【試乗記】トヨタ・プリウスZ(4WD/CVT)
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トヨタ・プリウスZ(4WD/CVT)
まるでスポーツカーのように
細かい工夫で変化を強調
そんな新型プリウスのスタイリングは多くの人が指摘するように、某スーパーカーを思わせる。その最大のポイントはもちろん猛烈に傾斜したフロントウィンドウだが、実際の寸法もより長く、幅広く、そして低い。
とくに全高はもともと低かった先代より40mmも低くなっているし、全長は25mm、全幅も20mm大きくなり、いっぽうでサイドガラスは左右方向にも絞り込まれている。ホイールベースも50mm伸びて、今回の2リッター車では19インチという大径ホイールが標準装備。こうしたもろもろが絡みあって、遠目ではべったりと地をはうようなスタンスとなっており、全高の低さがさらに強調されている。
全長の伸長幅に対してホイールベースのそれが25mm大きいことからも分かるように、新型プリウスではオーバーハングそのものは短縮している。ただ、細かく観察すると、フロントのそれは先代より逆に25mm伸びており、かわりにリアが50mm短縮されている。先代は前後オーバーハングに大きな差がないサルーン的なバランスだったのに、新型は一転して伸びやかなフロントに対してリアをスパッと切り落としたスポーツカールックになっているわけだ。こういう細かい工夫も、新型プリウスの変わった感を強めている。
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2023年1月に発売されたトヨタの新型「プリウス」。プラットフォームには進化した第2世代の「TNGA」が用いられ、従来モデルと同じくHEVとPHEVをラインナップする。今回は先に販売が開始された前者の4WD車に試乗した。
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4WD車に搭載されるリアモーターは、従来の7.2PSから41PSへと大幅にパワーアップした。雪道などでの登坂性能に加え、旋回性能も向上しているという。4WDであることを示す立体的な「E-Four」のエンブレムが、フロント左ドアにのみ備わる。
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サイドのガラス面は従来型よりも天地の高さが抑えられ、後方に行くにしたがって下部が上方向にカーブを描くようにデザインされている。リアドアのオープナーは、視覚的に目立たぬようウィンドウ部に組み込まれている。
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新型「プリウス」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4600×1780×1430mmで、ホイールベースは2750mm。先代に対しては、25mm長く、20mm幅広く、40mm低い。ホイールベースは50mm延長されている。
老若男女のための国民車ではない
新型プリウスは“第2世代TNGA”と銘打って、プラットフォームも改良型GA-Cとなり、より剛性アップした車体やサスペンションの設計自由度の向上をうたう。加えて、さらなる低重心も第2世代TNGAの意図するところで、今回も全高だけでなく、前後のヒップポイント高もまた下げられている。
先代比で40mm低い全高に対して、実際のヘッドルームは大きく変わっていない。となると、トヨタが公表する資料に詳しい説明はないものの、ヒップポイントも全高と同程度は低められているのだろう……と思ったら、新型プリウスにシートを供給する「トヨタ紡織」のプレスリリースに、新型プリウスのヒップポイントは先代比で30mm低くなっているとの表記があった。先々代からすると、じつに90mm近く低くなったということだ。
クロスオーバー全盛の現代ゆえ、新型プリウスの乗降性や視界性能は、良くも悪くもサルーンというよりスポーツカーを思わせる。低いヒップポイントは乗降性だけでなく、見晴らし性も犠牲にしていて、そのエクステリアデザインもあいまって、新型プリウスは明らかに車両感覚が把握しにくいクルマになっている。今のクルマは多方向にカメラがつくから絶望的に困りはしないが、プリウスはもはや老若男女のための国民車ではなく、このスタイリングに刺さった人に乗ってもらえればいいと割り切っている。先日には「カムリ」の国内販売終了も明らかになったように、伝統的サルーンのような、背の低いクルマはもはやニッチ商品化しているのだ。
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「感性に響くエモーション」と「普遍的な美しさ」を表現したという新型「プリウス」のボディーデザイン。外板色は今回の試乗車両がまとっていた「ダークブルー」を含め、「アッシュ」「マスタード」など全6色が設定されている。
