【試乗記】三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)/デリカD:5アーバンギア(4WD/8AT)

三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)/デリカD:5アーバンギア(4WD/8AT)【試乗記】
三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)/デリカD:5アーバンギア(4WD/8AT)

13年目の進化

高い悪路走破性能を身上とする三菱のユニークなミニバン「デリカD:5」がマイナーチェンジ。“コワモテ”のフロントマスクばかりが話題を集めているが、実際に乗ってみると、パワートレインにもシャシーにもはっきり進化の感じられる、充実した改良となっていた。

変わったのは“顔”だけにあらず

「三菱デリカ」シリーズの5代目のモデルにあたる「デリカD:5」。デビューは2007年のことで、モデルライフは今年で13年目を迎える。
「三菱デリカ」シリーズの5代目のモデルにあたる「デリカD:5」。デビューは2007年のことで、モデルライフは今年で13年目を迎える。
従来モデルからデザインが一新されたインストゥルメントパネルまわり。サバ杢の木目やステッチを施したソフトパッド、メタル調の走行モードセレクターなどを採用することで、各部の質感を高めている。
従来モデルからデザインが一新されたインストゥルメントパネルまわり。サバ杢の木目やステッチを施したソフトパッド、メタル調の走行モードセレクターなどを採用することで、各部の質感を高めている。
上級グレードの「P」「Gパワーパッケージ」では、運転席に電動調整機構を採用。エントリーグレードの「M」以外には本革シートも用意される。
上級グレードの「P」「Gパワーパッケージ」では、運転席に電動調整機構を採用。エントリーグレードの「M」以外には本革シートも用意される。
ステアリングホイールに備わるレーダークルーズコントロールの操作スイッチ。今回のマイナーチェンジでは、先進運転支援システムが大幅に強化された。
ステアリングホイールに備わるレーダークルーズコントロールの操作スイッチ。今回のマイナーチェンジでは、先進運転支援システムが大幅に強化された。
新しいデリカが出たと聞き、ついにフルモデルチェンジして6代目に生まれ変わるのか……と早合点したのはきっと私だけではないはずだ。今回はフルモデルチェンジではなくマイナーチェンジ。冷静になればすぐにわかりそうなものだが、“新型”というフレーズに、つい浮き足立ってしまったのだ。

ボクシーで背の高い特徴的なスタイルや、端正なリアビューなど、見慣れているはずのエクステリアであるにもかかわらず、三菱が「ダイナミックシールド」と呼ぶ新しいフロントデザインや、それを際立たせる縦型のLEDヘッドライトに、すっかりだまされてしまったというわけだ。まさに三菱の思うつぼである。

ちなみに、“新型”として販売されるのは、ディーゼルエンジンを搭載した4WD仕様だけ。ガソリンエンジン搭載車は、これまでどおりの顔で継続販売されるという。そのぶん、新型のディーゼルエンジン車よりも手ごろな価格設定になっているのはうれしいところだ。

大胆で厳(いか)ついフロントマスクに視線が奪われがちな新型デリカD:5であるが、ビッグマイナーチェンジだけに、さまざまな部分がアップグレードされている。目に見えるところでは、インテリアデザインが見直されて、格段に上質さを増したのは特筆すべき点だ。特にコックピットは、落ち着いた水平基調のデザインや木目調パネルの採用に加えて、インストゥルメントパネルやセンターコンソール、ドアトリムなどにソフトパッドを配し、さらにホンモノのステッチをあしらうなどしたおかげで、ワンランク上の雰囲気に浸ることができる。

一方、見えない部分では、いまや軽自動車でも当たり前の衝突被害軽減ブレーキが備わり、さらに、レーダークルーズコントロールや車線逸脱警報システム、オートマチックハイビームを標準装着として、弱点を克服している。

