【試乗記】レクサスES300h“バージョンL”(FF/CVT)/ES300h“Fスポーツ”(FF/CVT)

【試乗記】レクサスES300h“バージョンL”(FF/CVT)/ES300h“Fスポーツ”(FF/CVT)
レクサスES300h“バージョンL”(FF/CVT)/ES300h“Fスポーツ”(FF/CVT)

ホッとするサルーン

日本国内での販売がいよいよ始まった、レクサスのセダン「ES」。新型では、従来モデルで好評だった“快適性”を一段と磨き上げたというのだが……? 最上級グレードとES初のスポーティーグレード、2モデルの試乗を通して乗り味をチェックした。

海外の売れっ子を日本でも

これまで北米をはじめ、中東やアジアなどで販売されてきた「レクサスES」。今回の試乗車は7代目にあたる新型で、日本では2018年10月24日に発売された。
これまで北米をはじめ、中東やアジアなどで販売されてきた「レクサスES」。今回の試乗車は7代目にあたる新型で、日本では2018年10月24日に発売された。
室内前方の装備類は、ドライバーの姿勢や視線の変化が極力抑えられるようレイアウトされている。
室内前方の装備類は、ドライバーの姿勢や視線の変化が極力抑えられるようレイアウトされている。
上級グレード“バージョンL”の前席。フラッグシップセダン「LS」のものと同様、上下2分割のデザインが採用されている。
上級グレード“バージョンL”の前席。フラッグシップセダン「LS」のものと同様、上下2分割のデザインが採用されている。
日本に導入される「ES」はすべてハイブリッド車。2.5リッターエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドシステムは、218psのシステム最高出力を発生する。
日本に導入される「ES」はすべてハイブリッド車。2.5リッターエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドシステムは、218psのシステム最高出力を発生する。
レクサスセダンの新顔が「ES300h」である。レクサスESの名では本邦初登場だが、なつかしい「トヨタ・ウィンダム」の血を引く大型FFセダンである。アメリカでは1989年以来これが7代目のESにあたる。いまは米国のレクサス販売もSUVが優勢だが、かつては年間8万台以上を売ったこともあるセダン系の稼ぎ頭である。

ES300hの基本構成は、1年ほど前に出た「トヨタ・カムリ」と同じだ。レクサスでは「GA-K」と呼ぶ新世代プラットフォーム(車台)を採用し、直噴2.5リッター4気筒にモーターを組み合わせたハイブリッドユニット「THSII」を搭載する。

ただしそこはレクサス。スピンドルグリルを与えられた4ドアボディーはカムリより9cm延長され、ほぼ5mに近い。中身にもいっそうの剛性強化と遮音対策が加えられている。エンジンとモーターの最高出力やトルクは変わらないが、システム最高出力は211psから218psに微増している。

グレードは、標準モデル、Fスポーツ、バージョンLの3種類。いちばん高いカムリハイブリッドは約440万円だが、ES300hは580万円から始まる。レンタカーのようなフリート需要は期待できないクルマだから、販売目標は月350台と控えめだ。横浜みなとみらいで開かれた試乗会ではバージョンL(698万円)とFスポーツ(629万円)を試すことができた。

これまで北米をはじめ、中東やアジアなどで販売されてきた「レクサスES」。今回の試乗車は7代目にあたる新型で、日本では2018年10月24日に発売された。
これまで北米をはじめ、中東やアジアなどで販売されてきた「レクサスES」。今回の試乗車は7代目にあたる新型で、日本では2018年10月24日に発売された。
室内前方の装備類は、ドライバーの姿勢や視線の変化が極力抑えられるようレイアウトされている。
室内前方の装備類は、ドライバーの姿勢や視線の変化が極力抑えられるようレイアウトされている。
上級グレード“バージョンL”の前席。フラッグシップセダン「LS」のものと同様、上下2分割のデザインが採用されている。
上級グレード“バージョンL”の前席。フラッグシップセダン「LS」のものと同様、上下2分割のデザインが採用されている。
日本に導入される「ES」はすべてハイブリッド車。2.5リッターエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドシステムは、218psのシステム最高出力を発生する。
日本に導入される「ES」はすべてハイブリッド車。2.5リッターエンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドシステムは、218psのシステム最高出力を発生する。

