【試乗記】2019ワークスチューニンググループ合同試乗会(前編:TRD/STI編)
- トヨタ・スープラRZ TRD用品装着車(FR/8AT)/スープラSZ-R TRD用品装着車(FR/8AT)/プリウスA“ツーリングセレクション”アグレッシブスタイル(FF/CVT)/スバル・フォレスターX-BREAK STIパフォーマンスパーツ装着車(4WD/CVT)/インプレッサスポーツ2.0i-S EyeSight(4WD/CVT)
“ワークス”だからできること
TRD、STI、NISMO、無限と、メーカーのモータースポーツ活動やアフターパーツの開発を担う4つの“ワークス”が合同試乗会を開催。まずはTRDが手がけた「スープラ」と「プリウス」、STIの用品を装着した「フォレスター」と「インプレッサスポーツ」の走りを報告する。
主役はヤマハの試作ダンパー ――トヨタ・スープラTRD用品装着車
TRD(トヨタ・レーシング・ディベロップメント)は、いま最も話題のスポーツカー、スープラを2台持ち込んだ。鮮烈なイエローカラーにカーボンのエアロパーツが映える双子のスープラ。オリジナルのスタイルに準じてこれをサイズアップしたという前後スポイラーやサイドスカートといったパーツは、いずれも品よくレーシーだ。
しかし今回の主役は、エアロではなくサスペンションシステムである。先代にあたる“ハチマル”スープラ(A80)に「REAS(Relative Absorber System:リアス)」を搭載したヤマハが、新たに「TRAS(Threw Rod Advanced Shock Absorber:トラス)」というシステムを開発。これをTRDがスープラに搭載してきたのである。
REASは、左右のショックアブソーバーを中間ユニットで連結し、ストロークの速度差を利用して減衰力を変化させ、車両姿勢を安定させるシステム。後に、右前と左後ろ、左前と右後ろと、“たすき掛け”にショックアブソーバーを連結させる「X-REAS」も登場した。コーナリング時に負荷が掛かる外輪に対し、荷重が減る内輪のストロークを増やす方法だったと記憶している。もっとも、このREASが登場したとき(1997年)、筆者はまだ自動車誌の新米編集部員であり、スープラに乗るなんて夢のまた夢だった。ただ80スープラがこの最新システムを搭載した記憶は鮮明にあり、いまだREASの名前を覚えていたのだ。
一方、今回プロトタイプながらスープラに搭載されたTRASは、それぞれのショックアブソーバーが独立して車両姿勢をコントロールする。ただしコンベンショナルなアブソーバーが縮み方向で反力を生み出すのに対し、TRASはダンパーが伸びようとするときに減衰力を発生するのである。
しかし今回の主役は、エアロではなくサスペンションシステムである。先代にあたる“ハチマル”スープラ(A80)に「REAS(Relative Absorber System:リアス)」を搭載したヤマハが、新たに「TRAS(Threw Rod Advanced Shock Absorber:トラス)」というシステムを開発。これをTRDがスープラに搭載してきたのである。
REASは、左右のショックアブソーバーを中間ユニットで連結し、ストロークの速度差を利用して減衰力を変化させ、車両姿勢を安定させるシステム。後に、右前と左後ろ、左前と右後ろと、“たすき掛け”にショックアブソーバーを連結させる「X-REAS」も登場した。コーナリング時に負荷が掛かる外輪に対し、荷重が減る内輪のストロークを増やす方法だったと記憶している。もっとも、このREASが登場したとき(1997年)、筆者はまだ自動車誌の新米編集部員であり、スープラに乗るなんて夢のまた夢だった。ただ80スープラがこの最新システムを搭載した記憶は鮮明にあり、いまだREASの名前を覚えていたのだ。
一方、今回プロトタイプながらスープラに搭載されたTRASは、それぞれのショックアブソーバーが独立して車両姿勢をコントロールする。ただしコンベンショナルなアブソーバーが縮み方向で反力を生み出すのに対し、TRASはダンパーが伸びようとするときに減衰力を発生するのである。
乗り心地はよくなっているが……
これは実に面白い試みだった。今回は試乗車の都合でトラックコースを走らせることができず、ツインリンクもてぎの構内路を走らせるにとどまったが、その片りんはうかがい知ることができた。
TRAS付きのスープラを走らせてまず感じるのは、乗り心地の上質さだ。垂直荷重を受け止めるのは主にスプリングだが、ピストンがオイルを押し込む過程でコンプレッション側の減衰力がほどよく発生するため、底付き感がない。縮み側の減衰力で車両を安定させようとしないので、反発感もない。
