いま再び、Made in Japan , Made for Japan. [第11代目カローラ(アクシオ/フィールダー) 藤田博也 チーフエンジニア](1/3)

初代カローラの発売は1966年。46年の歴史を持ち、今回のフルモデルチェンジで11代目となる。カローラというブランドは、トヨタの中でも、ランドクルーザー(1951年)、トヨエース(1954年)、クラウン(1955年)についで古く、現在生産されている日本における小型大衆車ではダントツのロングセラー車である。国民的大衆車といっても過言ではない。
一方で、世界140カ国以上で販売され、累計販売台数は2012年に4,000万台を突破する見込み。 かつて米国の雑誌『ナショナルジオグラフィック』(1999年8月号)誌上で、「20世紀に世界に普及した5つのプロダクト」の一つとして、コカ・コーラ、ネスカフェ、スターウォーズ、ナショナルジオグラフィックと並んで紹介されたこともあった。 21世紀になっても、世界市場を強く意識して登場した9代目カローラで大きく販売台数を伸ばし、現在でもバンコクなどに行くとほとんどのタクシーに採用されているほど、「世界のベストセラーカー」としての地歩を固め、大きな飛躍を果たしてきた。
しかし、国内市場においては、この頃、少し影が薄い。1968年から33年間続けてきた国内新車販売台数の首位の座を、2002年にホンダフィットに明け渡し、その後、首位の座は奪還したが、2009年の3代目プリウスの登場とともに、プリウスに首位の座を奪われる。以降、エコカーが台頭。いまや国内大衆車市場は低燃費競争時代に突入し、かつてはライバル車として、カローラとしのぎを削ってきた他メーカーのコンパクトセダンは次々と日本市場から消えていっている。
そのような中、新しく登場する11代目カローラはどんなクルマなのか?そして、今後、カローラはどうなっていくのか?
その質問を10代目に続き11代目カローラにおいても開発責任者を務めた藤田博也チーフエンジニアに直接、ぶつけるべく、トヨタ自動車の製品企画本部を訪ねた。

地球人の幸福と福祉のためのカローラ

藤田 博也(ふじた・ひろや)
藤田 博也(ふじた・ひろや)
三重県出身。 1980年トヨタ自動車工業に入社。長くエンジン開発部門に在籍し、“世界一スムーズで静かなエンジン”と評された初代セルシオのV8エンジンなどを手がける。1997年から商品開発部門に移り、9代目カローラなどを担当。2003年、10代目カローラの開発責任者(チーフエンジニア)となる。そして新型11代目カローラの開発においても、引き続き陣頭指揮を執る。

カローラは日本では累計販売台数960万台超。グローバルでみると、毎年100万台超が生産され、まもなく4,000万台を突破します。戦前でいえばT型フォード(1908年-1927年、約1,500万台)、戦後では「ビートル」の愛称で親しまれたVW Type 1(1938年-2003年、約2,150万台)、VWゴルフ(2007年3月、2,500万台を突破)を大きく引き離し、カローラは販売台数ナンバーワンの世界のベストセラーカーです。
世界中のさまざまな国や地域、140カ国以上で販売され、世界中のあらゆる場所で走っています。“壊れない、使いやすい、修理・交換部品が豊富なこと”などが高く評価され、たとえ日本国内で廃車になった車であっても、海外に持っていけば、カローラという名前だけで、高い値段がつく。それぐらい特別なブランドのクルマでもあります。
9代目カローラを、元航空機エンジニアで初代カローラのチーフエンジニア(開発主査・開発責任者)だった長谷川龍雄さんにお見せした折、長谷川さんが色紙に「地球人の幸福と福祉のためのカローラ」と書いてくださいました。私はその意味を自分なりに「絶海の孤島やジャングルの奥地でも、クルマを必要としている人がいる。そんな人達のためにも、決して高くないリーズナブルな価格で、より高品質のクルマを提供し、地球上の人々に幸せになっていただく。
それがカローラの使命であり、そのために、実用性、信頼性、使い勝手、安全性、コストパフォーマンスの高いクルマで在り続けねばいけない」と理解し、この言葉を大切にしながら、開発を指揮してきました。
1966年発売の初代カローラの時から、世界のマーケットを見据え、「世界に通用する国産小型大衆車」として開発に取り組んできました。そして、New Century Value をコンセプトに2000年にデビューした9代目カローラは、ホイールベースを大きく拡張するなどプラットフォームの大胆な変革を行い、名実ともに世界で通用する小型大衆車へと進化しました。私はこの9代目のカローラの時代から約15年間に渡り、カローラの開発に携わっています。

藤田 博也(ふじた・ひろや)
藤田 博也(ふじた・ひろや)
三重県出身。 1980年トヨタ自動車工業に入社。長くエンジン開発部門に在籍し、“世界一スムーズで静かなエンジン”と評された初代セルシオのV8エンジンなどを手がける。1997年から商品開発部門に移り、9代目カローラなどを担当。2003年、10代目カローラの開発責任者(チーフエンジニア)となる。そして新型11代目カローラの開発においても、引き続き陣頭指揮を執る。
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