意外に人気のハイテクミラー

サイドミラーに代わる装備として“バージョンL”グレードにオプション設定される「デジタルアウターミラー」。法規の関係で、当面は日本仕様車にだけ用意される。
サイドミラーに代わる装備として“バージョンL”グレードにオプション設定される「デジタルアウターミラー」。法規の関係で、当面は日本仕様車にだけ用意される。
「デジタルアウターミラー」の映像は、左右Aピラーの付け根に備わる5インチモニターに表示される。
「デジタルアウターミラー」の映像は、左右Aピラーの付け根に備わる5インチモニターに表示される。
助手席側の「デジタルアウターミラー」およびモニター。通常のサイドミラーに比べ、突起物が小さい分、斜め前方の死角が少なくなる。
助手席側の「デジタルアウターミラー」およびモニター。通常のサイドミラーに比べ、突起物が小さい分、斜め前方の死角が少なくなる。
新型「レクサスES」のサスペンションには、ボディーの微小な動きに対しても減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を初採用。フラットかつしなやかな乗り心地が追求されている。
新型「レクサスES」のサスペンションには、ボディーの微小な動きに対しても減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を初採用。フラットかつしなやかな乗り心地が追求されている。
この新型レクサスで、クルマそのものより大きな話題をさらっているのが、「デジタルアウターミラー」である。左右ドアミラーの鏡をカメラに置き換え、映像を車内の液晶5インチディスプレイで見せる。カメラもディスプレイもパナソニック製。量産車世界初のミラーレスドアミラーである。

試乗車に乗り込むと、真っ先にそのディスプレイが目に入る。パワーユニットを起動すると、映像が立ち上がる。初物だが、思いのほか違和感はない。フェンダーミラー時代を知っているオヤジでも意外やすんなり使い始められた。

まず最初に感じた恩恵は、左右の視点移動量がノーマルミラーよりはるかに小さいこと。特に運転席側ディスプレイはすぐそこにある。アオリ運転には敏感になりそうだ。

画角も広く、後輪アルミホイールの盤面がわずかに見える。鏡のドアミラーでは真似できないアングルだろう。バックギアに入れたり、右左折でウインカーを出したりすると、さらに画角を広げる機能もある。カメラのハウジングはドアミラーよりずっと細身だから、フロントピラーまわりの死角が減るのもいい。今回は好天の昼間だったが、サイドウィンドウが曇っていたり、雨滴でぬれていたりしても、当然その影響は受けない。夜間は実際よりも明るく映るらしい。

ただ惜しいのは、映像の精彩度が低いこと。それでも機能的には十分だが、ダッシュボードにあるディスプレイ類の鮮やかさに比べると、見劣りする。原因はカメラのほうで、130万画素しかない。信頼性や耐久性の保証を考えると、まずはこれでスタートした、ということのようだ。でも、可能性は大きい。スーパーカーのような、デザイン優先、視界二の次のクルマを救うデバイスにもなるだろう。デジタルアウターミラーはバージョンLにのみ20万円(税抜き)のオプションとなるが、7割が選んでいるという。

