【試乗記】トヨタRAV4ハイブリッドG(4WD/CVT)/ホンダCR-VハイブリッドEX・マスターピース(4WD)(前編)
- トヨタRAV4ハイブリッドG(4WD/CVT)/ホンダCR-VハイブリッドEX・マスターピース(4WD)
運命のシンクロ
同時代に日本で生まれて一時代を築き、徐々に軸足をアメリカに移したのちに日本からフェードアウト……。「トヨタRAV4」と「ホンダCR-V」のたどってきた道のりが見事に一致しているのは何かの偶然だろうか。そして昨今、これまた近いタイミングで国内市場に復活。2台を比較試乗した。
ガラパゴスから世界へ
「21世紀に入った現在、日本人のほうが“アメリカ人よりもアメリカーナをうまくつくる”という見方は、すっかり当たり前のものになっている」
残念ながら、これはクルマについての文章ではない。『AMETORA』(デーヴィッド・マークス)に書かれている言葉で、アメリカのファッションを学ぶことから始めた日本が、今やはるかに先を走っていることを評している。
そういう意味ではSUVに関しても同様のことが言えるかもしれない。アメリカでピックアップトラックの荷室部分にボディーをかぶせて乗用車化することから始まったSUVというジャンルは、日本に導入されてローカライズされる。それはガラパゴス的進化だったかもしれないが、結果として日本的SUVは世界に広まっていった。
1994年にデビューしたトヨタRAV4は、悪路走破性を追求するよりも乗用車感覚の乗りやすさや使い勝手を重視したモデルだった。3ドアモデルは全長3705mmというコンパクトなサイズで、若者でも買えるリーズナブルな価格。ヘビーデューティー志向のユーザーだけを相手にするのではなく、気軽でカジュアルな新しい乗り物として登場したのである。売り出し中だったSMAPの木村拓哉をCMに起用したことにも、若々しさをアピールしたいという意図が見えた。
1997年には「トヨタ・ハリアー」がデビュー。こちらには「WILD but FORMAL」というキャッチコピーが添えられていた。所有するセダンの車格がオーナーの出世とパラレルに見られていた時代に、軽やかにヒエラルキーを乗り越えてみせたのだ。国外では「レクサスRX」として販売され、高級クロスオーバーSUVというジャンルを創出したのである。
残念ながら、これはクルマについての文章ではない。『AMETORA』(デーヴィッド・マークス)に書かれている言葉で、アメリカのファッションを学ぶことから始めた日本が、今やはるかに先を走っていることを評している。
そういう意味ではSUVに関しても同様のことが言えるかもしれない。アメリカでピックアップトラックの荷室部分にボディーをかぶせて乗用車化することから始まったSUVというジャンルは、日本に導入されてローカライズされる。それはガラパゴス的進化だったかもしれないが、結果として日本的SUVは世界に広まっていった。
1994年にデビューしたトヨタRAV4は、悪路走破性を追求するよりも乗用車感覚の乗りやすさや使い勝手を重視したモデルだった。3ドアモデルは全長3705mmというコンパクトなサイズで、若者でも買えるリーズナブルな価格。ヘビーデューティー志向のユーザーだけを相手にするのではなく、気軽でカジュアルな新しい乗り物として登場したのである。売り出し中だったSMAPの木村拓哉をCMに起用したことにも、若々しさをアピールしたいという意図が見えた。
1997年には「トヨタ・ハリアー」がデビュー。こちらには「WILD but FORMAL」というキャッチコピーが添えられていた。所有するセダンの車格がオーナーの出世とパラレルに見られていた時代に、軽やかにヒエラルキーを乗り越えてみせたのだ。国外では「レクサスRX」として販売され、高級クロスオーバーSUVというジャンルを創出したのである。
ブレイクと撤退、そして復活
ホンダCR-Vは、RAV4に遅れること1年の1995年にデビュー。「オデッセイ」に続く「クリエイティブ・ムーバー」路線の第2弾という位置づけだった。RAV4よりも若干大きいが、似たようなサイズである。アメリカでの販売を重視する自動車メーカー2社から、よく似たコンセプトのモデルが相次いで登場したわけだ。
