いま再び、Made in Japan , Made for Japan. [第11代目カローラ(アクシオ/フィールダー) 藤田博也 チーフエンジニア](3/3)

お客様との信頼関係の中で築いてきたブランド

新型カローラアクシオ
新型カローラフィールダー

新型カローラアクシオの開発スローガンは「ビッグスペース・コンパクト」。コンパクトなパッケージの中に大きな居住空間を実現することを目指しました。
新型カローラフィールダーの開発スローガンは「オールラウンド・フィールダー」。プライベートにもビジネスにもあらゆるシーンで使えるスタイリッシュで万能なクルマを目指しました。
こうして完成した新型カローラでは、全長がアクシオで50mm、フィールダーで60mm短くなったにもかかわらず、シートの改良などで後部座席の膝まわりのスペースを40mm拡大しました。また、アクシオではラゲージ容量を拡大し、フィールダーでは荷室長やリアシートを倒した場合の最大荷室長を拡大して畳1畳分を優に超えるフラットなスペースを確保するなど、クラストップレベルの居住性、使いやすさを実現しています。また、エンジンの大幅改良や新CVTの開発により、乗り心地が良く、力強く思いのままの走りと低燃費を実現しました。
安全性の面でもSRSカーテンシールドエアバッグ、SRSサイドエアバッグとVSC&TRC※1を全車に標準装備。後席の外側席には、前席同様にプリテンショナー&フォースリミッター付のシートベルト※2も標準装備しています。さらに、夜間の視認性向上と運転負荷を軽減するHIDビューアシストパッケージ※3のオプション設定など、安全性向上に寄与する装備を充実させました。
日本とグローバルのクルマの使い方から生じるギャップも新型カローラでは改善して、日本にあった仕様に変更しています。例えば、前席の着座位置の高さ。わずか、10mmですが新型カローラでは高くしました。欧米ではどちらかというと長距離を運転する機会が多く、そのせいか低い着座位置を好む傾向があります。それに対して、短距離の運転で乗り降りの頻度が比較的多い日本向けには乗り降りのしやすさを重視しました。また、後部座席も乗り降りの際の足元のスペースを拡げて、乗り降りしやすくしました。

先日、ある販売店を訪問した際、これまで2,500台以上の新車を販売している女性販売スタッフの方とお話をする機会がありましたが、彼女はこの10mmの改善を「たいへん素晴らしい!」と絶賛され、「これなら、売れる!」と力強く太鼓判を押してくださいました。
「今度のカローラはちょっと違うね!」。この着座位置のわずか10mmを絶賛してくれる販売スタッフがいて、それを理解して購入してくださるお客様がいます。それが46年間続いているカローラというクルマであり、ブランドなのです。決して目新しい最新の装備などだけでは満足いただけない、長年の信頼関係の中で培われた、他のクルマとは違う、お客様や販売スタッフ、そして開発者のこだわりみたいなものがカローラには存在しているように思います。

※1VSC&TRC(ビークルスタビリティコントロール&トラクションコントロール):
滑りやすい路面や発進・加速時の操縦安定性の確保に貢献する機能
※2プリテンショナー&フォースリミッター付シートベルト:
前面衝突時に強い衝撃を感知すると拘束効果を高める機構と、乗員の胸部への衝撃を緩和する機構のいたシートベルト
※3HIDビューアシストパッケージ:
夜間走行時の視界確保に貢献。先行車や対向車のランプ、街路灯等を検知し、自動でハイビーム・ロービームを切り替えるオートマチックハイビーム機構、プロジェクター式ディスチャージヘッドランプ、自動防眩インナーミラー等の機能をセットにしたオプション装備

新型カローラアクシオ
新型カローラフィールダー

安心・安全・快適という選択軸

フロントピラー(柱)をより運転手側に近づけることにより、ウィンドシールド(フロントガラス)からの前方視界を拡大
フロントピラー(Aピラー)を運転手側に近づける
ウィンドシールドからの前方視界を確保

クルマの方向性としては、「エコ(低燃費)」をキーワードとして打ち出しているクルマもあれば、「ワクワク・ドキドキ(デザイン、ドライビングプレジャー)」を前面に打ち出しているクルマもあります。
今回、新型カローラでは「安心・安全・快適」というキーワードを前面に打ち出しました。
もちろん、ガソリン車としてトップクラスの低燃費を実現していますし、ドライビングプレジャーだって十分あります。なんといってもカローラですから、そこは抜かりありません。 カローラの「80点主義」というのは全体の平均が80点という訳ではなくて、どの性能・機能でも最低限80点の及第点を確保し、アピールしたい部分で100点、120点を狙うという考え方です。
新型カローラでは、「安心・安全・快適」ということを突出させたいと思い、視界確保のためにフロントピラーを手前に持ってきたり、様々な安全装備を追加したりしました。視界の改善は、なかなか外観からはわかりにくいのですが、乗って運転していただくと、よく実感していただける大きなアピールポイントです。
何を優先にし、どのような方法で課題を解決するかは、クルマの個性であり、開発ポリシーやスタンスの問題です。どちらかが正しいとかいう問題ではありません。少なくとも、カローラに乗られるお客様にとっては、この方が良いと考え選択しました。
ちなみに、フロントピラーを手前に持ってくると、ウィンドシールドが立って、少し古いクルマのイメージになります。そこを払拭するために、ウィンドシールドガラスを大きく湾曲させ、センターラインでは前モデルと同じくらいの傾斜になっています。これはカタログ等の写真ではわかりにくいので、是非、お客様には実車でご確認いただきたいと思っております。
これにより、ユニークな“これが新型カローラだ”という意匠ができました。

フロントピラー(柱)をより運転手側に近づけることにより、ウィンドシールド(フロントガラス)からの前方視界を拡大
フロントピラー(Aピラー)を運転手側に近づける
ウィンドシールドからの前方視界を確保

ReBORN(生まれ変わる/もう一度、イチから作り出す)

私たち開発者がこだわってきたカローラというクルマの訴求ポイント「安心・安全・快適」は、数字を見ればひと目で違いがわかる「低燃費」や、スタイリングだけでも十分に伝わる「ドライビングプレジャー」という価値と比べるとすごく地味ですし、ひと目ですぐに伝わり、理解していただける価値とは異なります。それは長いお付き合い・継続の中で感じてもらえる価値であり、こだわりです。
一度、実感し理解いただければ、その価値はかけがえのないものとなるはずです。
今回の新型カローラの開発を振り返って、私たちがやってきたことはまさしく、トヨタの企業スローガン『ReBORN』(生まれ変わる/もう一度、イチから作り出す)がピッタリだということを感じています。
新型カローラはセントラル自動車の宮城工場で生産が開始されました。「復興支援のために、一台でも多く売れるクルマを開発しよう!」。この1年間はそんな想いを胸に多くの人と仕事をしてきました。一台でも多くのクルマを東北で作りたい。そして東北の復活(ReBORN)、日本の復活(ReBORN)に貢献できればと思っています。

( 文:宮崎秀敏 (株式会社ネクスト・ワン) )

MORIZO on the Road