サイドミラーに代わる装備として“バージョンL”グレードにオプション設定される「デジタルアウターミラー」。法規の関係で、当面は日本仕様車にだけ用意される。
サイドミラーに代わる装備として“バージョンL”グレードにオプション設定される「デジタルアウターミラー」。法規の関係で、当面は日本仕様車にだけ用意される。
「デジタルアウターミラー」の映像は、左右Aピラーの付け根に備わる5インチモニターに表示される。
「デジタルアウターミラー」の映像は、左右Aピラーの付け根に備わる5インチモニターに表示される。
助手席側の「デジタルアウターミラー」およびモニター。通常のサイドミラーに比べ、突起物が小さい分、斜め前方の死角が少なくなる。
助手席側の「デジタルアウターミラー」およびモニター。通常のサイドミラーに比べ、突起物が小さい分、斜め前方の死角が少なくなる。
新型「レクサスES」のサスペンションには、ボディーの微小な動きに対しても減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を初採用。フラットかつしなやかな乗り心地が追求されている。
新型「レクサスES」のサスペンションには、ボディーの微小な動きに対しても減衰力を発生させる「スウィングバルブショックアブソーバー」を初採用。フラットかつしなやかな乗り心地が追求されている。

畳の上を歩くがごとし

後席の広さは、「ES」のセリングポイントのひとつ。“バージョンL”(写真)には、左右席のリクライニング機能が備わる。
後席の広さは、「ES」のセリングポイントのひとつ。“バージョンL”(写真)には、左右席のリクライニング機能が備わる。
“バージョンL”の後席アームレスト。カーオーディオや空調、リクライニングの調節スイッチが並ぶ。
“バージョンL”の後席アームレスト。カーオーディオや空調、リクライニングの調節スイッチが並ぶ。
“バージョンL”には、18インチの「ノイズリダクションアルミホイール」が装着される。リム部を中空構造とすることで、走行中に発生する不快な「タイヤの気柱共鳴音」を低減するという。
“バージョンL”には、18インチの「ノイズリダクションアルミホイール」が装着される。リム部を中空構造とすることで、走行中に発生する不快な「タイヤの気柱共鳴音」を低減するという。
開口幅の大きさが目を引くトランクルーム。容量は443リッターで、長尺物を積むためのスキーホールも備わる。
開口幅の大きさが目を引くトランクルーム。容量は443リッターで、長尺物を積むためのスキーホールも備わる。
ハイテクドアミラーに目を奪われていると、ふと忘れがちだが、ES300h“バージョンL”はゆったりした快適な大型サルーンである。まず乗り心地がいい。骨太でフラットなドイツ車のテイストとは違う、徹底して当たりの柔らかい、やさしい乗り心地だ。

標準モデルとバージョンLには新開発の「スウィングバルブショックアブソーバー」が備わる。ダンパーのピストン部に10ミクロンの隙間(オイル流路)をつくることで、ごく微小な初期入力から減衰効果を発揮するというKYB製のメカニカルダンパーだ。特に町なかを流しているときの、畳の上を歩いているような乗り心地は、その恩恵かと思われた。

カムリで経験済みの2.5リッターハイブリッドは、さらに静かになった。モーターのみの走行中には「EV」マークが計器盤に出るが、基本、エンジンっぽさが“勝って”いる。その意味で、ナチュラルなハイブリッドである。

ただ、バージョンLはいちばん重いカムリと比べても車重が130kg以上重いため、ガツンとくるようなパンチはない。パワートレインだけではなく、前述の乗り心地も、ペダルフィールをはじめとする操作類のタッチも、決してガツンとはこない。外観こそアグレッシブだが、乗るとサクララウンジのようにホッとして癒やされる。ES300hの持ち味はそのへんだと思う。

後席の広さは、「ES」のセリングポイントのひとつ。“バージョンL”(写真)には、左右席のリクライニング機能が備わる。
後席の広さは、「ES」のセリングポイントのひとつ。“バージョンL”(写真)には、左右席のリクライニング機能が備わる。
“バージョンL”の後席アームレスト。カーオーディオや空調、リクライニングの調節スイッチが並ぶ。
“バージョンL”の後席アームレスト。カーオーディオや空調、リクライニングの調節スイッチが並ぶ。
“バージョンL”には、18インチの「ノイズリダクションアルミホイール」が装着される。リム部を中空構造とすることで、走行中に発生する不快な「タイヤの気柱共鳴音」を低減するという。
“バージョンL”には、18インチの「ノイズリダクションアルミホイール」が装着される。リム部を中空構造とすることで、走行中に発生する不快な「タイヤの気柱共鳴音」を低減するという。
開口幅の大きさが目を引くトランクルーム。容量は443リッターで、長尺物を積むためのスキーホールも備わる。
開口幅の大きさが目を引くトランクルーム。容量は443リッターで、長尺物を積むためのスキーホールも備わる。

