【海外試乗記】フォルクスワーゲンTクロス(FF/7AT)
- フォルクスワーゲンTクロス(FF/7AT)
小さくても大マジメ
日本への導入がうわさされる、フォルクスワーゲンの都会派クロスオーバー「T-Cross(Tクロス)」。新たなコンパクトモデルはどんなクルマに仕上がっているのか? スペインはマヨルカ島で試乗した印象を報告する。
極めて戦略的な一台
日本でも、そして世界でも、いま市場が最も盛り上がっているのがコンパクトSUVである。現時点でもマーケットは大きく、さまざまなニューモデルの投入で激しい競争が繰り広げられているにも関わらず、フォルクスワーゲンはその規模が今後10年でさらに2倍になると見立てているという。
このセグメントの面白いところは、何でものみ込むような積載性や、圧倒的な走破性といった本格的なSUV性能は、必ずしも求められていないということだ。特にヨーロッパ勢では、4WDの設定がほとんどないことからも、それは明らか。どちらかといえば、コンパクトカーからの乗り換えの対象として、これまでとちょっと違った体験をさせてくれる、新鮮な気分を味わえるクルマであるといった要素の方が、ニーズとしては大きい。
フォルクスワーゲンのSUVラインナップの末弟として登場したTクロスは、まさにこの市場をターゲットと見据えている。「ポロ」と同じ「MQB A0」と呼ばれるモジュラーユニットから生み出され、車体寸法は全長4108mm×全幅1782mm×全高1584mmと、ポロよりは全方位に大きいものの、セグメントの中で見た時には特に全長はコンパクトに収められている。実はフォルクスワーゲンは、日本にはまだ導入されていないが、Tクロスのひとつ上のモデルとしてすでに「T-Roc(Tロック)」を持っており、こちらは全長4230mmとなっている。拡大する市場に、きめ細かなラインナップで対応しようとしているわけである。
このセグメントの面白いところは、何でものみ込むような積載性や、圧倒的な走破性といった本格的なSUV性能は、必ずしも求められていないということだ。特にヨーロッパ勢では、4WDの設定がほとんどないことからも、それは明らか。どちらかといえば、コンパクトカーからの乗り換えの対象として、これまでとちょっと違った体験をさせてくれる、新鮮な気分を味わえるクルマであるといった要素の方が、ニーズとしては大きい。
フォルクスワーゲンのSUVラインナップの末弟として登場したTクロスは、まさにこの市場をターゲットと見据えている。「ポロ」と同じ「MQB A0」と呼ばれるモジュラーユニットから生み出され、車体寸法は全長4108mm×全幅1782mm×全高1584mmと、ポロよりは全方位に大きいものの、セグメントの中で見た時には特に全長はコンパクトに収められている。実はフォルクスワーゲンは、日本にはまだ導入されていないが、Tクロスのひとつ上のモデルとしてすでに「T-Roc(Tロック)」を持っており、こちらは全長4230mmとなっている。拡大する市場に、きめ細かなラインナップで対応しようとしているわけである。
実用性は実寸以上
サイズは小さいが、見た目の存在感はなかなかのものだ。大型のラジエーターグリルを持ち、骨太感あるバンパーを備えた顔つきは結構な迫力があるし、フェンダーアーチと下半身をクラッディングパネルで覆ったサイドビューも、横長のテールランプを使ったリアビューも、ポロなどに比べるとずいぶんこってりとしたデザインで、押し出し感がある。
室内へと乗り込んでも、やはりサイズ以上と感じさせる。余裕ある室内高を生かした、着座位置が高く足を踏み降ろすようなかたちになるドライビングポジション、そして開けた視界のおかげだ。さらに恩恵が大きいのは後席。着座位置が前席より5cmほど高い上に14cmの前後スライド機構も備わるから、掛け値なしにリラックスできる。
荷室容量は、後席にも乗車した状態で385~455リッター。後席スライド位置、高さ調整式のフロアボードの位置次第で変化する。後席バックレストは40:60の分割可倒式で、すべて倒せば最大1281リッターの積載が可能。助手席背もたれを前方に倒せるオプションにより、長尺物の積み込みにも対応する。このセグメント、積載性は必ずしも重視されていないと書いたが、もちろん広く使い勝手が良いに越したことはない。28インチまでのロードバイクなら前後輪を外さずに搭載できると聞いて、コンパクトSUVは個人的には対象外かなと思っていた筆者も思わず身を乗り出してしまった。この荷室も、きっと多くのユーザーの満足感を高めるはずだ。
室内へと乗り込んでも、やはりサイズ以上と感じさせる。余裕ある室内高を生かした、着座位置が高く足を踏み降ろすようなかたちになるドライビングポジション、そして開けた視界のおかげだ。さらに恩恵が大きいのは後席。着座位置が前席より5cmほど高い上に14cmの前後スライド機構も備わるから、掛け値なしにリラックスできる。
荷室容量は、後席にも乗車した状態で385~455リッター。後席スライド位置、高さ調整式のフロアボードの位置次第で変化する。後席バックレストは40:60の分割可倒式で、すべて倒せば最大1281リッターの積載が可能。助手席背もたれを前方に倒せるオプションにより、長尺物の積み込みにも対応する。このセグメント、積載性は必ずしも重視されていないと書いたが、もちろん広く使い勝手が良いに越したことはない。28インチまでのロードバイクなら前後輪を外さずに搭載できると聞いて、コンパクトSUVは個人的には対象外かなと思っていた筆者も思わず身を乗り出してしまった。この荷室も、きっと多くのユーザーの満足感を高めるはずだ。
意外にパワフルで静か
