【試乗記】レクサスES300h“Fスポーツ”(FF/CVT)
- レクサスES300h“Fスポーツ”(FF/CVT)
リベンジは成功したか
レクサスのフラッグシップモデルである「LS」と見間違えるほどのデザインとサイズ感を持ち日本初登場となった「ES」。同じパワートレインを採用する兄弟車である「カムリ」とはどこが違うのか? 北米テイストに満ちた両車を比べて、感じることがあった。
かつては「ウィンダム」
- 日本で「レクサスES」として販売されるのは初めてだが、北米では1989年のレクサスブランド設立当初からのラインナップで、現行モデルが実に7代目となる。そのESの2代目モデルの登場に合わせて、1991年に日本で発売されたのが「トヨタ・ウィンダム」だった。
- 現行レクサス各車で用いられる「スピンドルグリル」は「ES300h“Fスポーツ”」専用のグリルパターンを採用している。グリル内は、L字をモチーフとしたピースが7000個以上も組み合わされたデザインになる。
レクサスESといえば、思い出すテレビCMがある。正しくは初代「ウィンダム」のCMなのだが、その短い映像には、アメリカの脳外科医や国際企業コンサルタント、建築デザイナー、環境学者、国際線の機長──といったプレステージ性が高いと思われる職業のイケメン米国人が多数登場するのである。人物の紹介に加え、ナレーションは「レクサスES300=日本名ウィンダム。これがワールドプレステージクラス」と続ける。
1991年、ウィンダムの日本発売にあたって「このクルマはアメリカでは高級ブランドであるレクサスとして売られていますよ」と、いかにも舶来モノに弱い日本人のハートを揺さぶるのが、そのCMの狙いだったのだろう。当時はまだまだ「〇〇では」という外国の地名を出す「ではの神」信仰がアツかったのだ。
「アメリカではレクサスが高級車である」という刷り込みが、多くの日本人に刺さった……かどうかは不明なれど、1989年に北米でレクサスブランドがスタートして以来、現在ではSUVが主軸といえるものの、人気モデルとしてESは北米市場の屋台骨を支えてきた。
ちなみにどうでもいい話だが、ウィンダムといえば3代目のテレビCMで、映画『ブレードランナー』のエンディング曲を使用するというおきて破りに出た。何がおきて破りかというと、その『ブレードランナー』の曲は、1985年にマツダが2代目「RX-7」のCMで先に使用していたからだ。当時「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」という与謝野晶子の短歌のナレーションとともに流れたこの曲のインパクトは大で、しかも当時としてはかなりクールな映像でもあったと感じた。スポーツカーの躍動感あるそれとは真逆なウィンダムのテレビCMを見て、どこか裏切られた気持ちになった……記憶も遠い昔だ。
つまり何が言いたいのかというと、日本市場で新参者扱いのレクサスESシリーズも、北米市場で実はレクサスブランド誕生時の1989年から、30年近い歴史を持つ同ブランドの中心的なモデルである、ということだ。1989年(すなわち平成元年)は、「スカイラインGT-R(R32)」「フェアレディZ(Z32)」「セルシオ(=レクサスLS)」「インフィニティQ45」「ユーノス・ロードスター」「NSX(発表のみ)」などなど日本車大豊作の年で、レクサス誕生もそんな新時代の象徴のひとつだったと言えるのかもしれない。
1991年、ウィンダムの日本発売にあたって「このクルマはアメリカでは高級ブランドであるレクサスとして売られていますよ」と、いかにも舶来モノに弱い日本人のハートを揺さぶるのが、そのCMの狙いだったのだろう。当時はまだまだ「〇〇では」という外国の地名を出す「ではの神」信仰がアツかったのだ。
「アメリカではレクサスが高級車である」という刷り込みが、多くの日本人に刺さった……かどうかは不明なれど、1989年に北米でレクサスブランドがスタートして以来、現在ではSUVが主軸といえるものの、人気モデルとしてESは北米市場の屋台骨を支えてきた。
ちなみにどうでもいい話だが、ウィンダムといえば3代目のテレビCMで、映画『ブレードランナー』のエンディング曲を使用するというおきて破りに出た。何がおきて破りかというと、その『ブレードランナー』の曲は、1985年にマツダが2代目「RX-7」のCMで先に使用していたからだ。当時「やは肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君」という与謝野晶子の短歌のナレーションとともに流れたこの曲のインパクトは大で、しかも当時としてはかなりクールな映像でもあったと感じた。スポーツカーの躍動感あるそれとは真逆なウィンダムのテレビCMを見て、どこか裏切られた気持ちになった……記憶も遠い昔だ。