VIPカーとしてもイケる

7代目「レクサスES」では、ほかのレクサス車に見られるスポーティーグレード“Fスポーツ”が、ESとしては初めて設定される。アグレッシブなデザインの内外装や、シャープなハンドリングを実現するパフォーマンスダンパーが特徴となっている。
7代目「レクサスES」では、ほかのレクサス車に見られるスポーティーグレード“Fスポーツ”が、ESとしては初めて設定される。アグレッシブなデザインの内外装や、シャープなハンドリングを実現するパフォーマンスダンパーが特徴となっている。
“Fスポーツ”専用のスポーツシートは、ヘッドレスト部に「F SPORT」ロゴのエンボス加工が施される。なお、後席のデザインは標準車と変わらない。
“Fスポーツ”専用のスポーツシートは、ヘッドレスト部に「F SPORT」ロゴのエンボス加工が施される。なお、後席のデザインは標準車と変わらない。
静粛性や空力性能をとことん追求したという新型「ES」。リアコンビランプやバンパー下部の形状もまた、それらの向上に寄与している。
静粛性や空力性能をとことん追求したという新型「ES」。リアコンビランプやバンパー下部の形状もまた、それらの向上に寄与している。
Fスポーツは電子制御ダンパー(AVS)を備え、19インチホイールを履く。車重(1720kg)はバージョンLより10kg軽い。

パワートレインはまったく同じだが、ドライブモードの「スポーツ」の上に、こちらは「スポーツ+」がある。それを選ぶと、タコメーターが赤くなるので、てっきり動力系の制御も変わっているのかと思ったら、スポーツ+で変わるのはAVSの硬さと電動パワーステアリングの重さだけだった。しかし、バージョンLからFスポーツに乗り換えると、車重の差以上に軽くなった印象がある。ヤングアットハート向きのES300hである。

全長5m近いのだから、リアシートの足もとは広大だ。シート座面もカムリより高く、見晴らしにすぐれる。VIPカーとしても使えそうだ。

駆動用のリチウムイオン電池は後席クッション下に置かれ、トランクルームも広大だ。バッテリーをここまで黒子にできたら、シューティングブレークのようなカッコいいステーションワゴンをつくってみたらどうだろう。デザイン優先で斜め後方視界が悪くなっても大丈夫。デジタルアウターミラーがあります。

(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥/編集=関 顕也)

7代目「レクサスES」では、ほかのレクサス車に見られるスポーティーグレード“Fスポーツ”が、ESとしては初めて設定される。アグレッシブなデザインの内外装や、シャープなハンドリングを実現するパフォーマンスダンパーが特徴となっている。
7代目「レクサスES」では、ほかのレクサス車に見られるスポーティーグレード“Fスポーツ”が、ESとしては初めて設定される。アグレッシブなデザインの内外装や、シャープなハンドリングを実現するパフォーマンスダンパーが特徴となっている。
“Fスポーツ”専用のスポーツシートは、ヘッドレスト部に「F SPORT」ロゴのエンボス加工が施される。なお、後席のデザインは標準車と変わらない。
“Fスポーツ”専用のスポーツシートは、ヘッドレスト部に「F SPORT」ロゴのエンボス加工が施される。なお、後席のデザインは標準車と変わらない。
静粛性や空力性能をとことん追求したという新型「ES」。リアコンビランプやバンパー下部の形状もまた、それらの向上に寄与している。
静粛性や空力性能をとことん追求したという新型「ES」。リアコンビランプやバンパー下部の形状もまた、それらの向上に寄与している。

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