Shall we drive ?-クルマ本来の楽しさへの誘い [マークX 友原孝之チーフエンジニア](2/2)
ハイブリッド包囲網
その昔、クルマといえばセダンでした。しかし、現在ではお客様のライフスタイルの多様化、ニーズの多様化、さらには環境への配慮などさまざまな要因によって、ミニバンやSUV、コンパクトカーなどさまざまなタイプのクルマが台頭し、多くのお客様から支持されています。
さらには昨今のハイブリッドカーブームです。「ハイブリッドカーにあらずんば、クルマにあらず」ともいえる風潮の中、新型プリウス、そしてレクサスHSの登場により、「マークXは価格帯、排気量などさまざまな点で完全に包囲された」「ガソリンで走るFRセダンのマークXは完全に行き場を失った」という声さえ聞こえてきます。
でも、本当にそうなのでしょうか? 確かに、クルマを選ぶ上で、燃費性能や環境対応を重視し、合理的・理論的な判断から、プリウスなどハイブリッドカーを購入する人はものすごい勢いで増えています。いわば、“頭”で考えてクルマを選ぶ人たちです。しかし、その一方で、クルマ本来の走りの面白さや“ワクワク”感、フィーリングといったエモーショナルな要素を重視する人たちがいます。“頭”で考えて選ぶのではなく、“ハート”や“感性”でクルマを選ぶ人、“五感”で感じて選ぶ人たちです。
実際に調査してみると、“頭”で選ぶ人たちは約45%。“五感”で選ぶ人は約15%でした。そして、残りの40%の人たちは迷っている人たち、“どちらともいえない”人たちだということが分かりました。選挙でいえば、浮動票であり、無党派層の人たちなのです。
私は“頭”で考えてクルマを選ぶことを否定するわけではありません。また、今後、燃費性能や環境対応を重視する傾向はますます高まると思っています。この大きな流れにあらがうつもりは毛頭ありません。加えて、プリウスなどハイブリッドカーには“走りの楽しさ”など五感で選ばれる要素がないといっているわけではありません。
何事も一方に偏りすぎるのはよくありません。ですから、このハイブリッドカーブームの中、クルマ選びの“もう一つの選択肢”“異なる視点”をしっかり提示していきたい。また、していかなければいけない。それが自動車メーカーとしてのトヨタの使命であり、そしてその重責を新型マークXが負っていると、私は思っています。
正統派FRスポーティセダンの最後の牙城という決意
- 初代マークⅡ(1968-1971)
いうまでもなく、1968年の初代マークⅡ誕生以来、FRセダンの系譜を受け継ぎ、さらに名前を変え、FRスポーティセダンとして一新したマークXは、保守本流のクルマです。徹底的に“走り”にこだわった、いわば、“五感”で選ばれるクルマです。 しかし一方で、本来、マークXは“頭”で選ばれるべきクルマでもあります。本格的FRセダンのエントリーモデルとして、マークⅡの時代から“圧倒的なバリュー感”をユーザーに訴求し、“頭”で考えて選ばれてきたクルマです。つまり、“五感”に訴えるとともに、最後は“頭”で選んでもらうクルマ。それがマークXです。
そんなマークXだからこそ、“頭”で考えてクルマを選ぶ人たちや迷っている人たちに対して、“五感”で選ぶというもう一つの選択肢を有効に、そして説得力を持って提示できると思うのです。 五感に訴えるだけならもっと分かりやすいクルマはあります。しかし、両方兼ね備えているのはマークXならではだと思います。
ハイブリッドカーブームの中、“走り”の魅力を訴求していくというのは、まさに、「火中の栗を拾う」「虎穴に入らずんば虎児を得ず」といった戦略ですが、ハイブリッド包囲網を打破するには、“もう一つの選択肢”を世の中に提示し、真正面から勝負を挑んでいくほかありません。それこそ、保守本流をいくマークXらしい戦い方です。そして、少なくとも約40%の迷っている人たちにしっかりクルマ本来の走りの面白さや“ワクワク”感を提案していきたいと思っています。 2009年に発売される新型マークXは、ガソリンで走るFRスポーティセダンのエントリーモデルであるとともに、正統派FRスポーティセダンの最後の牙城である。 そんな決意を持って私はこのクルマを世に出す決意です。そして、“走りの魅力”と“圧倒的なバリュー感”そして、“魅力的なスタイリング”にこだわった新型マークXには十分に勝算があると思っています。