つまり何が言いたいのかというと、日本市場で新参者扱いのレクサスESシリーズも、北米市場で実はレクサスブランド誕生時の1989年から、30年近い歴史を持つ同ブランドの中心的なモデルである、ということだ。1989年(すなわち平成元年)は、「スカイラインGT-R(R32)」「フェアレディZ(Z32)」「セルシオ(=レクサスLS)」「インフィニティQ45」「ユーノス・ロードスター」「NSX(発表のみ)」などなど日本車大豊作の年で、レクサス誕生もそんな新時代の象徴のひとつだったと言えるのかもしれない。
- 日本で「レクサスES」として販売されるのは初めてだが、北米では1989年のレクサスブランド設立当初からのラインナップで、現行モデルが実に7代目となる。そのESの2代目モデルの登場に合わせて、1991年に日本で発売されたのが「トヨタ・ウィンダム」だった。
- 現行レクサス各車で用いられる「スピンドルグリル」は「ES300h“Fスポーツ”」専用のグリルパターンを採用している。グリル内は、L字をモチーフとしたピースが7000個以上も組み合わされたデザインになる。
パワートレインは「カムリ」と共通
- パワートレインは、2.5リッター直4エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせた「THSII」。これは現行「カムリ」と同じもので、システム最高出力218psという実力を持つ。遮音性の高いガラスの採用もあって、エンジン音や不快な走行ノイズがキャビンにほとんど侵入してこないのも「ES」の特長だ。
- シフトノブは、他モデルの流用などではなく、「ES」のインテリアに合わせて新たにデザインされたこだわりのもの。シフトレバー横に配置されたタッチパッドとアームレストも、操作性を考慮しこの位置にポジションを決めたのだという。
そんな古くて新しいレクサスESは、漏れなくハイブリッドのパワートレインを採用する。グレードは「ES300h」「ES300h“バージョンL”」「ES300h“Fスポーツ”」の3つで、その3グレードともすべて共通の、直噴の2.5リッター4気筒にモーターを組み合わせたハイブリッドユニット「THSII」を搭載する。エンジンの最高出力と最大トルクはそれぞれ178psと221Nmで、モーターの最高出力と最大トルクは120psと202Nmとなる。
このパワーユニットの構成とパフォーマンスを見て、現行カムリと同じだと気づく。実際に走らせてみても、車重の差はあるもののアクセルに対する反応や総合的なフィーリングは、やはり兄弟車であるカムリとほぼ同じである。ホイールベースこそレクサスESのほうが2870mmと、カムリの2825mmに比べて45mm長いが、プラットフォームも共通の「GA-K」と呼ばれるFF(横置きエンジン)用を使用。フロントがストラット、リアがダブルウイッシュボーンとなるサスペンション形式も同一だから似ていても当然だ。
ただし、ESのエクステリアデザインは、まさにミニLSである。街で見かけたら、ブランド誕生以来フラッグシップとして君臨しているLSと間違えてしまいそうになるが、ドアを開けたその先のインテリアは、随分と眺めが違っている。
どちらがどうということではなく、ESのインテリアはLSのそれに比べればずっとまともで、ビジーなデザインがウリのレクサスにしてはクリーン方向に振った割と普通のデザインだと感じる。LSのセリングポイントでもあろう大げさな加飾などはなく、それと比べればシンプルだと言ってもいい。ただし、それでもあしきレイヤードデザインの片りんは残っていて、個人的には少しばかり残念だ。
もっともパーツひとつひとつの質感は上々で、レクサスという“北米市場をターゲットとする高級車”に期待するクオリティーは持っている。クーペの「LC」あたりから始まったメーターフード左右にあるツノのようなダイヤルスイッチは、ドライビングモードの切り替えスイッチが左に、VSC(トラコン)のスイッチが右に配置されている。
オーナーであれば普段積極的に使用する類いのモノではないだろうから、場所さえ分かればどこに付いていても大きな影響はないはずなのだが、なぜにこの位置に? という疑問はある。しかも操作性を重視したのか、大きすぎてあまりカッコいいものではないからなおさらだ。
