新しいジャンルを創り出す [マークX ジオ 杵築邦昌チーフエンジニア](2/3)
研究ひと筋、そして商品開発へ
- 杵築 邦昌氏が実験部のリーダーとして開発に関わったbB
その後は実験部ひと筋で、さまざまな研究をしてきました。印象的な仕事としては、たとえば、初代ソアラのデジタルメーター開発に参加したことがあります。当時デジタルメーターは最先端の技術でしたが、人間工学からの研究では、正確すぎるとかえって見にくく、“ため”があったほうが心地よく認識しやすいことが解ったんです。そんなふうに人間工学の成果が実際のクルマづくりに役立っていくのが興味深かったですね。
ドライビングポジションの研究もしました。シートとステアリング、ペダルの理想的な位置関係を探る研究です。その研究の中から、背筋を伸ばして高く座るクルマを発想して提案。その流れで、当時の新型車[bB]の開発に、実験部のリーダーとして参加したりもしました。
そんな仕事から、私自身、製品企画の仕事に興味を持つようになってきたんです。上司も「製品企画が向いているんじゃないか? そろそろ考えてみたらどうだ?」なんて背中を押してくれて、ついに自己申告を提出。20年以上在籍した実験部を離れ、製品企画部門へ異動することになりました。
市場開拓型の商品開発に挑む
- インタビュー中の杵築 邦昌氏
製品開発部門に移ったものの、初めは自信がなかったですね。実験部から製品開発の仕事を見ていて、“たいへんな仕事だな”と思っていましたし、ましてやチーフエンジニアなんて、雲の上の人だと思って見てましたから。
実際、最初に[初代プレミオ/アリオン]の開発に携わりましたが、原価管理など分からないことが多かった。“技術だけが分かってもクルマはつくれないんだな”と痛感しましたよ。
[プレミオ/アリオン]を2002年に送り出した後、新型車[ポルテ]のチーフエンジニアとなり、2004年から[マークX ジオ]のチーフエンジニアになりました。
子育て中のママの使い勝手を追求した[ポルテ]と、子育てを終えようとする世代に楽しんでもらおうとする[マークX ジオ]。まったく異なるタイプのクルマですが、共通しているのは、市場開拓型の商品であることです。新しいジャンルを切り開く仕事に携わってこられたことは、とても幸せだと思っています。
[マークX ジオ]のターゲットは、自分
- 2007年9月26日発表のマークX ジオ
私が[マークX ジオ]のチーフエンジニアになった時点で、いわゆる初期検討はできていて、商品の方向性は大筋定まっていました。
読んでみて、“なんだ。自分がターゲットだ”と思いましたよ。そろそろ子離れしてミニバンを卒業する世代。夫婦でゆとりの時間を持ったり、友人同士で新たな楽しみを探しに行ったりしたい。でも、まだ子どもたちと出かける機会もあるので、いざという時、大勢で乗れる3列シートは手放せない。そうした人たちが[マークX ジオ]のターゲットに設定されていたんです。
当時の私は、一番下の息子が中学生。少し前まで家族で頻繁にオートキャンプに行ったりしていたのに、子どもたちがあまりクルマに乗らなくなって、ミニバンの広さを妙にむなしく感じ始めていた(笑)。
「たまには夫婦で小旅行」と初期検討の書類にあるのを見て、焦りましたよ、自分はそんなのやったことないぞ、と(笑)。さっそく、夫婦で出かけました。「たまには夫婦で小旅行」する時には、どんなクルマがふさわしいのか。自ら体験することから、このクルマの開発は始まったのです。
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