クルマの“乗り味”を追求
新型マークXの走行性能においては、スポーティな動力性能に加え、高級サルーンにふさわしい上質な乗り心地とハンドリングの良さという相反する性能を融合させるために、シャシー部品を全面的に見直しました。
一般にトヨタのクルマは「乗りやすい」「取り回しがしやすい」「気持ちがいい」と評されます。しかし、その反面「なんだかもの足りない」「余韻が残らない」「ふわふわしている」といわれます。これはシャシーなど足回りを低速域、中速域、高速域のどのレンジでの使用に適したものに仕上げていくかというチューニングの方向性からくるものです。新型マークXではこの足回りのチューニングの方向性を従来のトヨタのクルマとは“真逆”に振りました。ヴィッツやパッソなどコンパクトカーとも違いますし、クラウンやレクサスLSとも違います。いわば今までのトヨタのクルマにはなかった“乗り味”を実現しています。私たちはこれを実現するため、BMWなど欧州車を徹底的にベンチマークしました。
従来のトヨタのクルマとは“真逆”といっても、もちろん、それは「乗りにくい」「取り回しが悪い」といったものではありません。路面の小さな凸凹を拾って身体が疲れたりしない、しかし、ふわふわした感じは全くなく、しっかりと路面に吸い付いている感覚がある“乗り味”です。そして、高速走行中のハンドルのフィーリングもしっかりとしています。
また、新型マークXでは、スタンダード、プレミアム、スポーツの3タイプを用意しましたが、その中で、スポーツタイプはあらゆる状況下でも優れた乗り心地と操縦性・走行安定性を両立させるAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンションシステム)の採用の他、車速に応じてステアリングのギア比を変更し、前輪の切れ角を最適に制御するVGRS(ギア比可変ステアリング)や、車両の姿勢変化を感知すると、VGRSと連動して自動的に前輪の切れ角を修正して挙動を安定させるVDIM(アクティブステアリング統合制御付)を採用。狙ったラインをトレースできる気持ちよさが味わえます。
もちろん、スタンダードタイプでも“上質な乗り味”を十分に実現していますが、さらにそれを向上させた“最上級の乗り味”をぜひ、スポーツタイプで堪能ください。
また、2.5Lに加え、3.5Lエンジンの設定も追加しました。これについては社内でもいろいろな意見がありましたが、本格的スポーティセダンとして私たちがこだわった部分です。是非、乗り比べてみていただきたいと思います。
SAMURAI X
新型マークXは“乗ってみれば、違いが分かる”クルマです。しかし、私たちはそれでは不十分だと考えています。目指したのは“乗ってみたくなる”クルマ、そして、“乗ってみて、期待以上の満足感や驚きのある”クルマです。ですから、魅力的なスタイリング、インテリアにも徹底的にこだわりました。
現在は、用途に合わせて様々なクルマがあります。軽自動車やコンパクトカー、またハイブリッドカーのように街乗りに適したクルマもあれば、高速道路を使って郊外にロングドライブに出かける、そんな用途に適したクルマ、また、ドライブに行きたくなるクルマもあります。新型マークXは、ロングドライブに出かける、ドライブに行きたくなるクルマです。
そして、初めてクルマを手に入れたときの高揚感。そんな気持ちを再び味わうことができるクルマを作りたいと思って開発してきました。これはある意味、とても保守的な価値観かもしれませんが、今の時代にあっては 逆に新しい価値ではないかと思っています。
新型マークXとは“圧倒的なバリュー感”と“上質感”を兼ね備えた、日本で唯一のスポーティセダンだと私は思っています。そして正統派FRスポーティセダンの系譜を受け継ぐ“サムライX”でありたいとも。
( 文:宮崎秀敏 (株式会社ネクスト・ワン) )
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