このパワーユニットの構成とパフォーマンスを見て、現行カムリと同じだと気づく。実際に走らせてみても、車重の差はあるもののアクセルに対する反応や総合的なフィーリングは、やはり兄弟車であるカムリとほぼ同じである。ホイールベースこそレクサスESのほうが2870mmと、カムリの2825mmに比べて45mm長いが、プラットフォームも共通の「GA-K」と呼ばれるFF(横置きエンジン)用を使用。フロントがストラット、リアがダブルウイッシュボーンとなるサスペンション形式も同一だから似ていても当然だ。
ただし、ESのエクステリアデザインは、まさにミニLSである。街で見かけたら、ブランド誕生以来フラッグシップとして君臨しているLSと間違えてしまいそうになるが、ドアを開けたその先のインテリアは、随分と眺めが違っている。
どちらがどうということではなく、ESのインテリアはLSのそれに比べればずっとまともで、ビジーなデザインがウリのレクサスにしてはクリーン方向に振った割と普通のデザインだと感じる。LSのセリングポイントでもあろう大げさな加飾などはなく、それと比べればシンプルだと言ってもいい。ただし、それでもあしきレイヤードデザインの片りんは残っていて、個人的には少しばかり残念だ。
もっともパーツひとつひとつの質感は上々で、レクサスという“北米市場をターゲットとする高級車”に期待するクオリティーは持っている。クーペの「LC」あたりから始まったメーターフード左右にあるツノのようなダイヤルスイッチは、ドライビングモードの切り替えスイッチが左に、VSC(トラコン)のスイッチが右に配置されている。
オーナーであれば普段積極的に使用する類いのモノではないだろうから、場所さえ分かればどこに付いていても大きな影響はないはずなのだが、なぜにこの位置に? という疑問はある。しかも操作性を重視したのか、大きすぎてあまりカッコいいものではないからなおさらだ。
- パワートレインは、2.5リッター直4エンジンにハイブリッドシステムを組み合わせた「THSII」。これは現行「カムリ」と同じもので、システム最高出力218psという実力を持つ。遮音性の高いガラスの採用もあって、エンジン音や不快な走行ノイズがキャビンにほとんど侵入してこないのも「ES」の特長だ。
- シフトノブは、他モデルの流用などではなく、「ES」のインテリアに合わせて新たにデザインされたこだわりのもの。シフトレバー横に配置されたタッチパッドとアームレストも、操作性を考慮しこの位置にポジションを決めたのだという。
確かに味付けはスポーティー
- レクサスの考えるHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)をより進化させたというインテリアデザインを持つ「ES」。タッチスイッチと物理スイッチが適度に組み合わせられ、直観的な操作が可能だった。センターコンソール中央に位置するディスプレイは12.3インチで、横に配置されるアナログデザインの時計はGPSの時刻補正付きとなっている。
- ヘッドレスト一体式となるシートバックデザインを持つフロントシートは「ES300h“Fスポーツ”」の専用アイテム。アルミ製のペダルとフットレストも専用装備として採用している。センターコンソールボックスは、左右どちらからでも開き便利に使える。
“Fスポーツ”は、スポーツを名乗るだけあって内外装において他グレードとの差異化を行っている。エクステリアでは19インチサイズのホイールやリアスポイラーが専用装備となり、フロントグリルのメッシュパターンもこのモデルだけのデザインだ。
専用カラーとなる鮮やかなレッド(ブラックも選べる)の「Lテックス」と呼ばれる表皮をシートやドアトリムに採用するのがインテリアにおける“Fスポーツ”の証しで、加えて専用シートやステアリングホイールなどに「F SPORT」の文字が入っている。液晶メーターはアナログメーター風のデザインを持つセンター部分が右にスライドする“Fスポーツ”専用装備品。これは最高出力560 psを誇るスーパーカー「LFA」からの継承なのだという。
前述のツノのように生えたスイッチで、5つのドライビングモードから初めはノーマルを選び、スポーツS→スポーツS+とハード方向へと切り替えていく。上位モードになればなるほど「高級セダンはこうでないと」と思った静かで快適な乗り心地から、徐々に足は固くなり、ステアリングの反応も敏しょう性を増す。確かにスポーティーな味付けであり、スポーツS+のハンドリングはどことなく「メルセデスAMG CLA45」っぽい。
そうしたハンドリングがシャープになるにしたがって、エキゾーストノートは官能的にほえ、加速感も向上する……などというドラマは、しかし残念ながら起きない。なんだか肩透かしのようだが、ドライブモードセレクトでコントロールできるのは足の固さとステアリングの重さ(反応)だけなのだ。
