答は自分の中にある [ブレイド 金森善彦チーフエンジニア](2/2)

【プロフィール】
金森 善彦(かなもり・よしひこ)
1960年生まれ。
1982年、トヨタ自動車入社。
ボディ設計部門で、カローラ、マークⅡ、セリカのボディおよび外装設計を担当。
1995年、商品開発部門に異動し、8・9代目のカローラに携わる。
その後、先行開発部門と兼務となり、後にオーリス、ブレイドで使う新型プラットフォームの開発を担当。
2004年にオーリスのチーフエンジニアとなり、引き続いてブレイドでも開発責任者を務めた。 プライベートではセリカに乗る一児の父。

こんなにカッコよくて上質なクルマはなかったはず。

オーリス、ブレイドは、ともに日本車としては、これまで手薄だった分野に挑戦し、志高く、新しいジャンルを切り拓こうとしているクルマです。
これまでこうしたコンパクトハッチは、若者を中心としたエントリーユーザー向けとされていました。しかし今、クルマに対する価値観が多様化する中で、ダウンサイジングを考える人が多くなっています。
オーリス、ブレイドは、そうした人たちをターゲットに、コンパクトながらも、スタイリング、室内空間、走行性能、それぞれを高いレベルで融合させています。なかでもブレイドは、「洒落た大人の高級ハッチバック」「ショートプレミアム」をキーワードとし、従来の高級車とは一線を画した、ターゲットユーザーにジャストフィットした、洗練された若々しい上質さ、言い換えれば、上質なお洒落感覚を取り込みました。
日本にはこれまでも、そうしたクルマを求める層が存在していました。しかし、国産のコンパクトハッチバックにはその人たちを満足させるクルマがなかったため、フォルクスワーゲン・ゴルフをはじめとする欧州のハッチバックがシェアを伸ばしてきたのだと思います。
日本のメーカーで開発に携わる者として、私はそのことを残念に思っていました。
欧州車に興味を持つ方々も、ぜひオーリスやブレイドを見て、乗ってみてください。これまでの日本のコンパクトハッチで、こんなにカッコよくて上質なクルマはなかったはず。きっと若い方々も含め、満足していただけると自負しています。

自分が欲しくなるクルマを創る。

そんなふうに、ブレイドの開発コンセプトについては、社会のニーズの変化や欧州車との比較も含めて、いくらでも話せます。でも実は、私が考えていたことはもっと単純でした。“自分が欲しくなるクルマを創ろう”と考えていたのです。
私自身、たとえば洋服や時計など、特に高価なブランドものを身につけているわけではありませんが、安っぽいものはイヤだし、何かちょっと人とは違ったものを持ったり着たりしたいという気持ちがあります。そのためだったら、2倍3倍のお金は出せないにしても、少しくらい高いお金なら払います。暮らしのさまざまな場面で、マニアックまではいかなくても、ちょっとした自分なりのこだわりが満たされることを求めているんですね。
40代から50代の人たちには、そうした感覚の持ち主が、かなりの割合でいると思うのです。私はいま40歳代半ばですから、まさに自分自身もターゲット。つまり“どのようなクルマを創ればよいかの答は、私自身の中にある”わけです。
そうした思いを大切に開発を進めた結果が、このブレイド。まさに私自身が欲しくなるクルマができました。
私は今後も、自分が乗りたくなるクルマ、欲しくなるクルマを創っていくつもりです。これからのクルマづくりには、開発者がそうした思いを持ち徹底的にこだわって創ることが大事なのではないかと思うのです。

( 文:三枝義浩 )