【試乗記】トヨタ・ハイラックスZ/ハイラックスZ“ブラックラリーエディション”
- トヨタ・ハイラックスZ(4WD/6AT)/ハイラックスZ“ブラックラリーエディション”(4WD/6AT)
今の日本にライバルはいない
2017年9月、実に13年ぶりの販売再開となった「ハイラックス」を、オフロードコースで試すチャンスが訪れた。強靭(きょうじん)なラダーフレームと最新の電子デバイスを得た4WDシステムの組み合わせは、いったいどんな走破性を披露してくれるのか。タフなコースに挑んでみた。
最新の8代目はタイ工場で生産
最もベーシックな2シーター仕様の“スタンダード・キャブ”に、リクライニング角の増大やある程度の荷物の室内搭載を可能とするべくシート後方の空間を拡大させた“スマートキャブ”。さらには、リアに3人掛けのベンチシートを加えた4ドアボディーの“ダブルキャブ”と、実はボディーだけでも3種類も用意されるのが、“本場”であるタイにおける最新ハイラックスのバリエーションである。そんな現地仕様では搭載されるエンジンも、2.4/2.8リッターの4気筒ターボ付きディーゼルに2.7リッターの4気筒ガソリンと、こちらもなかなか多彩だ。
すこぶる高価な税金が課されてしまう乗用車に対して、それが大幅に安価という点などを背景に、トラックを“乗用”することが当たり前というかの国では、数あるトヨタ車の中でもハイラックスはポピュラーな存在。
当初、日本における働くクルマとして1968年に初代モデルが誕生。すなわち、昨2018年に生誕50年という記念すべき時を迎えたこのピックアップトラックのブランドは、2017年時点では6カ国で生産され、180以上の国や地域で販売されるというグローバルな存在へと成長を遂げているのである。
一方で、そんなグローバル化に伴うサイズの拡大などを理由として、実はかつての母国である日本での販売はストップされることに。「13年ぶりの導入」というフレーズとともに2017年9月から日本で販売されている現行のハイラックスは、前述のタイ仕様をベースに日本市場に向けての法規適合などのリファインを行って、タイ工場から輸入されているものだ。
もっとも、販売再開とはいっても先に紹介した多彩なモデルすべてが持ち込まれているわけではなく、2.4リッターの直4ディーゼルターボエンジンを6段ATと組み合わせた4WD仕様の、4ドアダブルキャブボディーのみと仕様が限定されている点に、トヨタの慎重さがうかがい知れる。もはや大きな需要は望み得ない中で、紆余(うよ)曲折の末にほそぼそと販売が再開された……というのが、日本での最新ハイラックスに対する率直なイメージだ。
すこぶる高価な税金が課されてしまう乗用車に対して、それが大幅に安価という点などを背景に、トラックを“乗用”することが当たり前というかの国では、数あるトヨタ車の中でもハイラックスはポピュラーな存在。
当初、日本における働くクルマとして1968年に初代モデルが誕生。すなわち、昨2018年に生誕50年という記念すべき時を迎えたこのピックアップトラックのブランドは、2017年時点では6カ国で生産され、180以上の国や地域で販売されるというグローバルな存在へと成長を遂げているのである。
一方で、そんなグローバル化に伴うサイズの拡大などを理由として、実はかつての母国である日本での販売はストップされることに。「13年ぶりの導入」というフレーズとともに2017年9月から日本で販売されている現行のハイラックスは、前述のタイ仕様をベースに日本市場に向けての法規適合などのリファインを行って、タイ工場から輸入されているものだ。
もっとも、販売再開とはいっても先に紹介した多彩なモデルすべてが持ち込まれているわけではなく、2.4リッターの直4ディーゼルターボエンジンを6段ATと組み合わせた4WD仕様の、4ドアダブルキャブボディーのみと仕様が限定されている点に、トヨタの慎重さがうかがい知れる。もはや大きな需要は望み得ない中で、紆余(うよ)曲折の末にほそぼそと販売が再開された……というのが、日本での最新ハイラックスに対する率直なイメージだ。
代わりは見つからない
全長5320mmにして全幅が1885mm。3085mmと長大なホイールベースのおかげもあって最小回転半径は6.4m。そんな数値の持ち主がピックアップトラックとなれば、たとえトヨタではなくても日本での販売に二の足を踏むというのが“正常な判断力”であるはずだ。
かくして、前7代目モデルへの移行のタイミングをもっていったんは取りやめとなった日本での販売が現行モデルで復活したのは、ひとつには6代目以前の車両を所有して業務などに用いるユーザーの「買い替えるべきモデルが見つからない」という声に応える意味合いも大きかったという。
ところが、いざふたを開ければそうしたユーザーによる買い替え需要も発生はしたものの、実はそれ以上に多かったのが20代の若い人の購入事例だというのだから、やはり自動車商売とは分からないもの。前述のような大きなサイズや6.4mにもなる最小回転半径などは問題とせず、むしろそれを面白がるようにスポーツやレジャー用に手に入れるという例が少なくないというのだ。