ただし、ノーマルからスポーツSに変えると、ボディーがキュッと引き締まり人馬一体感が増し、スポーツS+では、さらにボディーの各部から余った空気が抜け、ぐっと緻密さが増したようなハンドリングに味付けが変わる。しつこいようだが、だからといって速くなるわけではない。
路面とのコンタクト感が強まり、およそ5mものボディーを持つラグジュアリーセダンを運転しているとは思えないスポーツ+でもたらされるハンドリングは、その分縦Gの発生による上下動も顕著だ。これを「さすがレクサスが誇るスポーツグレードたる“F”のDNAだ」と思える人は、精悍(せいかん)なスタイリングが漏れなく付いてくる“Fスポーツ”を選べばいいし、「後席に余裕がある乗り心地の良い、アメリカで人気の高級車を」という方は、69万円値段は上がるが、新しモノ好きには堪(たま)らないデジタルアウターミラーもオプションで選べる“バージョンL”を選べばいい。
専用カラーとなる鮮やかなレッド(ブラックも選べる)の「Lテックス」と呼ばれる表皮をシートやドアトリムに採用するのがインテリアにおける“Fスポーツ”の証しで、加えて専用シートやステアリングホイールなどに「F SPORT」の文字が入っている。液晶メーターはアナログメーター風のデザインを持つセンター部分が右にスライドする“Fスポーツ”専用装備品。これは最高出力560 psを誇るスーパーカー「LFA」からの継承なのだという。
前述のツノのように生えたスイッチで、5つのドライビングモードから初めはノーマルを選び、スポーツS→スポーツS+とハード方向へと切り替えていく。上位モードになればなるほど「高級セダンはこうでないと」と思った静かで快適な乗り心地から、徐々に足は固くなり、ステアリングの反応も敏しょう性を増す。確かにスポーティーな味付けであり、スポーツS+のハンドリングはどことなく「メルセデスAMG CLA45」っぽい。
そうしたハンドリングがシャープになるにしたがって、エキゾーストノートは官能的にほえ、加速感も向上する……などというドラマは、しかし残念ながら起きない。なんだか肩透かしのようだが、ドライブモードセレクトでコントロールできるのは足の固さとステアリングの重さ(反応)だけなのだ。
ただし、ノーマルからスポーツSに変えると、ボディーがキュッと引き締まり人馬一体感が増し、スポーツS+では、さらにボディーの各部から余った空気が抜け、ぐっと緻密さが増したようなハンドリングに味付けが変わる。しつこいようだが、だからといって速くなるわけではない。
路面とのコンタクト感が強まり、およそ5mものボディーを持つラグジュアリーセダンを運転しているとは思えないスポーツ+でもたらされるハンドリングは、その分縦Gの発生による上下動も顕著だ。これを「さすがレクサスが誇るスポーツグレードたる“F”のDNAだ」と思える人は、精悍(せいかん)なスタイリングが漏れなく付いてくる“Fスポーツ”を選べばいいし、「後席に余裕がある乗り心地の良い、アメリカで人気の高級車を」という方は、69万円値段は上がるが、新しモノ好きには堪(たま)らないデジタルアウターミラーもオプションで選べる“バージョンL”を選べばいい。
- レクサスの考えるHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)をより進化させたというインテリアデザインを持つ「ES」。タッチスイッチと物理スイッチが適度に組み合わせられ、直観的な操作が可能だった。センターコンソール中央に位置するディスプレイは12.3インチで、横に配置されるアナログデザインの時計はGPSの時刻補正付きとなっている。
- ヘッドレスト一体式となるシートバックデザインを持つフロントシートは「ES300h“Fスポーツ”」の専用アイテム。アルミ製のペダルとフットレストも専用装備として採用している。センターコンソールボックスは、左右どちらからでも開き便利に使える。
「LS」とも「カムリ」とも違う「ES」の個性
もっとも500万円を超える価格だけあって、デザインの好みを脇に置いておけば、走りも質感も高級車と紹介してなんら問題がないレベルだ。ベースが同じとはいえ、カムリとは走り以外のあらゆるしつらえが異なっている。
単に後席が広く快適な移動空間を持つハイブリッド車がいいというのであれば、カムリでも十分にその要件は満たしている。しかし例えば、同じ800FP(フィルパワー)を持つダウンジャケットでも、ユニクロとカナダグースでは価格も見た目も所有する満足度も(恐らく)異なるように、この両者には大きな違いがあるのだ。オマエはどっちを選ぶんだ? と聞かれれば、GA-Kベースの最新FFモデルはどちらも秀作であると感想を述べつつも、個人的には迷わずカムリでありユニクロである。購入するに至る資金力に難点があるのはもちろんだが、デザインに納得さえできればカムリの機能性には十分満足できるからだ。
