらいだが、マツダはいち早く新しいWLTC(Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle)モードへの対応を始めており、実用燃費では確実に向上しているという。
新装備は紹介し切れないほど多い。例えばメーターそのものが7インチ液晶パネルに大型化されたうえに、マツダではアクティブドライビングディスプレイと呼ぶヘッドアップディスプレイは、ナセル上部に投影パネルが起き上がるいわゆるコンバイナー式から、ウインドシールドに直接投影するタイプに変更され、さらにコンソール中央上のディスプレイも7インチから8インチへ大型化されている。
これまで4分割だったアダプティブLEDヘッドライト(ALH)のセグメントは20分割に細分化され、照射範囲の制御がより緻密になっている。あちらこちらに少しずつだが、確実に改良されている点を見つけることができるのだ。
デザインはもちろん、ダイナミックな走行性能も含めて、今最も一貫したクルマ造りを行っている日本メーカーはマツダだと思う。たとえ数は多くなくてもマツダファンを増やす、育てるという狙いは動かず、それゆえブランドイメージにブレがない。何かを変えるのに遅すぎることはない、という言葉の現在進行形である。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
こちらもすっきり健全で嫌みのないエンジンだが、もう少しだけトルクの余裕が欲しいのが正直なところだ。最大トルク発生回転数が4000rpmだけに、ちょっと踏んで加速したい場合の力強さはディーゼル仕様にかなわない。中身がみっちり詰まったような、太いトルクの反応を選ぶ人が多いらしく、アテンザではいまだに6~7割がディーゼルモデルだという。
ひとつだけ、アイドリングストップからの再始動の際に予想外に大きな振動が伝わることが気になった。ちなみに従来のJC08モード燃費の数値ではその差が現れず、むしろ若干低下しているぐらいだが、マツダはいち早く新しいWLTC(Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle)モードへの対応を始めており、実用燃費では確実に向上しているという。
新装備は紹介し切れないほど多い。例えばメーターそのものが7インチ液晶パネルに大型化されたうえに、マツダではアクティブドライビングディスプレイと呼ぶヘッドアップディスプレイは、ナセル上部に投影パネルが起き上がるいわゆるコンバイナー式から、ウインドシールドに直接投影するタイプに変更され、さらにコンソール中央上のディスプレイも7インチから8インチへ大型化されている。
これまで4分割だったアダプティブLEDヘッドライト(ALH)のセグメントは20分割に細分化され、照射範囲の制御がより緻密になっている。あちらこちらに少しずつだが、確実に改良されている点を見つけることができるのだ。
デザインはもちろん、ダイナミックな走行性能も含めて、今最も一貫したクルマ造りを行っている日本メーカーはマツダだと思う。たとえ数は多くなくてもマツダファンを増やす、育てるという狙いは動かず、それゆえブランドイメージにブレがない。何かを変えるのに遅すぎることはない、という言葉の現在進行形である。
(文=高平高輝/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
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