かくして、テストドライブに先駆けそんなハナシを聞いていたら、ミニバンには必須とされていたスライドドアを持たない「CX-8」の売れ行きが想定外の高さ、という話題を思い出した。「5m超のボディーを持つトラックが売れるはずがない」、あるいは、「スライドドアのないミニバン需要など日本にはない」といった先入観を覆すそうした事例は、まさにメーカー側自身による”クルマ離れ”の典型例であるのかもしれない。
もちろんそうは言ってもこの先、爆発的なヒットとなる可能性は考えにくい。けれども、こうした例を示されると、特に国内で生産されながら“海外専用モデル”と位置付けられ、日本で手に入れることが困難なモデルの中に、同様の事例が隠されている可能性も考えられそうだ。ハイラックスの想定外の購入事例は、そんな今の日本の“慎重過ぎる自動車販売”の風潮に一石を投じることになってくれるかもしれない。
かくして、前7代目モデルへの移行のタイミングをもっていったんは取りやめとなった日本での販売が現行モデルで復活したのは、ひとつには6代目以前の車両を所有して業務などに用いるユーザーの「買い替えるべきモデルが見つからない」という声に応える意味合いも大きかったという。
ところが、いざふたを開ければそうしたユーザーによる買い替え需要も発生はしたものの、実はそれ以上に多かったのが20代の若い人の購入事例だというのだから、やはり自動車商売とは分からないもの。前述のような大きなサイズや6.4mにもなる最小回転半径などは問題とせず、むしろそれを面白がるようにスポーツやレジャー用に手に入れるという例が少なくないというのだ。
かくして、テストドライブに先駆けそんなハナシを聞いていたら、ミニバンには必須とされていたスライドドアを持たない「CX-8」の売れ行きが想定外の高さ、という話題を思い出した。「5m超のボディーを持つトラックが売れるはずがない」、あるいは、「スライドドアのないミニバン需要など日本にはない」といった先入観を覆すそうした事例は、まさにメーカー側自身による”クルマ離れ”の典型例であるのかもしれない。
もちろんそうは言ってもこの先、爆発的なヒットとなる可能性は考えにくい。けれども、こうした例を示されると、特に国内で生産されながら“海外専用モデル”と位置付けられ、日本で手に入れることが困難なモデルの中に、同様の事例が隠されている可能性も考えられそうだ。ハイラックスの想定外の購入事例は、そんな今の日本の“慎重過ぎる自動車販売”の風潮に一石を投じることになってくれるかもしれない。
乗用車基準では語れない
はるばるタイからやって来たハイラックスのドライバーズシートへと、Aピラーに備え付けられたアシストグリップをつかんで体を引き上げるようにしながら乗り込む。当然着座位置も高いので見下ろし感は大型のSUVに負けず劣らずで、視界も良好。フード先端左側にニョッキリ生えた補助ミラーも、見た目は滑稽ながらボディー端の位置を正確につかむのに有効であることを、後にタイトなラフロード走行で教えられることとなった。
全面“樹脂張り”というのが実感のインテリア周りはお世辞にも上質とはいえないものの、上下2段式のグローブボックスや大きなボタンを用いたスイッチ類などによって、機能性は高い。垂直のリアウィンドウを直後に構えるリアシートは、貨物車扱いゆえバックレストも垂直に近いのがタマにキズだが、フロントシート下への足入れ性に優れることで、2人までであれば大人もそれなりの時間をストレスなく過ごせる実用性が確保される。ちなみに、クッションは6:4分割のチップアップ機能付き。荷台には置きたくないかさばる荷物を収納できるのはありがたい。
パートタイム4WDゆえ「H2」のモードを選択して、まずは一般道へ。2t超の重量があっても思いのほか軽々と走り始めるのは、1600rpmにして400Nmと大きなトルクを発する可変ジオメトリーターボ付きエンジン+ローギアード気味設定の駆動系の成せる業という印象。
2.4リッターの心臓が発するノイズは遠慮なくキャビンへと入ってくるし、変速時のショックは明確。加えて“遊び”が大きなステアリングに「板バネならでは」の硬い乗り味……と、乗用車基準で語れば突っ込みどころは満載だ。しかし、日常シーンでも“運転している感”にあふれるそんなテイストを、あえてこうしたモデルを選ぶ人はポジティブに受け取るのではないだろうかと、そんなことを思いながら、今回のテストドライブでのハイライトである愛知県豊田市の「さなげアドベンチャーフィールド」に特設された、オフロードコースへと足を踏み入れた。
