ヴォクシー/ノア 開発責任者に聞く(2/4) ― 力強く魅力的なハコ ―

競争相手は他メーカーではなく、お客様

デザインコンセプトは"Emotional Box"
デザインコンセプトは"Emotional Box"
個性豊かな表情と魅力的な印象を備えた、車外からでも室内の広さがわかる力強いハコ。

1990年代に入ってから、日本では車内のスペース効率を高め、大きな荷室と大人数が座れる3列シートが特徴のミニバンブームが起き、さらには2000年に改正された道路交通法で6才未満の幼児を乗車させる場合にチャイルドシートの使用が義務化されたことがブームを後押し、各メーカーから雨後の筍のように、大きさや形状が異なるいろいろなタイプのミニバンが登場しました。

その中にあって、ヴォクシー/ノア​が属しているコンパクトキャブワゴン(5ナンバーサイズで箱形のボディ)は、子育てファミリーの圧倒的な支持によって、厳しい国内市場の中でも好調を維持する貴重なセグメントであり、その存在価値は年々着実に高まっています。さらに近年では『子どもが生まれたらコンパクトキャブワゴン』というファミリーのライフスタイルとして広く浸透し定着してきました。

ミニバンはセダンやスポーツカーなどと違って、家族のためのクルマであり、ブランドで選ばれたり、エンジンの排気量や走りなどエモーショナルな魅力で購入されたりするクルマではありません。多くのお客様は販売店を回ってお母さんが試乗し、運転のし易さや使い勝手を比較検討したうえで購入を決めます。

ですから、室内空間の広さ、乗降性、シートアレンジ、荷室の広さ、燃費、使い勝手や取り回し、さらには外観・デザインといったミニバンに求められる基本価値をしっかり造り込む必要があります。それが不十分だと、他車との比較検討段階で棄却されてしまいます。ですから長年にわたり、各社が熾烈な開発競争を繰り広げているのです。

しかも、厄介なことにそれは先端技術の勝負ではありません。お客様目線に立って、いかに細かいことに心を配れるか? の勝負。画期的な決め手はなく、一つひとつ、小さな創意工夫の積み上げで実現されるものです。

また、一方でライバル車の数値ばかりを気にしていては本質を見失ってしまいます。なぜなら、大切なことは、お客様に気に入っていただくことであって、ライバル車に勝つことではないからです。そのためには、お客様のニーズを満たすだけでなく、その期待を超える“WAO!”が必要です。「このクルマなら買ってもいい。買い換えたい」と思っていただける圧倒的な“WAO!”を作り出す。つまり、本当の競争相手は他メーカーのライバル車ではなく、お客様なのです。

クラスを超える存在感と進化したスタイリング

独自の色気漂う新型VOXYのフロントマスク
洗練された新型NOAHのフロントマスク

まず最初の“WAO!”は、広く使いやすい箱の魅力を追求しながら、エモーショナルさも両立した外観デザインです。いままでのミニバンの外観デザインで評価されてきたのはツールライクなカッコよさでした。あえて四角と割り切ってシンプルな面構成にして、道具としてのカッコよさ、機能美を追求する。今回のデザインではそこにエモーショナルなカッコよさを入れて力強く魅力的なハコにしたいと考えました。

一方でお客様がミニバンに求める外観デザインとして重要なことは、外から見ても室内の広さを感じられることです。しかし、そうなると、形は真四角に近くなり、シンプルなツールライクの方向に行きます。広さを感じさせながら、エモーショナルを両立できるのか?それが今回のデザインのチャレンジでした。しかも、5ナンバーサイズの制約の中、室内の幅は目一杯とりたい。その分、外側のデザインの余地は限りなく少ない。そんな制約があるなか、デザイナーと設計者は苦労し、こだわり抜いて、その両立を実現しました。
さらに、このクラスの中ではヴォクシー/ノア​は全長が短いことがウリでしたが、全長が短いメリットよりも、その分、室内が狭いデメリットの方が大きいと判断して、5ナンバーサイズぎりぎりの長さにまで全長を100ミリのばしました。

また、ヴォクシーはこれまでもカッコいいというイメージが定着していましたので、今回はさらにそれを磨き上げ、ヴォクシー独自の美意識を徹底させた「毒気」を漂わせるフロントマスクに仕上げるなど、より進化したスタイリングを実現しました。

一方、ヴォクシーに比べてノアはファミリーやママのイメージに寄りすぎて、地味で押し出しが弱い印象がありました。そこで今回はクラスの中で圧倒的な存在感を放つ、堂々としたフロントフェイスにして、がらっとイメージを変えています。

昨年の秋に開催された東京と名古屋のモーターショーにコンセプトカーとしてノアの標準ボディとヴォクシーのエアロボディを参考出展しましたが、デザインについて予想を超える高い評価と大きな反響をいただきました。

MORIZO on the Road