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インテリアのデザインコンセプトは「アイランドアーキテクチャー」。水平基調のシンプルなダッシュボード上に液晶画面が並ぶ様子は、トヨタの電気自動車「bZ4X」にも似ている。「Z」グレードのダッシュボード中央に位置するセンターディスプレイの画面サイズは12.3インチ。充電用USB端子(Type-C)がセンターコンソール前部に1口、コンソールボックス内に2口備わる。
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スポーティーなエクステリアデザインから先代よりも狭くなったキャビンを想像してしまうが、前後席のヒップポイントがより低くより後ろに移動しているので、ヘッドルームは先代と大きく変わらない。「Z」グレードでは、合成皮革のシート表皮が標準仕様となり、前席にヒーター/ベンチレーション機能が備わる。
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ホイールベースが先代より50mm長い2750mmとなったことで、タンデムディスタンス=前後席間距離も+8mmの936mmに伸ばされた。後席は見た目以上に広く、頭上にも足元にも十分な余裕が感じられた。
もはやスポーツカーの手法
新型プリウスは開発陣も「デザインからイメージされるとおりの走りを目指した」と語っているように、いかにも路面に低くへばりついたような身のこなしである。ピッチングやロールも小さく、操舵レスポンスも俊敏そのもの。それと同時に、ステアリングの利きも強力で、大舵角までノーズはぴたりと追従する。フルバンプ近くまでストロークしてから、さらに路面不整に蹴り上げられても優しく収束するフトコロの深さも好印象。高速直進性も高い。
こうした味わいをバネやアブソーバーをことさら固めなくても実現できているのが、改良型GA-Cのさらなる低重心化(と局部剛性強化など)の恩恵だろう。サイドウォールの低い19インチタイヤだと考えると、乗り心地は望外にしなやかで快適だ。高速ではフラットそのもので、大きな凹凸なうねりに遭遇すると、フワリと適度に上下して吸収する。
それにしても、このシャシー性能はちょっとしたものだ。それもこれもヒップポイント高も含めた低重心の恩恵だろうが、乗降性や取り回し性を犠牲にしても走りにこだわるのは、すなわちスポーツカーの手法ですね……。
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第2世代TNGAと呼ばれる改良型の「GA-C」プラットフォームを採用。より剛性アップした車体や細部にまで手が入れられた足まわりが特徴だ。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式でリアがダブルウイッシュボーン式。
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「Z」グレードには、ダークグレーメタリックをベースに切削光輝仕上げを施した19インチアルミホイールが標準で装備される。今回の試乗車両は195/50R19サイズの「ヨコハマ・ブルーアースGT」タイヤを組み合わせていた。
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薄型のヘッドランプデザインも新型「プリウス」の特徴。全グレードにBi-Beam LEDヘッドランプとLEDターンランプ、LEDクリアランスランプ、そしてLEDデイライトが採用される。
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横一文字のコンビネーションランプと「PRIUS」のロゴが目を引くリアまわり。後方視界を向上させるためにこれまで採用されてきたテールゲートのサブウィンドウは廃止され、すっきりとしたリアビューになった。
高い領域までオンザレール
今回の試乗車は4WDだった。先代の4WDは、低出力(最高出力7.2PS、最大トルク55N・m)のリアモーターで発進やスリップの兆候がある場合にのみトルク配分する“生活4WD”だった。しかし、新型は41PS、84N・mに高出力化したリアモーターに舗装路でも積極的にトルク配分して、操縦安定性も高めているという。
センターディスプレイに駆動配分を表示させて走ると、直進時は発進の瞬間こそリアモーターも稼働するが、その後はかなり深めのアクセルを踏み込んでも基本的にFFを維持することが分かる。しかし、操舵したり、横Gが入ったりしたときには即座にリアモーターが稼働して、少なくとも旋回中は4WD状態を保つ。
まあ、リアモーターが高出力化したといってもフロントのエンジンやモーターよりは明らかに控えめなので、後ろからはっきり蹴り出されるような乗り味ではない。しかし、同じ新型プリウスのFFでアンダーステアを出してしまったコーナーを、4WDで同じように走ると、今度は涼しい顔で何事もなくクリアしてくれた。強引に振り回してもかなり高い領域までオンザレールな所作はくずさず、「そういえば4WDだった」とはたと気づかされる、いい意味で優等生タイプの4WDである。