全面“樹脂張り”というのが実感のインテリア周りはお世辞にも上質とはいえないものの、上下2段式のグローブボックスや大きなボタンを用いたスイッチ類などによって、機能性は高い。垂直のリアウィンドウを直後に構えるリアシートは、貨物車扱いゆえバックレストも垂直に近いのがタマにキズだが、フロントシート下への足入れ性に優れることで、2人までであれば大人もそれなりの時間をストレスなく過ごせる実用性が確保される。ちなみに、クッションは6:4分割のチップアップ機能付き。荷台には置きたくないかさばる荷物を収納できるのはありがたい。
パートタイム4WDゆえ「H2」のモードを選択して、まずは一般道へ。2t超の重量があっても思いのほか軽々と走り始めるのは、1600rpmにして400Nmと大きなトルクを発する可変ジオメトリーターボ付きエンジン+ローギアード気味設定の駆動系の成せる業という印象。
2.4リッターの心臓が発するノイズは遠慮なくキャビンへと入ってくるし、変速時のショックは明確。加えて“遊び”が大きなステアリングに「板バネならでは」の硬い乗り味……と、乗用車基準で語れば突っ込みどころは満載だ。しかし、日常シーンでも“運転している感”にあふれるそんなテイストを、あえてこうしたモデルを選ぶ人はポジティブに受け取るのではないだろうかと、そんなことを思いながら、今回のテストドライブでのハイライトである愛知県豊田市の「さなげアドベンチャーフィールド」に特設された、オフロードコースへと足を踏み入れた。
納得のポテンシャル
特設のコースは地上高や障害角に応じて整地されるなど、一部にハイラックス向けの“チューニング”が施されてはいたものの、実は荒れた登坂路でカメラマンのリクエストに応じて前進と後退を繰り返しているうちにスタックの憂き目に遭ってしまうなど、なかなかタフなレイアウト。対角する車輪が同時に路面から離れ、いわゆる“対角線スタック”を起こしてしまいそうなシーンもあったものの、それでもミシリとも言わない点にフレーム式ボディーの剛健さを印象付けられることにもなった。
空転した車輪に自動的にブレーキ力を加えることで、他の接地性の高い車輪へとエンジントルクを振り分ける「アクティブトラクションコントロール」は、4輪ブレーキ制御によって急な低ミュー降坂時の安全性を確保する“ダウンヒルアシストコントロール(DAC)”とともに、このモデルの目玉的な電子制御技術のひとつ。
実際、前述のような“対角線スタック”を起こしがちなシーンで空転を感じても、そのまま辛抱強くアクセルオンを続けることでさらなる前進が可能となる場面には、何度も出くわす結果になった。
さらなる強力な武器となることが実感できたのは、デフロックのメカニズムだ。左右後輪のいずれかさえ接地していれば、目立った空転を起こす以前にしっかりしたトラクションが得られるのがこの機能。文字通りデフとしての機能がカットされ小回りが利きづらくなるのでスイッチ操作のタイミングに多少のスキルが必要となるものの、低ミューの荒れた登坂路でも“ガシガシ”と前進していけるのは、シンプルながら効果抜群のこのメカニズムならではだ。
世のSUVが追い求めるようなファッション性は皆無だし、ぜいたくな装備や快適性も二の次。一方で、“資材”を満載しつつ荒れた奥地にある“現場”へと、大人4人で出掛けるといった用途に対しては、まさに孤高の存在なのがこのモデル。そんなハイラックスが、若いユーザーからの指名買いの対象にもなるのは、それがライバル知らずの一台ということを証明しているからにほかならないはずだ。
(文=河村康彦/写真=荒川正幸/編集=櫻井健一)
空転した車輪に自動的にブレーキ力を加えることで、他の接地性の高い車輪へとエンジントルクを振り分ける「アクティブトラクションコントロール」は、4輪ブレーキ制御によって急な低ミュー降坂時の安全性を確保する“ダウンヒルアシストコントロール(DAC)”とともに、このモデルの目玉的な電子制御技術のひとつ。
実際、前述のような“対角線スタック”を起こしがちなシーンで空転を感じても、そのまま辛抱強くアクセルオンを続けることでさらなる前進が可能となる場面には、何度も出くわす結果になった。
さらなる強力な武器となることが実感できたのは、デフロックのメカニズムだ。左右後輪のいずれかさえ接地していれば、目立った空転を起こす以前にしっかりしたトラクションが得られるのがこの機能。文字通りデフとしての機能がカットされ小回りが利きづらくなるのでスイッチ操作のタイミングに多少のスキルが必要となるものの、低ミューの荒れた登坂路でも“ガシガシ”と前進していけるのは、シンプルながら効果抜群のこのメカニズムならではだ。
世のSUVが追い求めるようなファッション性は皆無だし、ぜいたくな装備や快適性も二の次。一方で、“資材”を満載しつつ荒れた奥地にある“現場”へと、大人4人で出掛けるといった用途に対しては、まさに孤高の存在なのがこのモデル。そんなハイラックスが、若いユーザーからの指名買いの対象にもなるのは、それがライバル知らずの一台ということを証明しているからにほかならないはずだ。
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