パワートレインは現時点では2スペックの1リッター直列3気筒と1.5リッター直列4気筒のガソリンターボに、1.6リッター直列4気筒ディーゼルターボの4種類。そのうち今回は、最高出力115psの1リッターターボユニットと7段DSGの組み合わせを試すことができた。駆動方式はFFである。
ポロで感じたアイドリング付近の線の細さをあまり意識させることなくクルマはスルスルと発進し、あとは充実した低速トルク、そしてDSGのダイレクト感を利して小気味よく速度を伸ばしていく。回転域によっては3気筒特有のバイブレーションが出てフロアが震えることもあるが、この日の3人乗車でも不満のない動力性能の前ではささいなことと言っていい。
しかも静粛性が高いことにも驚かされた。遮音壁の追加、吸音材の最適配置などホイールハウス内にまで至る徹底した対策によって、エンジン音もロードノイズも、このセグメントとしては非常に低レベルに抑えられている。開発陣は「フォルクスワーゲンとしてのバリュー・フォー・マネーを追求したひとつのポイントだ」と話していた。
ポロで感じたアイドリング付近の線の細さをあまり意識させることなくクルマはスルスルと発進し、あとは充実した低速トルク、そしてDSGのダイレクト感を利して小気味よく速度を伸ばしていく。回転域によっては3気筒特有のバイブレーションが出てフロアが震えることもあるが、この日の3人乗車でも不満のない動力性能の前ではささいなことと言っていい。
しかも静粛性が高いことにも驚かされた。遮音壁の追加、吸音材の最適配置などホイールハウス内にまで至る徹底した対策によって、エンジン音もロードノイズも、このセグメントとしては非常に低レベルに抑えられている。開発陣は「フォルクスワーゲンとしてのバリュー・フォー・マネーを追求したひとつのポイントだ」と話していた。
峠道でもイケる
乗り心地の良さも特筆すべきポイントである。ポロより40mmも高い地上高を生かして、サスペンションはしなやかにストロークして、路面からの当たりがとにかく優しい。試乗車はオプションの18インチタイヤを履いていたにも関わらず、である。ちなみにシャシー開発の担当者はこっそり「ベストバランスは17インチかな」と教えてくれたので付記しておく。
ダンピングはソフトだが決してフワフワしているわけではない、そのバランスは絶妙。ロールもピッチングもそれなりに感じられるが、それに伴う不安感は皆無だし、むしろそのおかげで挙動がつかみやすく、コーナリングが楽しい。パワーステアリングの手応えも申し分なく、全方位優れた完成度に大いにうならされることになった。実際、通りがかりのワインディングロードでは、操舵力とスロットルの反応が変化するSPORTモードに切り替えて、思い切り走りを楽しんでしまったのだった。3人乗車ということも忘れて……。
走りの喜びをサポートする運転支援システムも充実度は高い。歩行者検知機能とシティーエマージェンシーブレーキを備えた「フロントアシスト」や、車線逸脱警告の「レーンアシスト」、衝突被害軽減ブレーキ機能付きのパークディスタンスコントロール等々はすべて標準装備。アダプティブクルーズコントロールや駐車アシスト機能の「パークアシスト」もオプションとして選ぶことができるのだ。
扱いやすいサイズに、それをいい意味で感じさせないデザインと実用性、そしてポロとはひと味違った走りなど、Tクロスはまさに激戦のこのカテゴリーにおいても強力にアピールできる魅力を備えた一台といえる。強いて言えば冒頭に記したヨーロッパでの事情から4WDの設定がないのは惜しいが、本国では1万7975ユーロ(約223万円)から。上級仕様の1リッターガソリンターボ+7段DSG仕様で2万5725ユーロ(約319万円)という価格を見るに、装備レベルを調整するなどして300万円を切る価格が実現できれば、日本市場でも大きく注目を集めるに違いない。上陸のタイミングは2019年の年末から2020年の早いうちという辺りが有力である。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン グループ/編集=関 顕也)
ダンピングはソフトだが決してフワフワしているわけではない、そのバランスは絶妙。ロールもピッチングもそれなりに感じられるが、それに伴う不安感は皆無だし、むしろそのおかげで挙動がつかみやすく、コーナリングが楽しい。パワーステアリングの手応えも申し分なく、全方位優れた完成度に大いにうならされることになった。実際、通りがかりのワインディングロードでは、操舵力とスロットルの反応が変化するSPORTモードに切り替えて、思い切り走りを楽しんでしまったのだった。3人乗車ということも忘れて……。
走りの喜びをサポートする運転支援システムも充実度は高い。歩行者検知機能とシティーエマージェンシーブレーキを備えた「フロントアシスト」や、車線逸脱警告の「レーンアシスト」、衝突被害軽減ブレーキ機能付きのパークディスタンスコントロール等々はすべて標準装備。アダプティブクルーズコントロールや駐車アシスト機能の「パークアシスト」もオプションとして選ぶことができるのだ。
扱いやすいサイズに、それをいい意味で感じさせないデザインと実用性、そしてポロとはひと味違った走りなど、Tクロスはまさに激戦のこのカテゴリーにおいても強力にアピールできる魅力を備えた一台といえる。強いて言えば冒頭に記したヨーロッパでの事情から4WDの設定がないのは惜しいが、本国では1万7975ユーロ(約223万円)から。上級仕様の1リッターガソリンターボ+7段DSG仕様で2万5725ユーロ(約319万円)という価格を見るに、装備レベルを調整するなどして300万円を切る価格が実現できれば、日本市場でも大きく注目を集めるに違いない。上陸のタイミングは2019年の年末から2020年の早いうちという辺りが有力である。
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