コーナーではステアリングを切り始めた瞬間から、イン側で路面へ引きつけられるように減衰力が立ち上がるのがわかる。外側のタイヤが頑張らない分だけ動きは滑らかで、レールに内輪をひっかけてトレースしていくような走り味だ。
ただし、うねりが大きい路面では、サスペンションが伸びた後の引き戻され感が強くなる。スピードが高まるほどにこの傾向は顕著になっていき、確かに跳ねはしないが走安性はむしろ下がっているのではないかと感じた。また切り返し時のレスポンスも、コンベンショナルなダンパーより鈍いと思う。リバウンドスプリングを内蔵したダンパーよりは緩やかだというが、同じ傾向ではある。
TRAS付きのスープラを走らせてまず感じるのは、乗り心地の上質さだ。垂直荷重を受け止めるのは主にスプリングだが、ピストンがオイルを押し込む過程でコンプレッション側の減衰力がほどよく発生するため、底付き感がない。縮み側の減衰力で車両を安定させようとしないので、反発感もない。
コーナーではステアリングを切り始めた瞬間から、イン側で路面へ引きつけられるように減衰力が立ち上がるのがわかる。外側のタイヤが頑張らない分だけ動きは滑らかで、レールに内輪をひっかけてトレースしていくような走り味だ。
ただし、うねりが大きい路面では、サスペンションが伸びた後の引き戻され感が強くなる。スピードが高まるほどにこの傾向は顕著になっていき、確かに跳ねはしないが走安性はむしろ下がっているのではないかと感じた。また切り返し時のレスポンスも、コンベンショナルなダンパーより鈍いと思う。リバウンドスプリングを内蔵したダンパーよりは緩やかだというが、同じ傾向ではある。
サーキットでも試してみたい
ヤマハ開発陣のエクスキューズとしては、今回、彼らはもっと路面がフラットな試乗コースを想定しており、やや伸び側減衰力を高めに設定していたとのことだった。つまりサーキット走行を想定していたのだと思う。そう考えると、確かに納得がいく部分は多い。引き戻し減衰力を強めたといっても段差でドスンと落ちるほど硬くはなく、高荷重領域でしなやかに内輪をコントロールするつもりだったのだろう。そういう事情もあったからだろうか、スープラにイメージする手応えの確かさやハンドリングレスポンスのよさは、ノーマルダンパー装着車の方がより素直に感じられた。
もっとも、コンベンショナルダンパー装着車は直列4気筒の「SZ-R」だったから、キビキビ感が強調されるのは当たり前だともいえる(TRAS装着車は直6の「RZ」だった)。むしろ、フロント荷重が少ないにも関わらず、SZ-Rの乗り心地は秀逸だった。これは純正ショックアブソーバーがガス圧感度の低い複筒式であることに加え、試乗車にはボディーの振動を減衰するヤマハのパフォーマンスダンパーが装着されていたことも大きいのではないだろうか。
直列6気筒搭載車のプレミアム性を高めるなら、確かにTRASのしっとり感は高い可能性を持っている。また減衰力調整機構が追加されたりすれば、その調整幅は大きく拡がるだろう。次回があるなら、ぜひトラックとオープンロードの両方で、これをしっかりと試してみたい。
もっとも、コンベンショナルダンパー装着車は直列4気筒の「SZ-R」だったから、キビキビ感が強調されるのは当たり前だともいえる(TRAS装着車は直6の「RZ」だった)。むしろ、フロント荷重が少ないにも関わらず、SZ-Rの乗り心地は秀逸だった。これは純正ショックアブソーバーがガス圧感度の低い複筒式であることに加え、試乗車にはボディーの振動を減衰するヤマハのパフォーマンスダンパーが装着されていたことも大きいのではないだろうか。
直列6気筒搭載車のプレミアム性を高めるなら、確かにTRASのしっとり感は高い可能性を持っている。また減衰力調整機構が追加されたりすれば、その調整幅は大きく拡がるだろう。次回があるなら、ぜひトラックとオープンロードの両方で、これをしっかりと試してみたい。
空力がハンドリングを変える ――トヨタ・プリウス アグレッシブスタイル
「空力効果を高めただけで、足まわりや動力性能はほぼそのままですから」
やや謙遜気味に説明をするTRDスタッフ氏だが、そんなことはないだろう。というのも、筆者は“TRDプリウス”に対してはかなりいいイメージを持っている。先代型プリウスのエアロシステムには、2018年までSUPER GT GT300クラスを戦っていたJAF-GTマシンのノウハウが生かされており、実際、その走りはプリウスに新しい魅力を与えていたからだ。
