【試乗記】トヨタbZ4Xプロトタイプ(4WD)/bZ4Xプロトタイプ(FWD)
待たせたな!
BEVの最激戦区
と、日本においてはそんな気分かなという2022年に登場するのがこのクルマ、トヨタのbZ4Xだ。既報のとおり、トヨタとスバルとでBEV専用のアーキテクチャーを共同開発し共有する、「GR86/スバルBRZ」に次ぐアライアンスの、トヨタ版の成果となる。臆測は一般紙上でも飛び交うが、発売は2022年年央が予定されており、価格や販売方式は未定。今回は取りあえずプロトタイプという状態だったが、短時間ながら試乗もかなった。
bZ4Xの車格は従来的な分割で言えば、C〜Dセグメント級SUVのそれに該当する。既存のBEVで言えば「メルセデス・ベンツEQA」や「アウディQ4 e-tron」「BMW iX3」といった独御三家銘柄にほど近く、ほかにも「ボルボC40リチャージ」「フォルクスワーゲンID.4」「ヒョンデ・アイオニック5」「日産アリア」なども同級の車格に入ってくる。間違いなく世界のBEVのど真ん中、激戦区中の激戦区だ。航続距離から導かれるバッテリー容量やその体積、実用性やコスパなどを勘案すると現在のバランスの最適点がここ。そう世界中のメーカーが考えての現象だろう。
新しいBEV専用アーキテクチャーの「e-TNGA」は、トヨタの社内カンパニーとなるZEVファクトリーにスバルのエンジニアが出向するかたちで共同開発された。バッテリーはフロアに平積みを前提としており、フロントアクスルからフロントカウルにかけてをフィクス化することで多面展開を容易にする技術は既出の「TNGA」の思想を受け継いだ。
徹底したバッテリー管理
エレクトリシティーサプライユニット=ESUは電力変換、電力分配、充電の各機能をワンユニットにしてコンパクト化を果たしたbZ4Xの心臓部だ。家庭用普通充電は最大7kWまで、CHAdeMOの急速充電は最大150kWまでの入力に対応している。
リチウムイオンバッテリーは出力や密度はもとより、搭載性も考慮した大型セルを用いる専用品を新たに開発。バッテリーパックは95のセルで構成され、71.4kWhの電力容量を備えている。ともあれトヨタがこだわっているのはバッテリーの安全性や耐久性の確保で、冷却システムは密閉されたバッテリーパックの下部に独立した水冷式のジャケットを密接させ、衝突時には冷却液とバッテリーが触れない別室構造としたうえで、冷却水も導電しにくい高抵抗のクーラントを使用。その色も通常のクーラントとは異なるオレンジ色として識別しやすくなっている。また、電圧管理を多重化して常時管理し、故障のシグナルとなる変位を素早く察知するほか、高負荷時や急速充電時等の電池温度の管理も細密に行っており、低温環境では水加熱ヒーターを介して充電時間の短縮をサポートしている。
年間1750kmを生み出すソーラーパネル
さらにbZ4Xにはソーラーパネルをルーフに用いた独立型の充電システムも用意されている。定格出力は225Wで、静止時は駆動用バッテリーを直接充電するほか、走行時は12Vバッテリーを充電し、駆動用バッテリーの消費を抑える仕組みだ。面積あたりの効率は「プリウスPHV」のそれより高く、名古屋の日射データをもとにしたトヨタの試算では、走行距離に換算すると年間にして1750km相当をソーラーパネルで賄える能力があるという。
内装のデザインやインターフェイスは従来のクルマの延長線上にあって、新しいものを扱っているという特異さはない。親切ではあるが退屈でもある。ドライブモードの切り替えやワンペダル的なドライブを実現する回生ブーストモードのオンオフは、ロータリー式のシフトノブの左右に均等な大きさで振り分けられるが、使用頻度に応じた強弱をつけてもよかったような気がする。
遠視点のメーターパネルは見やすく、視界に入る車線の延長線をイメージさせるフード形状も乗りやすさにつながっているが、従来の円形ステアリングでは液晶の表示領域下部がリムで蹴られてしまうところはトヨタらしからぬもったいなさだ。すなわち、運転席まわりの造形は後に投入予定のステアバイワイヤ仕様に装着される操縦桿(かん)的なステアリングをもって完結する形状ということだろう。
まだまだ奥がある
その電費の関係もあって、試乗はクローズドコース3周と短く、走りの印象のすべてがつかめたわけではない。が、総じて言えるのはトヨタが手がけるBEVらしく至って自然に、中立的に振る舞えるようにしつけが行き届いていることだ。発進時のトルクのなましや微減速時の回生による減衰感、中間域ではずしんと重くも余計な刺激を丸めた加速フィール、回生ブースト時のアクセルオン/オフに対する柔らかな反応と、BEVの癖を取捨選択し、丁寧にならしていったことが伝わってくる。唯一、急減速時の回生とメカニカルなブレーキの協調性にややアラがみられたが、市販仕様までには改善できる余地があるだろう。
FWDモデルはBEVで発生しがちなトルクステアがよく抑えられた、素直で上質なドライバビリティーが印象的だ。が、bZ4Xの本領はやはりスバルの駆動配分の知見が生かされた4WDモデルの側に強く表れる。親しんだ内燃機のメカ四駆に比べればはるかに駆動配分を緻密に制御するその旋回感は、身をよじらせてでも路面に張り付き放さないという執念めいたものさえ感じられる。重量配分や重心高で利があるとはいえ、その食いつきっぷりはタイヤの限界を見失いそうになるほどだ。そういう意味では自制心が求められる特異な運動性能は、恐らく悪路的環境でもとんでもないものをみせてくれるのではないか。この予感は当たることになるわけだが、それは数週間後にお披露目できる話だ。取りあえずbZ4Xの潜在能力をフルに引き出すだろう、ステアバイワイヤのモデルが披露する未来がちょっとおっかなくも楽しみになってきた。
(文=渡辺敏史/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:2005kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:109PS(80kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:109PS(80kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:218PS(160kW)
タイヤ:(前)235/50R20 104V XL/(後)235/50R20 104V XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電最大走行可能距離:460km前後(WLTCモード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:639km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
トヨタbZ4Xプロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
ホイールベース:2850mm
車重:1920kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
モーター最高出力:204PS(150kW)
モーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
タイヤ:(前)235/60R18 103H XL/(後)235/60R18 103H XL(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電最大走行可能距離:530km前後(WLTCモード)
価格:--万円/テスト車=--万円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:265km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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