というわけで、毎週といわずとも年に数回、しかるべき場所でオイタするような趣味があるなら、積雪地ユーザーでなくても4WDを選ぶ価値はなくはない。カタログ表記されるWLTCモード燃費値ではFFに6〜7%ゆずるが、市街地から高速、山坂道を織り交ぜた、似たようなルートをFFと4WDで走り比べたら、実燃費ではFFと4WDで有意な差はなかった。長期的な燃費ではFFに軍配が上がるだろうが、いずれにしても、その差はわずかのはず。新型プリウスでは、4WDはこれまで以上に検討する価値があると思う。
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最高出力152PS、最大トルク188N・mを発生する2リッター直4エンジンに、前後1基ずつのモーターを組み合わせたハイブリッドパワーユニットを搭載。「E-Four」と呼ばれる4WD車のシステム最高出力は199PSと発表されている。
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トップマウントメーターと名づけられた独立した液晶メーターパネルは7インチサイズ。必要な情報がリングに集約して表示されるほか、リングをセンターから右に移動させ(写真)必要な情報を大きく表示することもできる。
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シフトセレクターの操作方法は従来型と同じだが、セレクターレバーの位置はダッシュボードからセンターコンソールに移された。「Z」グレードにはスロット式のワイヤレス充電器(写真下)も標準で装備される。
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後席使用時の荷室容量は410リッター。荷室の床下にはタイヤパンク応急修理キットや、全車に標準装備されるAC100V・1500W給電システムの窓枠アタッチメントなどが収容される。
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デザイン優先のボディーフォルムによって、Cd値(空気抵抗係数)は先代が0.24であったのに対し、新型では0.27へと悪化している。こうした割り切りにも「プリウス」を単なるエコカーではなく、魅力で選ばれるクルマにしようとするトヨタの意図がうかがえる。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース:2750mm
車重:1480kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:152PS(112kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2kgf・m)/4400-5200rpm
フロントモーター最高出力:113PS(83kW)
フロントモーター最大トルク:206N・m(21.0kgf・m)
リアモーター最高出力:41PS(30kW)
リアモーター最大トルク:84N・m(8.6kgf・m)
システム最高出力:199PS(146kW)
タイヤ:(前)195/50R19 88H/(後)195/50R19 88H(ヨコハマ・ブルーアースGT)
燃費:26.7km/リッター(WLTCモード)
価格:392万円/テスト車:413万2300円
オプション装備:ITS Connect(2万7500円)/デジタルインナーミラー&デジタルインナーミラー用カメラ洗浄機能&周辺車両接近時サポート<録画機能>&ドライブレコーダー<前後>(8万9100円)/コネクティッドナビ対応ディスプレイオーディオPlus<車載ナビ[FM多重VICS]、オーディオ・ビジュアル[12.3インチHDディスプレイ]、AM/FMチューナー[ワイドFM対応]、フルセグテレビ、USBタイプC入力[動画・音楽再生/給電]、スマートフォン連携[Apple CarPlay/Android Auto/Miracast対応]、T-Connect[マイカーサーチ、ヘルプネット、eケア、マイセッティング]、BlueTooth対応[ハンズフリー/オーディオ]>(6万1600円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万4100円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:2254km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:448.3km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:17.5km/リッター(車載燃費計計測値)
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