フレームを持たないモノコック構造で、乗用車的な乗り心地を持つ。居住性や実用性に優れているわりには本格的な4WD機構を備えており、ちょっとした悪路や雪道なら十分に走行できる。シティーユースを基本としながらレジャー用途にも使えることが人気を呼んだ。RAV4とCR-Vは、都会派のカジュアルなクロスオーバーSUVとして認知されたのである。
ライバルとなった2台は日米で販売競争を繰り広げることになり、同じような運命をたどっていく。アメリカで人気車種として確固たる地位を築く一方で、日本での販売は次第に低迷。RAV4は2013年にフルモデルチェンジされた4代目モデルの日本発売を見送る。販売が続けられた3代目も2016年に生産終了となった。2011年に4代目となったCR-Vは日本で販売されたものの、2016年のマイナーチェンジを機に撤退。世界的な人気と裏腹に、2台とも国内では買えないクルマになってしまったのだ。
3年ほどのブランクを経て、またしても2台の軌跡はシンクロする。日本販売を復活させたのだ。CR-Vは2016年に5代目となっていたモデルを2018年8月から日本に導入。RAV4は2018年にフルモデルチェンジされた5代目を2019年4月から日本で販売した。
フレームを持たないモノコック構造で、乗用車的な乗り心地を持つ。居住性や実用性に優れているわりには本格的な4WD機構を備えており、ちょっとした悪路や雪道なら十分に走行できる。シティーユースを基本としながらレジャー用途にも使えることが人気を呼んだ。RAV4とCR-Vは、都会派のカジュアルなクロスオーバーSUVとして認知されたのである。
ライバルとなった2台は日米で販売競争を繰り広げることになり、同じような運命をたどっていく。アメリカで人気車種として確固たる地位を築く一方で、日本での販売は次第に低迷。RAV4は2013年にフルモデルチェンジされた4代目モデルの日本発売を見送る。販売が続けられた3代目も2016年に生産終了となった。2011年に4代目となったCR-Vは日本で販売されたものの、2016年のマイナーチェンジを機に撤退。世界的な人気と裏腹に、2台とも国内では買えないクルマになってしまったのだ。
3年ほどのブランクを経て、またしても2台の軌跡はシンクロする。日本販売を復活させたのだ。CR-Vは2016年に5代目となっていたモデルを2018年8月から日本に導入。RAV4は2018年にフルモデルチェンジされた5代目を2019年4月から日本で販売した。
どちらにも漂うアメリカンテイスト
この2台を比較試乗した。どちらも初代からサイズが大幅にアップしている。現行モデルはRAV4が全長×全幅×全高=4600×1855×1685mmで、CR-Vが4605×1855×1690mm。ほとんど同じ寸法だ。アメリカ市場からのサイズアップの要望に応えた結果だろう。日本では扱いにくい大きさだと受け取られ、人気低迷につながってしまった。
それから大して時間がたったわけではないのに、日本でもこの大きさのSUVが受け入れられるようになったことになる。SUVが一般化したことで、選択肢が増えることが歓迎されているのだろうか。トヨタは「C-HR」、ホンダは「ヴェゼル」というひと回り小さいSUVが売れ筋となっているが、数が増えただけにもう少し立派に見えるモデルが欲しいと考えるユーザーが増加しても不思議ではない。
RAV4もCR-Vも、ガソリン車とハイブリッド車が用意されている。今回はハイブリッド車でそろえた。RAV4は2.5リッターで、最高出力178psのエンジンに120psのフロントモーターと54psのリアモーターを組み合わせる。CR-Vは2リッターで、エンジンが145ps、モーターが184ps。車重はそれぞれ1690kgと1700kgだから、スペック的にはほぼ同じ動力性能と考えられる。
2台を並べてみると、やはりどちらもアメリカンな匂いがする。おおらかというか大味というか、細かいところにこだわらない割り切りのよさを感じた。トヨタはC-HRや「プリウス」などで凝りまくったディテールを取り入れているが、そういうデザイン手法とは異なっている。2台ともアメリカを意識したことでできあがったフォルムなのだろう。とはいえ、たまたまカメラカーとして同行した本物のアメリカンSUV「ジープ・グランドチェロキー」はもっと自然体に構えたフォルムで、比べると日本の2台が細かい技を使っていることがわかる。