「三菱デリカ」シリーズの5代目のモデルにあたる「デリカD:5」。デビューは2007年のことで、モデルライフは今年で13年目を迎える。
「三菱デリカ」シリーズの5代目のモデルにあたる「デリカD:5」。デビューは2007年のことで、モデルライフは今年で13年目を迎える。
従来モデルからデザインが一新されたインストゥルメントパネルまわり。サバ杢の木目やステッチを施したソフトパッド、メタル調の走行モードセレクターなどを採用することで、各部の質感を高めている。
従来モデルからデザインが一新されたインストゥルメントパネルまわり。サバ杢の木目やステッチを施したソフトパッド、メタル調の走行モードセレクターなどを採用することで、各部の質感を高めている。
上級グレードの「P」「Gパワーパッケージ」では、運転席に電動調整機構を採用。エントリーグレードの「M」以外には本革シートも用意される。
上級グレードの「P」「Gパワーパッケージ」では、運転席に電動調整機構を採用。エントリーグレードの「M」以外には本革シートも用意される。
ステアリングホイールに備わるレーダークルーズコントロールの操作スイッチ。今回のマイナーチェンジでは、先進運転支援システムが大幅に強化された。
ステアリングホイールに備わるレーダークルーズコントロールの操作スイッチ。今回のマイナーチェンジでは、先進運転支援システムが大幅に強化された。

排出ガスの後処理に尿素SCRシステムを採用

新エンジンと8段ATが採用された「デリカD:5」のディーゼルモデル。燃費も従来モデルの13.0km/リッターから13.6km/リッターに改善している(ともにJC08モード)。
新エンジンと8段ATが採用された「デリカD:5」のディーゼルモデル。燃費も従来モデルの13.0km/リッターから13.6km/リッターに改善している(ともにJC08モード)。
新開発の2.3リッター直4ディーゼルターボエンジン。145ps/3500rpmの最高出力と、380Nm/2000rpmの最大トルクを発生する。
新開発の2.3リッター直4ディーゼルターボエンジン。145ps/3500rpmの最高出力と、380Nm/2000rpmの最大トルクを発生する。
ラゲッジスペースの床下に備わる尿素水溶液の補充口。これまで車体下部につり下げられていたスペアタイヤは、尿素水溶水のタンクを搭載するために廃止された。
ラゲッジスペースの床下に備わる尿素水溶液の補充口。これまで車体下部につり下げられていたスペアタイヤは、尿素水溶水のタンクを搭載するために廃止された。
もちろん、カンジンのディーゼルエンジンにも改良の手が加えられている。新型デリカD:5に搭載される2.3リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンは、基本設計を従来の「4N14」型エンジンから踏襲しながら、三菱によればエンジンを構成する部品の約5割を新設計し、新しいタイプのインジェクターの採用やフリクション低減などによって、最大トルクを20Nm増の380Nmにアップしている。

そして見逃せないのが、新たに尿素SCRシステムを採用したこと。「AdBlue」と呼ばれる尿素水溶液を使って、ディーゼルエンジンから出されるNOx(窒素酸化物)を浄化するシステムは、排ガスを効率よく安定して浄化できる反面、AdBlueの補充が必要だったり、尿素タンクや配管などを新たに搭載するためにコストが増したり、さまざまな課題があった。新型デリカD:5の場合、尿素タンクをラゲッジスペース後端のフロア下に収めるのも一苦労だったという。

そんな涙ぐましい努力の積み重ねによって生まれた新型デリカD:5を、ようやく公道で乗ることができた。早速試乗に、といきたいところだが、この日は限られた枠内での試乗会だったため、まずは撮影を片付けることにする。エンジンをスタートさせると、ひと昔前に比べると静かになったとはいえ、最近のものとしてはディーゼル特有のノイズが目立つ。編集スタッフがクルマを動かすのを外から見ていたときも、明らかにディーゼルエンジン車とわかる音が耳に届いた。

新エンジンと8段ATが採用された「デリカD:5」のディーゼルモデル。燃費も従来モデルの13.0km/リッターから13.6km/リッターに改善している(ともにJC08モード)。
新エンジンと8段ATが採用された「デリカD:5」のディーゼルモデル。燃費も従来モデルの13.0km/リッターから13.6km/リッターに改善している(ともにJC08モード)。
新開発の2.3リッター直4ディーゼルターボエンジン。145ps/3500rpmの最高出力と、380Nm/2000rpmの最大トルクを発生する。
新開発の2.3リッター直4ディーゼルターボエンジン。145ps/3500rpmの最高出力と、380Nm/2000rpmの最大トルクを発生する。
ラゲッジスペースの床下に備わる尿素水溶液の補充口。これまで車体下部につり下げられていたスペアタイヤは、尿素水溶水のタンクを搭載するために廃止された。
ラゲッジスペースの床下に備わる尿素水溶液の補充口。これまで車体下部につり下げられていたスペアタイヤは、尿素水溶水のタンクを搭載するために廃止された。