LS風味のエクステリアを持つESのクオリティーと走りにひとしきり感心し、「見た目も立派だし、もうLSなんて法人需要でしかないんじゃないの?」などと好き勝手言っていた試乗時から数週間後、ありがたくも最新のLSに乗るチャンスが巡ってきた。デビュー時の印象が決していいものではなかっただけに、まったく期待せずにステアリングを握ったが、同乗者と共に「いやコレ、すごく良くなっているんじゃないの?」と顔を見合わせた。
ES以上の重厚感とFRらしいドライバーの感覚にフィットするハンドリングに、さすがフラッグシップと感心し、「今どき地方のスナックでもこんな内装はないよ」と毒づいていた内装も、鳳凰(ほうおう)っぽくてこれはこれでアリかもね、とまさかの宗旨替え。十分高級だと思わせたESだが、上には上がいることを実感しないわけにはいかない。
翻ってESとカムリ、ESとLSを並べてみれば、三者三様のキャラクターと価格にしっかりとした線引きがしてあり、カムリはトヨタでありESはレクサスだとしみじみ感じる。それは優劣ではなく、価格と個性の違いでもある。ESに乗ってカムリの良さを再認識したし、LSは別物だとも実感した。
そんなESは、言ってしまえば、手の届くギリギリ現実的な高級車だろう。トヨタ的には、かつてウィンダムで果たせなかった、前輪駆動の高級車で名実ともに一番になるという夢へのリベンジであるかもしれない。実際、月販350台の目標に対し、販売開始直後の受注実績は約5600台と、絶好調にみえる。ただし、分かっているとは思うが“Fスポーツ”は“F”とは異なる単なるスポーツ風味。ワインディングロードやサーキットを走って楽しめる類いのものではないので、お間違えなく。
(文=櫻井健一/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
単に後席が広く快適な移動空間を持つハイブリッド車がいいというのであれば、カムリでも十分にその要件は満たしている。しかし例えば、同じ800FP(フィルパワー)を持つダウンジャケットでも、ユニクロとカナダグースでは価格も見た目も所有する満足度も(恐らく)異なるように、この両者には大きな違いがあるのだ。オマエはどっちを選ぶんだ? と聞かれれば、GA-Kベースの最新FFモデルはどちらも秀作であると感想を述べつつも、個人的には迷わずカムリでありユニクロである。購入するに至る資金力に難点があるのはもちろんだが、デザインに納得さえできればカムリの機能性には十分満足できるからだ。
LS風味のエクステリアを持つESのクオリティーと走りにひとしきり感心し、「見た目も立派だし、もうLSなんて法人需要でしかないんじゃないの?」などと好き勝手言っていた試乗時から数週間後、ありがたくも最新のLSに乗るチャンスが巡ってきた。デビュー時の印象が決していいものではなかっただけに、まったく期待せずにステアリングを握ったが、同乗者と共に「いやコレ、すごく良くなっているんじゃないの?」と顔を見合わせた。
ES以上の重厚感とFRらしいドライバーの感覚にフィットするハンドリングに、さすがフラッグシップと感心し、「今どき地方のスナックでもこんな内装はないよ」と毒づいていた内装も、鳳凰(ほうおう)っぽくてこれはこれでアリかもね、とまさかの宗旨替え。十分高級だと思わせたESだが、上には上がいることを実感しないわけにはいかない。
翻ってESとカムリ、ESとLSを並べてみれば、三者三様のキャラクターと価格にしっかりとした線引きがしてあり、カムリはトヨタでありESはレクサスだとしみじみ感じる。それは優劣ではなく、価格と個性の違いでもある。ESに乗ってカムリの良さを再認識したし、LSは別物だとも実感した。
そんなESは、言ってしまえば、手の届くギリギリ現実的な高級車だろう。トヨタ的には、かつてウィンダムで果たせなかった、前輪駆動の高級車で名実ともに一番になるという夢へのリベンジであるかもしれない。実際、月販350台の目標に対し、販売開始直後の受注実績は約5600台と、絶好調にみえる。ただし、分かっているとは思うが“Fスポーツ”は“F”とは異なる単なるスポーツ風味。ワインディングロードやサーキットを走って楽しめる類いのものではないので、お間違えなく。
(文=櫻井健一/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
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