そしてそのハンドリングの楽しさは、現行型にも継承されていた。「先代よりも空力性能的には突き詰めていない」としながらも、そのハンドリングにはしっとりとした手応えがあり、それを土台とした回頭性のよさが与えられていたのである。
ちなみに、TRDは現行プリウスに対して、ふたつの系統のエアロパーツを用意している。ひとつは今回試乗した「アグレッシブスタイル」。そしてもうひとつは、よりおとなしめな外観の「エアロダイナミクススタイル」だ。
とても面白いのは、TRDが自身のホームページでその空力特性をレーダーチャート化していることだ。各パーツはバラ売りでも購入できるようで、これらをひとつずつ付け足していくと、それに応じてグラフも変化していく。それによると、アグレッシブスタイルのコンプリート状態は、5つの項目(Response/Stability/Feedback/Flat/Dress up)のうちハンドリングレスポンスとフィードバック性能が上回っており、さらに見た目がよいらしい(笑)。対してエアロダイナミクススタイルはすべての特性が満遍なく高得点だが、特に乗り心地がフラットになっているようだ。
ちなみに、ノーマル車両はほとんどの項目で用品装着車に劣るが、安定性(Stability)だけは飛び抜けて高い。実にトヨタらしいキャラクターであるといえる。
やや謙遜気味に説明をするTRDスタッフ氏だが、そんなことはないだろう。というのも、筆者は“TRDプリウス”に対してはかなりいいイメージを持っている。先代型プリウスのエアロシステムには、2018年までSUPER GT GT300クラスを戦っていたJAF-GTマシンのノウハウが生かされており、実際、その走りはプリウスに新しい魅力を与えていたからだ。
そしてそのハンドリングの楽しさは、現行型にも継承されていた。「先代よりも空力性能的には突き詰めていない」としながらも、そのハンドリングにはしっとりとした手応えがあり、それを土台とした回頭性のよさが与えられていたのである。
ちなみに、TRDは現行プリウスに対して、ふたつの系統のエアロパーツを用意している。ひとつは今回試乗した「アグレッシブスタイル」。そしてもうひとつは、よりおとなしめな外観の「エアロダイナミクススタイル」だ。
とても面白いのは、TRDが自身のホームページでその空力特性をレーダーチャート化していることだ。各パーツはバラ売りでも購入できるようで、これらをひとつずつ付け足していくと、それに応じてグラフも変化していく。それによると、アグレッシブスタイルのコンプリート状態は、5つの項目(Response/Stability/Feedback/Flat/Dress up)のうちハンドリングレスポンスとフィードバック性能が上回っており、さらに見た目がよいらしい(笑)。対してエアロダイナミクススタイルはすべての特性が満遍なく高得点だが、特に乗り心地がフラットになっているようだ。
ちなみに、ノーマル車両はほとんどの項目で用品装着車に劣るが、安定性(Stability)だけは飛び抜けて高い。実にトヨタらしいキャラクターであるといえる。
空気の流れがロール剛性を高める
「空力効果は、少しスピードを上げただけでもわかります。足まわりは全くのノーマルなので、最初はノーズの動きも軽いのですが、速度が上がると安定感が増していくと思います」
開発陣に教えてもらった通り、最初は極めてゆっくりと走らせる。そして、この感触を確かめた上で、飛ばす。空力といっても、TRDは大幅にダウンフォース量を増すようなチューニングはしていない。なぜなら、それでは燃費が悪化するし、ダウンフォースが失われた際の過渡特性も変化が激しくなってしまうからだ。それでも、空力が走りにもたらしたであろう変化は如実に感じられた。
正直なところ、説明されたような「低速域での回頭性のよさが、高速域で安定方向に切り替わるポイント」は体感できなかった。なぜなら低速域でも高速域でも、TRDプリウスはよく曲がるのだ。ダンパー剛性を高めているわけでもないのに、ステアリングを切り始めたときのロールがとても素直で、“スッ”とノーズが入っていく。また操舵追従性が非常によく、タイトコーナーでハンドルを切り込んでいってもグリップが途切れない。