常用域で頼もしい2.3リッターディーゼル

今回のマイナーチェンジでは、4WDシステムにヨーレートフィードバック制御を採用。ハンドル操作に対し、より正確にクルマが動くようになった。
今回のマイナーチェンジでは、4WDシステムにヨーレートフィードバック制御を採用。ハンドル操作に対し、より正確にクルマが動くようになった。
タイヤサイズは215/70R16と225/55R18を仕様に応じて設定。今回のテスト車はいずれも225/55R18で、ヨコハマのSUV用タイヤを装着していた。
タイヤサイズは215/70R16と225/55R18を仕様に応じて設定。今回のテスト車はいずれも225/55R18で、ヨコハマのSUV用タイヤを装着していた。
シートレイアウトは2列目ベンチシートの8人乗りと、2列目キャプテンシートの7人乗りの2種類。3列目シートには分割格納機構に加え、スライド調整機構も備わっている。
シートレイアウトは2列目ベンチシートの8人乗りと、2列目キャプテンシートの7人乗りの2種類。3列目シートには分割格納機構に加え、スライド調整機構も備わっている。
専用の内外装パーツが採用された「アーバンギア」。従来モデルにおける「ローデスト」の後継にあたる。
専用の内外装パーツが採用された「アーバンギア」。従来モデルにおける「ローデスト」の後継にあたる。
しかし、ひととおり撮影を終えて本格的に走り始めてみると、とても頼もしいエンジンであることがわかった。エンジンの改良に加えて、ワイドレンジの8段オートマチックを手に入れた新型デリカD:5は、出足から力強く、2t近くあるボディーを軽々と加速させる。低回転でもレスポンスのいい加速を見せる一方、少し大きくアクセルペダルを踏めば、2000rpmの手前あたりからさらに力強さを増していく。

高速道路では100km/h巡航を8速1550rpmでこなし、また合流や追い越しの場面では4000rpmあたりまで伸びる加速のおかげで、ストレスとは無縁。3000rpmを超えたあたりからやや不快なノイズが高まるのが玉にキズだが、ふだんはそこまで回さなくてすむから、目くじらを立てる必要はないだろう。

うれしいのが、安定感を増した走り。マイルドな乗り心地を従来モデルから受け継ぎながらも、以前に比べてロールやピッチングの動きは抑えられており、特にリアの落ち着きがアップしている。高速での直進安定性も十分に高く、ステアリングの正確さにも向上が見られた。

時折225/55R18サイズのタイヤがショックを拾うこともあったが、走りのバランスはまずまず。この日は雰囲気の異なる「アーバンギア」を試乗することもできたが、両車に動力性能や走りの違いは認められなかった。

残念ながら、デリカD:5が得意とするオフロード性能を試すことはできなかったが、オンロードでの性能向上はしっかりと確認できた。正直なところ、最初に見たときには違和感があったフロントマスクも、取材が終わるころには見慣れてきたのか、斜め45度からの眺めがカッコよく思えてきた。

(文=生方 聡/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)

今回のマイナーチェンジでは、4WDシステムにヨーレートフィードバック制御を採用。ハンドル操作に対し、より正確にクルマが動くようになった。
今回のマイナーチェンジでは、4WDシステムにヨーレートフィードバック制御を採用。ハンドル操作に対し、より正確にクルマが動くようになった。
タイヤサイズは215/70R16と225/55R18を仕様に応じて設定。今回のテスト車はいずれも225/55R18で、ヨコハマのSUV用タイヤを装着していた。
タイヤサイズは215/70R16と225/55R18を仕様に応じて設定。今回のテスト車はいずれも225/55R18で、ヨコハマのSUV用タイヤを装着していた。
シートレイアウトは2列目ベンチシートの8人乗りと、2列目キャプテンシートの7人乗りの2種類。3列目シートには分割格納機構に加え、スライド調整機構も備わっている。
シートレイアウトは2列目ベンチシートの8人乗りと、2列目キャプテンシートの7人乗りの2種類。3列目シートには分割格納機構に加え、スライド調整機構も備わっている。
専用の内外装パーツが採用された「アーバンギア」。従来モデルにおける「ローデスト」の後継にあたる。
専用の内外装パーツが採用された「アーバンギア」。従来モデルにおける「ローデスト」の後継にあたる。

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