カッコよく意のままに操れるスポーツハッチバック [オーリス 末沢泰謙 開発主査](1/2)
欧州では、クルマのサイズ等からA~Fまで6段階のカテゴリーに分類されている。その中で、「Cセグメント」は、コンパクトなパッケージで実用性や経済性が求められる「Bセグメント」(VWポロ、プジョー207等、トヨタではヴィッツ(欧州名:ヤリス))と、ゆったりとした居住性やゆとりの走り、高級感、上質なテイストなどが求められる「Dセグメント」(メルセデスベンツCクラス、BMW3シリーズ、VWパサード等、トヨタではアベンシス)の中間に位置し、Bセグメント、Dセグメントの両方の要素が求めらている。つまり、デザイン性はもちろん、コンパクトで実用的、経済的であるとともに、高いレベルの操縦安定性と快適性、上質感等々、全ての要素で高いパフォーマンスがバランス良くパッケージングされていることを求められるカテゴリーだ。しかも、昨今、ダウンサイジング化の傾向にある中、Cセグメントの市場規模は拡大している。
2006年に欧州市場におけるカローラハッチバックの後継モデルとして登場したオーリスは、フォルクスワーゲンゴルフ、フォードフォーカス、プジョー308などとともに、このCセグメントを代表するクルマの一つとして欧州市場で認知され、世界トップクラスのライバルたちとハイレベルで熾烈な競争を展開してきた。そして今回発表された2代目オーリスでは、初代のDNAを引き継ぐとともに、それにより一層、磨きをかけ、進化させた。「オーリスがよりオーリスらしくあるために」、新型オーリスの開発に込められた想いやこだわりについて、企画当初からずっと、開発現場の最前線で指揮を執ってきた末沢泰謙主査に話を聞いた。
このクルマに説明や理屈は必要ない
- 末沢 泰謙(すえざわ・やすのり)
- 1965年香川県生まれ。1991年、トヨタ自動車入社。ボデー設計部配属後、海外向けカローラや欧州向けアイゴのシート、安全装備設計を担当、その後内装部品の先行開発業務を経て、2001年、製品企画部門に異動。01年から04年まで3年半、TME(トヨタモーターヨーロッパ)に出向し、製品企画の出先として、欧州向け車両の商品要望および、欧州向け開発車両の現地と国内との連携を図る業務を担当。帰国後、開発プロセス改革業務を経て、08年より現部署に配属となり、海外向けカローラの先行業務を担当。オーリスは、先代のマイナーチェンジモデルより担当し、現在に至る。愛車はMR-S。セカンドカーとして、またオーリスのベンチマークとしてゴルフ、トゥーランなどを乗り継いでいる。ゴルフはCセグメントの代表格のクルマであり、オーリス開発チームにとっての永遠のライバルだという。
初代オーリスは2006年、新しいプラットフォームの採用を機に、欧州ではカローラハッチバック、日本ではカローラランクス/アレックスの後継モデルとして、名前を一新し、『直感性能』をキャッチコピーに掲げて、誕生したハッチバックです。
個性的なショート&トールのエクステリア、それがもたらす室内の広さ、乗り降りのしやすさ。そして、独創的なブリッジセンターコンソールを配置したインテリア、さらには、走り出せばすぐに体感いただける爽快なドライビングフィールなど、従来のコンパクトクラスの枠を超えた、感性に訴える個性と走行性能を備えたクルマであること。それが、オーリスというクルマのDNAである『直感性能』です。
言い換えれば、意匠(外形のデザイン)を見ただけで、圧倒的にかっこいい。そして、いかにも走りそうという期待感が湧き上がってくる。次に、運転席に座れば、このクルマの上質さが伝わってくる。さらに、実際に走ってみれば、期待以上のキビキビとした走り、操作安定性、取り回しの良さがすぐに体感できる。
そこには説明や理屈は必要ありません。このクルマの魅力は、目で見て直感的に理解できる。そして、ハンドルを握った両手からも、直接、身体全体に伝わり、心を打ち、感動につながる。オーリスとはそういうクルマです。
新型オーリスの開発にあたり、最も重視したのが、この『直感性能』にさらに磨きをかけ、このクルマのブランドイメージとして確立することでした。そのために車両企画において重要なファクターである外形スタイル、内装デザイン、パッケージング、そして走行性能などを調和させ、新型オーリスの新しい直感性能に落とし込んでいくのかが最重要課題となりました。
- 末沢 泰謙(すえざわ・やすのり)
- 1965年香川県生まれ。1991年、トヨタ自動車入社。ボデー設計部配属後、海外向けカローラや欧州向けアイゴのシート、安全装備設計を担当、その後内装部品の先行開発業務を経て、2001年、製品企画部門に異動。01年から04年まで3年半、TME(トヨタモーターヨーロッパ)に出向し、製品企画の出先として、欧州向け車両の商品要望および、欧州向け開発車両の現地と国内との連携を図る業務を担当。帰国後、開発プロセス改革業務を経て、08年より現部署に配属となり、海外向けカローラの先行業務を担当。オーリスは、先代のマイナーチェンジモデルより担当し、現在に至る。愛車はMR-S。セカンドカーとして、またオーリスのベンチマークとしてゴルフ、トゥーランなどを乗り継いでいる。ゴルフはCセグメントの代表格のクルマであり、オーリス開発チームにとっての永遠のライバルだという。
「スポーツハッチバック」という明快な個性を造り込む
- オーリスの先代モデル
そもそも、ハッチバックというパッケージは、低重心だから走りもいいし、空力性能も高くできる。コンパクトで取り回しも良く、5人がゆったり乗れて、荷物もたくさん積める。そして何よりも、かっこいいクルマにできる。それゆえに、欧州では日常生活の足として、そして遠出のドライブや旅行の用途で、圧倒的にコンパクト・ハッチバックの人気が高い。特に、近年はCO2排出量によって税金が優遇されることも手伝って、ダウンサイジングが進み、Cセグメントの上質なコンパクト・ハッチバックの需要がかなり高くなっています。
日本では利便性や実用性、経済性の面が評価されて、ミニバンや軽自動車の人気が依然として高い傾向にあります。しかし、ヨーロッパの人たちは利便性や実用性、経済性だけでは満足しません。やっぱりクルマはかっこ良くないといけない。そして、同時に、キビキビとした走り、上質な質感も兼ね備えていることが求められます。「Young at Heart」という言葉が示すように、歳をとって身体は老いても、気持ちだけはいつまでも若く、かっこいいクルマに乗っていたい。年齢を問わず、クルマのデザインや走りへのこだわりが強く、上質の質感や風格を求める。それが欧州の気質です。
そして、国内においても、同様に、ミニバンや軽自動車では満たされない、上質のコンパクト・ハッチバックを求めている人は少なくないはず。かくいう私もその一人です。
そういう人たちのニーズの掌握やVWゴルフ等競合車の調査、市場トレンド分析を行った結果、導き出されたのが「スポーティ」という明快な方向性でした。私たちはそれに基づいて、新型オーリスの新しい直感性能を造り込んでいきました。
- オーリスの先代モデル
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