特筆すべきは、まるでサブフレームやサスペンションの取り付け剛性まで上がったかのような印象を受けたことだ。これは車体がロールし始める際、空気の流れによってロールスピードが穏やかになっているから。理屈で言えば車体の表面を流れる空気がスタビライザーのような役目を果たしているからということになるが、ともかくダンパーの減衰力を少し強めたかのようなフィーリングになるのだ。しかし、実際の足まわりは変更されていないため、乗り心地は損なわれない。結果としてとても気持ちよく曲がる、快適なプリウスに仕上がっている印象を受けたのだった。
開発陣に教えてもらった通り、最初は極めてゆっくりと走らせる。そして、この感触を確かめた上で、飛ばす。空力といっても、TRDは大幅にダウンフォース量を増すようなチューニングはしていない。なぜなら、それでは燃費が悪化するし、ダウンフォースが失われた際の過渡特性も変化が激しくなってしまうからだ。それでも、空力が走りにもたらしたであろう変化は如実に感じられた。
正直なところ、説明されたような「低速域での回頭性のよさが、高速域で安定方向に切り替わるポイント」は体感できなかった。なぜなら低速域でも高速域でも、TRDプリウスはよく曲がるのだ。ダンパー剛性を高めているわけでもないのに、ステアリングを切り始めたときのロールがとても素直で、“スッ”とノーズが入っていく。また操舵追従性が非常によく、タイトコーナーでハンドルを切り込んでいってもグリップが途切れない。
特筆すべきは、まるでサブフレームやサスペンションの取り付け剛性まで上がったかのような印象を受けたことだ。これは車体がロールし始める際、空気の流れによってロールスピードが穏やかになっているから。理屈で言えば車体の表面を流れる空気がスタビライザーのような役目を果たしているからということになるが、ともかくダンパーの減衰力を少し強めたかのようなフィーリングになるのだ。しかし、実際の足まわりは変更されていないため、乗り心地は損なわれない。結果としてとても気持ちよく曲がる、快適なプリウスに仕上がっている印象を受けたのだった。
長所を伸ばし 短所を補う ――スバル・フォレスター STIパフォーマンスパーツ装着車
STIはフォレスターとインプレッサスポーツの2台に、STIの看板商品である“フレキシブル~”シリーズを装着していた。特にフォレスターは、ノーマル車両との比較試乗ができたため、その違いをはっきりと体感することができた。
フォレスターに装着されていたのは、フレキシブルタワーバーとフレキシブルドロースティフナー。そして新開発されたサポートフロントキットの3点だ。
まずはノーマルのフォレスターからコースへと出る。荷重領域が高いクローズドコースで走らせると、スバルが育んできたシンメトリカルAWDのよさがわかりやすく体感できる。具体的にはフロントオーバーハングの軽さや、慣性重量の少なさ。これによってフォレスターは、背の高いSUVとは思えない素直な回頭性を披露してくれる。
やや曲がりたがりな性格は時に4輪を滑らせるが、カウンターを当てる領域にまでそれが及ぶことはない。たとえその兆候が出たとしても、長いホイールベースが車体を安定させ、コーナーを脱出する際には4WDが縦方向にトラクションを稼いでくれる。実に見事な体さばきである。
しかしSTIパーツを付けたフォレスターは、その上を行った。正確に言うと、よい部分をさらに伸ばし、足りない部分をきれいに補っていた。まず明らかによくなったのはステアリングの初期応答性で、前述した回頭性のよさに、操舵の正確さが備わった。さらにフロントタイヤの接地感が明瞭なため、ステアリングをしっかりと切り込んでいくことができる。
フォレスターに装着されていたのは、フレキシブルタワーバーとフレキシブルドロースティフナー。そして新開発されたサポートフロントキットの3点だ。
まずはノーマルのフォレスターからコースへと出る。荷重領域が高いクローズドコースで走らせると、スバルが育んできたシンメトリカルAWDのよさがわかりやすく体感できる。具体的にはフロントオーバーハングの軽さや、慣性重量の少なさ。これによってフォレスターは、背の高いSUVとは思えない素直な回頭性を披露してくれる。
やや曲がりたがりな性格は時に4輪を滑らせるが、カウンターを当てる領域にまでそれが及ぶことはない。たとえその兆候が出たとしても、長いホイールベースが車体を安定させ、コーナーを脱出する際には4WDが縦方向にトラクションを稼いでくれる。実に見事な体さばきである。
しかしSTIパーツを付けたフォレスターは、その上を行った。正確に言うと、よい部分をさらに伸ばし、足りない部分をきれいに補っていた。まず明らかによくなったのはステアリングの初期応答性で、前述した回頭性のよさに、操舵の正確さが備わった。さらにフロントタイヤの接地感が明瞭なため、ステアリングをしっかりと切り込んでいくことができる。
