【試乗記】BMW X2 xDrive20d MスポーツX エディションジョイ+(4WD/8AT)
ディーゼルはこうでないと
低めの全高がうれしい
ただ、よく使う駐車場が“ハイルーフ不可”だったり、ハイルーフ用があってもいつも満車だったりという状況を見ていると、なかなかSUVデビューできないのも事実で、私にとっては「もし買うなら全高1550mm以下のモデル」というのが一番の選択基準。BMWの場合、初代「X1」が全高1545mmをひとつのウリにしていたが、2015年のフルモデルチェンジで全高が1600mmを超え、頼みの綱が切れてしまった。
BMWのSUVには、SUVらしいデザインのスポーツアクティビティーヴィークル(SAV)と、クーペのようなスタイリッシュさが魅力のスポーツアクティビティークーペ(SAC)があり、奇数車名が前者で偶数車名が後者というのはご存じのとおり。
低めのシルエットが特徴のSACとはいえ、「X6」の全高が1695mm、「X4」が1620mmと、1550mmにはほど遠かった。それだけに、2018年に登場したX2は、全高が1535mmに抑えられており、私のような「ノーマルルーフ派」にとっては、希望の星になったのだ。
機能性は十分
ただ、あれだけルーフが低いと、後席の居住性が心配になるが、実際に座ってみると、十分すぎるほどのスペースが確保されている。それほど大柄ではない私でも、クーペ(4ドアクーペも含む)のなかには後席が窮屈なクルマが少なくないが、このSUVクーペというか、自称SACのX2の場合は、ニールームは足が組めるほど広いし、ヘッドルームも縦に拳が2個入るほど余裕がある。
ラゲッジスペースも、全高が低いぶん荷室の高さが限られるとはいえ、それでも天井まで荷物を満載する機会がほとんどなく、むしろ荷物を隠しておきたい私には、十分に広く使いやすいのである。
そんなX2に試乗するのはほぼ2年ぶり。2020年6月、最高出力190PSの2リッター直4ディーゼルターボを積むxDrive20d MスポーツXが追加され、この最新グレードをチェックするのが今回の目的である。
ディーゼルにも“駆けぬける歓び”
早速発進させると、予想以上の速さに、思わず笑みがこぼれた。わずか1750rpmから最大トルクを発生するというこのディーゼルターボは、1500rpm以下の低回転からすでに豊かなトルクが湧き出し、軽くアクセルペダルを踏むだけで、レスポンスのよい加速を見せてくれる。「ディーゼルはこうでないと」というお手本みたいな感触なのだ。
エンジンからは、多少カタカタというノイズが漏れるが、十分に許容できるレベルに収まっている。一方、エンジンの振動はほとんど気にならない。
特筆すべきはそのスポーティーさで、アクセルペダルを深く踏み込むと、2000rpm手前から一段と力強さを増し、5000rpmあたりの高回転域まで強力な加速が持続するのだ。エンジン回転計を見なければディーゼルエンジンであることを忘れてしまう気持ちよさである。愛車のBMWに積まれるエンジンが150PSの2リッターディーゼルだという編集部のS氏が、「確かに速い」と舌を巻き悔しがるのも無理はない。
SUVでゴーカートフィーリング
そのぶん、乗り心地でガマンを強いられる場面もある……と記憶していたが、2年ぶりに乗ったこのX2 xDrive20d MスポーツXは、少し硬めとはいえ乗り心地はおおむね快適で、目地段差を越えたときのショックの遮断もまずまずと、以前とは印象が異なるものだった。オプションの20インチタイヤではなく、標準の19インチを履くのもその一因かもしれないが、ランニングチェンジでカドが取れたのではないか……というのが、私の推測である。
ところで、今回試乗したエディションジョイ+は、装備はそのままで価格を下げたお買い得なクリーンエネルギー自動車。試乗車には約80万円のオプションが装着されていたが、私ならACCが含まれる「アドバンスドアクティブセーフティーパッケージ」(18万5000円)を選ぶだけで満足できそうなので、パワフルなディーゼルエンジンと4WDを採用するX2が約555万円というのはとても魅力的である。現実的なクルマだけに「もし、自分で買うなら外装色は『ファイトニックブルー』か『サンセットオレンジ』かなぁ」と思いを巡らすのが楽しいX2なのである。
(文=生方 聡/写真=神村 聖/編集=櫻井健一)
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