それから大して時間がたったわけではないのに、日本でもこの大きさのSUVが受け入れられるようになったことになる。SUVが一般化したことで、選択肢が増えることが歓迎されているのだろうか。トヨタは「C-HR」、ホンダは「ヴェゼル」というひと回り小さいSUVが売れ筋となっているが、数が増えただけにもう少し立派に見えるモデルが欲しいと考えるユーザーが増加しても不思議ではない。
RAV4もCR-Vも、ガソリン車とハイブリッド車が用意されている。今回はハイブリッド車でそろえた。RAV4は2.5リッターで、最高出力178psのエンジンに120psのフロントモーターと54psのリアモーターを組み合わせる。CR-Vは2リッターで、エンジンが145ps、モーターが184ps。車重はそれぞれ1690kgと1700kgだから、スペック的にはほぼ同じ動力性能と考えられる。
2台を並べてみると、やはりどちらもアメリカンな匂いがする。おおらかというか大味というか、細かいところにこだわらない割り切りのよさを感じた。トヨタはC-HRや「プリウス」などで凝りまくったディテールを取り入れているが、そういうデザイン手法とは異なっている。2台ともアメリカを意識したことでできあがったフォルムなのだろう。とはいえ、たまたまカメラカーとして同行した本物のアメリカンSUV「ジープ・グランドチェロキー」はもっと自然体に構えたフォルムで、比べると日本の2台が細かい技を使っていることがわかる。
インテリアに見るそれぞれの主張
インテリアにもアメリカンなイメージが感じ取れる。2台に共通するのは、センターコンソールが巨大なことだ。ボックスの中に大きな収納スペースがあるのはいいが、メインターゲットが日本であったらいろいろな工夫を凝らしてさらに使い勝手を良くしていたのではないかという気がする。肘を置いておくのに十分な広さがあるから、ゆったりと巡航するのがふさわしいクルマなのだろう。
似ているのはそのぐらいで、室内の雰囲気はかなり異なる。CR-Vのほうがわかりやすくワイルドだ。ダッシュボードやドアに用いられている素材はザラザラしていて、質感は硬い。ウッド調パネルと合わせてアウトドア感を醸し出しているようだ。
RAV4は対照的で、パッドの入った柔らかい感触の素材を使っている。メタリックな質感のパーツとの組み合わせは、より洗練された印象だ。乗用車ライクで、ラグジュアリー志向でもある。都会派を意識しているのかと思うと、意外なところにアウトドア対応のポイントがあった。リアハッチに設けられた開閉スイッチがラバー素材なのである。前席ドアのインサイドハンドルにもラバーが用いられていた。
いずれもシティーユースがメインのユーザーが多いはずだが、せっかくSUVに乗るのだからどこかに野性味を感じたい。出自を完全に忘れ去ったのではジャンルの意味がなくなってしまう。方法は異なるが、インテリアには乗っていてもSUVであることを感じられるような演出が施されているのだ。
以下、後編に続きます。
(文=鈴木真人/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
似ているのはそのぐらいで、室内の雰囲気はかなり異なる。CR-Vのほうがわかりやすくワイルドだ。ダッシュボードやドアに用いられている素材はザラザラしていて、質感は硬い。ウッド調パネルと合わせてアウトドア感を醸し出しているようだ。
RAV4は対照的で、パッドの入った柔らかい感触の素材を使っている。メタリックな質感のパーツとの組み合わせは、より洗練された印象だ。乗用車ライクで、ラグジュアリー志向でもある。都会派を意識しているのかと思うと、意外なところにアウトドア対応のポイントがあった。リアハッチに設けられた開閉スイッチがラバー素材なのである。前席ドアのインサイドハンドルにもラバーが用いられていた。
いずれもシティーユースがメインのユーザーが多いはずだが、せっかくSUVに乗るのだからどこかに野性味を感じたい。出自を完全に忘れ去ったのではジャンルの意味がなくなってしまう。方法は異なるが、インテリアには乗っていてもSUVであることを感じられるような演出が施されているのだ。
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