固めるのではなく、引っ張る ――スバル・インプレッサスポーツ STIパフォーマンスパーツ装着車
圧巻だったのは、より全高が低いインプレッサスポーツだ。サスペンションはしなやかなのに、そのコーナリングはキレ味と安定性が両立している。コーナリングスピードはかなり高まっているが、4輪の接地感が明瞭だから、そこに怖さがない。いやそれを通り超して、楽しくさえ思えてくる。タイヤは無粋なスキール音を発することもなく、スタビリティーコントロールも介入しないのである。
これこそが、フレキシブルタワーバーとドロースティフナーの効果なのだという。STIのスポークスマンでもある辰巳英治総監督は、「コーナリング性能を高めるためにアウト側のグリップばかり気にしがちですが、通常領域では内輪接地を高めた方が、クルマはよく走るのです」と語る。
また「いたずらにボディー剛性を上げることもよいとは思えない」とも強調した。例えばストラットタワーやフロントサブフレームを剛体で連結するにしても、実際にねじり剛性を上げるためにはかなりの重量増が必要となり、局部剛性が上がったことでかえって操作性を悪くすることもある。またそのしわ寄せが、他の部分に表れる場合もあるという。
対してSTIのフレキシブルパーツは、“引っ張る”ことでテンションをかけ、内輪の接地性を高めようとする。押す・引くの方向には剛性を発揮しながら、路面のギャップといった別方向からの入力は、いなすのだという。例えばタワーバーでは、中央にピロボールが用いられている。ドロースティフナーはスプリングを内蔵し、装着状態からテンションをかけてサブフレームとボディーの間を引っ張っているのである。
とはいえ、必要な部分はきちんと剛性を高める。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の採用はスバル車のボディー剛性を大きく引き上げたが、水平対向エンジンとトランスミッションには変更がないため、これを支持するクロスメンバーも、まだ昔のままなのである。そして、そこでの“ねじれ”や“戻り”を抑制するために、サポートフロントキットが生み出されたのだという。
もはやその開発の領域は、メーカーがコストの関係から踏み込めない部分にまで及んでいる。まさにメーカー直系のワークスにしかできない調律。それすなわちワークスチューニングの世界なのである。
(文=山田弘樹/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
これこそが、フレキシブルタワーバーとドロースティフナーの効果なのだという。STIのスポークスマンでもある辰巳英治総監督は、「コーナリング性能を高めるためにアウト側のグリップばかり気にしがちですが、通常領域では内輪接地を高めた方が、クルマはよく走るのです」と語る。
また「いたずらにボディー剛性を上げることもよいとは思えない」とも強調した。例えばストラットタワーやフロントサブフレームを剛体で連結するにしても、実際にねじり剛性を上げるためにはかなりの重量増が必要となり、局部剛性が上がったことでかえって操作性を悪くすることもある。またそのしわ寄せが、他の部分に表れる場合もあるという。
対してSTIのフレキシブルパーツは、“引っ張る”ことでテンションをかけ、内輪の接地性を高めようとする。押す・引くの方向には剛性を発揮しながら、路面のギャップといった別方向からの入力は、いなすのだという。例えばタワーバーでは、中央にピロボールが用いられている。ドロースティフナーはスプリングを内蔵し、装着状態からテンションをかけてサブフレームとボディーの間を引っ張っているのである。
とはいえ、必要な部分はきちんと剛性を高める。SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)の採用はスバル車のボディー剛性を大きく引き上げたが、水平対向エンジンとトランスミッションには変更がないため、これを支持するクロスメンバーも、まだ昔のままなのである。そして、そこでの“ねじれ”や“戻り”を抑制するために、サポートフロントキットが生み出されたのだという。
もはやその開発の領域は、メーカーがコストの関係から踏み込めない部分にまで及んでいる。まさにメーカー直系のワークスにしかできない調律。それすなわちワークスチューニングの世界なのである。
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